━━━━━ エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル ━━━━━
「さて、ぼーや。
なんであんなこと聞いてきたのか答えてもらおうか?」
「いつの間にか“ネギ先生”から“ぼーや”に呼び方が変わっていますね」
そんなことはどうでもいいっ!
ええい、タカミチが言ってた“素でやる”というのはこの事か!?
「えーと、まず間違いないと思いますが、一応確認しておきます。
マグダウェルさんは僕の父に倒されたといわれている、“闇の福音”のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさんですよね?」
…………随分とアッサリと聞いてくるな。
魔法使いとして育ったのなら“闇の福音”の噂ぐらい聞いたことがあるだろうに、恐れもせず震えもせず。
馬鹿なのか大物なのか…………。
「…………そうだ。私が“闇の福音”と呼ばれたエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。
しかし、ぼーやこそよくわかったな。今の私は封印されていて、一般人と変わりはないはずだぞ?」
「え? 隠す気あったんですか?」
名前も変えていないのに? と本気で不思議がる顔をするぼーや。
…………カワイらしい顔なのに、ムカつくのは何故だろう?
「そ、それでネギ君はどうしてエヴァがお母さんだなんて思ったんだい?」
「んー…………というより候補が数人しかいなくて、そのうちの一人がエヴァさんだったんですよ。
理由としましては……」
ぼーやの理由とはこうだ。
①ぼーやの母は表に出ることの出来ない人物ではないか?
②今まで聞いたナギの性格からして、ナギはそんなこと気にしなさそう?
③ぼーやが生まれる前にナギと関わりがあった女性で、表に出ることの出来ない人物は?
④ナギに倒されたという私がまだ生きている事実は?
①は確かにそうだろうな。ナギは良くも悪くも有名人だ。
そのナギが結婚したとなると騒ぎになって、その相手も有名になるはず。
しかし、まほネットにもそんな情報は無く、それどころか自分の情報すらあまり無かったという。
まるで隠されているかのように。
それと世話になっている村人や祖父に母親のことを聞いても一切教えてくれなかったらしい。
そのことから考えると、確かにぼーやの母は表に出ることの出来ないのだろう。
②も当たっている。
というか、ナギがそんなこと気にするような繊細な性格をしているわけがない。
じゃあ、なんで私には靡かなかった?
…………くそぅ、どうせその頃には相手がいたんだろうな。
③と④もわかる。
私とナギが出会ったのは15年前だし、私は表に出ることが出来ない。
それに私が生きているというのも事実なのだから。
「そんなわけで、もしかしたらマグダウェルさんは父と恋仲だったんじゃないかな? と思ったんですよ。
まあ、恋仲とまではいかなくても、少なくともマグダウェルさんが封印された“だけ”ということはそこまで悪い関係ではなかったと思うんですよね」
ほ、ほほう…………私とナギが恋仲か。
別にぼーやはそのことに嫌悪感は抱いておらんようだな。
…………マ、マズイ。紅茶のカップを持つ手が震えている。
落ち着け。落ち着くんだ私の右腕。
「それに悪い関係だったら封印せずに、ブン殴って消滅させていたと思いますし」
「……ああ、ナギならそうするかもしれないね」
…………ナギなら確かにそうだろうなぁ。
思えば、よく1ヶ月も付き纏えたもんだ。
「で、もし父とマグダウェルさんの間に子供でも生まれていたとしたら、きっと世間から隠されると思うんですよ。僕みたいに。
そしてその母のことは子供にも明かすことは出来ないでしょう。マグダウェルさんには失礼ですけど、“英雄”と“闇の福音”の子供なんて、他の大人にとっては危険な不確定要素ですから。
その子供は最悪、殺されることだって有り得ます」
…………確かにそうだろうな。
もし、ナギが私を受け入れてくれてたとしても、世間からの迫害は収まることは無いだろう。
突飛なぼーやの話ではあるが、ありえない話しではないと考えてもおかしくはない。
「ちなみにネカネ姉さんを母親候補と疑ったこともあります」
「ネ、ネカネさんは君の従姉! つまり、ナギにとって姪だろうっ!?」
「だからですよ。“英雄”が姪を孕ませたとなったら絶対に公には出来ないでしょう。
それに、ネカネ姉さんって僕に激甘というか、ベッタリじゃないですか」
「た、確かにネカネさんは君に甘いが…………」
「大丈夫ですよ。“こともあります”と言ったじゃないですか。
そもそもネカネ姉さんは処女ですよ。材料に処女の血が必要な魔法薬作るとき、自分の血を使ってましたから。それに僕を産むには年齢が足りないでしょうし、小さいときの馬鹿な考えですよ。
まあ、僕の父なら血が繋がっていようと犯罪者だろうと、惚れた女性ならその気持ちを貫く気がしますけどね」
「…………え、えーと」
「? どうしました、タカミチ?」
…………凄いことを考えるな、このぼーやは。10歳の考えることじゃないぞ。
しかし私とナギが恋仲で、ぼーやの母親だと……?
…………ぼ、ぼーやはなかなか悪くない考え方をするな。ウン。
「まあ、もしかしたらさっき言った事情なのではないかな、と1厘ぐらい思ってました。
やっぱり違いましたけどね」
1厘!? 0.1%!?
「何でそんなに低いんだっ!? 私がナギと恋仲だったらおかしいのかっ!?」
「お、落ち着くんだ、エヴァ!」
「え? いや、マグダウェルさんが僕の母だという可能性のほうです」
「何故だっ!?」
「僕を見るマグダウェルさんの目ですね。
父のことで何か思うことがあって見られていたのでしょうが、少なくとも母が子を見るような目ではないことは確かです」
う、視線に気づかれていたのか。
確かにナギの息子ということで、何かと見てしまっていたのは確かだが。
「…………よくわかったな。確かに私はぼーやを見ていた」
「狩りをしていると視線に敏感になるんですよね。獣は人間より可視範囲が広いですし」
「別にそんなことは聞いておらん」
…………どうしようか? このぼーやに搦め手は通じなさそうだな。
何というか……天然さで搦め手に気づかずにそのまま突っ切りそうだ。
いっそのこと、『登校地獄』のことをバラすか…………。
「…………私がぼーやを見ていたのは、15年前にナギからかけられた『登校地獄』を解呪するためにいろいろと考えていたからだ」
「父がかけた『登校地獄』、ですか?
……なんかバグってそうですね?」
「な、何でそう思うんだい?」
「え? いや、15年前にかけられたのなら、今でも中学生やってるのは変でしょう?
小学校1年生から始めたとしても、もう大学生になっているはずじゃないですか。
…………というか僕の父がかけたものなんですよね? だったらバグっててもおかしくはないかなぁ……と」
ぼーやはナギのことをどー思ってるんだ?
“ナギの仕業=バグ”の方程式が成り立つなんて。
「アンチョコ見ないと魔法唱えられない人です」
「人の心を読むな。……間違ってはいないがな。
そして『登校地獄』の方もその通りだ。私は中学生を15年間ずっと繰り返している。
ちなみに『登校地獄』のときも、確かにアンチョコ見ながら呪文を詠唱していたな」
「でしょうねぇ」
「……ネギ君はナギのことをそんな風に思っていたのか」
「いや、祖父や父の知り合いの村の人に聞くと僕の父ってそんな感じなんですよ。…………で、父と直接会ったことのない人達に聞くと“英雄”って言ってました。
そのどちらを信じるかと聞かれれば、僕は前者を信じます」
……変わったぼーやだな。しかし、少なくともただの正義バカではなさそうだ。
聞こえの良い他人の言葉ではなく、耳障りな知り合いの言葉を信じるのか。
…………本当にどうしようか?
当初の予定通りこのぼーやの血を頂くのはいいが、この感じなら協力してくれるかもしれんな。
ぼーやを襲って敵対するよりも、素直に協力を要請するべきか?
実戦経験もないぼーやと戦っても負けるとは思わん。
しかし少し接してみてわかったが、このぼーやはいろんな意味で手強そうだ。
…………私のことをどう思うか、少し探りを入れてみるか。
「それにしても落ち着いているのだな。
この“闇の福音”が怖くないのか?」
「そうですねぇ。
敵対したら怖そうですけど、敵対しなかったら怖そうじゃないですね」
「しかし、私は過去に何人もの人間を殺している。
そんな私を放っておいていいのか?」
「えー? マグダウェルさんは少なくとも500年以上は生きてますよね? そんな昔の人だったら、現代の人間と倫理観が違って当然なんじゃないですか?
今は人を殺していないのなら、別にいいと思いますよ。過去に人を食べたドラゴンがいたとしても、洞窟の中でジッとしてるなら手出ししようとは思いません」
「私をドラゴン扱いするか。間違っていそうで間違っていないな。
だが私は賞金首だった。600万ドルという高額のだ。そしてその首を狙ってきた賞金稼ぎ達を何人も返り討ちにした」
「安いですよ。たったの600万ドルじゃないですか。600万ドルったら先進国の戦車1台の半分ぐらいですよ。マグダウェルさんならダースどころかグロス単位で戦車壊せるでしょうに。
それに賞金稼ぎなら、返り討ちで殺される覚悟はしていたでしょう。友人だったのならともかく、獲物に返り討ちにされた狩人の仇討ちをしようとは思いません」
おい、タカミチ。このぼーやはいったいどんな教育を受けてきたんだ?
正義の魔法使いの考え方じゃないぞ。それこそ獲物の命を奪ってきた狩人の考え方だ。
…………ああ、そういえば故郷ではよく動物を狩っていたそうだな。
だからこんな考え方をするように育ったのか?
しかし、敵対的ではないのが逆に困った。このぼーやの考え方だったら、自発的な協力を期待するというのは難しいかもしれん。
私が“悪の魔法使い”であることを気にしないのなら、私が『登校地獄』の呪いに苛まれていることも気にしなさそうだ。
「父親の仕出かしたことの責任を取れ。ナギは3年で解くと言っていたんだ」
と迫っても、
「僕は父じゃありません」
で終わらせそうだ。
理由が有ったらどんなことでもするが、逆に理由が無かったらどんなことでもしないタイプだ。
力尽くでいくのはタカミチが隣にいるから無理だし、対価を用意してから協力してもらうべきか?
「…………あの、ネギ先生」
「何ですか、絡繰さん?」
「私を助けて頂いたのは、マスターと接触するためなのですか?」
「そんなことありません。絡繰さんを冷たい川の中へ入らせたくなかったからです」
「…………あ、ありがとうございます。しかし、先ほども言った通り、私はガイノイドですので…………」
「ストップです。ガイノイドとか人間とか関係ありません。
僕は助けようと思ったから助けただけです」
…………茶々丸には優しいのだな。
何か素直に頼めば、協力をしてくれそうな気がしてきた。
「…………ところで“ガイノイド”って“ロボット”のことですか?
絡繰さんは何処となく確かにロボットっぽいですけど?」
「わかっていなかったのかっ!?」
駄目だ、このぼーや。
早く何とかしろ、タカミチ。
「ぼ、僕がかいっ!?」
「お前はこのぼーやの担任だろうが! ああ、お前の言った通り、このぼーやは確かにナギの息子だよ!
いや、むしろナギより酷いわっ!」
「な、何てこと言うのですか、マグダウェルさん!
僕は父より酷くなんかないですよ!」
「ふ、2人と落ち着いてくれ。それにネギ君は生徒じゃなくて教師だぞ。
…………それでネギ君はどうするんだい?」
「? “どうする”とは?」
「エヴァのことだよ。
確認するけど、エヴァが“闇の福音”であっても問題にする気はないんだよね?」
「それは勿論です。マグダウェルさんは2-Aの生徒ですよ」
それは正直ありがたい。このぼーやの相手をするのは疲れる。
どうしたらこんな子供に育つんだ?
「では『登校地獄』のことは?」
「? 別にどうもしないですよ?」
「え!? ネギ君はてっきり解呪するのに協力すると思っていたのだけど……」
これしきのことで困惑するなタカミチ。
お前はこのぼーやのことがわかっておらん。
「じゃあ、私が『登校地獄』の解呪に協力してくれと頼んだら?」
「別に構いませんけど?
ああ、解呪のために生贄が必要だとか、非人道的なことだったらお断りしますが」
…………やはりな。
そうか。ぼーやはそういう人間なのか。
「君が何を言っているのか分からないよ、ネギ君」
「要するにだ、タカミチ。このぼーやは“礼には礼を”、だということだ。
ようやくこのぼーやの分からないところが分かるようになってきた。天然が混じっているから、分かり難い事この上ないがな。
頼まれ事は“頼まれたら、する”。だが“頼まれなかったら、しない”。
…………例え話になるが、2つの村があって、その2つとも盗賊の被害に悩まされているとする。“片方の村は助けを求めてきて、片方の村は泣き寝入りしている”。
タカミチのような正義の魔法使いは両方助けるが、ぼーやは助けを求めてきている方しか助けん、ということだ」
「いやいや。他にすることなかったら、ちゃんと両方助けますよ」
「だが、優先順位はつけるだろう? 少なくともぼーやなら先に助けを求めている方を助けるはずだ。
そもそも“他にすることなかったら”という言葉が出てくるだけでおかしい」
「…………まぁ。助けを求められているんならそうですね」
助けられる側にも礼儀を求めているな。
ただの甘ちゃんではないぞ、このぼーや。
「し、しかし、初日の宮崎君を助けたのは…………」
「アホ。階段から落ちるような咄嗟の事態で助けを求められるわけなかろう。宮崎のどかは歓迎会のときにぼーやへお礼をちゃんと言っていたが、もし言ってなかったとしたら…………。
そうだな。もし、同じことがあっても助けることは助けるだろうが、他に危険な目にあっているのがいたらソッチ優先して助けるだろうな。
そうだろう、ぼーや? 無礼者と礼儀者の二者択一だったら、礼儀者の方を助けるだろう?」
「それは確かにそうですね」
フン、正義の魔法使いのジレンマを平気で無視するぼーやだ。
たとえ思っていたとしても、普通の正義の魔法使いでは口に出せんぞ。
「では私は何故助けていただけたのですか?
私はネギ先生に助けを求めておらず、むしろ一度は助けていただくことをお断りしたのですが」
「それはぼーやのワガママだ。ぼーやが茶々丸を助けたかったから助けた。それだけだ。
ぼーや自身がさっき言っていただろう」
私の『登校地獄』の解呪についても同じことだ。
緊急性がなく、大事なことならば、ちゃんと礼儀を弁えて協力を願い出るべきだというわけだな。
“正義”だろうが“悪”だろうが、礼儀を持って接してくるものには礼儀を持って接し、礼儀を持たないで接してくるものには上辺だけの対応か。
そして、自分のやりたいことは、やりたいようにやる。正義の魔法使いでもないが、私とはまた違ったタイプだな。
…………アルの奴に近いのか? もう少し快楽主義者になったらそうなりそうだ。
でも、とんでもないことをするのはナギや筋肉達磨みたいだし、生真面目なところはタカミチや詠春に似ている。
“紅き翼”の集大成みたいなぼーやだな。
「なら、ぼーや。
さっきも言ったが、『登校地獄』の解呪に協力してくれ。頼む」
「さっきも言いましたけど、別に構いませんよ。
ただし、非人道的なことでの解決はしませんし、担任補佐としての仕事の方を優先しますので、そこはご了承ください」
「…………エヴァが「頼む」なんて言うなんて…………。
2人だけで分かり合えているのが不安だなぁ」
安心しろ、タカミチ。
このぼーやの根っこは正義の魔法使いと同じだ。
ただ、正義の魔法使い以上に“厳しい”だけだ。
━━━━━ 高畑・T・タカミチ ━━━━━
正義の魔法使い以上に“厳しい”だけ。
エヴァの言葉が心に残る。
確かにネギ君は“正義”とか“悪”以前に、“生きる”ということに“厳しい”のかもしれないなぁ。
それと母親についての推理も的外れというわけではない。ネギ君の頭が良いことは喜ばしいことだけど、ここまで来るとちょっと困ったな。
片手間程度で探しているみたいだけど、どうしたらいいだろうか?
「そ、それではネギ先生をエヴァンジェリンの家に置いてきたままなのですか?」
「ええ、そうですけど…………大丈夫ですよ、ガンドルフィーニ先生。仲良くなったみたいですし、エヴァはネギ君を客人として扱っていました。
むしろエヴァの方がネギ君を苦手としているかもしれませんね」
僕は学園長に事態の報告をするために先に帰った。
ネギ君は少し残って『登校地獄』について調べるようだった。
「待たせたの。皆揃っておるかな?」
「いえ、まだエヴァは来ていませんね」
魔法関係者の集まりの時刻になったが、まだエヴァは来ていない。
もしかして、『登校地獄』の解呪に熱中しているのかな?
「迎えに行ったほうがいいのではありませんか?
ネギ先生を“闇の福音”の家に置いていくなんて、高畑先生はいったい何をお考えですの!?」
「まあ、待ちなさい。グッドマン君。タカミチ君から報告を受けた後に、メルディアナ魔法学校の校長に電話したんじゃがな」
「そ、それはマズイのではないのですか、学園長!?
ネギ先生はメルディアナからの大事な預かりものですよ」
「いや、むしろ謝られてしもうたわい」
「………………は?」
…………向こうの校長もネギ君には苦労していたからなぁ。
というか、ネギ君の被害者第一号が向こうの校長だし。
「この件に関してはあちらとしても問題とする気はなく、麻帆良に一任させてもらえるそうじゃ」
「そ、それは何よりですが…………よろしいのですか?」
「よろしいも何も…………まずはネギ君と話してみないことには始まらんのぉ」
「ああ、それなら大丈夫です。今日診察して、『登校地獄』を解呪出来るかどうか調べ、出来るようだったら学園長に相談しに行くって言ってました。
出来なかったら話はそこで終わりですからね。許可を貰う前にまず解呪出来るか調べるそうです。解呪出来るにせよ出来ないにせよ、明日にでも学園長に会いに行くと思いますよ」
「フム。そうかの。何でもメルディアナ魔法学校の校長の話では、“納得は出来ないけど理解は出来る”ということをネギ君はよくするそうじゃ。“理解は出来るけど納得は出来ない”の方かの?
明日、ネギ君とよく話し合ってみるとするとしよう」
個人的には『登校地獄』は何とかしてあげたいんだけどね。
さすがに中学生をずっと続けているのは気の毒だしなぁ。
せめて、高校や大学に入ることが出来れば、少しはエヴァも学校に行くのに張り合いが持てるんだろうけど。
「ま、ネギ君の話を聞く前に、今夜のうちにエヴァと少し話してみるかの。
…………ム。話しをしていたら到着したようじゃな」
「失礼します。
申し訳ありません。遅れてしまいました」
絡繰君か。
エヴァもようやく来てくれ………………は?
「ちわ~、ネギ屋で~す。
エヴァさんお届けに上がりました~」
………………ネ、ネギ君?
「…………や、やぁ、ネギ君。こんな夜中に出歩いてどうしたんじゃね?」
「あ、学園長。ちょうどよかったです。明日少しお時間いただけますか?
それとエヴァさんお届けに上がりました」
よくよく見れば、ネギ君はエヴァをおんぶしている。…………それにいつの間にかエヴァのこと名前で呼んでるし。
僕が帰った後、何があったんだろう?
そしてそのおんぶされているエヴァはというと、
ネギ君のスーツをシッカリと強く握り締め、
ネギ君の肩に顎を乗せて幸せそうな顔で眠っており、
………………ネギ君のスーツの染みになるぐらい涎を垂らしている。
「「「「「……………………」」」」」
誰も何も言えない。
僕もこんなエヴァを見たのは初めてだった。
「…………あれ? もしかして、ここにいる皆さんって関係者の方ですか?」
「あ、ああ。その通りだ。ネギ先せ「コレッ! ガンドルフィーニ先生!」……あっ!? も、申し訳ありません!」
バラしちゃったよ、ガンドルフィーニ先生。
無理ないけど。
「……とりあえずエヴァを起こしてから、話しを聞かせてくれんかのう」
ネギ君。
今度はいったい何をしたんだ?