━━━━━ 綾瀬夕映 ━━━━━
「のどかには積極性が足りないのよっ!」
「え? ええ~? そ、そんなぁ~」
「ハルナ。のどかにはのどかのペースがあるのです」
「甘い、甘いよユエっ! ネギ君みたいな優良物件。そんじょそこらにいるわけないわ!
気を抜いてると、他にとられちゃうわよ!」
ハルナには困ったものです。
どう考えてものどかの性格では、積極的にネギ先生にアタックするなんて無理ではないですか。
「いや~、でもね。本当にネギ君は人気あるよ。
ショタコンのいいんちょはともかく、一緒の部屋に住んでる木乃香とアスナはもう家族といっていいぐらいの仲になっているしねぇ。
他にも武道四天王であるくーちゃんや刹那さん、龍宮さんもネギ君には一目置いているし、あまり他のクラスメイトと関わらないエヴァちゃんや茶々ちんでさえネギ君とは話すんだよ」
「そういえば、ネギ先生はくーふぇさんに試合で勝ったらしいですね。
次に戦ったらわからないとは言ってましたが…………」
「ネ、ネギ先生って強いんだぁ。
私を助けてくれたときも凄かったし…………」
確かにネギ先生は人気ありますね。
木乃香さんはネギ先生を弟みたいに可愛がっていますし、アスナさんは凄く落ち込んだときにネギ先生に励ましてもらったらしく、元気になってからはネギ先生とはとても親密になっています。
私は恋愛はまだよくわかりません。私にとってネギ先生は、妙にこましゃくれた子供という感じなのですけどね…………。
確かにネギ先生が担任補佐となってから、私を含めて皆の成績が順調に上がっていってます。
ネギ先生に勉強をすることとしないことについてのメリットとデメリットを一つずつ述べられ、それで最終的に勉強することを私は選びました。
確かに補習や居残り授業で読書の時間や図書館探検部の時間を削られるぐらいなら、最初から勉強して補習や居残りを避けるようにしますよ。
しかし、逃げ場を塞がれた後で各々の自主判断に任された、というような手法をとられた感じがするのです。
もとから選択肢が一つしかなかった。でも、自分の判断でそれを選んだことにされた。そんな気分なのです。
「だから! のどかはもっとネギ君に積極的にアタックしないと、担任補佐しているクラスの生徒の一人としか見てくれないわよ!」
「い……いいよ~。私はネギ先生とお話出来る今のままで十分だよ」
「…………お話っていっても、一日に2、3分もお話出来てないじゃん」
「ハルナ。言っていることはわかりますが、のどかの性格からしてそのようなことが出来るとは思いません。焦った挙句に悪い結果が出るのがオチです。
それともハルナには何か良い手があるのですか?」
「フッフッフ、よく聞いてくれました。ここだけの話なんだけどね、ネギ君が今夜いつも私達が使う時間の後に、大浴場の方でお風呂入るんだって。
ネギ君て温泉とか銭湯にいったことがないらしくて、寮長に許可貰って大浴場で広いお風呂を体験するみたいだよっ!!!」
「…………ハルナ。もしかしてのどかにネギ先生と混浴しろと言っているのですか?」
「えっ!? えええぇぇ~~~っ!? そ、そんなこと出来ないよ!」
「大丈夫大丈夫、水着着て入れば平気でしょ。しかも寮長と話しているのを聞いてたときにいいんちょとかも一緒にいたからね。きっといいんちょも混浴狙ってるよ。
ホラ、担任補佐との親睦会ってことでさ~」
「委員長さんもですか…………となると、ウチのクラスのことですから、きっと他にもネギ先生とお風呂に一緒に入ろうとするのはいるでしょうね」
「で、でも、混浴だなんて…………」
「私達も一緒に行ってあげるからさ~。
じゃあ、とりあえず水着持って大浴場行ってさ、他にもお風呂入ろうとしてた人がいたら、のどかも入るってのはどう?」
…………フム、そこら辺が落とし所ですかね。
はしたないことをすればネギ先生に引かれる恐れがありますが、のどかの性格を知っているネギ先生なら、周りで騒いでいるクラスメートに引っ張ってこられたと思ってくれるでしょう。
それにこの一件を見逃して、ネギ先生と他の人の親密さが更に上がってしまうと、のどかが入り込む隙間がなくなってしまいます。
「それなら大丈夫ではないですか?
最悪の場合はハルナにせいにすればいいだけですし」
「ちょっ!? ユエ酷いっ!?」
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「(で? やっぱりいいんちょも来たんだ?)」
「な、何のことですか!?
私はただお風呂の時間がいつもより遅くなってしまっただけですわよ!」
「(大声出すとネギ坊主に気づかれるでござるよ)」
そんなわけで大浴場まで来たのですが…………やっぱり多いですね。委員長さんを始めとして、長谷川さん、鳴滝姉妹の2人、楓さんに千鶴さんとナツミさんがいました。
私達3人を含めて10人ですか。クラスの三分の一がここにいますね。
「(それにしても、千雨さんがこんなことに参加するとは思っていませんでした)」
「(…………いや、いいんちょ見てたらネギ先生が心配になってな。鳴滝姉妹は長瀬が手綱を取ってくれそうだが、いいんちょが暴走しそうで…………)」
「(そのときは千鶴さんにお願いするしかないです)」
「(てゆーか、早乙女の面倒はお前がみとけよ!)」
…………きっと大丈夫だと思います。
ハルナはきっとのどかのために頑張ってくれているのだと思うのです。
「何をやっているんだ貴様ら?
風呂で水着なんか着て?」
エヴァンジェリンさん!? また増えたのですか!?
これ以上増えないように“ネギ・スプリングフィールド入浴中”という張り紙を、“立ち入り禁止”と改竄しておいたのに…………。
「(え? なになに?
エヴァちゃんもネギ君とお風呂入りに来たの!?)」
「? 何のことだ? ネギがここの風呂を使っているのか?」
「(と、とりあえず声を小さくしてください!)」
知らないのに“立ち入り禁止”を無視して入ってきたのですか。水着を持ってきていないようですし、本当にただの偶然みたいですね。
エヴァンジェリンさんは寮外に住んでいるのに、たまにこの大浴場を使いに来るんですよねぇ。
「(あ、ネギ先生の服を発見したよ! 丁寧に折り畳まれてるのがネギ先生らしいよね。
…………ネギ先生ってトランクス派なんだ)」
「(お姉ちゃん! 駄目だよジロジロ見たら…………)」
「(ネ、ネギ先生の下着…………)」
「(ちょ! コラ、いいんちょ! 鼻を押さえながらネギ先生の脱衣カゴに近づくんじゃねぇ! さすがにそれはヤバイぞ!
那波と村上もいいんちょ押さえるの手伝え! 長瀬は鳴滝姉妹を押さえとけ!)」
「(あいあい。ホラ、少し落ち着くでござるよ)」
「(アラアラ、あやかったら)」
「(ち、ちづ姉、いいんちょの目がヤバイよ~)」
何ですか、この混沌は? 本当にこんな面子の中でのどかがネギ先生にアピール出来るのでしょうか?
というか、委員長さんと楓さんと千鶴さんのビキニ姿がマズイです。あの3人はスタイルも良く、かなり露出が多いビキニを着ています。
ネギ先生もやはり男の子なので、ああいう格好が好きかもしれません。
というか、ハルナ! あなたも大胆なビキニ姿になってるんじゃありません!
あなたはのどかの応援のはずでしょう!
「(や、やっぱり私なんかじゃ…………)」
「(大丈夫です、のどか! のどかの水着は委員長さん達とは違う魅力があります!)」
のどかの水着はセパレーツタイプの水着です。
露出が多いわけではありませんが、清純そうなのどかに似合う可愛らしい水着でしょう。
さあ、勇気を出してネギ先生にアピールするのです!
「フン、まあいい。私は風呂に入りに来ただけなんだ。先に入らせて貰うぞ」
「って、少しお待ちを! エヴァンジェリンさん水着はどうなされたんですか!?」
「風呂に水着なんか持ってきてるわけなかろう。10歳のガキに裸を見られても、別に何とも思わんしな」
全裸!? 更なる勇者が!? 風呂に水着を着ないで入るなんて、どんだけ凄い勇気をお持ちなんですか!?
さすがにそれはマズイですよ!
「(べ、別にお風呂に水着を着ないで入るのは普通じゃないかな~?)」
「(そういう問題じゃないよ、のどか! ここはのどかもエヴァちゃんに負けないために全裸で…………)」
「(のどかに何を言ってるですか、ハルナ~~~!)」
「…………騒いでないで、入るならさっさと入ってきなさいよ。あんたら」
「あー、やっぱりネギ君の言うとおりに皆入ってきたな~」
え、あれ? アスナさんに木乃香さん?
…………まあ、あんだけ騒げば気づかれますか…………って、何で風呂場のほうから出てくるのですか!?
「ど、どういうことですか、お二人とも!? まさか既にネギ先生と入浴なされていたなんて…………。
抜け駆けですか!?」
「抜け駆けも何も、ネギに頼まれたのよ。「おそらくクラスの人達が大浴場に乱入してくるでしょうから、抑えのために一緒に大浴場に来てくれませんか?」ってね。
10人も入ってくるとは思ってなかったみたいだけど」
「ちなみにネギ君も水着をちゃんと着てるで」
…………う。さすがはネギ先生。私達のことをよくわかっているのです。
ちなみに明日菜さんと木乃香さんは私と同じ、学校指定のスクール水着でした。
他にも千雨さんとナツミさんと鳴滝姉妹もスクール水着です。
━━━━━ エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル ━━━━━
…………おんぶされたときに身体を触ってわかっていたが、改めて見るとネギの身体はなかなかガッシリとしているな。
もちろん子供特有の柔らかそうな身体も同時に持っており、大人と子供の身体両方の良い所を合わせたような身体だ。
やれやれ。本当に広い風呂に入りに来ただけで他意はなかったが、良いものを見ることが出来た。
くっくっく、ネギの数年後が楽しみだな。
「エヴァさんて、髪の毛本当に長いですよね。
そんなに長いと洗うのも大変そうですね」
「まあな。いつものことだから慣れているが、それでも時間はかかるな」
結局、茶々丸に水着を持ってこさせたが、それでよかったな。
ネギは何だかんだで紳士だから、水着を着ていないとコッチを見ようともしなかっただろうから。
「…………よし。髪を洗うのを手伝え、ネギ」
でも今日はせっかくだから、ネギに髪を洗わせてみよう。
先日、『登校地獄』解呪の研究のために家に来たネギに、「体育の時間に捻った」と言って足をさすらせたのは良かった。
もちろん私は椅子に座って足を組んでネギに足を差し出し、ネギは私の前に跪いて足をさする体勢だ。
他に足をさすらせるための良い体勢がなかったから仕方あるまい。
正直言って、興奮した。
『咸卦治癒』を発動させ、跪いて私に奉仕するネギ。久々に至福な一時を過ごせた。思い返すだけで顔がニヤついてしまう。
膝を擦りむいていたとしたら、「舐めて治せ」と言えたのに残念だ。何も知らない純真な子供にああいうことをさせるのは、背徳感で背筋がゾクゾクするな。
そういえば、茶々丸はあのときの映像を録画してたかな? してたら映像を後で見せてもらうとするか。
ああ、ネギを早く私のモノにしたい。
といっても、ナギのときみたいに焦ったら駄目だ。
今の時点でネギに「私のモノになれ」と言っても、おそらく反発するだけだろう。ネギは天邪鬼っぽいところがあるからな。
だからネギの方から告白させる。
ネギの性格だと、コレと決めた女には一途な想いを貫く。例え私のような忌避される存在だとしてもな。
我侭な性格ゆえに、惚れた女を我侭に愛するだろう。
ああいう我侭な猫みたいな子供を私好みの男に育て上げ、ネギの方から「貴女のモノにしてください」と言わせる。
何ともやりがいのあるゲームではないか。
しかもいろいろとやりすぎてしまったら、ナギのときは封印されるだけで済んだが、ネギの場合だと私の命が危なさそうだ。
だが、それがいい。
このゲーム、ナギを私のモノにするよりも難しそうだ。くっくっく。
「どうした、ネギ? 特別に私の髪に触らせてやろう」
「オホホホホ、何を仰るのですかエヴァンジェリンさん。
髪が洗うのが大変だと仰るのなら、私が手伝って差し上げますわ。風香さんと史伽さんも手伝ってくださいな」
「はーい、いんちょ」
「手伝ってあげるね、エヴァちゃん」
え? ちょっ、待て!? 貴様らには頼んでおらん!
というか、お前の顔に夜叉が見えるぞ、雪広あやか!!!
「殺してでも かみをあらう」
な なにをする きさまらー!
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…………フゥ、やはり広い風呂は良いな。家の風呂はここまで大きくないし、広い風呂のために別荘へわざわざ行くのも億劫だ。
だからたまにこの女子寮の大浴場を利用している。
「それにしても、ネギって風呂好きよね。ちゃんと朝晩2回シャワー浴びてるし」
「いや、実のところあそこまでしなくても平気なんですけどね。
前はキャンプで2、3日お風呂に入らないとかよくありましたし」
「あー、外国人はそうだっていうやね」
「え? じゃあ、何であんなに頻繁にシャワー浴びるの?」
「日本人は清潔好きと伺っていたからですよ。しかも女子中学生の相手をするんですからね。そりゃあ清潔さには気をつけますよ。
皆さんから「臭い」とか言われたらショックですし」
そういうところは紳士なんだよなぁ。
足をさすらせたときも私がミニスカートだったから、すぐさま着ていた上着を膝に掛けられたし。
「いやあ! それにしてもネギ君は幸運だね! こんな美少女達とお風呂に入れるんだから!」
「ハハハ、そうですね。水着も似合っていて、皆さん綺麗です」
「それじゃあさ! この中で一緒に海とかプールに行くとしたら、誰が良い?
あーっと…………スクール水着の人は除いてね。誰の水着姿とデートしたい?」
「ハ、ハルナったら、いきなりネギ先生に何言ってるの…………」
「あや? やったらちゃんとした水着を着てくればよかったわぁ」
ム? 妙なことが始まったな。
となると、候補は私と宮崎のどか、雪広あやか、長瀬楓、那波千鶴、早乙女ハルナの6人か。
………………私の勝ちだな!
宮崎のどかはともかく、後ろの4人のような露出が多い水着をネギは好まんはずだ。
「え? えーっと、そうですねぇ。
…………皆さんお綺麗ですけど、エヴァさんか宮崎さんですかね」
「そ、そんな!? ネギ先生!?」
「アラアラ、残念ね。あやか」
「振られてしまったでござるよ」
「よかったですね、のどか」
「はわわわ…………ネギ先生ぇ…………」
フハハハハ、そうだろうそうだろう。宮崎のどかも選ばれたのは気になるが、先に名前を呼ばれたのは私の方だ!
やはりネギは私のような女が好みのようだな!
「ありゃー、残念。でも、どうして? ネギ君てこういうビキニは嫌いなの?」
「いえ、別に嫌いというワケじゃないですよ。皆さん良くお似合いですし、他にどんな水着が良いかと聞かれれば困ってしまいます。
でも、海やプールでデートってことは、他の男性にも見られてしまうことになってしまうじゃないですか。僕だったらデートする相手がいやらしい目で見られるのは嫌ですね。僕って結構独占欲強いので」
「そういうことでしたの!?
ネギ先生ったら、オホホホホ…………」
「お! 言うねぇ、ネギ君! やっぱりネギ君も男の子だね」
…………。
……………………。
………………………………肉体年齢は10歳のままなんだよっ!
おのれっ! 幻術さえ使えばこのようなことには!!!
「…………つまり私のことは見られても構わないということか、ネギ?」
「そ、そうなんですか…………ネギ先生ぇ……?」
「いえ、そういうことではないですよ。エヴァさんも宮崎さんもとても可愛らしいです。
お2人ならむしろ一緒に歩いて周りの人達に自慢したいですね。「僕はこんな可愛い女の子とデートしているんだぞ」って」
「え!? えへへ…………そんなぁ、ネギ先生ったら…………」
…………なるほど、そういうことか。それなら許してやらんでもない。
イイ女を侍らすのはイイ男の証だからな。ネギがそういう思いを抱いても仕方あるまい。
そしてイイ女の全てを知っているのは自分だけでいいということか。
くっくっく、やはりネギは将来、悪い男に育つだろうな。
「…………素でこれなのかよ。
このガキは天然ジゴロか…………?」
何をブツブツと言っている、長谷川千雨?
まあ、いい。さて……これからどうやってネギを私好みの男に育てていこうかな?
とりあえず『登校地獄』解呪の研究のために家に定期的にやってくるから、仕掛けるとしたらそのときだ。
あとは私の別荘に招待しておいて、いつでも好きなように使っていいと言っておくか。名目は研究のためとしてな。そうすれば煮るなり焼くなり私の好きなように出来る。
くっくっく、感謝するぞ、ナギよ。
『登校地獄』を解かずに死んだと聞いたときは恨んだが、最高の置き土産を残していってくれた。
お前がしてくれなかったことは、お前の息子にしてもらうことにしよう。
恨むのならネギを置いて死んだ自分を恨むがいいさ。
ハァーッハッハッハッハッハ!
━━━━━ 後書き ━━━━━
ちなみにエヴァの水着は単行本11巻のワンピースの水着です。
そしてナギが生きているということはまだエヴァには言ってません。
今でも十分良い関係を築けているし、そもそも原作のように直接会ったわけではないので説得力に欠けると思っているからです。
作者的に、エヴァならこういうこと考えそうだなぁ、と思ったんですが、いかがでしたでしょうか?
そして作者はトランクス派です。
え? そんなことはどうでもいい?