━━━━━ 宮崎のどか ━━━━━
『こちら楓、刹那と真名がエヴァ殿、茶々丸殿と正門玄関前で合流したでござる。
拙者は約1km先から望遠鏡で監視しているでござるが、もう少し近寄ったら真名に気づかれるでござるよ』
「こちら木乃香、ウチラも学校に行くわ。20分ぐらいで着くから、それにあわせて合流してな。
ありがとな楓。あとでウチの部屋に来てプリン食べてええで」
「…………何で1km離れてるのに気づかれるんだよ?」
「龍宮さんも…………というのはあまり考えられないですね。
冷静になって考えれば、何か事情があるのでしょうか?」
「そ、そうだよね。ネギ先生が変なことするわけないもんね」
「…………甘いわよ、本屋ちゃん。ネギが変なこと考えてなくても、相手がそうじゃないとは限らないんだから」
そ、そんなぁ? は、はわわわわ…………だとすればいったいどうしたら?
せっかく今日のバレンタインパーティーを楽しく終わることが出来たのに…………。
私は“2、3日は持つチョコを作るグループ”だったんだけど、他のメンバーの好意でネギ先生にチョコを渡す役を譲ってもらえた。
皆で作ったチョコだけど、渡すときにネギ先生に「ありがとうございます、宮崎さん」ってお礼を言われちゃった。エヘヘ。
「しかし7時過ぎなのに、ネギ坊主は学校に何の用アルネ?」
「さぁ? 本人達に聞いてみないとわからないです。
…………ところで何でくーふぇさんもいるのですか?」
「ネギ坊主はあれから全然手合わせしてくれないアル。
ここは一つ弱みを握て、それをネタに手合わせをお願いしようと思たアルよ」
「くーへ、それ“お願い”やない。“脅迫”や」
「まぁ、ネギなら大丈夫でしょ。…………それに弱みになるようなことをネギがしていなければいいんだしねぇ」
今私と一緒に居るのはユエ、アスナさん、木乃香さん、くーふぇ、千雨さんの5人。ハルナはあのときいなかったし、原稿が忙しいみたいだからハルナには秘密。
あとは刹那さんを監視していた楓さんにも協力してもらっている。…………本当にクラスメイトを監視なんてしていいのかな?
木乃香さんの話では、今日のパーティーが終わったあとにネギ先生は用事があるので夕飯はいらない、と言ったみたい。しかも帰りは遅くなって、泊まりになるかもしれないなんて…………。
それにあわせて楓さんから刹那さんが外出するという報告があったことで、木乃香さんから全員集合がかかったの。
「で、でもいいのかな? こんなことして…………」
「大丈夫ですよ、のどか。
こんなこともあろうかと、学校の机の中に英語の教科書を忘れておきました。何かあっても言い訳は出来ます」
「奇遇やね、ゆえ。ウチも実を言うと筆記用具忘れたんよ」
「…………怖いよ、お前ら」
「そもそも何で千雨ちゃんまでいるのよ? 確かに事情は知っているけどさ…………」
「あのときのお前等の顔見たら放っておけるわけないだろうが。
…………おい、誰も刃物なんか持ってきてねぇだろうな?」
「え? 鞄の中にカッターは入ってますけど」
それがどうかしたのかな?
「…………宮崎か。お前ならきっと大丈夫…………だよな?
他の奴は危険物持ってるんなら置いてけよ。殺人事件なんか起こされちゃたまんねぇ」
「殺人事件て何よ? そもそも危険物なんか持ち歩いてないわよ。楓なら手裏剣とか持ってそうだけど」
「いや、アイツはいい。非常識な存在だが、ストッパー役が私一人なんて無理ゲーすぎる」
? どういうことだろ?
「皆さんそろそろお静かに。騒ぐと校舎内にいる人に気づかれる可能性があるです」
「楓はまだ来ておらんようやな。…………学校に着いたんはえーけど、夜の学校って不気味やわ」
学校に着いた。…………着いたんだけど、何か怖い。
夜の無人の学校がこんなに怖いなんて思わなかった。まだ校舎の中に入ったわけでもないのに。
あ、あれ? 何か身体も震えてきた?
「な、何アルか? 身体が震えてくるアルよ」
「べべべ別に怖くないですよ。足が震えるのは武者震いというやつなのです…………」
「ゆ、ゆえ~、何か変だよ~」
「た、確かにいつもと学校の雰囲気違うとるなぁ…………」
「何か寒気も感じるわね…………」
「おかしいだろ、コレ。何で玄関にお札なんか貼ってるんだよ…………」
皆もおかしく感じてるみたい。怖く感じるのは私だけじゃないんだ。あんなに強いくーふぇまで怖くなってるみたい。
それに玄関にお札まで…………って、お札? 何処に?
「「「「「えっ?」」」」」
「? な、何だよ?」
「お札って…………どこにあんの?」
「私には見えないアル」
「すすすすすいません、私にも見えないです。こここここうまで暗いと…………」
「千雨ちゃん、眼鏡の度あってないんじゃないの?」
「視力は1.2だよ。これは伊達眼鏡だ。何処も何も…………目の前に貼られてんじゃねーかよ」
千雨さんが目の前にあるガラス扉の真ん中を指差すけど…………見えない。他の皆も見えてないみたい。
お知らせのプリントか何か貼ってあるのかとも思ったけど…………。
「遅くなったでござる。…………おや? 全員どうしたでござるか?」
「…………何で皆こんな怪しげなお札見えてねーんだよ。
おい、長瀬。ここにお札貼られてるの見えるか?」
「そこにお札? 何のこ…………ム? …………見えるでござるな。
確かに千雨殿の言われる通りにお札が貼られているでござる。しかしこれは…………」
「そうだよな見えるよな。私だけじゃねーよな。私は変じゃねーよな? …………って、忍者と同じモン見えてる私の方が明らかに変じゃねーかっ!?」
「落ち着くでござるよ、千雨殿。そんなに騒ぐと誰かに気づかれてしまうでござる。
それに拙者は忍者ではござらん」
「えっ? 楓まで何言ってるのよ?
いったいどこにお札なんて……………………あった」
ええ? アスナさんがペタペタと千雨さんが指差したところを触っていたら、急にお札が見えるようになった。
いったいどういうことなの?
「アレ? 急に震えが止またアル…………」
「あ、本当だ。怖い感じがなくなったね、ゆえ?」
「ほ、本当ですね。危うく漏ら…………何でもないです」
「何なんだよ、コレは? オカルトの類か…………?」
「あー…………オカルトというか何というか」
何なんだろう、いったい?
ただネギ先生に会いにきただけなのに、変なコトになっちゃった。
いつもと違って、とても怖い感じがする学校。見えないお札が玄関に貼ってあって、それをアスナさんが剥がすと怖い感じがなくなった。
そのお札が人払いをしていたみたいに…………。
まるでこの前読んだライトノベルみたい。
「………………あれぇ?
このお札の字、おじいちゃんの筆跡と似とるなぁ」
え? おじいちゃん?
木乃香さんのおじいちゃんといったら…………。
「学園長先生?」
「ウン。おじいちゃんの書を見たことあるけど、それに似とるんよ…………。
そういえばチョコ渡したとき、おじいちゃんは今日遅くまで仕事でチョコを夜食に食べる言うてたなぁ」
「ということは、学園長も校舎内にいますよね…………」
「おいおい、学園長まで絡んでるのかよ?」
「どーするアル? 何かヤバイ感じアルよ」
「…………いや、ウチはいくで!」
こ、木乃香さんの目が燃えちゃってる…………。
大丈夫なのかな?
こんなもの貼ってあったということは、学校の中に誰も入れたくなかったということだから、もしかしたら危険なことがあるんじゃ…………。
あ、でもネギ先生がまだ校舎内にいるってことは、もしかしたらネギ先生が危険なことに巻き込まれているかも。
は、はわわわわ…………そうだったらどうしよう?
「あくまでウチラは忘れ物を取りに来ただけや。別に疚しいことなんかあらへん。
もしかしたら、忘れ物を取りに行く途中で変なもの見るかもしれへんけど、あくまでそれは偶然な不幸な事故や」
「おいおい、近衛。世の中には相手の事情なんか知ったこっちゃない人間なんか、お前が知らないだけでたくさんいてな…………」
「…………確かにそういう人達はいるかもしれませんが、そんな人達はわざわざ女子中学校を根城にするようなことはしないと思うです」
「それはそうね。というか、女子中学校を根城にするマフィアなんかいたら逆にお笑いなんだけど」
「そう言われると、確かに怖がる必要はないかもしれないアル」
「あー、確かにそうでござるが…………」
そ、そうだよね。そんな人達がわざわざ麻帆良の女子中なんかに来ないよね。
でも、それだったらこのお札はいったいなんなんだろう?
「ここまで付き合ってくれてありがとな、千雨ちゃん。とりあえず教室までは行ってみることにするわ。
実を言うと、筆記用具忘れたのはわざとやないんよ」
「私も行きます。ここまで来たなら英語の教科書を取りに行きたいですし」
「ま、学校なら危険なことはないでしょ。このお札は気になるけどさ…………」
「あー…………わかったよ。私も行くよ。どうせオカルトみたいなものなんて現実にはないはずなんだ。別に怖がる必要なんかねーかんな」
確かに私達が通っている学校に危険なんてないよね。ちょっとぐらいなら大丈夫だよね。
幽霊とかいるわけないし、それに幽霊なんかより新田先生とかのほうが怖いし…………。
━━━━━ ネギ・スプリングフィールド ━━━━━
『…………どういうことでしょうね、いったい?』
『な、何故木乃香お嬢さまが夜の学校なんかに…………』
『忘れ物、でしょうか…………?』
『おい、マズイぞ。楓がコッチを気にしてる。
ネギ先生の認識阻害は大したものだが、即興のものじゃ楓に違和感をもたれるぞ』
『しかし、ネギ先生は現在認識阻害の魔法と私達の念話中継で精一杯です。
今は息を殺して近衛さんたちが立ち去るのを待つしかないかと…………』
『あ、あの人達と本当に友達になれるんですね!?
もうペンスピニングやコンビニの立ち読みで時間潰したりしなくていいんですね!?』
上から僕、刹那さん、アルちゃん、龍宮さん、茶々丸さん、相坂さん。
ちなみにアルちゃんと相坂さん(人形ver:身長約20cm)は僕の肩に乗り、他三人は僕の左右と後ろにいて僕の肩に手を乗せて、接触式念話で会話しています。
接触式だと盗聴されなくていいんですけど、相坂さんのはしゃぎっぷりがうるさいです。
「…………パーティーのチョコの匂いがまだ染み付いてるね」
「あれ~? 何で教室の明かりついてたのに誰もいないんやろ?」
「この教室だけ消し忘れ、ということはないでしょう。誰かさっきまでこの教室にいたのは間違いないです」
「別に誰か隠れているわけじゃなさそうねぇ」
「(……………教室の隅に違和感を感じるでござる)」
「とりあえず近衛、綾瀬。筆記用具と英語の教科書を取ってこいよ。自分の机に忘れたんだろ」
何だ、忘れ物ですか。焦った。
てっきりエヴァさんとか学園長かと思って、気づくのに遅れちゃったし。
相坂さんの人形への憑依などの作業がアッサリ終わったあと、エヴァさんは学園長と一緒に学園長室に行きました。僕が贈った指輪のおかげで少しは力を取り戻すことが出来たので、それを他の魔法先生に説明しに行ったみたいです。
僕や茶々丸さんもついていこうかと提案しましたが、上機嫌なエヴァさんにそれには及ばないと断られました。
きっと今日僕が贈った指輪を見せびらかしにいったんでしょうね。指輪を贈ってからはエヴァさん凄いご機嫌でしたし。
あとは相坂さんに細かい諸注意や魔法の隠匿のことなどを教えればミッションコンプリートだったんですが…………。
『って、あれ? 刹那さん? 確か学園長から貰った魔法符で人払いしてたんじゃ?』
『…………え? あ、はい! 確かに正面玄関に貼りました。正面玄関に近寄った一般人は学校に入りたくなくなるようになります。
夜はそれ以外の出入り口は封鎖されているはずですが…………』
『でも現にここにいるじゃないか。
不良品か? ケチって学園長手製の魔法符で済ますからだ』
『あれじゃないですか? アスナ様が持っているのが、学園長から頂いた人払いの魔法符では?』
あ、本当だ。よく見ればアスナさんがお札持ってる。
…………ということは『完全魔法無効化能力』のせいですか?
いや、『完全魔法無効化能力』は空間系とかの魔法は無効化できないので、魔法符自体に備わっている“一般人から見えなくなる”という認識阻害は効くから、明日菜さんには魔法符自体が見えないはず。
ということは、適当にドアを触ってたら偶然触った?
…………いや、そうか、長谷川さんか。長谷川さんの認識阻害が効きにくい体質がここに出たのか。
長谷川さんが見つけて、アスナさんが剥がしちゃったのか?
『しかし、式神から何の連絡もなかったのは何故だ?
何かあったら念話してくる手筈になってたのに…………』
『…………式神? 念話?
あ、ごめんなさい。それきっと僕のせいです。相坂さんが人形に憑依する前に張った結界のせいです。憑依するときに他の浮遊霊とか思念波が偶然悪さしないように、教室の外からの人間外の干渉妨げてました』
『おいおい、ネギ先生。“過ぎたるは及ばざるが如し”って言葉知ってるかい?』
いやいや、ちゃんと結界張る前に説明しましたよね!? 式神で木乃香さんの護衛してるって聞いてませんよね!?
…………まぁ、ちょっと“念のため”にしてはやりすぎかな~、と思ってましたけど。
それとちびせつなの存在忘れてました…………。
「それにしても、せっちゃんはどこにいるんやろなぁ?
学校に入ったのは見たんやろ?」
「あい、それは確かに見たでござるよ。
刹那と真名、エヴァ殿、茶々丸殿と一緒に校舎内に入っていくのを確認したでござる」
「気づかれてた、ってことはねーな…………。
1km以上離れた監視だったんだろ。それで気づかれたら怖えーよ」
「そもそもこの2週間、木乃香さんの依頼でずっと監視していたのですよね。
今日に限って気づかれるということはないと思います」
は? 2週間の監視?
『…………刹那さん?』
『も、申しわけありません! 確かに最近見られているような気はしてましたが、てっきり木乃香お嬢さまの視線かと思って…………』
『さすがにこれは仕方がないよ、ネギ先生。私でも1km以上離れたところからの、殺気のない視線は感じ取れない』
いや、僕も気づかなかったから仕方がないですけどね。
殺気や悪意を含んだ気配の感知になら自信がありますけど、麻帆良に来てから注目を浴びることに慣れちゃったのかな。
「玄関前で私達が騒いじゃったから、それで気づかれちゃったのは…………」
「それだったら教室の明かりもちゃんと消すアルよ」
「そうよね。だったら職員室かしら?
確か職員室も明かりついてたわよね」
きっと、はしゃいでた相坂さんを落ち着かせていたときですね。
人形状態で走り回る相坂さんを落ち着かせるのは大変でしたよ。
というか、ずっと刹那さんは楓さんに監視されていたんですか。
となると、朝エヴァさんの家に通っていたことも知られちゃってますかね?
「…………いったい職員室で何やっとるんやろなぁ?」
「…………まさか、朝にエヴァちゃんの家で刹那さんとしてることを、学校でもしてるわけなんかないわよねぇ」
「は、はわわわわ…………どうしよう~~~」
「お、落ち着くですよ、のどか。ネギ先生が破廉恥なことしているわけありません」
「でも、朝に逢引して赤い顔して別れて、日が経つごとに刹那の肌がツヤツヤになっていく、というのはどーゆうことアルか?」
バレテーラ。
しかもかなりヤバイ方向に勘違いされてます。
『…………刹那、10歳児に手を出すのはさすがにマズイと思うぞ』
『ええ!? ネギ先生と刹那さんって良い仲なんですか!?』
『ち、違う! ネギ先生に抱きつかれて寝るのが恥ずかしいだけだっ!』
『ちょ!? 僕は別におんぶでもいいって言ったじゃないですか!?』
『……………………』
『お兄様も恥ずかしがられていましたよね』
いや、あんだけ意識されたら、コッチも意識しちゃうんだよ、アルちゃん。
明日菜さんや木乃香さんは弟とかペットみたいな感じで接してくるから平気だけど、あそこまで恥ずかしがられたらコッチも恥ずかしいんだよ。
「じゃあ、職員室に行ってみようか」
「そうやね。それとおじいちゃんのとこにも行ってみよ」
「結局何もなかったな。そうだよな。オカルトなんて実在しているわけねーよな」
はい。さっさと職員室に向かってください。
当直の瀬流彦先生が居るはずですので、あの人ならうまく誤魔化してくれるでしょう。
その隙に僕達は『ネギ先生、話が終わったのでマスターがコチラに戻られるそうです』って何ですと!?
エヴァさんが教室に戻ってくる?
明日菜さん達と鉢合わせしたらまずいじゃないですか。
『そのまま学園長室にいるように言ってください。
それと学園長に木乃香さん達が学校に来てるこ『ネ、ネギ先生、影の転移魔法が目の前で開きそうなんだが』…………はい?』
聞きたくなかったですよ、龍宮さん。
エヴァさんですか。エヴァさんですよね。力を少し取り戻してから空を飛んだり幻術で大人の姿になったり、いろいろ魔法を使ってましたよね。力を少し取り戻せたのが嬉しくて、はしゃいじゃってるんですよね。
学園長室から2-Aまで影の転移魔法で戻るなんて、何てモノグサな人なんですか。
ああ、転移魔法が開いちゃった…………。
「待たせたな、ネギ! やれやれジジイの話は長くて敵わん。まぁ、お前から贈られた指輪のおかげで最高に良い気分だ。そのぐらいは我慢してやろう!
くっくっく、最盛期に比べるとわずかなものだが、魔法を使えるというのはいいものだな。 改めて礼を言っておこう、ネギ!
…………? そんな教室の隅で何やっている? 龍宮マナや桜咲刹那まで?
さぁ、私の家で宴会だ! 今日のチョコレートパーティーも旨い菓子が食えたのでよかったが、やはりこういう日は旨い酒を飲みたい気分だ。茶々丸、この前ジジイからかっぱらった日本酒を用意しろ!
今日は無礼講だ。相坂さよも龍宮マナも桜咲刹那もよかったら来るが…………どうしたんだ? そんな変な顔して?」
こっち見んな。
無理ですよね、思いっきり名指しされましたもんね。
くそっ! 結界を解かずにいるか、エヴァさんにも効く認識阻害の魔法を使っていたらこんなことには…………。
「何事アルか!?」
「……………………ネ、ネギ先生からの指輪の贈り物?」
「ど、どういうトリックなのですか!? 今魔法といいませんでしたか!?」
「お、おい。今どうやって教室の中に急に現れた? ドアは開かれてないぞ、マグダウェル…………」
「…………やっぱりせっちゃんやネギ君がこの部屋にいるんやね?」
「あー…………やっぱりあの怪しい隅っこでござったか」
「ちょ!? 何なのよ、いったい!?
ネギ!? ネギはどこにいるの、エヴァちゃん!?」
「なぁっ!? き、貴様ら何故ここにっ!?」
うわぁ、どうしよう? 収拾が全然つきません。
今僕達が認識阻害解いても火に油注ぐようなもんですし、静観するしかないんでしょうか?
「…………き…………」
ちょ!? エヴァさん!? 何魔法を唱えようとしてるんですか!?
そもそも目の前にいるのは明日菜さんだから魔法は…………。
「記憶を失えーーーっ!!!」
「キャアアアアアーーーーーッ!?」
ちょ!? 明日菜さんの服が!? 何『武装解除』してるんですかぁーーーっ!?!?
そもそもエヴァさん、それ原作の僕ポジションですよ!!!
「何なのよ、コレーーー!?」
「はええぇぇっ!? アスナの服が吹っ飛んだぁ!?」
「馬鹿な!? 何故魔法が効かない!?」
「魔法!? 魔法って何なんだよ!?」
「魔法使いってやっぱりいたんでござるなー」
「何でそんなに落ち着いているのですか、楓さん!?」
「え? “やっぱり”って…………?」
「アスナ! とりあえずこれ着るアルよ!」
わぁ、大惨事。
今度ばかりはエヴァさんのせいですけどね。
『…………姿見せましょう、皆さん。エヴァさんに任せてたら収拾がつきません』
『こ、このちゃんに魔法がばれてもうた…………』
『いいんですか、ネギ先生? さっきのお話だとオコジョになっちゃうんじゃ……?』
『いや、もう無理でしょう。エヴァンジェリン様がしっかりネギお兄様の名前を呼んでましたし』
『というか紳士だね、ネギ先生。
こういう事態でもちゃんと目を瞑っているなんて…………』
『…………ウチのマスターが申しわけありません』
『いいんですよ、茶々丸さん。とりあえず明日菜さんに服をお願いします。僕はそれまで目をつぶっていますので。
刹那さんは携帯で学園長と連絡をつけてください』
まさか、こんな形で魔法バレするとはなぁ…………。
原作では魔法バレしても多めにみてもらえてたけど、この僕だったらどうなるんだろう?
あれ? そういえば僕が魔法をばらしたら故郷へ強制送還だけど、麻帆良の関係者に僕が魔法使いってことをばらされた場合ってどうなるんだ?
その場合も強制送還?
━━━━━ 後書き ━━━━━
原作通り、明日菜の脱がされる運命は変わりませんでした。
脱がせた犯人は違いますけど。
そして魔法バレです。
考えてみれば、誰かのせいで魔法バレするのはあまりないのではないでしょうか?
真面目な話、麻帆良の関係者のせいで魔法使いってことをばらされた場合ってどうなるんでしょうかね?