━━━━━ 近衛木乃香 ━━━━━
「エヴァさん、正座」
「……………………」
学園長室に入るなりネギ君がエヴァちゃんに正座をするように言ったけど、教室での出来事といいエヴァちゃんの印象変わったわ。
何だか学園長室には女子中では見たこともない先生方がたくさんおって、ウチラが入るなり注目されてもうた。おかげでのどかなんか涙目になってしもうてる。
確かにちょっと怖いけど、ここはビクビクしたらアカン。強気で攻めな!
「おじいちゃん! これはいったいどういうことやの!?」
「お、落ち着いてくれんかの、木乃香。こうなってしまったからにはちゃんと説明する」
「せっちゃんやネギ君達はいったい何なんや!? …………というか、ネギ君の肩に乗ってる自分で動くお人形さんはホンマに何?」
「は、はい! 私は相坂さよといいます!!!」
「「「「「えええぇぇっ!?」」」」」
お人形さんが喋った!?
「人形が喋ったアル!?」
「ネギ先生の腹話術ですか!?」
「いえいえ。違いますよ、綾瀬様。相坂様は人形に乗り移った幽霊です」
「ア、アルちゃんまで言葉をっ!?」
「おいおい、勘弁してくれよ。マジモンのオカルトかよ…………」
うわぁ、お人形さんに元気一杯に手を挙げて自己紹介されてもうた。しかもアルちゃんも人の言葉喋ってるし。
こんなときに何やけど、2人(?)ともカワイイなぁ…………。
「だから落ち着いてくれというに…………さて、どこから話そうかのぉ…………」
「…………僕達から説明しましょうか、学園長?」
「スマンの、お願いできるかの?
ネギ君とアルちゃんからの方がわかってくれるじゃろ」
「かしこまりました、学園長先生」
「わかりました。僕は木乃香さん達の担任補佐ですからね。
さて、それでは皆さん。単刀直入に言いますと、僕達は“魔法使い”です」
ま、魔法…………?
確かにあのエヴァちゃんが急に教室に現れたのや、アスナの服を吹き飛ばしたのは魔法みたいやった。
…………あ、アスナがプルプルと震えとる。
エヴァちゃんに裸にされたことを思い出してしもたんやろか?
「ほ、本当にネギ先生は魔法使いさんなんですか?」
「…………周りの大人の方々が口を挟まないということは、事実みたいですね」
「魔法使いでござるかー。やっぱりいたんでござるな」
「楓は気づいていたアルか!?」
「ハハハ…………もう笑うっきゃねーよ。何なんだよ、この三文小説みたいなストーリーは…………」
「…………つまりエヴァちゃんは、その魔法で私の服を吹き飛ばしたのね」
マズイわ。アスナが殺意の波動に目覚めかけとる。男の人が教室にいたら血の雨が降ってたんやろなぁ。
あ、ネギ君は除外やで。
ちゃんと目つぶってたみたいやし、そもそも一緒に寝てるくらいやからな。
「百聞は一見に如かずです。ネギ先生、よろしければ目の前で魔法を見せてくれませんか?」
「別に構いませんが、どういうのがいいですか?
初級魔法の火を灯す魔法とかありますけど、手品みたいに見えますからね」
「な、何でもいいです。現代の科学じゃ出来ないことを見せてください」
「うーん、じゃあ、僕の得意な回復魔法をお見せしますか。
術式兵装『咸卦治癒』」
ネギ君が両手に光の球みたいのを出して、それを一つにあわせるとネギ君の様子が変わってもうた。
別に怖いというわけやないんやけど…………。
アレ? 女性の先生達が何かうらやましそうな顔でコッチみてくるんやけど、どうしたんやろ?
「怪我してる人はいませんから…………長谷川さん?」
「な、何ですか?」
「額に治りかけのニキビありますよね。治してみせましょうか?
ちょっと額に触れさせてください」
「え? 回復魔法ってそんなことも出来るのですか?
想像していたのと大分違うです」
「そうだね。てっきり怪我とかそういうのしか治せないと思ったけど…………」
「ああ、基本的にゲームやアニメに出てくる魔法を想像してもらっても構わんよ。
ネギ君のアレはネギ君オリジナルでの。普通の回復魔法ではニキビとかは治せないんじゃが、ネギ君なら治せてしまうんじゃ。
はっきり言って、回復魔法でネギ君に敵うものは麻帆良に一人もおらんよ」
「へぇ、ネギ君凄いんやなぁ」
「魔法使いにも向き不向きがあるんですよ。僕みたいに回復魔法が得意なのもいれば、ゲームやアニメに出てくるような攻撃魔法が得意な人もいます。
それでは失礼しますね、長谷川さん」
「ちょ、ちょっと……………………あ」
何やの!?
その最後の「あ」って!?
…………千雨ちゃんめっちゃ気持ち良さそうな顔しとる。
「…………凄い。よくわかんないけど凄い。
うわ、何かあったかくてポワンとしてくる…………」
「これは怪我の治療、体力回復促進等の他に、美肌、シミ、ソバカス、肌荒れ、冷え性などにも効果があります。
欠点としては直接触れないと効果がないのと、どうも患者の方がリラックスしすぎるみたいです。エヴァさんや刹那さんも寝てしまうぐらいなんですよ」
「女性教師陣がコチラをうらやましそうに見ているのはそういうことですか」
「せっちゃんも寝てもうたの? …………もしかして、せっちゃんが顔を赤くしてエヴァちゃんの家から出てきて、お肌がツヤツヤになってたのって…………」
「そ、そんなことまでご存知なのですか!?
その…………正直に話しますと、ネギ先生の治療は気持ちよくてですね。気づいたらネギ先生におんぶされていて…………涎を垂らして寝ていまして。
おかげでその日は恥ずかしくてネギ先生の顔が見れませんでした」
「そりゃあ確かに恥ずかしいアルな」
「だからあんなに慌てていたでござるな」
「なるほどねぇ、そういうことだったの。ネギと変なことしてなくてよかったわ」
「…………はい、終わりました。誰か鏡持ってませんか?」
「あ、ネギ先生、私持ってます」
「すまん、宮崎。貸してくれ。…………スゲェ、本当に治ってる」
ふわー、凄いわぁ。
魔法って本当にあるんやな。
「治りかけだったからこんなに早く治せたんですけどね。もうちょっと酷かったらそれなりに時間はかかります。
とまぁ、こんな感じで魔法が存在することは信じていただけましたか?」
「…………信じます。こんなこと現代科学じゃ出来ないですよ。
うわぁ、何か肌の感じも違ってるよ…………」
「いいなー、千雨ちゃん。ネギ、私にも後でお願い」
「ウチも信じるで。こんなもの見せられたら信じるしかあらへん。ネギ君、ウチもお願いな」
「ホ、ホラ、のどか! チャンスですよ!!!」
「え!? えええぇぇっ!?」
「(…………女性教師陣の視線が怖いでござる)」
「はいはい、それはまた後で。
それでは僕達が“魔法使い”ということを納得していただけたものとして話を続けますよ」
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それからのネギ君の説明は、ウチにとって衝撃的なものやった。まさか、麻帆良が魔法使いの町とはなぁ…………。
それにせっちゃんがウチを影から守っていてくれたことなんか思いもせんかった。
やっぱりせっちゃんはウチを嫌いになったわけやないんやね。よかったわぁ。
「…………でも何で? 何で言ってくれへんかったの?
ウチを危ない目にあわせとうない気持ちは嬉しいけど、せっちゃんと離ればなれになってまでそんなことして欲しくあらへん…………」
「こ、木乃香お嬢さま…………」
「木乃香さん、学園長や木乃香さんのお父さんの気持ちもわかってあげてください。…………明石教授、構いませんか?」
「いや、僕から話そう。やぁ、皆。ゆーながお世話になってるね」
「…………誰ですか?」
「あ、裕奈さんのお父さん…………」
「ああ、明石のか…………ってことは、明石も魔法使い!?」
「ああ、違うよ。ゆーなは魔法関係者じゃない。
妻が死ぬまでは魔法を教えたりしてたけど、今はまったく魔法とは関係していないさ」
「…………奥方殿が亡くなられるまで、ということは、もしかして魔法関係でお亡くなりになったでござるか?」
あ、そういえば、裕奈のお父さん好きは知ってたけど、お母さんのことは裕奈の小さい頃に亡くなったしか聞いたことあらへんかった。
…………そっか、そういうことなんやな。
「うん。僕達の仕事は危ないこともあるからね。
だから、ゆーなには魔法とは関わって欲しくないと思っているんだ。ゆーなには魔法のことを秘密にしてくれるかい?」
「…………約束するアル」
「はい、絶対言いません」
「ありがとう。僕も木乃香さんのお父さんの気持ちが良くわかるんだ。
黙っていられたことに怒るのはわかるけど、お父さんの気持ちもわかってあげて欲しい」
「…………はい」
「そのことについては、今度婿殿とゆっくり話し合ってみるとええ」
「うん、そうするわ」
そうやな。まずはお父様と話し合ってみよう。電話じゃ何やし、久しぶりに里帰りでもしよかな?
麻帆良に来てからあんまり帰ってヘんから、丁度ええかもしれんな。
「それでは次に、長谷川さん辺りが特に気になっているかもしれませんが、皆さんの今後についてです」
「やっぱりネギ先生はオコジョになって、皆さんは記憶を消されちゃうんですか?」
「ちょっと!? どーゆーことなの、それは!?」
オコジョ!? 記憶を消す!?
どういうことやの!?
「ちょ、ちょっと待っておくれ、さよちゃん。そんなことせんよ。
君らが魔法を知ってしまったのは、ワシらのミスじゃ………………ワシらというか、エヴァのじゃがの」
「…………うぅぅ…………」
「マスター、そう気を落とさずに…………」
「…………コチラとしては何も見なかったことにしてくれればよいのじゃがな」
「え? それでいいんですか?」
「魔法をばらそうとしたりしなければ構わんよ。
いや、例え魔法をばらそうとしてもワシらにはその専門の対策機関があるし、そもそも信じてくれないじゃろうしの。ちょっとはしゃぎたい年頃の女の子と思われるのがオチじゃろうて」
「あー、確かにそうアルな。
魔法は実在しているなんて叫んでも、誰も相手にしてくれないアルよ」
「あ、あの、ネギ先生がオコジョになっちゃうってのは…………」
「あー、どうなんですかね、学園長?
こういう場合って、僕はやっぱり故郷へ強制送還+オコジョですか?」
「安心しなさい、ネギ君は大丈夫じゃよ。さっきも言ったとおり、今回の件は麻帆良側のミスじゃ。
…………ぶっちゃけた話になるが、さっきの説明にあったようにネギ君はメルディアナ魔法学校という他校からの大切な預かり物での。
不用意に魔法をばらしたのがネギ君なら話は別じゃが、ネギ君がばらしたんじゃなくてエヴァがばらしてしまったからのう。麻帆良関係者のせいでネギ君をオコジョになろうものなら、メルディアナ魔法学校と喧嘩になってしまうわい。
…………というか、魔法のことは本当に秘密にしといておくれ。真面目にワシらがピンチなんじゃ」
「だ、大丈夫なん?」
「君達が秘密にしとくれたら大丈夫じゃ。
…………あー、もし逆に「こんなこと忘れてしまいたい」という子がおったら記憶を消すぞい」
「結構でござる」
「ちゃんと秘密にするから、大丈夫アルよ」
「私も結構です」
「わ、私もです」
「私もいいです。木乃香が覚えているのに、私だけ忘れるってわけにもいかないしね」
「…………私もいいです。忘れてしまい気持ちはありますが、それよりも記憶を弄られる方が嫌ですので」
よかったぁ~。記憶消されたりしなくていいんや。ネギ君もいなくなったりしないみたいやし。
それにせっちゃんのこともわかることが出来たし、お父様やおじいちゃんには悪いけど魔法のこと知れてよかったわぁ。
「じゃあ、ウチラは無罪放免ってことでいいんやね? ネギ君達も何か罰を受けたりしないんやね?」
「大丈夫だよ、木乃香君。
ネギ君には引き続き2-Aの担任補佐を受け持ってもらうし、刹那君や龍宮君だって同じだ……………………エヴァは、どうだろ?」
「……………………」
「マスター、そう落ち込まずに…………」
「…………ぎゃ、逆に2-A生徒の面倒をみなければならんのが、ネギ君にとって罰かもしれんのぉ、フォッフォッフォ」
「何を言ってるんですか、学園長。2-Aの皆さんは良い人達ばかりですよ」
「ハッハッハ、否定できないのがつらいでござるな」
「居残り授業とかで迷惑かけてるからそう思われてもしょうがないアル」
「わ、私は最近ちゃんと勉強してるわよ!」
「アハハ、確かにアスナ君は最近頑張ってるみたいだね。僕も安心したよ」
「あ…………はい、ありがとうございます。…………高畑先生」
アカン、アスナまだ失恋のショックが響いてるみたいや。
もう大丈夫かと思ってたけど、さすがに面と向かって高畑先生と話すのはまだつらいみたいやね。
「…………えっと。ハハハハハ、駄目ですよ、学園長先生。
そんなこと言ったら、3年になってネギ君が担任になったらどうするんですか?」
「フォッ!?」
「え? 高畑先生が担任辞めて、ネギ先生が担任になるんですか?」
「うん。僕の出張がかなり溜まっていてね。僕はNGOの団体にも所属していて、それで今までよく出張に行っていたのさ。ネギ君が来てからは本当に楽になったよ。
ネギ君も立派に教師として頑張っているからね。正直、僕も教師とNGOの二重生活は大変だから、教師としての仕事はネギ君に頑張ってもらうことになったんだ。
もちろんネギ君一人に任せるようなことはしないよ。僕もこれからは非常勤として皆に関わっていくから、担任と担任補佐が入れ替わると考えてくれたらいいよ」
「そ、そういうことなんじゃよ。
といってもネギ君には修行としての最終課題があるがの。それが無事に済めば、3年からはネギ君が担任となるのじゃ」
「…………要するに、今とあんまり変わらないのですね」
「でござるな。今でも結局ネギ坊主が担任みたいなもんでござるし」
「そうアルね。高畑先生とは2週間振りくらいアルか」
「…………いや、古菲さん。確か月曜日に会った覚えがあります」
「あー、そうだったな。月曜の帰りのHRは高畑先生一人だったな」
「……………………」
…………アスナ、言いたいことあったら言った方がええよ。
「…………え? 皆やけにアッサリしすぎてないかい?
本当に出張しすぎたかな…………」
「…………フォッフォッフォ。出張行かせてばかりですまんかったの、タカミチ君」
………………怪しい。何かおじいちゃん隠しとる。
ウチラに秘密にしておきたいことあるんやろか?
「…………おじいちゃん?」
「な、何かの、木乃香?」
「何隠しとるん?」
「べ、別に何も隠してなんかおらんぞい!」
「アハハ、何を言ってるんだい、木乃香君。別に隠してなんかいないよ。
ねぇ、学園………………学園長、何をそんなに冷や汗をダラダラ流しているんですか?」
「き、気のせいじゃ!」
「おじいちゃん!?」
何やろ? 高畑先生や他の先生方も不思議そうにしてる。どうやら他の人は知らんかったみたいやな。
おじいちゃんが一人で何か企んでいたんやろか?
「学園長、その態度では何かあるといっているも同然ですよ。
この際だから、言えないことがあるなら言ったほうがいいんじゃないですか? それとも、やっぱり僕は故郷へ強制送還+オコジョですか?」
「ち、違うぞい!」
「だったらおっしゃってください、学園長。他の先生方も不思議に思っているじゃないですか」
「…………まいったのぉ。あまりこの場で言いたくないんじゃが」
「どういうことですか、学園長? もしかしてネギ君について何かあるんですか?」
「まぁ、確かにネギ君についてなんじゃがの。…………他の生徒や保護者からクレームがきておるんじゃよ」
なるほどなぁ。やっぱり10歳のネギ君が教師をすることに気分悪くする人もおるんやろな。
あれ? でも、“他の生徒”ってどういうことや?
「おじいちゃん、保護者からクレームが来るのはわかるんやけど、“他の生徒”からのクレームって何やの?
ネギ君は他のクラスでも人気者で、他のクラスの子から悪い噂聞いたことないで?」
「私もないですね。最初の頃はその奇特さからよく質問されましたが、今では逆に羨ましがられるぐらいです」
「そ、そうですよ! ネギ先生を悪く言う子なんかいません! 「2-Aが独り占めしてズルイ」とか言われるぐらいです!!!」
「うん。それじゃよ、まさにそれ。他の生徒からは宮崎君が言った通りに、「2-Aが独り占めしてズルイ」とクレームが来ておる。
木乃香達だって、違うクラスでネギ君が担任補佐しとったらズルイと思うじゃろ?」
え? ソッチ方向のクレームやの?
…………まぁ、麻帆良のノリだったらしゃあないかなぁ。
「…………でも、保護者の人はそう思わないと思いますけど。
正直に言いまして、10歳の子供が教師をするなんておかしいです」
「長谷川君の言う通りじゃ。保護者からのクレームは、あくまで“2-Aだけ”に担任補佐がいることについてじゃな。ネギ君を寄越せとは言ってきておらんよ。
ホラ、昨今は少子高齢化で、生徒集めがどこも大変じゃろ?
麻帆良でも生徒集めのためにいろいろと手を打っておるんじゃが、その中の一つが“教師の数を増やし、よりキメ細かい教育を行なう”という試みじゃよ。
現在は1クラス30~40人を教師1人で担任しておるが、それだとどうしても教師の手の届かない生徒が出てきてしまう。それなら教師の数を増やせば生徒をもっと面倒みやすくなるからの」
「ネギ君が担任補佐をしているのは、それのテストケースとしてなんだ。
ちなみに、女子中では“生徒31人を教師2人で担当する”というテストをしていて、男子中では“生徒15人を教師1人で担当する”というテストをしているよ。
“生徒31人を教師2人で担当する”と“生徒15人を教師1人で担当する”は生徒と教師の比率は一緒でも、実際の指導方法は違うからね」
「そうじゃの。学園としては“生徒31人を教師2人で担当する”の方がありがたいわい。
“生徒15人を教師で1人で担当する”だと、教室や備品が一気に2倍の量が必要になってしまうからの」
「学園の裏事情はわかったでござるよ。
しかし、保護者からのクレームがわからないでござる。あくまでこれはテストケースなのでござろう?」
「…………自分達の成績の上がり方ぐらい考えてから言ってくれんかの。成績が万年最下位だった2-Aが、担任補佐を置いただけで成績があっという間に上位クラス並みになったんじゃぞ。
その噂を聞いた保護者から、「2-Aだけ担任補佐がついてるのは他のクラスに不公平だ」とか、「むしろウチの娘のクラスにも担任補佐をおけ」とかクレームがうるさくての。
教師の数を一気に2倍近くに増やすことなんか出来るわけないのに…………」
「そ、そんなに酷いことになってたんですか?
出張ばっかり行ってて気づきませんでした」
「僕も聞いてませんでしたけど?」
「ああ、ネギ君は別に悪いことはしておらんわい。教師としての仕事に励んだだけじゃから、気にすることはない。
ただ、3年になってもこのまま担任補佐でいるというのは無理じゃ。これ以上は他の子達と保護者の不公平感が抑えきれん。
かといって、3年になって「ネギ君今までありがとう。テストは終了したからもういいよ」とネギ君を放り出すことは出来んしの。そんなことしたら2-A生徒が暴動を起こすわい」
「だから高畑先生を非常勤にして出張に行きやすくし、担任をネギ先生にお任せするということですか」
「ネ、ネギ先生が担任に…………エヘヘ……」
ネギ君は人気者やなぁ。そういうクレームが来るなんて。
アレ? でも何でおじいちゃんはコレを秘密にしておきたかったんやろ?
「…………もしかして、高畑先生は担任クビなのアルか?」
「え!? な、何を言ってるんだい、古菲君」
「…………あー、ドッチが先なのかって話か?
“高畑先生の出張が忙しいから、ネギ先生を担任にする”んじゃなくて、“ネギ先生を担任にしなきゃいけないから、高畑先生を非常勤にする”ってことか?」
「アハハ、そんなことあるわけないじゃないか。あくまで僕の教師とNGOの二重生活は大変だからだよ。
ねぇ、学園………………学園長?」
「…………これは“適材適所”というものなんじゃ! タカミチ君!!!」
「学園長ぉっ!?」
ゴメン、おじいちゃん。これは確かに秘密にしておきたいわ。
高畑先生の前で言いたくあらへんやったろうな。
「そ、そもそもネギ君が麻帆良に来る際に、ネギ君を2-Aの担任にしようとしたことに異論はなかった筈じゃろうっ!?」
「それとこれとは話が違うでしょう!?
ネギ君に担任を譲るならともかく、これでは本当に僕が担任クビみたいじゃないですか!?」
「じゃ、じゃったら2-Aの生徒に、どっちが担任になって欲しいか投票でもしてもらうかの!?
それで多く投票された方が担任をするということで………………こ、木乃香はネギ君よりタカミチ君のほうがいいかのっ!?」
ウチに振らんといてぇな!?
アカン。高畑先生が縋るような目で見てくるけど、…………こ、答えられへん。
他の皆も目ぇ逸らしとる。
アスナもどう反応してええかわからんみたいや。
「…………えーっと?
タカミチ、何というか…………ゴメン?」
「…………いや、ネギ君が悪いわけじゃないよ。僕は出張が多くて皆の面倒を見れなかったのは事実だからね。ネギ君なら僕よりもうまくやれるさ。
ウン、ネギ君に2-Aの皆のことをお願いするよ。僕もネギ君を手伝うからさ。……………………ハハハ」
た、高畑先生が真っ白に燃えつきとる。
ネギ君がいなくならないのは嬉しいけど、この結果は胸が痛むわぁ。
━━━━━ 後書き ━━━━━
ネギはそのまま担任補佐をすることになりました。3年からは担任です。
この状況なら、別に甘いわけじゃないと思います。
「コノエモン、ネギは元気にやっとるかね?」
「あ、ごめん。麻帆良の関係者のせいで一般人に魔法バレしちゃった。
ウェールズに送り返すからオコジョ刑よろしく」
とかなったら、マジで戦争もんですからね。大人の事情により無罪放免です。
明日菜達も記憶消去とかはされませんが、その理由も次話以降で詳しくします。
そしてタカミチが2-A担任をクビとなることになりました。
他の生徒と保護者からのクレーム処理が大変だったようです。
ネギを担任補佐のままにしておく
→ クレームがもっと酷くなる。却下
ネギをクビにする
→ 2-A生徒に殺される。却下
タカミチを非常勤にして出張に行かせ、ネギを担任にする
→ みんなで幸せになろうよ。採用
学園長はどこまでも本気です。タカミチに合掌。
【ネギの被害者リスト】
メルディアナ学校長:燃やされた
カモ:去勢された
鳴滝姉妹:悪戯し掛けて返り討ち
エヴァンジェリン:紅茶吹かされた
バカレンジャー:勉強地獄
学園長:初恋の人を成仏させると言われたせいで胃痛
さよ:知らないうちに成仏させられるところだった
魔法先生一同:「この子ホントにどうしよう?」という困惑
愛衣:幼児退行させられた
高音:露出狂の嫌疑かけられた
刀子:露出狂の嫌疑かけられた
バレーボール:破裂させられた
タカミチ:コーヒー吹かされた+“担任クビ” ← new!
刹那:勉強地獄+バカホワイト就任
明日菜:失恋