こんにちは、ネギです。
学園長室から退出して、木乃香さん達を待っています。
退出する際に学園長たちが
「………ゲーデル議員が………」「………高畑先生がうまく………」「………これで………」
とか話し合っていました。
そういえば何でタカミチは緊急の出張なんかあったんでしょうか?
前にNGOの仕事はほとんど終わったようなこと言ってたんですが………。
………まあ、気にしませんし、わかりません。
自分は何も知らない子供ですから。アハハ………。
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そんなわけで学園長室から退出。
あんな悪巧みしている場所にいられるか! 自分は清いままでいさせていただきます!
そして世界樹前広場で木乃香さん達と待ち合わせです。
木乃香さん達はどういう人達なんだろーなー?
…………四葉さんみたいなことになってなきゃいいけど。
「君がネギ君?」
…………ついに来ちゃったよ。
ええい、覚悟完了! 当方に諦観の準備有り!
呼ばれて振り返ってみると私服姿の木乃香さんと刹那さんが立っていました。
相変わらず刹那さんは白い髪で、やけに柄が曲線を描いている長い日傘を差しています。
木乃香さんは……………あれ?
この前はすれ違っただけでしたから気づきませんでしたが、よくよく探ってみると魔力が感じられません。
どういうこっちゃ?
…………ま、いいか。それより挨拶挨拶。
「はい、ネギ・スプリングフィールドです。
初めまして、近衛木乃香さんですか?」
「そうやよー。日本語うまいのやね。
英語そんなにわからへんからドキドキしてたわー」
「大丈夫だと言ったでしょう、このちゃん。ネギ先生は教師になるために麻帆良に来られた方ですから。
初めまして、私は桜咲刹那と申します」
「初めまして桜咲刹那さん。
2-Aの担任補佐となることはご存知のようですね。3学期からよろしくお願いします。
とはいえまだ教師ではありませんので、“先生”とつけなくても構いませんよ。僕の方が年下ですし」
「いえ、そういうわけには参りません」
「せっちゃんは固いんやからー。ネギ君が困っておるえ。
それにしても大変やな、ネギ君も。そんなに小さいのに学校の先生になるなんて…………。
お爺ちゃんから聞いたから、今日は麻帆良を案内してあげるえ。ネギ君はどこか行ってみたいところとかあるん?」
刹那さんが裏の関係者っぽいのは立ち居振る舞いからして確定なんですが、木乃香さんの方がサッパリわかりません。
自分のような子供が教師になることを聞いても動じてませんが、原作でも似たような感じでしたからねぇ。
かといって、迂闊な発言をしたら刹那さんに斬られそうです。
だってせっちゃん常に日傘の手元を握ってるから、常に臨戦態勢なんですもん。
やばい。この傘なんかやばいです。
よくよく見ると傘生地が妙に分厚いです。完璧に日光遮ってます。
………………防弾繊維? どこの戦闘メイドですか?
“お嬢様の名に誓い、すべての変態に白刃を”、ですか?
ヘタに竹刀袋に真剣入れてるよりやばいです。
「はい、今日はよろしくお願いします。近衛さん、桜咲さん。
…………そうですね。出来れば生徒の皆さんが普段遊ぶようなところをお願いします。
タカミチやエヴァさんと何回か麻帆良巡りしてますけど、生徒の皆さんが行くようなところは行ったことないんですよ」
エヴァさんの名前を出しても無反応ですか。
まあ、いいです。自分は何も見てないですし想像してないです。
自分はただの教師になるだけの子供なんですから…………。
それに今まで麻帆良巡りはエヴァさんやタカミチとしかしてませんでしたから、他の女の子と麻帆良巡りするのは楽しみですしね。
あの2人と一緒だと落ち着いたところしか回りませんから、若者が普段遊ぶようなところは全然行かないんですよ。
木乃香さんや刹那さんのような美少女と麻帆良巡り出来るなんてラッキーです。
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2人と一緒に色々なところに遊びにいきました。
ボーリングしたりカラオケしたり、この刹那さんは原作と違ってこういう遊びも慣れているみたいです。
“このちゃん”“せっちゃん”と呼び合って、まるで普通の女子中学生のようでした。
2-A生徒のことも教えてくれました。
“バカレンジャー”ならぬ“バカ四天王”がクラスにはいるそうです。
神楽坂明日菜さんがバカ連中から外れています。
会ったときにバカっぽくないと思ってましたが、やはりそうなんですね。
ということは原作でバカレッドになったのって、無理矢理記憶を消したからですか。
確かタカミチがアスナさんの記憶を消したはずですが、魔法が使えないタカミチは魔法符か何か使ったんでしょう。
だけどおそらくアスナさんが持つ“完全魔法無効化能力”が変な風に働いて、頭がパーになってしまったということですかね?
………………タカミチめ。余計なことしやがって。
というかあのクールなアスナ姫がバカレッドになるのって、そりゃなんか理由ありますよねぇ。
ちなみに刹那さんも木乃香さんに勉強を教えてもらっているので、原作と違い中の上クラスらしいです。
とはいえクラスのテスト成績が万年最下位なのは変わらないそうですが。
まあ、ブービーとは数点の差なので、ちょっと頑張れば期末テストは最下位脱出できそうです。
3学期からアーニャも来ますから、より平均点がアップするでしょう。
よし、期末テストはこれで勝てます。
「今日はありがとうございました。
ウェールズではこんな風に遊んだことなかったので楽しかったです」
「それはわかります。
私も中学になるまで京都に住んでいたのですが、麻帆良に来てからこういう遊びをするようになりましたから」
木乃香さんが御手洗いに行ってるので刹那さんと2人きりです。
今のうちに木乃香さんが魔法関係者かどうか聞くことにしましょうか。
………………でも、どうやって聞こう?
迂闊に聞くと地雷踏み抜きそうです。ここはやはり日傘にツッコミ入れて、そこから話を広げていくべきですかね。
「ところで聞いてもいいでしょうか?
その日傘、何というか…………変わってますね? 柄が妙に曲がっていますし」
「ふふふ、聞かれると思ってました。
何度かこの傘を見て、微妙な表情をしてましたものね」
バレテーラ。
いや、しかしセーフです。
刹那さんの表情を見る限り、ツッコミ入れてなかったら逆に失望されてた感じです。
「多分、ネギ先生が想像されているのであっていると思います。
誤解無いように伝えておきますが、私はこのかお嬢様の護衛なのです」
「桜咲さんはこちら側の関係者なのですか?」
「はい。警備員としては働いていませんが、魔法の関係者ではあります。
このちゃん…………近衛木乃香様は、関東魔法協会の理事である学園長の孫であるだけはないのです。
関東魔法協会に並ぶ日本の魔術団体、関西呪術協会の長の御息女でもあるのです」
「ええ、それは聞いたことがあります。
確か関西呪術協会の長は近衛詠春さんで、僕の父とも知り合いだそうですね」
「そう聞いています。
私はネギ先生の父君とはお会いしたことはありませんが、長が“紅き翼”時代のことを話しているのを聞いたことがあります」
「へぇ~、そうなんですか。それなら是非、機会があれば父の話を聞かせていただきたいですね。
…………しかし、関西呪術協会の長の御息女というなら、何故麻帆良にいるのですか?
それに近衛さんから魔力とかは感じられませんでしたが、魔法関係者ではないということなのでしょうか?」
そうだ、そこが問題です。
魔力が感じられないということは、原作ではナギ以上と言われた魔力がないということでしょうか?
「いえ、お嬢様は魔法のことはご存知ですよ。
魔力が感じられないのは魔力を封印する魔法具を使っているからです。魔法の修行をなされるとき以外は常につけておられます」
「…………そう、なんですか。
まったく気づきませんでした」
「魔力を封印しているのは、お嬢様の魔力が強大すぎるからです。
話によると先生の父君である“千の呪文の男”よりも強大だとか。
強すぎる力は災いを呼ぶ、とのことで一人前になるまでは必要なとき以外は魔力を封印なされているのです。
そしてお嬢様が麻帆良にいる理由は東と西の友好のためです。長の御息女であるお嬢様が西洋魔術を習い、将来の東と西の友好の架け橋となるようにと。
…………悪く言ってしまえば人質という表現になってしまいますが」
「そ、そうなんですか!? …………人質、ですか。
近衛さんはそのことはご存知なのですか? それに近衛さんが西洋魔術師になったら、将来の関西呪術協会の長には誰が?」
……驚きました。こんなはっきり言うなんて。
え? 大丈夫なの? 人質なんてとっちゃって?
東と西の仲が悪いどころの話じゃないのでは?
「大丈夫ですよ。
関西呪術協会の長にはお嬢様の弟君がつくことになるでしょう。
弟君の北斗様はネギ先生と同い年ですね」
………………弟? 北斗?
新キャラ登場ですか!?
「それに先ほどの理由は後付けなのですよ。
長はその……子煩悩といいますか、お嬢様に非常に甘いといいますか」
確かに原作でもそんな感じでしたよね。
というか学園長も金槌で頭殴られても何も言わないし、あの2人は木乃香さんに対して甘すぎです。
「それを憂いた奥様が「これでは木乃香のためにならない」と仰られまして。
お嬢様を学園長がいらっしゃる麻帆良に留学させることになされたのです」
奥様ってことは、木乃香さんのお母さんご存命というわけですか。
弟さんが生まれているということなら、そりゃお母さんも生きてますよねー。
あれですか?
学園長と長が原作で木乃香さんに駄々甘だったのは、娘と妻の忘れ形見だったからですか。
「それで長も落ち着かれまして、今は精力的に関西呪術協会の長の勤めを果たしておられます。
といっても口が悪いものは奥様の方が長だと揶揄しますが……」
詠春さんは元から婿養子でしたからねー。
弟さんが自分と同い年ということは9歳。
木乃香さんが小学生のときに麻帆良に来たということですから、その頃にはもう弟さんは生まれてますね。
東のことが嫌いな西の強硬派も、男の子が西に残るならまあいいか、とでも思ったんでしょうか。
確か原作で西と東の仲の悪さの原因の一つに、“西の長の一人娘である木乃香さんが東にいる”というのがあったはずです。
でも弟さんがいて西に残っているということから、修学旅行で木乃香さんを取り戻そうとする強硬派がいない可能性がありますね。
“千の呪文の男”よりも強大な魔力というのは惜しいでしょうが、古い組織なだけに長になるのは女性より男性優先なのでしょう。
そもそも男性優先じゃなかったら婿養子なんて取らず、木乃香さんの母親が長になってます。
弟さんの才能がどれほどのものなのかわかりませんが、西に木乃香さんが残っていたら、
“実力重視の姉派 VS 慣習重視の弟派”
なんて内部抗争に発展する恐れすらあります。
そう考えると、木乃香さんを麻帆良に留学させるというのは長の親馬鹿だけが原因とは考えられませんね。
これはあくまでも自分の想像の話ですが…………。
「お待たせー。次はどこに行く?」
まあ、京都修学旅行の安全が高まったのは良いことです。
せっかくの休日なんです。今は美少女2人とのデートを楽しむことにしましょう。
「そういえばエヴァちゃんが「ぼーやに“お母さん”と呼ばれてみせる!!!」って張り切ってたけど、呼んであげないの?」
「こ、このちゃん…………」
「…………その話題はマジで勘弁してください」
エヴァさん、もしかして2-Aで自分のこと話してるんじゃないでしょうね?
帰ったら問い詰めなければ。
━━━━━ 後書き ━━━━━
別にせっちゃんは“ヤンデレ”とか“猟犬”だったりするわけではありません。
“アルビノ”→“日光に弱い”→“日傘”→“仕込み傘”と思いついただけです。
このちゃんのスキンシップに慣れている分、原作よりテンパったりすることが少ないぐらいでしょうか。
弟の名前は
“詠春”でググる→“詠春拳 - Wikipedia”がトップ→“ブルース・リー”が使ってた→“ホワタァー!”→“ケンシロウ”→“北斗神拳”→“北斗”
といった感じで連想ゲームで決めました。
特に意味はなく、今後の重要キャラとなるわけではありません。
というか今後出る予定もありません。
木乃香母の名前を知らないので、作中では“奥様”で通しました。
作者なりに木乃香が麻帆良にいても問題ない理由を作ってみました。