「明けましておめでとうございます。
わあ、これが巫女服ですか。巫女服サイコーーー!」
何かテンション上がってきた。
「明けましておめでとう。
…………何か邪念を感じたんだが?」
「? マナちゃん、どうしたん?」
「明けましておめでとうございます、ネギ先生。
早いですね、まだ7時前ですよ」
「明けましておめでとう。 お父さん達はどうしたの?
一緒に年越しするって聞いていたけど」
ん? ああ、タカミチ達なら、学園長から提供という名の強奪をされた秘蔵のお酒のせいで、アルさんを除いて全員夢の中です。
吸血鬼であるエヴァさんすら二日酔いで動けないとか、いったいどんな酒を集めてたんですか、学園長?
特にタカミチは尋問のため、次から次へと飲まされてグロッキーです。
こんな有様ではおせちを食べることが出来そうにないので、台所を借りて適当に朝食を作ってアルさんと食べました。それとエヴァさん達用に雑炊も作っておいたので、起きたら勝手に食べてくれるでしょう。
アルさんもかなり飲んでいたんですがケロッとしていました。やはり普通の人間ではないみたいです。
ちなみにアルさんは朝食を食べ終わるとカメラを持ってニヤリと笑い、エヴァさんが二日酔いで苦しんでいる部屋に消えていきました。
おそらくうんうん唸っている寝顔を撮られて、またからかう材料が増えることになるでしょう。
そして自分は朝早くから龍宮神社へと参拝です。遅くなったら混むでしょうからね。
「皆さんまだ寝てますよ。今朝までずっと飲んでたみたいです。多分昼過ぎてからでないと起きないですね。僕は途中で寝ましたから大丈夫でしたけど。
特にタカミチは随分とガトウさんに飲まされていたみたいです。
僕は朝早くに目を覚ましたので、散歩がてら参拝です。皆さんがここでアルバイトしてるって聞きましたので…………」
アルさんが写真を撮るのを止めなかったアリバイ作りじゃナイデスヨ。
「そうなの? まったく、いい年して何してるんだか。帰ったらキツク言っておかないと。
まあいいわ、あなた日本初めてなんでしょう。参拝の仕方とかわかるのかしら?」
そう言って、溜息ついたのはアスナさん。下ろしたオレンジの髪が巫女服の白に映えて似合ってます。
原作の元気一杯な性格も良いですが、このクールな性格も良いですね。しかも微かに笑っているのが非常に、非常に良いです。
表情だけで「もう、しょうがないなぁ。お父さんは」と考えてるのがわかります。呆れるだけじゃない、隠しきれない親娘愛を感じますね。
明石祐奈さんみたくベッタリじゃないみたいですけど、お父さん大好き人間みたいです。
「そういえばそうだな。
神楽坂はこれから休憩だろう。案内してあげたらどうだ?
この時間帯ならまだ参拝客も少ないだろうから、少しぐらい休憩を伸ばしても構わないよ」
原作でも巫女服を着ていたアルカナさんは着慣れているようで、ビシッときまってます。まるで本当の巫女さんのようです。
あ、いえ……本当に巫女さんです。
巫女さんですから、その袂に入れた手を出してください。撃鉄が鳴る音なんか聞いてませんから。
エキゾチックな美しさが、合わないと思われそうな巫女服に逆に合っています。体型が目立たない和服のはずなのに、中学生と思えないグラマラスなボディを隠しきれていません。やっぱりこの人年齢詐ゲフンゲフン!
…………あれですね。やはり日本人女性とは発育速度が違うようですね。
「久しぶりやなー、ネギ君。また今度一緒に遊びにいこな。
残念やけどさっき休憩終わったばかりやから、今は案内出来ひんわ」
THE・正統派巫女さんの木乃香さん。やはり大和撫子はいいですね。
和服を普段から着慣れているせいか、歩き方が他のアルバイト巫女さんとは違います。“しずしず”という擬音が似合う歩き方です。
巫女服の紅白と絹のような長い黒髪のコントラストがいいです。
というか関西呪術協会の長の娘が巫女やってる神社って凄くご利益ありそうです。よし、後で御神籤引きましょう。
「そういえばウェールズに一時帰郷なさるらしいですね。
事情を聞きました。おめでとうございます、ネギ先生」
いつものサイドポニーテールじゃなく、髪を下ろしている刹那さん。何だか髪を下ろしていると幼く見えます。
アルビノなので肌も髪も雪のように白く、目がルビーのように赤いのですが、それがまた巫女服の白と赤に合っています。
原作でのキリッとした表情も良いですが、この柔らかい表情も素敵です。原作では木乃香さんぐらいにしか見せないような笑顔を振りまいてくれます。
この人も和服は剣道着などで着慣れているためか、本職の巫女さんのように見えます。
烏族の女の子の巫女服に似た服は背中が開いているんでしたっけ? そっちも機会があるのなら是非とも見てみたいものです。
でもアルバイトのときぐらいはその仕込み日傘は置いておきましょうよ。お願いですから。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「はい、甘酒です。どうぞアスナさん」
「悪いわね。頂くわ」
「いえいえ、案内してくれるんですからこれぐらい。エヴァさんと学園長からお年玉も頂いたことですし。
まあ、9歳とはいえ今年から社会人になるので、お年玉貰うのも変な話ですが」
「ウフフ、貰える間は貰っておきなさい。
大人になったら貰いたくても貰えなくなるのだから」
はい。勿論貰えるものはありがたく貰っておきます。
グロッキーな状態でもお年玉をくれるためだけに起きてきたエヴァさんと学園長には感服します。
…………タカミチとガトウさん? 誰でしたっけ、その人達?
朝っぱらから二日酔いのせいで吐きまくっていたまるでダメなオッサン共なんか知りませんよ。
「そういえば、遅くなったけどおめでとう。故郷の人達を元に戻せるんですってね」
「ええ、ありがとうございます。
来週にもウェールズに戻って、村の皆を元に戻すことになりました」
「9歳の身空で大したものだわ。若いって凄いわよねぇ。
うちのクラスにも凄いのがいるけど、あなたもその一人なのかしらね」
いや、あなたも若いでしょう? って言おうと思いましたけど、そういえばこのアスナさん記憶があるんでした。
“黄昏の姫御子”として成長を阻害されていたためか、実年齢と見た目があってないんですよね。
20年前の大戦時には既に子供の姿で、“自分と同じで実際の年齢と見た目が違うかもしれない”というようなことをアルさんが言ってましたし…………。
むむ! となると、エヴァさんと同じロリババアというわけですね、わかります。
「…………何か不愉快なこと考えなかったかしら?」
「え!? いえいえいえいえいえ! クラスの凄い人って誰かな? と思っただけですよ。
今年……じゃなくて去年のウルティマホラチャンピオンの古菲さんとか、茶々丸さんを作った葉加瀬さんとか色々いるみたいですし」
「ああ、そうね。確かにたくさん凄いのがいるわねぇ。
というか、あなたが世話になっているエヴァンジェリンがその筆頭じゃないかしら?」
…………そういえばそうでした。
普段のエヴァさん見てると全然そう思えないんですよね。原作知っていると尚更です。
「んー。でも家でのエヴァさん見てると全然そう思えないのが困るんですよね」
「フフフ、そうかもしれないわね。あなたに“お母さん”と呼ばれるために四苦八苦している姿を見ていると、確かに凄い人と思うのは無理だわ。
でも、ウェールズから帰ってきたら魔法使いとして弟子になるんでしょう。そうなったらそんなこと言えないわよ。エヴァンジェリンは魔法に関しては厳しいからね」
頑張りなさい、と頭を撫でられました。ナデナデ、と。
………………ポッ。
…………ハッ!? いけないいけない。危うく惚れるところでした。
くそっ! アスナさんがナデポのスキルを持っているなんて、さすがは“黄昏の姫御子”ですね。
まあ、冗談はともかく…………いいなぁ。こんな風に撫でられるのって。
ネカネ姉さんは抱きしめながら撫でてくるし、エヴァさんは何だか目が血走ってるんですよね。
タカミチ? 男に撫でられて喜ぶ趣味はないですよ。
こんな風に穏やかに撫でてくれるのって、アーニャのお母さんぐらいでした。
それにしても、魔法使いとしての弟子になるのもエヴァさん言いふらしているみたいですねぇ。
帰ったらエヴァさんと少しお話しないといけないようです、フフフフフ。
「? どうしたの? いきなり笑っちゃって」
「え、いや、ありがとうございます。教師だけでなく魔法の修行も頑張ります
こんな風に撫でられるのって久しぶりで。何だかアスナさんは“お姉さん”みたいだなぁ、って思いまして」
「…………そう。そう思ってくれるの。
でも、教師になる人がそんなこと言っていいのかしら。それにエヴァンジェリンが聞いたら怒るわよ」
確かにそうですね。
「アスナのことは“お姉さん”と思うのに、何で私のことは“お母さん”って思ってくれないんだーーー!!!」
とか騒ぎそうです。
でも、それより何かを思い出してるようなアスナさんが気になります。ナギやアリカ姫のことを思い出しているのでしょうか?
「ハハハ、そうですね。このことは秘密にしてください」
「わかってるわよ。あなたもエヴァンジェリンの前でそんなこと言わないでね。あの子が暴れると大変なんだから。
…………もう少し撫でてあげるから」
アスナさんに引き寄せられ、そのまま頭を撫でてもらいました。頭がちょうど胸に当たる位置なのが役得です。
ネカネ姉さんやエヴァさんみたいな感じじゃなく、軽く触られるような感じが気持ちいいです。何だか“慈しむ”という言葉が浮かんできました。
眠くなってきたなぁ。1時に寝て、6時前に起きましたからね。9歳の子供の体にはキツイです。
…………原作と違ってガトウさん達は生きてるのに、原作通りにナギやアリカ姫はいませんでした。
原作通りにメルディアナ魔法学院に入るまで自分は一人ぼっちでした。
アーニャやアーニャの両親、スタン爺さんもいましたけど、アーニャに甘えるわけにはいかないし、アーニャの両親やスタン爺さんはやはりどこか自分に遠慮していたようでした。
まあ、アーニャの両親をとるわけにもいかないし、スタン爺さんはツンデレでしたからしょうがないですけど。
この世界が並行世界ということを知った後、キャラ崩壊していたことに気づいたネカネ姉さんにも甘えることが出来ませんでした。
もちろんネカネ姉さんは自分のことを弟として愛してくれているということはわかります。
それでも何だか戻れなくなりそうで怖くて、甘えることが出来ませんでした。
それからは何が起こるかわからないこの並行世界に対処するために、勉強と修行の毎日でした。
男に甘える趣味は無いのでタカミチには甘えませんでしたし、エヴァさんに甘えたら負けかな、と思ったので甘えませんでした。
前世の最後が大人だったから甘えるのが恥ずかしいし、甘えなくても大人なんだから自分は大丈夫と思っていました。
でも、子供の体に引きずられて、大人のときに食べられたものが食べられなくなったみたいに、甘えなくても大丈夫だったのが本当は甘えたい、と心の底で僕は思っていたのかもしれません。
いや、思っていたのでしょう。
僕は今、アスナさんに甘えていたいです。
「アスナさん」
「なに?」
「もうちょっと、撫でてもらっていいですか?」
「……ええ、いいわよ」
ナデナデ、と頭が撫でられます。
…………眠い。参拝とかはまだだけど、このまま眠っちゃってもいいかなぁ?