こんばんは、マダオです。…………じゃなくてネギです。
エヴァさんは無事に2-A生徒に暗示をかけることが出来たそうです。
といっても、アスナさん達のような魔法関係者は無理でしたけどね。
おかげでアルカナさんとばったり会ったとき、ニヤニヤと笑いかけられてしまいましたよ。
…………憎しみで世界を滅ぼすことが出来たらいいのに。
アスナさんや木乃香さん達が慰めてくれたのが唯一の救いです。
……そういえば確か、春日美空さんも魔法生徒でしたか。
3学期が始まる前に是非お話しないと駄目ですね。あの人悪戯好きですし。フフフフフ……。
春日美空さん、あなた覚悟してる人ですよね?
人に悪戯しようとするって事は、逆に悪戯されるかもしれないという危険を常に覚悟している人ってわけですよね?
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「フォッフォッフォ、大変じゃったのう、ネギ君」
「まったく、しょうがないなぁエヴァは」
「笑い事じゃないですよ、学園長、タカミチ」
現在12月31日23時30分、学園長の家でコタツに入ってヌクヌクとしてます。
考えてみると、日本に来てからコタツに入るのは初めてですね。エヴァさんの家の和室には囲炉裏がありましたけど。
ちなみになんで学園長の家で年越しするのかというと、エヴァさんのトラップにはまって氷像としてクリスマスの夜を過ごすことになったタカミチのためです。
『咸卦法』全開のタカミチと、自分が渡したクリスマスカードを誇らしげに見せびらかすエヴァさんの睨み合いはガクブルものでした。
このままでは正月をどこで過ごすか決める麻帆良大戦が始まりそうだったので、
「せっかく日本に来たので、年越しは日本風に過ごしたいです」
と自分がお願いして、学園長の家にお邪魔することとなりました。
………………何で子供の自分がこうまで神経磨り減らさなきゃならんのだ?
自重してよ、エヴァさん。
何というかもう…………何も知らない子供の振りをするの疲れてきました。コ○ン君の気持ちが良くわかります。
エヴァさんとタカミチは喧嘩仲間というか何というか、仲悪いわけじゃないんですけどねぇ。元同級生の悪友って感じです。
まあ、本人達がいいのならそれはそれでいいんですけど。
「しかし、エヴァンジェリンも本当に変わったなぁ。最初会ったときの“闇の福音”と呼ばれていた時代とは大違いだ。
まさか彼女が作る年越し蕎麦を食べるなんて考えたこともなかったぞ」
「ハハハ、師匠は出張ばっかりで、たまにしかエヴァと会ってなかったスからね。
僕は同級生でしたから、毎日のように見てたらアレが普通と思うようになったスよ」
「しかし、今のキティも大変可愛らしいのですが、昔のキティが懐かしいですね。
ちょっとからかっただけで顔を真っ赤にして怒ったのに、今では逆に惚気てくる始末です。からかいがいがなくなってしまいました」
「からかうのは勘弁して欲しいの、アル。
お主がからかった後始末に何度苦労したと思っている」
それにしても何でガトウさんとアルさんが一緒に年越ししてるんでしょう?
学園長の家で普通に紹介されて、普通に一緒に年越しすることになりました。
原作を知っている身としては違和感しか感じられません。
いや、自分もどういうことか聞きたかったですよ。でもね、
「始めまして、ネギ君。
神楽坂ガトウだ。昔は“ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ”って名前で君のお父さんと一緒に働いていたんだ。
娘のアスナとは会ったんだってな、よろしく頼む」
「こんばんは、ネギ君。
アルビレオ・イマといいます。私も君のお父さんの仲間ですよ」
「……え? はい、ネギ・スプリングフィールドです」
で会話が終わりましたよ。
何をどう聞けっていうのです? 「何でここいるの?」とか聞けないですよ。
そしてタカミチのガトウさんに対する口調にも違和感バリバリです。原作通りなんですけどね。
若い頃のタカミチならともかく、今のタカミチの老け顔で「~ス~」とか正直似合わないッス。
それにしてもこの部屋平均年齢高いですね。
台所でソバ茹でてるエヴァさんも加われば文字通り1桁跳ね上がりますが。
…………ミカン甘ぇ。
「ネギ君、どうしたんだい?」
いきなり通常モード戻んな、タカミチ。
それともアッチの口調が通常モードなんですかね?
「いや、ちょっと現実逃避を少しばかり。
そんなにエヴァさんは今と昔で違うんですか?」
「ああ、昔のエヴァンジェリンを知らない君を置いてきぼりにしてたな、すまん」
「そうですねぇ。違うことは違うんですが、あまり本質的には変わってないでしょうね。
今まで威嚇ばかりしてきた子猫が甘えてくれるようになった、という感じでしょうか」
「そんなところじゃろうな。
それに今年はアスナ君や木乃香達といった事情を知っている子がクラスメイトに多い上、ネギ君の協力のおかげで『登校地獄』が解呪出来るからのぉ。
それでより明るくなったわい」
「そうなんですか。
そういえばアスナさん達は一緒じゃないんですね。クラスの人達と年越しをするのでしょうか?」
「ん? アスナは龍宮神社でアルバイトって言ってたぞ。
何だ、ネギ君。アスナに興味あるのか?」
「いやいや、ネギ君が興味あるのは木乃香じゃな。大和撫子の言葉がピッタリじゃからの。この前デートもしたのじゃし。
ちなみに木乃香もアルバイトじゃな。刹那君に巫女服を着せたいとか言っておったぞ」
「…………大和撫子は友人に巫女服を着せたいとか言わないと思いますよ、学園長」
巫女服いいですね。特にクールなアスナさんの巫女服姿は見てみたいです。
よし、初詣に龍宮神社に行くとしましょう。
「10歳にもなっていないのにそんなこと考えたことありませんよ。皆さん美人だと思いますけどね。
僕よりもタカミチはどうなんですか? もう30じゃないですか」
でもぼく萌えとかわかんなーい。9さいだもん。
…………うん、無いですね、このキャラは。
とりあえずタカミチを生贄に捧げておくことにします。
「お、そうだな。タカミチどうなんだ?
確か同僚の女教師と茶飲んでるの見かけたこと何回かあったぞ」
「ちょ、何言ってんスか、師匠。ネギ君の前で…………」
「しずな先生のことじゃな。高畑君も隅に置けないのぉ」
「フフフ、あの小さかったタカミチ君にも春が来たのですか」
よし、このメンバーだったらタカミチも弄られる側です。
タカミチを生贄にして、自分は安全圏にいましょう。
「おーい、蕎麦運ぶの手伝ってくれー」
あ、年越しソバだ。
おおみそかということで学園長が雇っているお手伝いさんもいませんからね。6人分のソバを運ぶのはエヴァさん一人じゃ辛いでしょう。
「じゃ、僕が行ってきますのでお話しを続けていてください」
「おお、頼む。
ホラ、キリキリ吐け。師匠命令だ」
「ちょ、ネギ君! マジで勘弁してくださいっス、師匠!」
「フフフ、ネギ君もちゃっかりしてますねぇ」
「高畑君はもうちょっと搦め手に強くなればいいのじゃがのう」
これ以上狼の群れがいる部屋にいられますか!
自分は台所に逃げさせてもらいます!
「お待たせしました。これを運べばいいんですか?」
「ああ、重いから気をつけてな」
年越し天蕎麦ですか。海老の天麩羅がおいしそうです。
そういえば蕎麦って日本に来て初めて食べるかな?
エヴァさんの料理は洋食が多いからしょうがないんですが、今度エヴァさんに頼んで日本料理も作ってもらいましょうかね。
寿司とか刺身はこの前学園長に食べさせてもらったから………………あー、湯豆腐とか食べたいなぁ。湯豆腐というか鍋。
鳥の水炊きとか魚介類をふんだんに使った寄せ鍋とかいいなー。こう寒い冬にはピッタリです。
「フフフ…………」
「? エヴァさん、どうしたんですか?」
「いやなに。こうやって手伝ってもらうところなんて“親子”っぽいなと思ってな。
そう思わないか、ぼーや?」
「ア、アハハ…………どうなんでしょうか?」
…………狼の群れから逃げれたと思ってたら虎穴に逃げてたでござる。コンチクショウ。
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「明けましておめでとうございます。
今年からよろしくお願いします」
「明けましておめでとう。
何、ぼーやならうまくやれるさ」
「明けましておめでとうございます。
うん、大丈夫だよ。僕もフォローするからさ」
「明けましておめでとう。
フォッフォッフォ、期待しておるぞ、ネギ君」
「明けましておめでとうございます。
私は普段は図書館島の奥にいますので、たまに顔を出してくださいね。
まだ療養中なのであまり役に立てませんが、相談くらいには乗れますよ」
「明けましておめでとう。
アルにはあまり相談しない方がいいんじゃないのか?
ネギ君がアルの影響を受けたらどうする?」
除夜の鐘が鳴り終わり、2003年が始まりました。
原作開始の年です。冬休みが終わるまでは時間があるとはいえ、ドキドキします。いよいよです。
「ネギ君は来週にウェールズに帰るんだったな」
「はい、村の皆の治療のために。
それと3学期から修行で麻帆良中に通うことになった幼馴染の迎えです」
「僕もそれに着いていくっス、師匠」
…………この口調のタカミチだと。春日美空さん出てきたときに困りますね。
いや、メタな話はやめておきましょう。
「それにしても、伯爵級悪魔による石化すら治すことが出来る石化治療魔法ですか。
興味深いですね」
「うむ、それだけのことで“偉大な魔法使い”と呼ばれても正直おかしくないぞい」
「いえいえ、ヴィルさんの手助けがあっての話ですよ。
自分一人じゃこんなに早く出来ませんでした」
それと学園長達によるヴィルさんへの“お話し”ですね。
…………いや、思い出しちゃ駄目だ、自分。
魔法球から出た後にヴィルさんに何があったのかなんて、自分は何も知らないんですから。
「ぼーやは謙虚だな。
しかし、度が過ぎれば力が無い者にとっては嫌味にしか聞こえん。
確かに私達の助けがあったとはいえ、“ヴィルから石化魔法を教わる”というそもそもの発想はぼーやのものなんだ。
それは誇るべきだろう」
いや、発想というより、ただの冗談のつもりだったんですが…………。
でもそういうことにしておかないと、ヴィルさんが冗談のせいで無間地獄に落ちてしまったことになるので黙ってますけどね。
「ネギ君は柔軟な発想が出来るのですね。それは魔法使いとして良いことです。
ナギのように何でもかんでも力技で済ませるというのは本当はいけないことですから」
「確かにそうだな。
例のプランだって、ネギ君の発想からヒントを得たんだろう」
…………例のプラン?
「例のプランってなんですか?」
「ん? …………ああ、そうか。ネギ君には話していなかったね。
まだ詳しくは話せないんだけど、今“魔法世界”では問題があってね。それを解決するヒントを、昔ネギ君と話したときに貰ったんだよ。
ヒントというより直球な答えだったんだけど」
は? “魔法世界”の問題?
それって、火星の魔力枯渇による“魔法世界の崩壊”のことですよね?
え? 自分いったいタカミチに何言った? “魔法世界の崩壊”を食い止めるような話なんかしてませんよ?
火星のテラフォーミングとか、そんなチートオリ主じゃないですよ。世界樹の力を使う能力なんかも持ってないですよ。自分は。
「それは初耳だな。
というよりぼーや自身もなんのことかわかっていないぞ」
「ハハハ、まあ話せるときになったら話すよ。僕よりも説明に向いている人もいるし。
大丈夫だよ。悪いどころか良い話だし、今は村の皆のことを考えていればいいよ」
「は、はあ…………そうですか。わかりました。
その内話してくださいね」
駄目だ、さっぱりわかりません。
本気で自分いったいタカミチに何言ったっけ?
でもいいんです。この並行世界は自分の知っている原作とは違うんですから、わからないことがあって当然でしょう。うん、そうです。
今はタカミチの言うとおりに村の皆の治療を考えてましょう。諦めてもそこで人生終了ではありません。
「ま、なんにせよ。せっかくの里帰りだ。ゆっくりとしてくるがいいじゃろ。
お姉さんや幼馴染にその伸びた背を見せてきなさい」
「はい、アーニャやアルちゃんにも久しぶりに会いますから楽しみです」
「…………“アルちゃん”、ですか?」
!? …………やば、地雷踏んだ。
“アルさん”が“アルちゃん”に反応した。