━━━━━ 長谷川千雨 ━━━━━
ちう > おハローーー(・▽・)p みんな元気ーーー!?
ちう > ちうは今日も元気だピョーーーン!!!
ちう > 今日も大変だったんだよー(><)i
ちうファンHIRO > また忍者信じてる外国人の子供?
通りすがりB > 10歳じゃしょうがないんじゃないw
ちう > その子自身は悪い子じゃないんだけどね
ちう > ただ周りの子達が常識知らずだから
ちう > その子に悪い影響与えないか、ちう心配なんだー
アイスワールド > さっすがちうタン
ちうファンHIRO > まるで天使のように優しいな
ちう > え~~~? そんなことないよ~~~♪
ちう > でもありがとみんなーーー(>▽<)/
ちう > 今日はお礼にニューコスチュームをお披露目するよ♪
ああ、至福の時。何て気持ちいいの…………。
あのガキのせいでささくれ立った心が癒される…………。
何であのガキはホイホイと女に着いていくんだよ!? 警戒心てモノがねぇのかっ!?
風呂場のときのマグダウェル見てたら、あのガキ狙いってのが一目でわかるだろうがっ!!!
コンコン
しかも今度は桜咲までもかよ。長瀬からの報告では、週3の割合であのガキと一緒にマグダウェルの家に通い詰めてるみたいだし…………。
あいつはこういうのに興味ないと思っていたんだがなぁ。
ああ、やっぱりクラスにマトモな奴はいないんだ。ショタコンがあんなに多いなんて……………………。
コンコン!
捻くれたガキは嫌いだが、ああまで人を疑うことを知らないような純真すぎるガキも苦手だ。
田舎暮らしとはいえ、何であそこまで世間知らずに育ったのかね?
ドンドン!
…………いや、世間知らずじゃないな。一応物事は知っている。
ただ疑うことを知らないのと、物分りが良過ぎるだけなんだ…………。
「長谷川さ~ん? いませんか~~~?」
諦めちゃ駄目だ。あのガキをマトモな道にいさせることが出来るのは私だけなんだ。
クラスの連中が暴れるにしても、何とか日本の普通がああじゃないことを認識させなきゃ…………。
「長谷川千雨さ~~~ん!?」
って、さっきからうるせぇな?
何であのガキが私を呼んでるんだよ?
「ちうさ~~~ん? いませんか~~~?」
…………。
……………………。
………………………………何でさっ!?
「あれぇ? さっき中から「ちうは今日も元気だピョーーーン!!!」って聞こえたのに…………」
げぇっ!? 口に出してたっ!?
キーボード打つときに同時に口に出す癖がっ!?
「んー? 寮長さんに聞いてみるかな?」
ちょ!? おま!? 待て、このガキャ!!!
「ちょ、ちょっと待てっ!」
「何だ、居たんじゃない…………ですか。長谷川さん」
うお!? 首が180度ぐらい回って後ろ向きやがった!? 気持ちワリィッ!!!
何だよ? 何かおかしなモンでも…………って、ヤベェッ! コスプレ衣装のままだった!?
「と、とりあえず中へ入れっ!!!」
「え!? ちょ、ちょっと待ってください!?」
ええい! 抵抗すんな!!!
こんな姿誰かに見られたら、今後外に出られない。何とかこのガキを口止めしなきゃ…………。
「な、何で鍵をかけるんですかぁっ!?」
「いいから! い、今廊下に他に誰かいたのか!?」
「ヒィッ!? い、いませんでした、けど…………」
よし、それならコイツの口止めをすれば大丈夫だ。
「鍵をかけて監禁なんて…………。
長谷川さんなら雪広さんみたいなことはしないと思ってたのに…………」
グハァッ!!! わ、私があの変人共と同レベル!?
ていうか、いいんちょはこのガキを監禁したことあるのかよ!?
「い、いったい何の用なんだ? 何の用で私の部屋に来たんだ?」
「プ、プリントを届けに来ました。印刷機の調子がおかしくて、帰りのHRに少し間に合わなかったんです。
長谷川さん以外はまだ教室に残っていたから渡せましたけど、長谷川さんは早めにお帰りになられていたので僕が届けに来ました。
別に急ぎのプリントというわけじゃありませんけど、一人だけ渡していないというのはどうかと思って…………」
「ああ、そういえば帰りのHRにお前はいなかったな。
…………別にそんな風に怯えんな。取って食うわけじゃないんだから。ちょっとお願いしたいことがあってな」
「そ、そうなんですか!?
本当に酷いこととかしないんですか!?」
ああ、もう! めんどくさいなぁ。
ちょっとコスプレのことを秘密にしてもらいたいだけなのに。
このガキから見たら確かにコスプレは変かもしれないけど、ここまで怯えることは……………………アレ?
プリントを届けに部屋に来る
↓
ノックしても返事がない
↓
「ちうは今日も元気だピョーーーン!!!」と奇声が聞こえる
↓
更に呼びかけても返事がない
↓
戻ろうとしたらコスプレ女が出てくる
↓
目をそらした瞬間、部屋に連れ込まれる
↓
ドアに鍵をかけられて監禁される
↓
「ちょっとお願いしたいことがあってな」 ← 今ココ
↓
「アッーーーーー!?」 ← 次ココ?
どう見ても不審者です! 本当にありがとうございましたぁっ!!!
「…………ま、待ってください、ネギ先生。落ち着いて話を聞いてください」
「だ、大丈夫です。僕は落ち着いています。
ですから、長谷川さんも落ち着いてください」
怯えんな。ジリジリと後ずさんな。
わかったから。私が悪かったのはわかったから。
よし、良い子だからお姉さんの言うことは聞きなさい。大丈夫。別に酷いことしないから…………ね?
ほーら、ネットアイドル女王のちうタンの笑顔だよ~♪
だからそんなに怯えんな。コラ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…………つまり、長谷川さんの趣味はコスプレで、“ちう”というハンドルネームでネットアイドルしてることは秘密にしろ、と?」
「い、いや、そんな命令形じゃなくてですね。
恥ずかしいから秘密にして欲しいな~……なんて…………」
「別に…………構いませんけど」
…………完璧に怯えられてる。小さい子供に怯えられるというのはさすがに精神的にキツイ…………。
ああ、これで私もあの変人集団の仲間入りしちまった。
「…………フゥ。もう大丈夫です。本当に落ち着きました。誰だって人に秘密にしておきたいこともありますからね。コスプレ趣味を秘密にするのは了解しました。
それと、別に無理して丁寧語を使わなくてもいいですよ」
「あ、別に無理してるわけじゃないんですけど…………」
「あと伊達メガネは視力が悪くなるかもしれませんので、あまりしないほうがいいと思います」
「う…………私はメガネつけずに人と会ったりするのは駄目なんです」
「綺麗な顔立ちなのにもったいないです。そのコスプレも最初見たときはビックリしましたけど、よくよく見れば可愛いらしい衣装ですね。
似合っていて可愛いですよ、長谷川さん。その…………バニースーツ?」
いや、確かにウサギをモチーフにした衣装だけど、バニースーツとは違うんじゃないか。
というか、言いよどむってことは、このガキはバニースーツ知ってんのか!? とんだエロガキだな!?
というか真顔で褒めんなっ!
クソッ、外国人は日本人と違って、オブラートに包まないで直接的に女を褒めるってのは本当らしいな。
「いや、ウサギをモチーフにしたレオタードなどの身体の線が出る衣装がバニースーツの定義らしいので、長谷川さんのその服は定義からするとバニースーツです」
「細けぇんだよっ! っていうか、ガキがそんな知識持ってる必要はねぇ!
どこのどいつだ!? お前にそんな知識植え付けたのは!?」
「ゲームとかアニメのキャラによくいるじゃないですか」
「子供がそんな不健全なもの見んなっ!
…………おい? 何で目ェそらすんだ?」
「え? だって不健全なもの見ちゃ駄目だって長谷川さんが…………」
「私が不健全だってか!?」
あ、いや…………確かに10歳の子供にこんな格好は目に毒だが。
それに自分で自分の趣味全否定だよ、おい。
「冗談です。このぐらいは許してくださいよ。連れ込まれてドアに鍵をかけられたときは本当に怖かったんですから。
…………雪広さんのときはお茶に付き合うだけで済みましたけど。」
「か、からかったのかよ、てめぇ………………あー、いや。私が悪かったです。この格好見られて慌ててしまいまして。
それといいんちょのことは諦めてください。アレはもう病気の類です」
「はい、わかりました。この話はこれでお終いにしましょう。僕はわざわざ他の誰かに言い触らしたりしないので安心してください。
それと長谷川さんはさっきの口調の方が、生き生きしていて魅力的ですよ。
猫被りたいのはわかりますけど、事情を知った僕の前ぐらいでは素の長谷川さんを見せていただけると嬉しいです」
「ばっ!? 馬鹿かてめぇ!?
教師が生徒を口説いて良いと思ってんのか!?」
「え? そういうつもりじゃありませんけど?
ずっと猫被っているのはストレス溜まるでしょう。それに他人がいるならともかく、僕と二人っきりのときはもう取り繕っても無駄なんですから、無理しないで普段の口調を使ってもいいじゃないですか」
「べ、別にお前と二人っきりになんかならないよ…………」
「いや、今二人っきりじゃないですか。というか既に普段の口調じゃないですか。
あとは何か相談とかあるときも、その口調で結構ですよ」
「…………わかったよ。考えとく。お前に相談することがあるかどうかはわからないけど…………」
…………とんだ醜態晒しちまった。
確かにこれ以上取り繕っても、もう無駄以外の何物でもねーんだが…………。
「授業に関係ないことでも大丈夫ですよ。部活や家庭、趣味のことでも何でも。
まぁ、僕みたいな子供に相談しようと思っていただければですが。そのときは精一杯親身になって対応しますので」
「フン…………そんな機会があったらな」
「あ、それと長谷川さんはもうちょっと自信を持ってもいいと思いますよ。せっかく可愛いんですから」
「う、うるさいな。真顔で褒めるなよ…………」
外国人で感性が違うから仕方がないとはいえ、このガキは…………。
そもそもハイスペックなウチのクラスの中でも、群を抜いてハイスペックなんだよな、このガキ。
10才なのに教師として優秀だし、女に囲まれてても紳士だし、風呂場でもいやらしい目で見てこなかったし、ガキの癖に結構いい肉体していたし…………。
宮崎やマグダウェルが惚れるのもわかる気がする…………って、そうじゃねぇだろ! 何考えてんだ、私は!?
…………う、マズイ。何だか急に恥ずかしくなってきた。私は何でこんな格好を二人っきりでガキに見せてんだ。
「どうしました? 急に顔が赤く…………?」
「べ、別に何でもねぇよ…………」
「? あ、もしかしてジロジロと見るの失礼でしたか?」
「た、確かに恥ずかしいことは恥ずかしいが…………」
「? んー…………? ああ、“綺麗な顔立ち”とか“生き生きして魅力的”とかは本心ですからね。
別にお世辞とかで言ったつもりじゃないですよ」
「だ、だから真顔で褒めんなっつーの!」
…………外国人で感性が違うから仕方がない外国人で感性が違うから仕方がない外国人で感性が違うから仕方がない外国人で感性が違うから仕方がない外国人で感性が違うから仕方がない…………。
だ、駄目だ。考えれば考えるほど意識しちまう…………。
10歳のガキ相手に何でこんなに照れてんだよ、私は?
「さて、名残惜しいですが、そろそろ僕はお暇しなきゃいけないです。
このあと学園長と会わなきゃいけなくて…………」
な、“名残惜しい”って何だよ!?
もうちょっとここにいたいってのか!?
そ、そうじゃない! これは世間知らずなガキの戯言だ!
だから私が意識することじゃない!!!
「というわけで、ドアの鍵を開けてもいいでしょうか? そしてお暇させてもらってもいいでしょうか?
いやぁ、ずっと長谷川さんの姿を拝見していたいのですが、学園長に用事がありまして。残念ですねぇ。名残惜しいですねぇ。
…………コスプレのことは誰にも言いませんので」
…………え? あれ? まだ怯えてる?
そういえばドアに鍵かけて監禁中だったな。
ってことはもしかして…………今までのは私の機嫌をとるための褒め殺し?
……………………べ、別に変な勘違いなんかしてねぇからなっ!!!
━━━━━ エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル ━━━━━
「どうしたんじゃね、ネギ君? 何だか疲れてる顔をしとるが…………」
「あ、いえ…………ちょっと面白半分で首を突っ込んだら、思ったよりも大事になってしまって。
まぁ、無事に解決できたので問題はありませんが」
「ふぅむ。それならよいがの」
「それと金曜日のバレンタインですね。日本のイベントはある程度勉強してきたので、バレンタインは2-Aの皆さんで大騒ぎになると思っていたんですが、何故かまったくと言っていいほどバレンタインの話題が出てこないんですよ。
静かなのは結構なんですが、何だか嵐の前の静けさのような気がして、それが逆に恐ろしいというか…………。
明日菜さんと木乃香さんが最近何だかやけにご機嫌なのが唯一の救いです」
「…………強く生きるんじゃぞ」
「アッサリと見捨てないでくださいよ。
タカミチも出張から戻るのは14日の夕方で、それまで僕一人で2-Aの相手しなきゃいけないのに…………」
ハッハッハ。バレンタインはカオスになるだろうから諦めろ。
諦めたらいろいろと楽になるぞ。
「だから相坂さよのことはバレンタイン後に行なうのか?」
「そうですよ、エヴァさん。それに相坂さんが乗り移る用の人形は出来てますけど、まほネットに注文した年齢詐称薬がまだ届いていないですしね。
相坂さんには人形に乗り移ってもらって、年齢詐称薬で見た目を誤魔化してもらえれば授業に出ることも出来ます。年齢詐称薬は結局のところ幻術ですから。
しばらくの間はそれで過ごしてもらい、生活に問題なかったら常時幻術がかかる魔法具でもつけてもらいましょう。
当日は桜咲さんに立会いをしてもらう予定ですが、念のために龍宮さんにも声をかけておきたいです」
「ウム。書類関係の準備は出来ておるよ。
…………しかし、龍宮君はどうじゃろ? そこまで必要かの? ワシも立ち会うつもりじゃし、戦力が多すぎないかの?
そもそも危険なコトはないと思うのじゃが…………」
「龍宮さんには護衛の他に、人形に乗り移った相坂さんを魔眼で見てもらって、問題がないかどうかを確認していただきたいんですよ。
それといくら学園長の同級生だったからって、警戒しないでいいわけじゃありません。
確かに60年地縛霊やって問題を起こしていないので、危険はないと思いますけどね。あくまで“念のため”です」
「まあ、龍宮マナの魔眼で見て、問題なければ安心は少しは出来るな。さすがの私も人形に幽霊を乗り移らせたことなんてのはないから、どうなるかはわからん。
あ、もちろん私も立ち会うぞ」
「そういうことなら構わんぞい。ワシの方から依頼しておこう」
「予定としてはバレンタインの夜を考えています。
バレンタインは皆さん祭りのように騒ぐことになるでしょうから、夜になったらわざわざ学校に来るような人はいないでしょう。
しかも、金曜日の放課後なら尚更です」
「わかったぞい。ワシの方もそれで予定を空けておこう」
うむ。これで相坂さよの話はお終いだ。
ではこれからが本題だな。そのためにわざわざジジイの部屋まで来たんだから。
「茶々丸さんも入れた僕達6人なら、大抵のことは大丈夫でしょうね。
学園長も何かあったらお手伝いをお願いします」
「ウム。わかっておるわい」
「それとは別に学園長にお聞きしたいことがあるんですけど」
「何かね? 何でも聞いてみなさい、フォッフォッフォ…………」
ご機嫌だな、ジジイ。
昔の同級生が救われるとあってはご機嫌にもなるか。
「エヴァさんの力を封印している“学園結界”のことなんですけど?」
「フォッフォッフォ…………フォワッ!?」
「どういうことなんだ、ジジイ?
返答次第ではタダでは済まさんぞ…………」
くそっ! 変だ変だと思っていたが、まさか電力を利用した“学園結界”で私の力を封じていたとは…………。
てっきりナギの奴が強引に『登校地獄』をかけたせいで、私の力も封印されたのだと最近まで思っていた。
ネギが解呪の研究の途中に気づいてくれなくても、茶々丸の調べでだいたい予想は出来ていたがな。
しかし、改めて事実を確認すると腹が立ってくる…………。
「エヴァさん、気持ちはわかりますけど、そう怒らないでくださいよ。
まず僕に任せていただける約束でしょう」
「わかってるよ、ネギ。
ジジイ、キリキリと話せ。ネギのおかげでだいたい予想はついているんだ」
「…………あー、やっぱり気づいてしまったかの。
ネギ君がエヴァの解呪に取り組んだときから予想はしておったが…………」
「エヴァさんは父のかけた『登校地獄』のせいだと思っていたみたいですけどね。僕もそう説明されたために気づくのに遅れてしまいました。僕もまだまだ未熟です。
それで学園長に聞きたいことなんですが「“学園結界”は15年以上前からあったんですか?」、そして「“学園結界”は目標とした対象のみを封印できますか?」の2点です」
「ム…………それを聞くということは本当に事情が予想できているようじゃの。
答えは「15年以上前からあった」、そして「そんな器用なことは出来ん」じゃよ」
…………なるほどな。結局ネギの予想通りというわけか。
だからといって、ムカつくことには変わらないのだが。
「でしょうねぇ。エヴァさんが麻帆良に来てから“学園結界”を張ったとしたら、エヴァさんはそのときから力を封じられることになります。
そんなことならエヴァさんが気づかないわけないです」
「その通りじゃ。言い訳になってしまうが、エヴァに“学園結界”が効いてるとわかったのは12年前のことなんじゃよ。
ナギが約束通りに3年経っても呪いを解きに来なかったので、ワシの方でも解呪の研究をしたのじゃが、そのときにようやく気づいての。
エヴァがナギに麻帆良にいきなり連れて来られたときには既にこうじゃったので、てっきりナギが封印したのだと思い込んでおったんじゃ」
「学園長もエヴァさんと同じ勘違いしてたんですね。
というか、『登校地獄』かけただけなのに、そんな勘違いされる僕の父っていったい…………」
「い、いや、ナギのことだし…………なぁ、ジジイ?」
「ま、まぁ、そうじゃの。ナギだからしょうがないというか…………」
「…………ハァ、やっぱりデタラメな人なんですね、父は。僕とは随分違う人のようです」
「「………………………………」」
「え? 何です、その沈黙は?」
突っ込まん。私は絶対突っ込まんぞ。ジジイ、お前が突っ込め!
あ、目を逸らすな。上司たるお前の役目だろう!
「そ、それでじゃな! エヴァにそのことを言おうとも思ったのじゃが、その頃のエヴァはナギが約束通りに来なかったから荒れておっての。つい言い出せなかったのじゃよ。
エヴァ自身だって、そんなこと言われたら当時の自分がどうしていたか予想つくじゃろ?」
話も逸らすな。
…………ま、言っていることはわかるがな。あの頃は確かにナギに裏切られたと思って荒れていたからな。
「それでズルズルと今の今まで言わなかったと?」
「言いにくいのじゃが、そういうことじゃのぉ。
ま、勘弁しておくれ。コッチにも事情があったんじゃ」
「フン! まあいい…………どちらにしろ、今まで15年間気づけなかった私も間抜けだったんだからな。
それよりも、やはり私を“学園結界”の対象外にすることは出来んのか?」
「無理じゃ。さっきも言ったが、そんな器用なことは出来ん。
“学園結界”は結界内の高位の魔物・妖怪を動けなくするものじゃ。例えば学園地下に石化封印している無名の鬼神なんかのためにの。
そもそも力が封印されているとはいえ、結界内でエヴァが五体満足に動けている方が不思議なんじゃよ。ましてや満月の日では吸血鬼の力を取り戻すなんてことはの。
そのことが原因で、“学園結界”がエヴァに効いているということに気づくのが遅れてしまったのじゃが…………」
「やっぱりそういうことでしたか。
ホラ、昨日僕が言った通りじゃないですか。エヴァさんが“強すぎる”のが駄目なんですよー」
ハッハッハ。
それは事実なのだが、そこまでハッキリと言うな、ネギ。
しかし、“強すぎる”のがいけないとはな。
フ、参ったな。まさか“強すぎる”せいで、こんな不利益があるとは。“強すぎる”というのも困ったものだ。
最初にこの事実を知ったときは学園関係者を全員血祭りに上げようかと思ったが、そういう事情なら許してやろう。
「学園長としては、エヴァさんの力を取り戻すのに何か問題はありますか?」
「…………個人的にはない。この15年間でエヴァのことも信用しておるからの。
しかし、この学園の責任者としては無理じゃ。
エヴァ1人のために“学園結界”をやめるわけにはいかんし、エヴァのみを対象外とするような“学園結界”の改変には、エヴァの懸賞金が数十人分はおそらく必要じゃ。さすがにそんな大金は出せん」
「そこまで大事にはしないです。試してみたいことがあります」
「何じゃね?」
「エヴァさんを封印具で“学園結界”に反応しなくなるぐらいにわざと力を封印します。
それならきっと、今より結果的には力を取り戻せるはずです」
「…………フム。実を言うと、そのことはワシも考えついていた。プライドの高いエヴァがそんなこと了承しないじゃろうと見送ったが。
エヴァが構わないのならよいが、いいのかの?」
「構わん。力を1割でも取り戻せれば、花粉症とかに悩まされなくとも済むからな。
ただしネギに封印具を用意させるのが条件だ。ネギなら信頼できるからな」
「既にまほネットで注文済です。年齢詐称薬と一緒に届きます。
エヴァさんには僕の私用や相坂さんのことでも別荘を使わせていただいてるので、それのお礼も兼ねて僕から贈らせて頂きます。形状はエヴァさんのご希望で指輪型ですが」
「指輪? ネギ君からの贈り物?
…………エヴァ、どの指に嵌めるつもりじゃ?」
「べ、別に左手の薬指に嵌めようとなんか思っておらんぞっ!」
「アハハ、やだなぁ。結婚指輪じゃあるまいし。
左手の小指のサイズで注文しました。僕は知りませんでしたが、左手の小指の指輪には“変化の象徴”という意味があるらしいですね」
…………“願いの成就”や“自分の魅力をアピールする”、“チャンスに恵まれる”などの意味もあるが黙っておこう。
クソッ、桜咲刹那に別荘の使用を許可するんじゃなかった。
最近奴のネギを見る目が怪しいぞ。
あのネギが頼みごとをしてきたことに浮かれて、別荘内でネギと二人きりになることを忘れてた。
とりあえず世話役の名目で茶々丸の姉を置いておいたが、いくら治療とはいえ、まさかネギと桜咲刹那が抱きしめあいながら寝ているとは。
まだ変なコトはしていないらしいが、油断は出来ん。
だから桜咲刹那には、ネギから贈られる指輪をジックリと見せてやることにしよう。くっくっく。
ネギを狙ったのは私の方が先なんだからなぁ…………。
━━━━━ 後書き ━━━━━
千雨ってムッツリスケベなタイプだと思います。
学園祭のときにネギと仮契約するシーンなんか特にw
それと何で千雨ってコスプレ趣味ばれてなかったんですかね?
キーボード打つときにあんなに大声で騒ぐのに。
“学園結界”についてはオリジナル設定です。一応不自然ではないように出来たと思います。
しかし、ヘルマンが麻帆良内で戦えた理由に困ってしまいます。
高位の魔物・妖怪はNGだけど、高位の悪魔ならOK? んなわけないか。
フェイトのツテでMM元老院から手に入れた、学園長さえ知らない“学園結界”をすり抜けれる裏コード的な護符でも持っていたことにしますか…………。
そしてもちろん、せっちゃんに立ち会ってもらう=楓の監視付き、です。
ネギ達の運命は如何に!?