━━━━━ ネギ・スプリングフィールド ━━━━━
「ただいまー。うー、寒い寒い」
「お帰りなさい、明日菜さん。休日の朝から新聞配達お疲れ様です」
「お帰り、アスナ。昨日今日と一段と冷えるなあ。何でもこの冬一番の寒さらしいやえ」
「どーりで寒いわけね。この寒さでミニスカートは辛かったわ。
着替えるのが面倒とはいえ、ズボン穿いていけばよかったわね」
明日菜さんが元気になってよかったなぁ。この前まで死人みたいになってたし。
いくら頼まれたとはいえ、タカミチに明日菜さんのコトをどう思っているのか聞き出すなんて、やっぱり断ればよかった…………。
原作知識で無理ってわかってたんだしなぁ。あの結果はさすがに罪悪感が沸きましたよ。
…………やれやれ、面と向かって振られた原作はこれよか数段マシですね。
告白する前に断られるのがわかってしまった方がダメージは大きいです。
とりあえず“大切な女の子”みたいな言葉をタカミチから引き出そうと思ってたのに、しずな先生の参加で変な方向に持っていかれてしまいました。
しずな先生に悪気は無かったんでしょうけどねぇ…………。
…………? あれ?
どこからか「お前が言うな」という声が…………?
「えいっ!」
「うわひゃっ!?!?」
「あ、コラ。湯たんぽは大人しくしてなさい。こっちはこの寒い中で新聞配達してきて、すっごい体が冷えてるんだから」
そして失恋した明日菜さんはやけにくっつくようになってきました。人肌が恋しいんですかね?
僕だけじゃなく、木乃香さんも何かあれば抱きつかれたりしてるので、まだ失恋のショックが尾を引いているようです。
最近寝るときは明日菜さんの抱き枕にされてます。
まあ、しばらくは明日菜さんの好きにさせましょう。
この世の全てに絶望したような明日菜さん見てたら、反抗する気が失せました。
「ねー、今日はどうするの?
先週の休みは授業の準備で忙しかったみたいだし、私の勉強も昼は休むんでしょ」
「そうですよ。最近明日菜さん頑張ってますからね。息抜きも必要です。夜の勉強はいつも通りしますけど、それまではゆっくりしてください。
他の皆さんも頑張ってますからね。多分、2-Aは今度の期末テストで最下位脱出できますよ」
「よかったなー、アスナ。やっぱりアスナはやれば出来るんやよ」
「アハハ、私も最近ようやく勉強の仕方がわかってきた気がするのよね。
ネギがこの部屋に住んでくれてありがたいわ。家庭教師をタダで雇っているみたいなんだもの」
誉めてくれてありがとうございます。僕も明日菜さんの役に立てて嬉しいですよ。
でもだからって、シャツの中に手を入れてサワサワとお腹を触るのやめてください。
明日菜さんは暖かくて気持ちいいかもしれませんが、僕は普通に冷たくて何よりくすぐったいです。
というか、完璧無意識でやってますよね。
それと勉強頑張るのはいいですけど、失恋のショックで勉強にのめり込むのはマズイと思います。
「最近勉強ばっかりしてた気がするわね。今日はどうしようかしら?」
「そうやね。ネギ君は何か予定あるん?」
「今日は皆さんの部活を見て回ろうかと思ってます。担任補佐の仕事にも余裕が出来てきましたので、そろそろ麻帆良巡りをしてみようかなぁ、と。
クラスの皆さんにも見学に来るよう誘われてますし」
「そういえばくーへとかとそういう約束してたもんなぁ。
あー、今日は図書館探検部の活動はないから、見学して貰えなくて残念やなぁ」
「ええ、中武研は午前に集まりがあるらしいですから、それを覗いて他にも回ってみようと思います」
今の古菲さん相手なら、素の僕でも負けはしないでしょう。
古菲さんが意識的に気の扱いをするようになったら、さすがにコッチも魔力か気を使わないと勝てませんがね。
あー、バイアスロン部って今日やってたかな?
やってたらライフル撃たせて欲しいんだけど…………。
剣道部…………はやめておきますか。
木乃香さんと一緒に行ったら、刹那さんに何言われるかわかりませんし。
「じゃあ、私が案内してあげるわ。ネギには勉強を見てもらっているし、そのお礼に少しは面倒見てあげないとね」
「あ、ならウチも着いてくわ。たまにはそういうのも面白そうやし」
「ありがとうございます。地図片手に見学しようと思っていたので、案内していただけるのは助かります」
「あー、じゃお弁当作ろうかな。何かピクニックみたいで楽しいやん」
お弁当かー。
そういえばそういうのはまだ食べてなかったな。でもなぁ…………。
「それは別の機会でもいいですか?
お昼には食べてみたい所があるんですけど」
━━━━━ 長谷川千雨 ━━━━━
…………ダリィ、腹減った。昨日は休みの前日だからってうっかり夜更かししすぎた。寝たのが朝方だったからなぁ。
腹が減って目が覚めたのに、買い置きのカロリーメイトとか切らしちまってたし…………。
それにしても、麻帆良の変なことは遂に極まれりだな。
何なんだよ、10歳の教師ってのは。労働基準法ってのは何処行ったんだよ…………。
まあ、わざわざイギリスから麻帆良に教師になりに来たっていうぐらいだから、優秀なことは優秀なんだよなぁ。教え方もうまいし。
ヘタしたら高畑より優秀なんじゃねーか?
少なくともあのガキが来たおかげで、高畑が出張ばっかりなせいでホームルームが自習になりまくってた頃よりはマシにはなったんだよなぁ。
あのいつもお祭り騒ぎ状態のクラスを纏め上げているし、バカレンジャーの連中が勉強を頑張るようになったのも凄い。
身体が空いているときは、担当の教科以外のときでも授業補佐としてクラスにいる。
おかげで英語だけでなくて、他の教科の成績も上がってるらしいな。
というか、あのガキの担当は英語なのに、何で国語の成績が一番上がるんだよ?
あのガキが言うには、
「僕が難しいと感じたところを重点的に教えているだけですよ。
あと日本人の国語の先生は日頃から日本語に慣れ親しんでいる分、感覚的になってしまうところがありますからね。僕は逆に理論的に日本語を学んで、その通りに教えているのでわかりやすいんじゃないでしょうか」
ってことらしいがな。
…………まあ、理屈はわからんでもない。クラスの中でも留学生である古の国語の成績が一番上がってるらしいし。
それといくらなんでも10歳の外国人のガキに国語を教わるのはマズイ! とクラスの連中が思ったのが国語の成績が特に上がった要因だろーな。
くそっ! あのガキの中身はマトモそうなのに、あのガキの存在自体がマトモじゃないってのが余計に悔しい!
と、思っていた時期が私にもあったよ。
何であのガキが近衛をお姫様抱っこして、神楽坂と一緒にコッチに向かってダッシュしてくんだよ? 愛の逃避行かぁ?
というか、よく近衛を抱っこしてあんな風に走れんな。
「こんにちは、長谷川さん! 丁度いいところに!
古菲さんが来たら僕達はアッチに逃げたと言ってください!!!」
「こんにちは、ネギ先生……って、ちょっと!?」
私の返事も聞かずに近くの茂みに隠れる3人。
くそっ! やっぱりあのガキの中身もマトモじゃなかったんだ!
それに古だと?
いったい何なんだよ……って…………おお…………? 古の奴が凄い勢いでコッチに向かってくるぞ?
ああ、厄介ごとに巻き込まれちまった。
早く飯食ってブログの更新しなきゃいけねーのに…………。
「長谷川ーーーーー!!! 今ココをネギ坊主達が通っていかなかったアルか!?」
「…………あ、ああ。近衛をお姫様抱っこしてたのに、神楽坂と一緒に凄い速さでアッチに走ってったぞ。」
「教えてくれてありがとうアル! ネギ坊主! 勝ち逃げは許さないアルよ!!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨とすげぇ勢いで走っていく古。
だから何で生身の人間があんなに早く走れるんだよ!?
それに“勝ち逃げ”? あのガキが中武研部長のデタラメな古に勝ったってのか?
「すいません、長谷川さん。ご協力感謝します」
「…………あー、いえ。別に…………」
古が立ち去ってからヒョッコリ出てくるこのガキ。
いや、そのために隠れていたんだからしょうがないんだが、それでも何故かむかついてくる。
相変わらずニコニコと、いつも変わらない表情しやがって。
「しかし、ええんかな? くーへ怒ってたで?」
「ネギの言ったことはわかるけど、はっきり言ってトンチの類よ」
「ま、大丈夫でしょう。古菲さんは勝ち逃げと認識されてるみたいですから、予定通りに次の目的地へ行けば古菲さんは怖くないです」
トンチ? ああ、それならわかった。
どーせこのガキが赴任初日に鳴滝姉妹を嵌めたように、単純な古を嵌めたんだろ。
「…………あー、もう行っていいですかね?」
「あ、ありがとうございます、長谷川さん。
…………僕達これから昼食なんですけど、もしよろしかったら一緒にどうですか?」
「いえ、結構です」
お前達なんかに付き合っていられるかよ!
私はさっさと飯食って帰ってブログ更新すんだ。この理不尽さを社会に、大衆に訴えるんだよ!
「ちょうど臨時収入があったので奢りますよ。まだあまり長谷川さんとはお話出来てませんでしたし。
どうせ明日菜さんと木乃香さんには案内のお礼にご馳走させていただこうと思っていましたので、助けていただいた長谷川さんもよろしかったら是非どうぞ」
って、うお!? 食券200枚ぐらい持ってやがる、このガキ!?
どうやってそんなに手に入れた!?
「うっわー、ネギ太っ腹ぁ。何でも頼んでいいの?」
「ありがとなー、ネギ君」
「こういうあぶく銭はパァーッと使った方がいいですからね。食べられるんなら構いませんよ。
食べてみたいところがあるので先ずはそこへ行きますが、そのあとは甘味処巡りでも何でもお付き合いします。
あ、ただし、食べきれない分まで頼むのはナシです。もったいないですからね」
………………ぐ。普段はカロリーメイトなんかで過ごしているが、旨いものが嫌いなわけじゃない。
しかもこの前買ったコスプレ材料を奮発したせいで、最近はロクなもの食ってなかったしなぁ…………。
てゆーか、本気で腹減った。飯食いに外に出てきたのに…………。
「グウゥ~~~」
「「「あ」」」
ぐあ!?
屈辱だ! こんな状況で腹を鳴かすなんて、どこの腹ペコキャラだよ!?
くっ、消すしかない。もはやこいつらを殺るしか…………。
「どうですか、長谷川さん?
古菲さんもまだ辺りを探し回っているでしょうから、一緒に安全な所に行きましょうよ」
……………………そうだな、まだ古の奴がうろついているかもしれんな。
しかも私がこいつらの手助けをしたとバレたら、面倒なことになりそうだ。
だったらしょうがない、よな。
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「…………で、超包子ですか?」
「ええ。茶々丸さんや四葉さん達に誘われていましたので」
「いらっしゃいませ、ネギ先生」
よりにもよって超包子かよ!?
確かに旨いものは食えるが、超包子(ココ)なのかよ!? そもそも中学生が何で屋台を経営出来るんだよ!?
…………しかも、だ。
「…………あの、ネギ先生。古がずっとコッチを睨んでいるんですが?」
「大丈夫ですよ。元々古菲さんはここでウェイトレス兼用心棒としてアルバイトしてる上、四葉さんがいるのなら滅多なことになりません」
なんでこのガキはこんなに平然としているんだよ!?
古のあの目は明らかに殺る目してるだろ!?
てゆーか、古に手招きすんな! 「一緒に昼食どうですか?」とか聞いてんじゃねえっ!
「…………これがネギ坊主の護身術アルか?」
「そうですよ~。護身術の基本は“危険なところに近寄らない”、“安全な場所にいる”ですからね」
「アハハ、そうネ。そういう意味では確かに超包子は最高に安全な場所アルよ」
ハッハッハ、と笑いあう2人。
…………やっぱり飯に釣られるんじゃなかった。
「ま、とりあえず注文しちゃいましょう。長谷川さんが「ワケがわからないよ」みたいな顔をしてますので、その間に説明しましょうか。
古菲さんもお好きなものをどうぞ。たまにはアルバイト先の客になるのもいいのではないですか?」
「…………わかったアルよ。負けは負けネ。今更どうこう言ったりしないアル。
でも、さすがにこれはどうかと思うアルよ、ネギ坊主」
古が一枚の紙を差し出したが、そこに書かれていたのは
「護身術真髄“逃げるが勝ち”」
だった。
……………………このガキ、逃げたんか?
「ネギ坊主は酷いアル。最初の試合は良かったけど、その次のは戦いとは呼べないアルよ」
「私から見たら、最初の試合もよくわかんなかったんだけどね。
10分の間あんまり動きはなかったし、結局ほとんどが睨み合いだったでしょ? しかもネギは杖を使ってたけど、くーふぇは素手だったじゃない?」
「確かにそうアル。しかし、ネギ坊主の修めている技はあくまで“護身術”。
私が仕掛けようとしても全て出足を潰されてしまっていたアル。あのまま続けていてもネギ坊主を捕まえられなかったアルね。
一方のネギ坊主はこれが“試合”じゃなかったら、大声で助けを呼ぶだけで良いアルね」
「ふーん。くーへから見たらネギ君って強いん?」
「うーん…………10歳ということを考えたら凄いと思うアル。
でも、あくまで10歳の男の子だから、女でも14歳の私の方が身体能力は上アルね。私が負けたのは相性の問題と武器の有無、あとは私がネギ坊主を甘く見てたことアルよ。
私としてもあの戦いは良い勉強になったアルよ」
このガキ結局は古に勝ってたのかよ!?
…………まあ、ガチンコ勝負で勝ったのとは違うし、武器有りで古も甘く見てたらしいからありえなくはないのか?
「おかげで食券儲けさせて頂きました。
古菲さんに賭けてた中武研の人達にもお礼を言っておいてください」
「それで食券をそんなに持ってたんですか。自分が勝つ方に賭けるなんて…………。
それに教師が賭け事していいんですか?」
「アハハ、自分が負けるのに賭けて、わざと負けるとかじゃないからいいんですよ。というか、僕に賭ける人はいなかったので、賭けが不成立になるところでしたし。
教師が賭け事云々は耳が痛いですが、期末テストで2-Aが1位をとることに一点買いするので多めに見てください。
それに僕はイギリス人ですし」
ああ? 日本人だろーがイギリス人だろーが関係無………………そっか。このガキってイギリス人だったな。
イギリス人つったら“クリスマスに雪が降るかどうか?”すら賭けにするぐらいの賭け好きなんだった。“ブックメーカー”ってやつだったか?
賭け事に嫌悪感抱かないのは国民性の違いかね?
「最初の試合は私の負けで納得済みアルよ。
けど次のコレはどういうことアルか?」
「まぁなぁ。いきなりネギ君が「わかりました。そこまで言うなら護身術の真髄をお見せしましょう。準備があるので更衣室をお借りします。明日菜さんと木乃香さんは手伝ってください」なんて言うたのに。
更衣室に行って置手紙用意したと思ったら、いきなり窓開けてそっから逃げだすんやもん。アレにはビックリしたわ」
「いやあ、身を守るための護身術ですからね。そもそも戦う必要がなかったのなら戦いませんよ。僕も身体を動かすのは好きですし、誰かと競い合うのは嫌いというワケじゃありませんけどね。
でも、あそこで逃げておかないと、何試合もやる羽目になりそうでしたし」
「…………う」
「あー、確かにそうなったわね。くーふぇの目がキラッキラに輝いていたもん」
「むうぅーっ! わかったアルよ。
ネギ坊主、また日を改めてなら戦ってくれるアルか?」
「程々にお願いしますよ。僕も仕事があるので」
………………やっぱり変なガキだ。
こいつ年齢詐称してんじゃねーのか?
「…………あの、ネギ先生。前から聞きたかったんですけど、何で10歳なのに麻帆良で教師をやってるんですか?」
「ん? んー…………複雑なようで単純な話なんですがね。大人達の事情に巻き込まれたんですよ。
僕の父も業界では結構な有名人でして、僕はその後継者と期待されているといいますか…………無理矢理にでも後継者にして自分達に都合のいい客寄せパンダにしそうな大人達がいるんですよ。
で、その自分を引き込みたい大人とか、そういうことに巻き込みたくない僕の祖父でもある学校長とか、そもそも常識を勉強させなきゃマズイと思った大人とかの、いろんな大人達の事情と思惑が絡み合った結果ですね。
まあ、引き受けたからには精一杯務めるつもりですけど」
…………いきなりヘビーな話になりやがった。
このガキはこのガキで結構苦労してんだな。
「元々僕も日本に興味があったから、特に文句もつけませんでしたけどね。
父が京都に住んでいたことがあったらしいですし、タカミチからも日本の話を聞いて興味を持ってましたし、ジャパニメーションも見てましたからね。
でも、麻帆良のようなアニメみたいな町に住むことになるとは思ってもいませんでしたよ」
…………アニメみたいな?
「ネ、ネギ先生が予想してたような日本とは違ったんですかね?」
「予想していたといいますか、少なくとも茶々丸さんみたいなロボットと会えるなんて思いませんでしたねー。さすが日本です。僕の住んでいた田舎とは違いますね。
麻帆良はまるでジャパニメーションに出てくる町のようです。まさかこんな町が現実にあるなんて思いませんでした」
このガキ!? もしかしてアニメと現実がゴッチャになってやがるのか!?
…………あ、このガキにしたらゴッチャじゃなくて、アニメみたいな現実が実際にあったということなのか?
「そ、そうなんですか。
…………でも、日本の中では麻帆良も結構変わってる方ですよ。アハハ…………」
「まあ、日本も広いですからね。ところ変われば学校も変わってくるでしょうね。
けど僕の住んでいたところに比べれば、麻帆良でも麻帆良以外でも大きく違っているということには変わりないですし」
「ネギ君住んでたトコってどんなんなの?」
「自然に囲まれたところ、と言えば聞こえはいいですが、実際は自然しかない田舎ですね。
どのくらい田舎というと、そうですねぇ………………あ、僕が日本に来るためにロンドンのヒースロー空港から飛行機に乗ったんですけどね。そのとき初めて“エレベーター”に乗りました!」
田舎モンだ! 間違いなくこのガキは田舎モンだ!!!
ま……まさかこのガキ。
元々はマトモで麻帆良に違和感を感じていたのに、「日本って凄いんだなぁ」で終わらしてたのか!? 「都会って凄いんだなぁ」で納得してたのか!?
………………有り得る。
このシッカリしていそうだけど、根っこは素直すぎるこのガキなら有り得る。
「それとまさか本当に忍者がいるなんて思ってもいませんでしたよ。
頼んだら“分身の術”とか教えてくれませんかねぇ?」
「あー、本人は否定しとるけどなぁ」
「え? 楓ってば本気で隠している気なの?」
畜生! そうだよな! 忍者がまだいるって本気で信じている外国人もいるらしいからな!
実際にそういうの見たら信じちまうよな! “分身の術”なんか出来るわけねーだろーがっ!!!
マ、マズイ…………このままじゃ、このガキの中では麻帆良が普通に分類されちまうぞ。
ヘビーな事情で日本に来た上、こんな異常な所を普通と思い込んじまうなんて、いくらなんでも不憫すぎる!
このまま麻帆良で過ごしていたら、このガキの将来どうなっちまうんだよ!?
…………駄目だ、このガキ。早く何とかしてやらないと。
「ネギ先生、お待たせしました。杏仁豆腐です」
「ありがとうございます、茶々丸さん」
平然とロボットから杏仁豆腐を受け取ってるんじゃねえっ!
あんなロボットがいるなんておかしいと思わねぇのかよ!?
………………無理だよなぁ。まだガキだもんなぁ。
小さなガキに当たり前のように麻帆良を見せ続けていたら、麻帆良を普通と思い込んじまうよなぁ。
ムキ~~~~~ッ! 私の普通の学園生活を返せっ!!!
これ以上、このガキを理不尽に汚染するなぁっ!!!
━━━━━ 後書き ━━━━━
やっべぇ、ちうたん書いてて楽しいw
何だかんだ言ってちうたんは面倒見がいいので、理不尽なことに巻き込まれている純真な子供がいたら見て見ぬ振りは出来ないでしょうw
しかし実際のところ、その純真な子供は理不尽に巻き込まれているどころか、逆に理不尽な権化とも言うべき存在なのが残念なのですが。
ちうたんをどうしようかと迷ったのですが、放っておくことも、裏のことを教えるのもここのネギらしくありません。
ということで、裏のことを教えないまま味方になってもらうことにしましたw