━━━━━ 近衛近右衛門 ━━━━━
「…………皆、どう思うね?」
今は模擬戦を小休止し、魔法先生を集めてネギ先生のことについての話し合いじゃ。
さすがはナギの息子というか……まさか封印されているとはいえエヴァンジェリンにすら勝ってしまうとはのう。
しかし、あまりにも我々とは違う戦い方をするのが困ってしまうわい。
「…………まあ、しょうがないのではないでしょうか。
ネギ君は自己流で修行したらしいですし」
…………タカミチ君や。君は以前からネギ先生と付き合いあったのじゃから、先にネギ先生の性格に気づいておいて欲しかったの。
「そうですね。結果的に模擬戦の相手は誰も怪我をしていません。言い方は悪いですが、ネギ先生は“目的のためには手段を選ばない”タイプのようです。
しかしその“手段”は我々とは随分と違いますが、“目的”は我々と同じだと思います」
「その“手段”もおそらく、ネギ先生は卑怯などとは意識していないでしょう。ネギ先生が修行の参考にしたという警察や軍隊での常識なら、別に非難される戦い方ではありません。
それに“目的”の方だって、むしろ我々より優しいのではないですか? 敵味方両方を怪我させずに模擬戦を終わらせたのですから」
「ウチの娘がネギ先生のことを“素直な子”と言ってたのがわかる気がしますね。
良い意味でも悪い意味でも純真なんだと思います」
ふうむ、特にネギ先生を非難する意見はないようじゃな。
アチラで佐倉君をおんぶしているネギ先生を見ていると、性根はとても優しい子だとわかるしのう。
「ただ、ちょっとズレてますよね…………」
「悪い子なワケではなく、むしろ良い子なんでしょうけど…………」
「とっている行動も間違っているわけではないのですが…………」
「魔力探知・念話妨害煙幕ならともかく、ニンニク粉末と花粉はねぇ…………」
「でも警察では催涙弾なんかを実際に使ったりします。
それを参考にしたと言われると、否定しにくいですなぁ…………」
「ですよねぇ。まさか「警察の方が間違っているんだ」なんて言えるワケないですし…………」
「なんか違うんですよねぇ…………」
「それに使い魔のオコジョ妖精を奇襲に使うのは…………」
「いや、ネギ先生が言った通り、主人と従者がセットなら主人と使い魔もセットでしょう。
あの使い魔のことを隠していたならともかく、ネギ先生が自己紹介のときに一緒に紹介しておりましたし…………」
「確かに。エヴァンジェリンが従者と一緒に戦うのなら、自分も使い魔と一緒に戦っていいと思ってしまうのでは…………」
…………困ったのう。皆もどう言えば良いかわからんようじゃ。
才能がありすぎるというの困りものじゃの。
この場にいる全員が、ネギ先生以上の結果で模擬戦を終わらすことは無理じゃろう。
グッドマン君達ならともかく、エヴァンジェリンをお互いに無傷で取り押さえることなぞワシでも出来ん。だからネギ先生を非難できるというわけじゃないのじゃが…………。
それでもなんか違うんじゃよなぁ。
こんなことならメルディアナでちゃんと戦闘方法を教えておいて欲しかったわい。
「学園長。とりあえず話はここまでで良いのではないですか?
ネギ君の性格のことは全員これで分かりました。ネギ君が麻帆良に来てまだ4日目ですので、時間はタップリあります。今急いで結論を出さなくてもいいでしょう」
「それもそうじゃの。次は葛葉先生がネギ君の相手をするんじゃったか。
…………すまんが、神多羅木先生も一緒に相手してくれんかの?」
「魔法先生2人がかりですか!?」
「3戦目ですよ、次は。いくらなんでも無理なのでは?」
「問題なかろう。『咸卦治癒』のおかげで元気一杯のようじゃし。
今までの模擬戦はエヴァンジェリンやグッドマン君といった女性だけじゃった。じゃから、男性相手にはどう戦うか見ておきたいのじゃよ。タカミチ君の話では、ネギ先生はフェミニストらしいということじゃが?」
「そうですね。家族と呼べる人は従姉であるネカネさんぐらいで、他に親しくしていたのは幼馴染の女の子のアーニャ君だけみたいでした。
そのせいか女性には優しく接していたと思います」
「まさか“男性相手だったら手加減せずに戦う”なんてことはないじゃろうが、一応の」
「………………ネギ君ですもんねぇ」
━━━━━ ネギ・スプリングフィールド ━━━━━
葛葉先生がアップを始めたようです。
………………『咸卦治癒』はやっぱり秘密にしておいたほうが良かったかなぁ? 葛葉先生はたまに牝ライオンの目で僕のことを見てくるときあるんですよね
その他の先生方は僕の戦い方についてまだ話し合い中。
“自己流ならしょうがないよ派” VS “そうだとしても外道すぎるよ派”
の2つに別れてヒソヒソと議論中です。
「そんなに僕の戦い方って変わってるんですかね?」
「…………まあ、ネギの戦い方は“普通の魔法使いの戦い方”ではないのは確かだな」
「私はネギ先生のような戦い方をする人のデータを持っていません」
「自己流で修行して、そこまで戦えるのならいいんじゃないかな。
これから“普通の魔法使いの戦い方”も教わっていけばいいんだし。なあ、刹那?」
「え!? …………わ、私は神鳴流の剣士であって、西洋魔術師ではないのでなんとも…………ねえ?」
「…………こ、今回のコトは良い勉強とさせていただきますわ」
「………………………………」
こっち見ろや。
…………まあ、ワザとそういう戦い方してるんですけどね。
これで「ネギ君だからしょうがない」という認識が、魔法関係者に出来てくれると後で楽になります。
“普段から挙動不審だったら、怪しいことしても誰も怪しまない”って水着で白衣のお医者さんも言ってましたし。
「難しいですねぇ。魔法バレのことを考えたら、『魔法の射手』とかは見られたらアウトです。
『戦いの歌』使って肉弾戦すればいいですけど、僕みたいな子供が肉弾戦で凄すぎたら変ですから…………」
「一応いろいろと考えてはいるんだね。それでロボットみたくなったのかい?」
「茶々丸よりロボットらしいからなぁ」
「マスター。私は正確にはガイノイドです」
「ええ。モビルスーツを見て、“魔法”を思いつく人はいないでしょう。
それに盾とか背中に“麻帆良大工学部”とか書いておけば、麻帆良のノリならモビルスーツすら見られても平気な気がします」
「…………否定出来ないのが怖いですね」
「私も去年の学園祭の際に使い魔を巡回に使いましたが、仮装と思われて大丈夫でしたわ」
「モビルスーツを展開するにも、魔法と思われない動作があった方がいいですかね?
ベルトにカード挿し込んで、「変身!」と叫ぶとか」
「………………………………」
それはそれで面白そうだな。
でも、仮面ライダーはあまり知らないんですよねぇ。小太郎君と被る気がしますし。
「…………ところで、もしかして佐倉さん寝てません?」
「もしかしなくとも寝ているね」
「…………すー…………すー…………」
「め、愛衣っ! 起きなさい!」
「!? ひゃ、ひゃいっ!!!」
「…………そんなにネギ先生の背中は気持ち良いんですか?」
「何だ、興味あるのか?
だったらおんぶしてもらえ」
「え? …………いや、それはさすがに恥ずかしいです」
「エヴァンジェリンも寝てしまったらしいね。道連れが欲しいのかい?」
「…………ぐぬ」
「あ、ありがとうございました! もう平気ですぅ!」
「いえいえ、どういたしまして。
皆さんは気持ち良くなるみたいですけど、自分ではわからないんですよねぇ。『咸卦治癒』発動中は、眠らなくても平気になるぐらい身体の調子が良くなるだけなので」
そのおかげで、前世では都合の良い抱き枕にされていましたよ。
役得だったから別にいいですけどね。
「そういえばネギ先生。さっきの“MM-D”システムとはどういう意味なんだい?」
「…………“マギステル・マギ-ドライブ”システムという意味ですよ。ぶっちゃけて言えば“リミッター外し”ですね。あのシステムが発動すると肉体のことを考えずに行動できます。
『咸卦治癒』を併用して使えば大丈夫ですけど、『咸卦治癒』無しで発動したら3分が限界です」
言えない…………。
本当は“マギステル・マギ-デストロイヤー”だなんて、高音さん達の目の前ではさすがに言えません…………。
━━━━━ 桜咲刹那 ━━━━━
また模擬戦が始まる。これで三戦目だ。よくネギ先生は体力が持つものだ。
…………そんなに『咸卦治癒』とは凄いのだろうか?
そういえば心なしか佐倉さんの肌ツヤが良くなった気が…………。
しかし、次の相手は刀子さんと神多羅木先生の魔法先生のコンビだ。
刀子さんは神鳴流の剣士。ネギ先生は接近戦はどこまで戦えるのだろう?
それにいくら神鳴流の技を使えるからと言っても、映像を見ただけではそうそううまくはいかないだろうな。
茶々丸さんのときもグッドマン先輩のときもうまい具合に攻撃を避けていたが、さすがに神鳴流剣士相手では逃げ切るのは無理だと思うが…………。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 『クシャトリヤ』」
お? ネギ先生がさっきとはまた違うモビルスーツを展開した。
緑と濃緑色で、両肩からそれぞれ前後に大きな羽根が生えているようなモビルスーツだ。今までのよりも大型だな。銃を今度は持っていないが、神鳴流相手に剣で戦うのだろうか?
盾も持っていない。あの羽根が盾代わりなのかな?
「“戦闘爆撃機”…………かな?
さきほどの『シナンジュ』や『ユニコーンガンダム』よりは動きは鈍そうだが、その分火力はありそうだ」
「…………スマン、龍宮。“巡航機”と“戦闘機”と“戦闘爆撃機”って何が違うんだ?
“輸送機”は言葉通りだろうし、“特殊機”は戦いを見たからその特殊さがわかったんだが…………」
「ん? そうだな…………わかりやすくいうと、“巡航機”は長時間・長距離・好燃費で飛べる航空機といったところかな。“コンコルド”という旅客機を聞いたことないか? アレは音速で飛ぶためにあまり燃費は良くないがな。
“戦闘機”は軍用機と言う意味もあるが、この場合だと対航空機用の航空機だ。おそらくエヴァンジェリンと戦ったときに使用した『シナンジュ』がそうだろう。
“爆撃機”は対地・対艦攻撃を行なう航空機だ。敵の基地や軍艦、戦車などを攻撃目標とする航空機だ。
で、“戦闘爆撃機”は“戦闘機”と“爆撃機”の中間、というか“爆撃も出来る戦闘機”だな」
「それなら昨日の『リゼル』が“輸送機”か。
確かに誰かが上に載れるように背中にグリップが付いていたな。もちろんそれなりに戦闘能力もあったが、『シナンジュ』には遠く及ばなかった」
「へえ、飛行機にもいろいろあるんだな」
「私もそういうのは初めて聞きましたわ」
「私はアメリカにいたときによくTVのCMで飛行機とかは見ましたけど、そこまでは詳しくないです」
ネギ先生とまではいかなくとも、少しはソッチ側の勉強もすべきかな? 閃光弾とかは確かに便利そうだし…………。
しかし、私はあくまで神鳴流の剣士なのだから、あまりそういうのに触れたくないというのが本音だ。
「それでは参ります。ネギ先生」
「フ…………よろしく頼む」
「はい、よろしくお願いします。アルちゃんは今回も下がっていてね」
「はい。お兄様」
「よし、準備は出来たようじゃの。それでは………………始めいっ!!!」
学園長の始めの合図と共に、刀子さんは刀を抜きつつネギ先生に接近。神多羅木先生は刀子さんの少し後ろについて注意深く接近している。
流石に今までの戦いを見ていただけに、警戒しているようだった。
対するネギ先生は右に移動しつつ、右手に持ったビームサーベルを大きく振りかぶったが、そこは間合いの外……って、ビームサーベルが伸びた!?
伸びたビームサーベルは刀子さんと神多羅木先生の間に勢い良く振り下ろされた。
この攻撃は2人とも予想外だったらしく、互いに大きく距離をとって回避した。これで2人は分断されてしまったな。
「ファンネルッ!」
ネギ先生がそう叫んだ瞬間、背中側の2枚の羽根から12個の小さなナニカが飛び出した。
何だアレは?
「凄いですね。ビームサーベルが一瞬で13mぐらいに伸びました」
「ビームサーベルは『魔法の射手』を利用したと仰っていましたわ。
だったら伸ばすのは容易なことでしょう」
「それにしても“ファンネル”ね。まあ、確かにあれはファンネルだ」
「そうだな。安直な名前すぎるがな」
「はい、アレはデータによると、ファンネルに形状が似ております」
「み、皆はアレがなにかわかるのか!?」
今まであんなものは見たことはないが、龍宮が知っているということは近代兵器か?
それとも西洋魔術師の武器だろうか? エヴァンジェリンさんやグッドマンさんが知っているということはソッチかもしれないな。
「………………桜咲刹那。“漏斗”のことを英語で“ファンネル”と言うんだよ」
「スペルは“funnel”です」
「ホラ、この前の理科の実験授業で使っただろ」
「そうですわね。ろ過の実験とかで使うと思いますわよ」
「あと、お料理でも使うことがありますね」
……ごめんなさい。しりませんでした。
だからみんなしていわないでください。
…………そんなの日常生活で使いませんよぅ。
まあ、そう言われると確かに形は漏斗に似ているな。
…………ム、12個のファンネルは刀子さんの周りに集まりだした。何をする気だ?
そしてネギ先生は神多羅木先生に突進。せっかく分断させたのだから、まずは後衛を潰す気だろう。
もちろん刀子さんがそんなことをみすみす見逃すはずはなく、神多羅木先生と合流しようとしたのだが、周りのファンネルから光線が発射されて足止めされてしまった。
あれはまた厄介な。威力は『魔法の射手』とあまり変わらないぐらいだが、ああまで自由自在に動く12個のファンネルから発射されるとなると対処が難しい。
現に刀子さんは気を込めた刀で光線を弾くなどして対処しているが、神多羅木先生の援護に行けないでいる。行こうとしても出足を潰されてしまうのだ。
あ、『斬空閃』でファンネルを1個落とした。でもなかなか次に続けることがで出来ない。
まだ残っている11個が攻撃してくるし、なにより小さな的が高速で動くので当て難いのだ。
ネギ先生に接近されている神多羅木先生は、フィンガースナップで多数のカマイタチを発生させて迎撃しようとしているが、盾代わりの羽根に全て弾かれている。
無詠唱魔法ではあの防御力を突破できそうにない。
「神鳴流奥義! 『斬岩剣』!」
「『風花・風障壁』!」
ネギ先生の『斬岩剣』と神多羅木先生の『風障壁』がぶつかりあった。やはりネギ先生の『斬岩剣』は完璧だ。映像を見ただけであそこまで再現できるとは…………。
しかし、さすがに『風障壁』は突破できないようだ。刀子さんもファンネルをもう6つまで落としている。
刀子さんの援護が間に合うか?
「…………駄目だな。『風花・風障壁』は10tトラックの衝撃すら防ぎきる優れた対物理防御魔法だ。
しかし、効果は一瞬しかなく、連続使用も不可能と言う弱点がある」
「ですが、マスター。あの魔法でなければネギ先生の攻撃は防ぎきれなかったでしょう」
「ああ、そうだろう。だがネギにはまだ左手が残っている」
そうなのだ。右手で放った『斬岩剣』は『風障壁』に防がれてしまったが、いつの間にかネギ先生は左手に新たなビームサーベルを装備していた。
そして左手のビームサーベルが振るわれる。
「ハッ!」
「グゥッ!」
ネギ先生の左手の剣が神多羅木先生に当たった瞬間、パチィッ! と放電するのが見えた。おそらく『魔法の射手』の『雷の矢』を利用したスタンガンのようなものだな。
その電気ショックで神多羅木先生の動きが止まった。
そして何故かネギ先生は動きの止まった神多羅木先生のサングラスを外してあさっての方向に投げ、一瞬でハンカチを神多羅木先生の顔に被せた。
神多羅木先生は電気ショックのせいで強く抵抗出来ていない。
でも……何でサングラスなんか外すんだ? しかも何故ハンカチを顔に被せたのだろう?
…………そういえば神多羅木先生はどういう顔をしているんだろうか?
神多羅木先生が刀子さんとチームを組んでいる関係から何度か面識はあったが、それでもサングラスを外したところは今まで見たことがない。
くっ、結構気になる。しかしネギ先生が被せたハンカチのせいで顔が見えない。
周りの人達も「惜しい!」とか「もうちょっとだったのに!」とかざわついている。…………学園長までもが目を見開いているし。
もしかして誰も見たことなかったの? 学園長はさすがにありますよね?
それこそサングラスの下にはつぶらな瞳があったり…………?
ちなみにサングラスを投げた先には結界の外のアルちゃんが待っており、そしてアルちゃんはサングラスを見事にキャッチ。
…………相変わらず多芸なオコジョだな。
「神多羅木さんっ!」
「スマン、やられた…………」
「映像以外の神鳴流剣士は初めてです!」
刀子さんは今ファンネルを全て落とし終わったみたいだが、間に合わなかったみたいだ。神多羅木先生は多少痺れが残っているようだが、特に怪我らしい怪我はしていないようだな。
もう戦えないらしいが刀子さんに片手を上げて謝っている…………ってあれで“やられた”の?
…………もしかしてサングラスが魔法発動体だったのか!? だからネギ先生は神多羅木先生のサングラスを奪ったのか!?
そういえば神多羅木先生は杖も持っていないし、指輪などの携帯用魔法発動体もつけていなかったのに魔法を使っていたな。
…………え? 本気で?
ま、まあそんなことはどうでもいい! 今は刀子さんとネギ先生の勝負を注目しなければ!!!
ネギ先生は両手に再びビームサーベルを持ち、刀子さんに突進した。本気で神鳴流剣士と剣で競い合う気だ。
「「神鳴流奥義! 『斬岩剣』っ!!!」」
ネギ先生と刀子さんの『斬岩剣』がぶつかり合う。両者ほぼ互角の威力だが、ネギ先生が片手持ちであるのに対し、刀子さんは両手持ちで『斬岩剣』を放っていた。
それを考えるとネギ先生の方が威力は上のようだ。おそらく『咸卦法』の効果とモビルスーツで腕力を底上げしているのだろう。
「くぅっ! やりますね、ネギ先生!」
「ありがとうございます! もう少しお付き合いしてください!」
刀子さんも負けておらず、1本の刀でネギ先生の2本のビームサーベルをしのいでいる。
力はネギ先生が上だが、さすがに速さは刀子さんが上のようだ。
2人の剣戟は互角。これは少し長引きそうだな。
━━━━━ 龍宮真名 ━━━━━
いやはや、まさか剣で神鳴流剣士と互角に戦うとは…………。
二刀流に慣れてきた葛葉先生が少し優勢になってきたが、それでも6対4ぐらいだ。なにかあればすぐにひっくり返るだろう。ネギ先生はいろいろと規格外だな。
「刹那、お前だったらネギ先生に勝てるか?」
「…………難しいな。剣だけだったらまだ勝負になるかもしれないが、あのファンネルを援護に使われたら無理だろう」
「何を言っている。剣だけでもお前では勝てんさ。茶々丸、ネギのビームサーベルの長さは如何ほどだ?」
「両手の2本とも、刀身が70cmでずっと固定されています」
「あ、ネギ先生は剣を伸縮させていらっしゃらないということですわね」
そうか。それがあったな。
しかし、刀身が伸縮自在とはまた厄介な。戦闘中に剣の長さが変わったら、間合いが全然わからないじゃないか。
自己流の修行というのは面倒だな。何も知らない分、誰も考え付かないようなことを仕掛けてくる。
ガキィン! と大きく剣が合わさる音がしたと思ったら、葛葉先生が大きく後退していた。
息も少し上がっている。やはりあのレベルの立会いは消耗が激しいのだろう。
しかし、ネギ先生は息切れ一つしていない。
『咸卦治癒』のおかげなのだろうが、持久戦では勝ち目がなさそうだ。
「お美事です、ネギ先生。10歳でその腕とは…………。
本格的に神鳴流を習ってみませんか? ネギ先生なら当代随一の使い手になれるでしょう」
「…………はあ、ありがとうございます」
ネギ先生の様子がおかしい? なにかあったのだろうか?
何処か困惑しているような感じだな。
「…………あの、葛葉先生。ミニスカートで激しい動きはしないほうがいいと思います」
「!? い、いきなりなにを言うのですか!?」
…………また始まったよ。今度の被害者は葛葉先生か。
「だって、そうじゃないですか! とても言いにくいですけど、下着が何度か目に入りましたよ!」
「大声で言わないでください!」
「見られるのが嫌ならズボンにすればいいじゃないですか。それか桜咲さんのように下にスパッツを穿くとか。
というか神多羅木先生! 相棒なんだから気づいていたんじゃないですか? だったら言ってあげればよかったのに…………」
「ム? …………葛葉は組んだときからこの格好だったからな。そういうのは気にしないのだと思っていた」
「ちょ!? どういうことですか、神多羅木先生!?人をそんな風に思っていたのですか!?」
「2-Aの皆さんも結構そういうの気にしないし、グッドマンさんといい葛葉先生といい、何で皆さん気にしないんでしょう?
あれ? もしかして日本の常識がこうなのか? 下着を男性に見られても平気なのか?」
「ち、違います! 見られて平気なんて思っていません!」
違うぞ、ネギ先生。あくまで麻帆良の中だけだ。
2-A連中は女子中だからだよ。
それとネギ先生は子供だから気にされていないだけだ。
「良かった。私は変だと思われていない…………」
「私は違いますよっ!」
「愛衣! 裏切るのですか!?」
「やはりカオスになったな。…………私の服装は大丈夫だよな?」
「幻術を使用した大人のマスターの服装は、ネギ先生に拒否されるかと思います」
エヴァンジェリンの大人の姿はどういう格好をしているのかは気になるが…………私は大丈夫だよな?
それにしても「子供は残酷」という言葉をよく聞くが、その意味がようやくわかった気がする。ネギ先生に悪気はないんだろうけどなぁ…………。
「と、とにかく! 制限時間も残り少ないので、さっさと終わらさせていただきます」
「あ、もう残り1分強しかないですね。
それでは再開しましょうか。そろそろ剣だけではなく、モビルスーツの能力も使わさせて頂きます。ファンネル」
正面側の羽根から12個のファンネルが飛び出してきた。背中側の羽根に12個あったんだから、正面側の羽根にもあって当然だな。
そして両手のビームサーベルも2m近くまで伸び、心なしか太くなって見える。勝負に出るつもりだろう。
対する葛葉先生はファンネルに囲まれる前にネギ先生に瞬動で接近した。悠長に構えていたらジリ貧だからな。
これでファンネルは使えまい、ネギ先生。
「神鳴流奥義! 『雷鳴剣』っ!!!」
「くぅっ!? ……この技は初めて見ましたよ!」
葛葉先生の『雷鳴剣』をネギ先生が受け止める。電気として放電された気が辺りに撒き散らされるが、ネギ先生はモビルスーツのおかげで平気のようだ。
『雷鳴剣』を知らなかったということは、ビデオで見ただけの神鳴流しか使えないということか。
まぁ、それはしょうがないな。
!? 放電が終わった葛葉先生の刀が、ビキビキと音を立てて凍っていく!?
いつの間にかビームサーベルを氷属性にしていたらしい。実際に見てみると厄介すぎる武器だな。
ちょ!? しかも羽根の先から腕が出てきたぞ!? あんなところに隠し腕があったのか!?
2枚の羽根からそれぞれ出てきた2本の腕が凍った刀と葛葉先生の左腕を、ネギ先生の左腕が葛葉先生の右腕を掴んで動きを封じ、残ったネギ先生の右腕が刀身を消したビームサーベルの柄を葛葉先生の腹に押し当てた。
しかも、戻ってきたファンネルが動きを封じられた葛葉先生に照準を当てるのオマケつきだ。
勝負アリだ。
…………それにしてもネギ先生はシビアだな。ファンネルの半分は脱落した筈の神多羅木先生に向いている。
不意打ち防止なんだろうが、10歳の子供がすることではないぞ。
「チェックメイトです」
「…………参りました」
「ウム、其処までじゃ」
終わってみれば、模擬戦はネギ先生の全勝だ。やれやれ、末恐ろしい子供だな。
これからどうなってくることやら…………。
━━━━━ 後書き ━━━━━
模擬戦編はこれにて終了です。
【ネギの被害者リスト】
メルディアナ学園長:燃やされた
カモ:去勢された
鳴滝姉妹:悪戯し掛けて返り討ち
エヴァンジェリン:紅茶吹かされた
バカレンジャー:勉強地獄
学園長:初恋の人を成仏させると言われたせいで胃痛
さよ:知らないうちに成仏させられるところだった
魔法先生一同:「この子ホントにどうしよう?」という困惑
愛衣:幼児退行させられた
高音:露出狂の嫌疑かけられた
刀子:露出狂の嫌疑かけられた
モビルスーツ紹介(Wikiから抜粋+個人的感想)
『クシャトリヤ』
ネオ・ジオンが開発した20m級のサイコミュ搭載型MS。
NZ-000 クィン・マンサをもとに設計された機体だが、サイコフレームの使用と複数の機能を集約したバインダーの増設により、クィン・マンサの圧倒的火力と性能をほぼ維持したまま、小型化に成功している。
本機の特徴は“四枚羽根”というコードネームの由縁となる四枚の大型バインダーにある。
それ自体がIフィールドジェネレーター内蔵のシールドやAMBAC可動肢として機能するほか、内部にファンネル、メガ粒子砲といった武装を搭載している。
スラスターとしての役割も備えており、ここに複数の機能を集中させることで機体本体の小型化に貢献している。
また、「隠し腕」と呼ばれるサブアームを収納しており、それぞれがビームサーベルを装備している。そのため、背後から斬撃を受けた場合でも、機体を旋回させることなく、後方2枚のバインダー内に収納されたビームサーベルを用いての応戦が可能となっている。
ガンダムUC第一話のスタークジェガンとの戦いが格好良かったです。
というか重武装しすぎw 例えは“戦闘爆撃機”じゃなくて、“爆撃機”でよかったかもしれません。