━━━━━ ネギ・スプリングフィールド ━━━━━
エヴァさんが気持ち良さそうに眠っていたのですが、茶々丸さんが言うにはエヴァさんは今夜、学園長との約束があったそうです。
しかし起こすのは可哀想だと思ったので、エヴァさんを世界樹前広場に送っていったら魔法関係者が何故か勢揃いしてました。
このままでは話が出来ないと思ったので、おんぶしていたエヴァさんを起こしたのですが、何故か起きたエヴァさんは顔を真っ赤にして恥ずかしがってしまいました。
なんでだろーなー?
「のわあああぁぁぁーーーっ!!!」
「ああ、マスターがあんなに元気そうに…………」
さすが吸血鬼。夜になると元気になりますね。
あんなに地面をゴロゴロと転がりまわる元気がでるなんて。
「…………そろそろ説明してくれんかの」
「ジ、ジジイ!? 違うんだ! 別に私はぼーやの背中が気持ち良くて寝てたわけじゃないんだ!
ぼーやっ! さっきのアレをコイツラに見せろ!」
「え? 嫌ですよ。アレは未完成だからあまり見せたくないって言ったじゃないですか」
「ええい、ゴチャゴチャ言うな! いいからさっさと見せ……って冷たっ!?」
痛いですよ。強く肩を掴まないでください。
それに冷たいも何もそれは、
「エヴァさんの涎じゃないですか」
スーツに涎の染みが…………スーツ2着しか持ってないんですけど。
「違うっ! 違うんだぁっ!」
「ああ、マスターがあんなに楽しそうに……」
「よかったですね。茶々丸さん」
「ウッサイ! このボケロボッ! 巻いてやる、巻いてやるぞっ!」
「マ、マスター。 そんなに強く巻かれたら…………」
ああっ! 茶々丸さんがエヴァさんの八つ当たりに!
わざと狙ってやってる僕ですけど、エヴァさんの茶々丸さんに対する処遇は酷いと思います。
「…………ネギ君。何があったか話してくれないかな?」
「簡単に言いますとエヴァさんおんぶしてたら眠っちゃっただけですよ、タカミチ」
「違うぞっ、タカミチ!
ええいっ、ぼーやはスーツを脱げっ! 茶々丸はそれをクリーニングしてこい!」
はいはい。 染みになって困るのは僕ですから素直に渡しますよ。
「それではよろしくお願いします。茶々丸さん」
「お任せください。ネギ先生。
ネギ先生もマスターのことをよろしくお願いします」
任せてください。茶々丸さん。
それにしても一日でスーツの上下が駄目になるとは…………。
いやあ、本当は茶々丸さんと仲良くなるだけのつもりだったのですけどねぇ。
エヴァさんとの本格的な関係を持つのは、原作通りの3年になってからするつもりだったんですが、タカミチが側にいれば手荒なことにはならないと踏んで勝負に出たのは間違いではなかったようです。
あの“僕のお母さんですか?”という爆弾発言で会話の主導権をとれたのが良かったですね。
あとは“父と恋仲だったのでは?”発言ですか。
あの人何だかんだいって、自分に向けられる好意に弱いですからね。
僕がエヴァさんを悪く思ってないのが分かれば、手荒なことはしてこないと見て正解でした。仲良くなれて良かったです。
「ハァハァ……」
「大丈夫ですか、エヴァさん?」
「…………ぼーやのせいだろうがぁ……」
あ、いけね。 苛めすぎた?
「もういいかの?」
「僕はいつでも構いませんよ」
「…………好きにしろ」
拗ねないで下さいよ。今度ミスドでゴールデンチョコレート買ってきてあげますから。
…………え? 吸血鬼違い?
「…………それでは始めるとしよう。ガンドルフィーニ先生がバラしてしまったので、もう言ってしまうとする。
ネギ君。ここにいるのは魔法関係者の者達なんじゃ。もちろん全員が集まっているわけではないがの。
今日の集まりは顔合わせじゃな。ネギ君のようにタイムスケジュールの関係で3学期から赴任や転校してくるものがおるので、こんな時期にも顔合わせをしておるんじゃよ」
「う、ううぅ…………。申し訳ありません」
ガンドルフィーニ先生が縮こまっています。
まあ、ほとんどの先生は呆気にとられて反応すら出来ませんでしたからねぇ。
「僕は呼ばれていなかったと思うのですが……」
「その通りじゃ。ネギ君にはまず、魔法使いの修行である“教師の仕事”に専念して欲しかったからの。
慣れるまでしばらくは内緒にしておくつもりじゃったのじゃよ」
ああ、成程ね。
そういうことですか。
「…………それでなんじゃが、多分皆が気になっておるだろうからネギ君達の説明を先にしてもらおうかの」
「顔合わせはよろしいのですか?」
「あれだけ騒ぎを起こしておいて何を言うておるんじゃ。皆気になって顔合わせどころではないぞい」
ウンウン、と皆さん頷いていますね。
確かにあんなエヴァさん見たことないんでしょうねぇ。
「あ~、ジジイ。『登校地獄』はとりあえず、修学旅行のような学外活動が出来るのが判明した。
ただし、ぼーやの協力があればの話だがな。
完全な解呪は出来るかどうかはまだわからん。もう少し時間が欲しいそうだ」
実を言うと方法は知ってるんですよね。前の世界の経験ありますから。
ただ方法は知っていても、あの固結びになってるスパゲッティコードを解くのがメンドイのは変わらないだけで…………。
「はい。とりあえず4月にある修学旅行にはエヴァさんを連れて行くことが出来ると思います。
聞けば今まで15年間の間ずっと、麻帆良から出ることが出来なかったとか…………。
いくらなんでもそれは不憫なので完全解呪の研究の前に、ある程度呪いの修正をして学外活動を出来るようにします」
「ほほお! わしも解呪を試したことがあるのじゃが、修正すら出来んかったぞい。
凄いのお、ネギ君」
おお! と周りからも歓声が。
解呪出来ることへの驚嘆7、エヴァさんの呪いを解くことへの不安3といったところですか。
ガンドルフィーニ先生は…………まだ縮こまっていますね。
「そのことについては後日、ゆっくりと時間をとって聞くとするかの。今話すには時間が足りんわい。
…………で、さっきのことは聞かんほうがええのかの? ネギ君は“未完成”と言うておったが」
「駄目だ。見せろ。アレをコイツラに見せろ。
私が勘違いされるではないか!」
「エヴァ…………あまり強制しない方が」
「あー、いや。まあ、別にいいですよ」
ちょっと苛めすぎちゃいましたし。
少しは機嫌とっておきましょう。
「いいのかい、ネギ君?」
「未完成というか、もう少し別のものにも発展させられそうな感じなだけで。
一応それ自体は完成しています」
「言っておくが本当に凄いぞ。私でも出来ん」
エヴァさん必死ですね。
「む、エヴァがそこまで言うとは…………では見せてもらおうかの」
「わかりました。えーっと…………そうですね。誰か怪我してる人はいらっしゃいますか?
直接的な治癒魔法ではないのですけど、その方がわかりやすいと思います」
「ふむ? 治癒魔法とな?
…………まあ、見てからのほうが早いかの。誰かおらんか?」
「あ、なら私が…………今日の体育の授業で手をぶつけてしまいまして。
私は聖ウルスラ女子高等学校1年の高音・D・グッドマンと申します。ネギ先生」
あ、脱げ女さんだ。
こうして見ると美人さんなんだけど、脱げちゃうのがなぁ。
「それでは患部を出しておいてください。
直接グッドマンさんに魔法をかけるわけではないので、リラックスしていてください」
さて、それではやりますか。
皆に見えるよう、ゆっくりやっていくよ!
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 汝がためにユピテル王の恩寵あれ 『治癒』! 術式固定!」
まず、左手に『治癒』を固定状態で待機させておきます。
「むおっ!? それは『闇の魔法』!?
どういうことじゃ、エヴァンジェリン!? 何故ネギ君が『闇の魔法』を使えるのじゃ!?」
「いや。私じゃないぞ。ぼーやが自分で勝手に覚えてたんだ。
それより見てろ。これからだ」
そして右手に“気”を集めて固定し、
「右手に“気”、左手に“魔法”」
最後にこの2つを合わせ、
「“気”と“魔法”の合一、『闇の咸卦法』」
「…………あれは、『咸卦法』じゃないな?」
「そうだ。タカミチの使う『咸卦法』は“気”と“魔力”を融合させて爆発的な力を得る究極技法だ。
だがぼーやは『咸卦法』と『闇の魔法』を組み合わせ、“気”と“魔法”を融合させたんだ」
「…………これが“納得は出来ないけど理解は出来る”かの? それとも“理解は出来るけど納得は出来ない”じゃろうか?
確かに気と魔力を融合させることが出来るのなら、気と魔法も融合出来ておかしくはないかもしれんが…………」
「術式兵装『咸卦治癒』!」
…………はい、完成です。名前の通り、プロテスやらシェルやらリジェネっぽいのがこれでかかります。
相手に触れれば、相手も回復します。
「お待たせしました、グッドマンさん。患部はどちらですか?」
「…………え? ハ、ハイ! 左手首です」
それではちょっとお手を拝借。
僕の手で脱……高音さんの少し腫れている左手首を優しく包み込みます。
「どうですか、グッドマンさん?」
「あ、温かいですわ、ネギ先生。痛みも引いてきました」
「ほほお…………こんなの初めて見たわい。
気と魔法の両方での同時治療か」
「ああ、気と魔力は反発するから同時には使えない筈だがな。
だがぼーやが融合させているから、反発せずに対象を回復させている。単体の治療よりも掛算的に効力がアップしているな」
「ちなみに風邪とかも治せますよ。
治すというより、自己回復力を促進させた結果で治るみたいですけど」
だから僕はこれ覚えてから風邪引いたことないんですよね。
…………あれ? なんかフラグがベキベキと音を立てて倒れた気がするのは気のせいかな?
「おい、高音・D・グッドマン。ぼーやにおんぶしてもらえ」
「!? な、何を言われるんですか、貴女は!?」
「いいからやれ」
「しかし、こんな人前でなど。それにネギ先生の小柄の体では重いでしょうに」
「あ、僕は大丈夫ですよ。『咸卦法』の身体能力向上のおかげで、女性の1人や2人は楽に背負えます」
「ぼーやは大丈夫だそうだ。…………高校生にもなって10歳相手に照れるな」
「うっ! た、確かにネギ先生は10歳ですから……。
わかりましたわ。それでは失礼いたします。ネギ先生」
「はいはい、どうぞ」
ギュム、ポニュン! 擬音をつけるとしたらこんな感じです。アーニャとは比べ物になりません。
やっぱり麻帆良の女子って発育が良い人が多いんでしょうかね?
「…………あ、これは……」
「!? お、お姉様!? どうしたんですか!?」
「どうだ、高音・D・グッドマン。ぼーやの身体は気持ちいいだろう。クックック」
「変な言い方はしないで下さい!
…………で、ですが、確かに気持ちいいといいますか安心するといいますか、小さいときに親におんぶしてもらったのを思い出しますね」
「でしょうねぇ。この『咸卦治癒』は、密着すればするほど効果が伝わりやすくなります。
『咸卦法』の利点だけではなく怪我の治療、体力回復促進、魔力回復促進、気回復促進などがあります。
それと戦闘関係だけでなく、美肌、シミ、ソバカス、肌荒れ、冷え性などにも効果があるらしいですね」
「そうか。だからエヴァはネギ君におんぶされていたのか」
「…………その通りだ。おかげで私の風邪もすっかり治った」
これのおかげで元々美人だったネカネ姉さんがますます綺麗になりました。
たまにドネットさんにもしたんですけど、あの人も20代前半に見えるぐらいに若くなりました。あの人アラフォーなのに、元々20代後半くらいには見えていましたがね。
というか、葛葉先生達女性教師陣が凄い目でコッチ見てるんですけど!? メッチャ怖いんですけど!?
高音さんの僕にしがみつく力も増したんですけど!? グエェッ!
「凄いのぉ。…………念のために聞いておくが、副作用とかはないんじゃろうな」
「こ、この出力だったら問題ありません。
ただ、出力を上げすぎると問題があります。あまり水を上げすぎると草木が枯れるように、過度に出力を上げすぎると生体組織を破壊してしまうんです」
これでダメージを与えると回復不能な傷となります。要するに『過剰回復呪文』です。
エヴァさんなら患部を切り落として根元から再生することも出来るのでしょうが、普通の人間だったら無理ですね。
それとこの術の問題点はまだあります。それは出力弱いと相手を攻撃しても相手が回復しちゃうことです。
だからいくら殴っても死なないので、ハッキリ言って拷問です。
で、出力強いと『閃華裂光拳』が常時発動してしまいます。
敵にしたらドッチにしても最悪ですよ。
いやあ、実を言うと、カモ君はこれのせいでアルちゃんになってしまったんですよ。
ネカネ姉さんの下着を盗んだおしおきにちょっとナニを握り潰してたら、うっかり出力間違って治せなくなっちゃいまして。
「あ、いけね。やっちゃった」
って思いました。アハハ。
ちなみに潰したときは「プチュギュッ!」って感じでした。
「この『闇の咸卦法』の利点は方向性を持って能力を強化させることが出来ることですね。
『咸卦法』は全体的に能力強化しますけど、見ての通り『治癒』を合成したら見ての通り回復能力に特化、『戦いの歌』を合成したら運動能力に特化出来ます」
「それにしても『闇の魔法』と『咸卦法』を組み合わせたから『闇の咸卦法』か…………。
正直、安直すぎる名前だと思うぞ?」
え? わかりやすいんだからいいじゃないですか。
━━━━━エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル ━━━━━
敵にしなくて良かった、と安心すればいいのだろうか?
それとも味方となったせいで、コッチが振り回されそうなのを心配すればいいのだろうか?
「こんなの開発してみたんですけど、どう思います?」
と、いきなり『闇の咸卦法』を見せられたときは、正直心底驚いた。
『闇の魔法』は禁呪と言われるだけあって、人の身体で扱える技法ではない。ぼーやは私の逸話を聞いて自己流で覚えたらしいが…………。
とりあえず「反動は大丈夫なのか」と聞いてみたが、返ってきた答えがまた予想外だった。
「え? 『闇の魔法』の反動?
………………何ですか、それ?」
本気で馬鹿なのか、あのぼーやは?
気づいてないのではなく、本気で扱いこなせているみたいだ。『闇の魔法』を使うには、善も悪も全てを飲み込む度量が必要なのだが、きっとあのぼーやは「細かいことはいいんですよ!」で終わらせたな。
ああ、タカミチが疲れた感じで遠い目をしていた気持ちが良く分かる。『咸卦法』をアッサリ覚えられたタカミチもこんな気持ちだったんだろうなぁ。
平気で『闇の魔法』扱っているので、ポテンシャルはナギより上かもしれんな。いくらナギでも10歳であそこまでは出来なかっただろう。
それとも『咸卦法』を併用していることで良い影響を及ぼしているのか? 今度ジックリぼーやと魔法について話してみるとするか。
そのぼーやはというと、魔法関係者に囲まれて大変そうだ。
特に女の魔法先生が凄いな。『咸卦治癒』の効能を狙ってぼーやに触りまくっている。
ぼーやが少し引いているぐらいだ。
奴らは“英雄の後継者”になれるように見えるぼーやの出現に大喜びのようだが、果たしてそう上手くいくかな? あのぼーやは一筋縄ではいかないぞ。
現にタカミチは浮かない顔をしている。これから大変だということに気づいているんだろう。
ま、私には麻帆良の教師共がどうなろうと関係ない。
『登校地獄』が解かれるまでぼーやに何かあると大変だから、少しは様子を見るが…………ム、この反応は。
「オイ、ジジイ」
「? なんじゃ、エヴァンジ「「「「「ピリリリリッーーーー!」」」」」ぬお!? 何事じゃ!?」
感じ取った反応のことをジジイに伝えようとすると同時に、ジジイたちが持っている携帯電話が一斉に鳴った。
ちゃんと監視当番の奴らも気づいたか。
「エヴァッ!?」
「ああ、侵入者だ。数は…………2か3。
まあ、数が少ないし反応も小さいからただのコソ泥だろうな」
やれやれ。たまに麻帆良にはこういう奴らが沸いて出てくる。今回の狙いも図書館島か?
東西の対立が激しい数十年前は直接西がちょっかいをかけてきたらしいが、科学文明が発達した現代ではそれも収まっている。
こんな街中で魔法を隠せるわけないからな。“魔法の秘匿”は東西変わらずの共通認識だ。今の東西の対立はそれこそ冷戦さながらの静かなる戦争だ。
そして残った侵入者は、要するに泥棒。
まあ、麻帆良はいろいろと魔法関係でも貴重なものが保管されているからしょうがないのだろうが。
あとは世界樹の魔力に引かれて集まってきた、人ならぬものたち。
同じクラスの桜咲刹那は神鳴流を修めているため、たまにその対応を依頼されるらしい。魔を払うのは神鳴流の専売特許だからな。
「…………おかしい。重要な施設には向かっていないぞ。
アッサリと見つかっているし、コッチは陽動か?」
「フム、陽動の可能性があるのなら、どんな事態にも対応出来るように戦力は残しつつ、尚且つ迅速に対応するために戦力をある程度ばらまく必要があるの」
矛盾した言い方だがその通りだな。
一箇所に固まっていたら咄嗟の対応が遅れるが、戦力を分散させたら戦力が足りなくなる可能性がある。
「それでは、タカミチ君はここにわしと残ってくれ。もしものときの予備戦力とする。
そうじゃな……、ガンドルフィーニ先生! 君の班が侵入者の確保に当たっとくれ。
残りの者はそれぞれの担当場所で待機。周辺を監視しつつ、いつでも動けるようにの」
「私も行こう。
今日は良い気分なんだ。たまには自発的に協力してやるよ」
フフフ、『登校地獄』が解けると分かったら気が楽になった。
それにぼーやにはみっともない姿を見せてしまったからな。少し見返してやろうではないか!
「では行くぞ。ついてこい、ガンドルフィーニ。
ハァッ! って…………へぶっ!?」
「!? エヴァさん、どうしたんですかっ!?」
くぉっ! 飛ぼうと思っても飛べなかった。顔面を思いっきり地面に打ち付けてしまった。
…………しまった。今夜は三日月にも満たない月齢だ。力が全然使えん。
茶々丸は…………ぼーやのスーツを洗濯に行かせてるんだった。
「…………だ、大丈夫か? エヴァンジェリン?」
見るな。私をそんな憐れんだ目で見るんじゃない!
ガンドルフィーニ。お前は私を凶悪犯だと思っているはずだろう! 高音・D・グッドマンも佐倉愛衣も信じられないようなものを見る目で私を見るな!
「エヴァさん、今治しますよ」
ぼーやの『咸卦治癒』で痛みが引いていく。
直接顔を触られるのが少しくすぐったいが、今はそんなこと気にしておれん。
「くそぉっ!茶々丸がいれば…………」
「あー…………僕がエヴァさんを連れて行きますよ。
僕のスーツを洗濯するために茶々丸さんはここにいないのですから、茶々丸さんの代わりぐらいは務めます。茶々丸さんにはエヴァさんのことをよろしくお願いされましたからね」
「お、おい。ネギ先生。いくらなんでも危険だ」
「大丈夫です。ラス・テル・マ・スキル・マギステル 『リゼル』!」
ム!? ぼーやが魔法を唱えると、ぼーやの身体が紺青色の装甲に覆われ、茶々丸よりも更にロボットっぽい姿に変身した。
『闇の咸卦法』だけでなく、こんなオリジナル魔法を使えるのか!?
「日本に来ることになってから急遽開発したオリジナル魔法です。
認識阻害の魔法もかかっていますし、最悪これなら一般人に見られた場合でも魔法とは思われません!」
確かにこの姿見て“魔法使い”を思いつくのはおらんだろうな。…………でも、何か根本的に間違ってないか?
更にガションガション! とぼーやの身体が折りたたみ、今度は飛行機のような形に変形した。
人1人位なら背中に乗れそうだ。実際背中に手で掴めるグリップがあるし。
「乗ってください。目的地までエスコートします」
「フン、いいだろう。ぼーやなら問題あるまい。さあ、私を戦場まで連れて行け!」
「待ちたまえ、ネギ先生! 何で、こんなのを…………?」
「日本といったらロボットアニメでしょう!」
「そういう意味じゃないっ!」
…………ガンドルフィーニも大変だな。私もこのぼーやには苦労したからよくわかる。
しかし、明らかにこのぼーやはお前達より強いぞ。
「よし、アッチの方向だ」
「はい。しっかり掴まっていてくださいよ。
ネギ・スプリングフィールド、『リゼル』、行きまーす!」
ギュオン! あっという間に加速して、世界樹前広場から抜け出る。
ちゃんと認識阻害もかかっているし、障壁があるためか風圧がこない。相変わらず、よくわからんぼーやだ。
さて、それではこのぼーやに“闇の福音”の力を見せてやろう。
━━━━━ 後書き ━━━━━
オリジナル技法出来ました。『闇の咸卦法』です。そのまんまですね。
作中の説明通り、『咸卦法』が“気”と“魔力”の合成なら、『闇の咸卦法』は“気”と“魔法”の合成です。
今までどこかで使われていそうな設定ですけど、多分使われていないと思います。少なくとも“闇の咸卦法”でググっても出てきませんでした。
もし、被っているところがありましたら教えてください。
ちなみに、第一章の“その後の話・小ネタ”の【“闇の魔法”?】付近や【『咸卦法』と『闇の魔法』の同時発動は出来るようになりました】等が何気に伏線でした。
出すことを予想してた人はいましたでしょうか?
それと、西の術者が麻帆良に攻めてくるような設定はこの作品ではありません。
というか、そんな事実があったらネギを西にやったりしないでしょう。
そもそもあんな広大な麻帆良を数百人程度では守りきれない上、“昼のうちに麻帆良に一般人として入り込めばいいじゃん”とかいろいろ卑怯な事が思い浮かんできたので、東西の関係は冷戦と相なりました。
もしかして私は腹黒いのでしょうか?
ちなみに、せっちゃんも警備員としては働かずに、このちゃん護衛優先です。
原作において、学園祭前のネギと魔法関係者との顔合わせの際に魔法先生がたくさん居たことを「私も知りませんでした」という発言を刹那がしているので、あまり魔法関係者との接点は無いのでは?
龍宮隊長とは仕事を何度かする仲ということらしいので、学園長からの依頼があれば神鳴流を振るう傭兵のような感じでしょうか? ただし、無報酬。
モビルスーツ紹介(Wikiから抜粋+個人的感想)
『リゼル』
正式名称 “Re”fine “Z”eta Gundam “E”scort “L”eader
頭文字の略称からReZELと通称される。
バックウェポンシステムによる準変形機構ではなく、メタスのような変形機構を持ち、その名が示すようにバックパックにジェガンを牽引できるグリップが設けられており、サブフライトシステムとしても運用できる。
メガ・ビーム・ランチャーとスピードを抜けば「変形しなければただのジェガン、変形してもただのメタス」でしかないらしいが、作者としては好みのモビルスーツ。
造形的にデルタプラスよりも好みです。量産機って燃えですよね。
しかし、最近リゼルのマスターグレードのプラモデルを買ったのですが、変形が思ったより厄介なことに遅まきながら気づいてしまいました。
ガンダムWのコミックの巻末にあった4コマの、ゼロシステムではなくモビルトレースシステムを積んだガンダムエピオンに乗ったヒイロのよう(90°ではなく180°背中を曲げたシャチホコみたい)になってしまいます。やっべぇ。
…………。
……………………。
………………………………ネギが柔軟体操をしているのは、そのためだったんだよっ!!!