━━━━━ 神楽坂明日菜 ━━━━━
「ようこそ! ネギ先生ーーーっ!」
ようやく歓迎会の始まりね。あの後、図書館島まで本屋ちゃんの本を運ぶの手伝ったら遅くなっちゃったわ。
それにしてもネギ先生も大変ねぇ。あっという間に皆に囲まれちゃったわ。
さて、お腹もすいたし。私は超包子特製肉まんでも食べてましょうか。
「あの……ネギせんせい……」
「あ、宮崎さん」
「あの……さっきはその…………危ない所を助けていただいて……その……あの………………これはお礼です。図書券…………」
…………へえ? 本屋ちゃんが男性に積極的に話しかけるところなんて初めて見たわね。
でもいくら助けられたからって、10歳の男の子に頬染めるなんて…………もしかしてもしかするのかしら?
「センセ。私からもコレを…………記念です」
って、何やってんのよあのバカいんちょーーー!!!
銅像をプレゼントするなんてバカじゃないの!?
「やあ、ネギ君。教師生活初日、おつかれさまだったね」
「あ、タカミチにしずな先生まで」
た、高畑先生!?
やっぱりあの子、高畑先生のコト名前で呼んでるのね。
名前で呼ぶってことは、やっぱり昔からの知り合いで親しいのかしら!?
「え、えーと、ネギ先生? 高畑先生のコト名前で呼んでるけど、知り合いなの?」
「あ、神楽坂さん、先ほどはお疲れ様です。
ええ、タカミチとは6年前から、僕が3歳のときからの知り合いです」
「ウン、ネギ君のお父さんは僕の先輩でね。それがキッカケでネギ君と友達になったんだよ」
ろ、6年前からの知り合い!? しかも親が友人同士!?
「タカミチがウェールズに来たときは一緒にキャンプとかしたんですよ。
日本のこともタカミチから聞いてて、前から興味を持ってました」
「そうだね。ウェールズの夜空は、麻帆良の夜空とまた違う感じがしてね。2人で夜空を見上げながら、夜通し話し込んだりしたもんだよ。
おかげで翌朝つらくなっちゃって、ネギ君のお姉さんに「子供に徹夜させるな」って怒られたこともあったよ、ハハハ」
「僕にとってタカミチは“お兄さん”って感じですね。一人っ子でしたし。
もっとも年からいくと“お兄さん”じゃなくて“おじさん”って感じですけど」
「おいおい。酷いな、ネギ君。僕はまだまだ若いさ」
アハハ、と朗らかに笑いあう2人。
夜通し話し込む仲! それなら、私の知らない高畑先生のコトも知ってそうね!
ウフフフフ、今夜は(尋問的な意味で)寝かせないわよ、ネギ先生!!!
「ちょっと、アスナさん!? どーゆーことですか!?
ネギ先生と相部屋だなんて!?」
…………うげっ、いんちょにロックオンされた。せっかく良い気分だったのに…………。
だいたい知らないわよ~、そんなこと。私じゃなくて学園長先生に言ってよね。
━━━━━ ネギ・スプリングフィールド ━━━━━
歓迎会終了後、今日からお世話になる明日菜さんと木乃香さんの部屋に移動しました。
前世ではあまり寮には行きませんでしたけど、エヴァさんの家とはまた違った感じですよね。
というか一部屋辺り2~3人のための寮にしては広すぎじゃないですかね? 一部屋毎にキッチンとか完備しているなんて…………。
まあ、そこに住まわせてもらうんだから文句はないですけどね。
…………で、早速明日菜さんにタカミチのことを問い詰められているんですが………………明日菜さんって本当にタカミチのこと好きなんだなぁ。
「実は神楽坂さんのコト、以前にタカミチから聞いたことがあるんですよ」
「え!? た、高畑先生は私のこと何て言ってたの!?
キリキリ吐きなさい、ネギ!」
「“妹みたいな子”って言ってました!」
「グハッ! …………い、妹みたいな子」
あ、死んだ。
明日菜さんは元気良いですねぇ、何か良いことでもあったんでしょうか? タカミチについて話してたら、いつの間にか“ネギ先生”から“ネギ”に敬称がランクダウンしてたし。
まあ、親愛度でいったらランクアップですかね?
「アスナのことは放っておいてえーよ。どーせいつものことやし」
「恋する乙女は大変ですねぇ」
「ちょっ!? 何言ってんのよネギ! 何でわかったのよ!?」
「神楽坂さん見てたらタカミチ以外の人は誰だってわかると思います」
「まあなぁ、高畑先生はアスナがずっと見てるコト気づいてる様子は全然あらへんな。
高畑先生ちょっと鈍感すぎるんやないかな?」
「あ、やっぱり近衛さんから見てもそうなんですか?
でも神楽坂さんには悪いですけど鈍感というより、神楽坂さんをそういう対象で見ていないんでしょうね」
「“近衛”って名字じゃなくて“木乃香”って名前で呼んで~な、ネギ君」
「わかりました、木乃香さん」
「…………アンタら、他人事だと思って好き勝手言ってくれるわねぇ。
というか、そういう対象で見ていないってどーゆーことよっ!?」
いや、でもねぇ。
タカミチと話してる限り、ホントに脈ないんですよね。
「う~ん、タカミチは最初の印象引き摺るというか、あまりその人の印象を変えないトコロがあるんですよ。
神楽坂さんは小学校の頃からタカミチと付き合いがあるんですよね? だからタカミチにはいつまで経っても小さいときの神楽坂さんの印象があるんだと思います」
「だったらどうすりゃいいのよーーー!?」
諦めたら? 諦めて恋終了しちゃいなYO!
どうせ無理なんだから。
「いや、家族の話で神楽坂さんの話に及んだんですけどね。
神楽坂さんのこと語るタカミチは父性愛みたいなものに溢れていましたよ」
「あ、“愛”!? ……エヘヘ、そんな高畑先生ったら。
って“愛”ということは喜ぶべきだけど、父親としての愛だったら私の気持ちはどうすればいいのよ!?」
「…………あ、そうだ。思い出しました。
神楽坂さんの話をしているときに、僕がタカミチに「学校の長期休みにでも、神楽坂さんを一緒にウェールズに連れて来ればいいのに」って言ったんですよ」
「高畑先生と一緒にウェールズ旅行!?
ナイスよ、ネギ! よくそんな提案してくれたわね!」
「でもアスナは外国なんか行ったことあらへんやん?」
「ええ、タカミチが言うには「アルバイトと補習があるから無理だね」ってことでした」
「グハァッッッ!!!」
「アルバイトはともかく、補習はアスナの自業自得やん」
「タカミチは後見人としていろいろな経験を積んで欲しかったみたいですけど、学費を自分で少しでも稼ぐという神楽坂さんの意思を尊重しているみたいですよ」
タカミチは誇らしげに明日菜さんのことを語っていました。
恋人ではなく、一生懸命頑張っている娘や妹を語るような感じでしたけどね。
「…………私のバカぁ………………もういいわ、もう寝る。明日もバイトあるし。
いろいろ話してくれてありがとね、ネギ。
それとネギ。私のことも名字じゃなくて名前で呼んでもいいわよ。一緒に暮らすんだから名字で呼ばれるのはわずらわしいわ」
「あ、はい。おやすみなさい、明日菜さん」
「そうやねー。もう遅いし、ネギ君も明日から授業があるんやからもう寝よか」
「そうですね。じゃ、ちょっと柔軟体操したら寝ます」
…………ふむ、そういえば体が鈍らないうちに修行場所見つけないといけませんね。
前の世界だったらエヴァさんの家の周りで修行できましたけど、女子寮に住むとなると難しいです。
とりあえずしばらくは派手な修行は中止して、体操や筋力トレーニングみたいな一般人に見せても大丈夫なもので済ませるしかないですね。
「おお~、ネギ君体柔らかいんやなぁ。
ぺったり地面にお腹くっついとるやん」
「ホントね。何? 体操でもやってるの?」
「いえ、昔からの習慣ですよ。体が硬かったら、運動するのに差し支えますからね」
「…………ハンティングといい本屋ちゃん助けたときの投げ槍といい…………ネギって多芸なのね」
「アハハ。僕が住んでいたところは娯楽施設とかなかったですし、子供も少なかったですからね。必然的に山で遊ぶのが多かったんですよ。
…………あ、そうだ、明日菜さん。明日の授業前にお時間いただけますか?
宮崎さんが落ちた階段の危険性を学園長に訴えますので、目撃者として証言お願いします」
「あー、その話のどかから聞いたえ。確かにあそこの階段って手摺とかなんもないからなー」
「別にいいわよ。またあんなこと起きたら困るからね」
「お願いします。ちなみにタカミチに事情を話したんですけど、タカミチも同行してくれるそうです」
「!? 私に任せなさい! シッカリ学園長に危険性を訴えるわ!」
…………扱いやすいなぁ。
まあ、こういう真っ直ぐな明日菜さんも逆に新鮮ですね。
前の世界だったらクールなアスナさんでしたから。
「…………なぁ、ネギ君。ちょっと背中押してみてもええかな」
「え? 別に構いませんけど」
「お? おおおぉぉ~~~。凄いなぁ。ウチはそんなに体柔らないからうらやましいわぁ」
「毎日やってればこんな風にできますよ。継続は力なりです。
ただし、柔軟体操するときは強く押したり引っ張ったりして関節に負担掛けちゃ駄目です。アレって要するに関節技かけてるのと一緒ですから、関節壊しちゃいます」
「へ~、そうなんや」
「え? そうだったの? なんかその方が良く伸びるような感じしてたんだけど」
いや、本当にそうなんですよ。
やりすぎると間接が逆に硬くなるそうです。
「……ネギ君。背中あったかいなぁ」
「は? …………ああ、僕は基礎体温が高いみたいなんです。
だから寒い日なんかは従姉のお姉さんに、湯たんぽ代わりの抱き枕にされることが多かったですね」
あと、たまにアーニャとも。
「さ、寒いから今日は一緒に寝るわよっ!!!
変なコトしたら怒るからねっ!!!」
とか赤い顔して言われました。ごっちゃんです。
「あ、ええなぁ、それ。確かにあったかそうや」
「イギリスは緯度でいうと北海道より北にありますからね。樺太ぐらいです。だから寒いんですよ。
麻帆良に来て日本はあったかいと思いましたね」
「へ~、そうなんだ。………………ところで“いど”ってなんだっけ?」
「「……………………」」
「な、なによ!? そんな驚いた顔しないでよ!」
ごめんなさい。バカレッド舐めてました。期末テストは思いっきり苦労しそうです。
ああ、アスナさんが懐かしい…………。
「……えいやっ!」
「グエッ!」
ギュム。と木乃香さんに圧し掛かられました。
木乃香さんってたまに衝動的に変なコトしますね。
「あ~、ホントや。ネギ君あったか~い」
「何やってんのよ、木乃香」
「……あの、さすがに苦しいんですけど。いくらなんでも体操中はやめてください」
「え? 体操中やなかったらえーの?」
「え?」
「え?」
何を言っているんですか、木乃香さん?
「それじゃ、ネギ君一緒に寝よっか。ソファーで寝るなんてやっぱアカンわ」
「木乃香、湯たんぽ代わりが欲しいだけじゃ…………イヤ、いいわ。好きにしなさいな」
「あの、僕一応先生なんですが」
「女子寮の女子生徒の部屋に泊まるんやから、今更そんなこと言うても無意味やで。
いや~、ウチずっと弟とか欲しかったんやよ。ネギ君来てくれて嬉しいわぁ」
返す言葉もございません。
というか、胸当たってます。
これで木乃香さんから「当ててんやよ」とか言われたら首吊りますけどね。
「…………明日菜さんから一言」
「諦めなさい。どうせ2、3日で木乃香も飽きるわよ」
「じゃ、布団に入ろうえ…………って、ネギ君結構重いんやねぇ。体もガッシリしてるし」
「え? ええ。身長が140cmで体重が39kgです。ちなみに体脂肪率は一ケタです。
というか、引き摺らないでください、木乃香さん。わかりましたから。自分で歩きますから」
こ、之は何事ぞ!?
フラグですか? いつの間にか木乃香さんフラグ立ててたんですか?
…………いや、違いますね。木乃香さんの目はそんな恋する乙女の目じゃありません。
どちらかというと、“ペットの犬と一緒の布団で寝ようとする女の子”って感じです。
あるェ~? 原作のネギより子供っぽくないはずなのに木乃香さんのこの反応はなんなんでしょうか?
━━━━━ 後書き ━━━━━
原作のネギより子供っぽくないネギ。ただし大人っぽいというわけではなく、むしろ愛玩動物っぽくなってます。
そりゃ合計20年もコ○ン君みたいなエセ少年生活送っていたら、保護欲かきたてられそうな雰囲気が素で染み付いてしまいます。
ちなみに寿命を100歳としたら、10歳という年齢は体感時間で人生の50%以上を占めているそうです。
つまり10歳までを2回繰り返せば、体感時間的に100歳越しちゃってるんですよね。
魔法使いってレベルじゃねーぞっ!!!