━━━━━ ガンドルフィーニ ━━━━━
「…………というわけでネギ君の魔力量は、ワシらの数倍もあるんじゃよ」
「またまたご冗談を」
…………おかしい、何だかさっきからネギ先生の後ろに猫の幻影が見えてきた。
それにしても、何で猫先…………じゃなかった、ネギ先生は全然信じてくれないのだろうか?
「君は10歳の見習い魔法使いだけど、熟練の魔法使いの数倍の魔力を持っていて、尚且つ魔力の制御や効率化も完璧で、身体能力も神鳴流とガチでやりあえる位優れていて、ぶっちゃけこの学園のトップクラスに強いんだよ」
と言っているだけなのに。
…………。
……………………。
………………………………すまない、普通は信じれないな。
「冗談はやめてくださいよ、学園長。
さっきから何度も言ってますけど、僕はまだ10歳の見習い魔法使いですよ」
「だ、だからじゃなぁ、ネギ君は…………ぬ…………?」
「ど、どうしました、学園長? 急にお腹を押さえたりして…………」
「何だか急に胃が痛くなってきおった。せ、瀬流彦君。ワシの机に胃薬があるの…………ぬぅぅ…………」
「が、学園長、大丈夫ですか!? 治癒魔法いりますか!?」
「そ、そんなことよりネギ君は現実を知っておく…………ガハァッ!!!」
「学園長っ!? 救急車だ! 救急車を早く!!!」
学園長ーーーーーっ!?
吐血した!? マズイぞ。ストレスで急性胃潰瘍にでもなったのか!?
━━━━━ 龍宮マナ ━━━━━
「…………って感じになっていることに餡蜜10杯」
「賭けにならん。…………そうなると思ったから龍宮まで来たのか」
「誰が好き好んであそこにいたいと思うんだ?
お前こそ、ちゃんと近衛と話は出来たんだろうな? 何せ同じ部屋で寝たんだからな」
「ま、まぁな…………」
そんなに頬を赤く染めるな。変な方向に勘違いされるぞ。
私達はエヴァンジェリンの別荘に移動したあと、エヴァンジェリンの人形の従者から夕食が振る舞われ、部屋を与えられて各自就寝となった。
もう別荘の外の時間では夜だったから、体内時計を合わせるためだ。
…………というのは口実で、おそらくエヴァンジェリンが精神的に疲れ果てていたからだろうな。無理あるまい。
刹那は近衛と一緒の部屋に泊まり、夜通し話していたそうだ。
朝食のときに見た近衛は嬉しそうだったし、刹那もスッカリと晴れ晴れとした顔をしている。もう2人のわだかまりは解けたのだろう。
「それで? 近衛はどうするつもりなんだ?」
「まずは長と話し合ってみるらしい。魔法を学ぶのも学ばないのもそれから決めると。
…………ただ、魔法を使ってみたいという気持ちは少なからずお持ちのようだな」
「ふむ、そうか。つまり古と楓はネギ先生やお前との修行。綾瀬と宮崎は魔法を習うこと。神楽坂、長谷川はまだ未定ということか。
そういえば、エヴァンジェリンが叶えてくれるお願いってのは私もアリなのかな?」
「エヴァンジェリンさんに言えるものなら言えばいいさ。
…………長谷川さんはさっき、「新しいノートパソコンが欲しいんだけど、それはやっぱ駄目かなぁ?」って言っていたな」
「堅実な考えだな。魔法を習おうとするよりはマトモだろう」
「中学生の女の子なら仕方があるまい。
…………しかし、本当にいいのだろうか? 一般人に魔法を教えたりして…………」
「今回のことは明らかに学園のミスだからな。しかも近衛も一緒に目撃してしまった。近衛がいなかったら記憶消去という手もあったろうが、そんなことしたと知られたら近衛が許すとは思えん。
学園長も孫の記憶を消したり、嫌われたりするのは避けたいのだろう」
「まあ、そうだろうな」
「それとネギ先生のことで精一杯ということもあって、彼女達には手が回らないんだろうさ」
「……………………ネギ先生かぁ」
…………あの子は何であんなにアホの子なんだろうか?
模擬戦の頃からどこかズレているとは思っていたが、あそこまでズレているとは思わなかった。教師やっているのを見ていると普通に見えていたんだがなぁ…………。
文武両道、成績優秀、品行方正など、修飾語をいくら付け足しても足りないぐらいの天才なんだが、それでもあのアホさ加減で台無しになっている。
それともあのアホさ加減のおかげで、嫌みったらしく見えないというのもあるのだろうか?
“嫌みったらしい天才”と“アホな天才”。
これはどっちが良いのだろう?
「そうそう、昼食のあとに皆で集まって話し合いをするそうだ。いつまでも水着姿で日光浴していないで龍宮も来てくれ」
「わかったよ。それにしても外の季節は冬なのに、日光浴というのは悪くないな」
「だったら夏になったら雪山に行ってみればいいさ。摂氏マイナス40℃だそうだがな」
さすがにそれは御免だよ。
もう40℃ほど気温を上げてくれれば考えるがな。
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「…………というわけで、来週から相坂さよが2-Aに入ることとなった。病気でずっと入院していたという筋書きらしい。各自覚えて置くように。
わかっていると思うが、見ての通り相坂さよは人形の身体に入っている。何か不都合があったりした場合は私かネギに言え」
「よ、よろしくお願いします。皆さん!」
「よろしくね、さよちゃん」
「よろしくなー、何かあったら遠慮なく言うてな」
「よろしくお願いします」
「(…………冷静になって考えてみると、幽霊がクラスメイトって…………。まぁ、担任と担任補佐が魔法使いで、吸血鬼やロボットもいるんだから今さらか)」
それにしても、相坂のことは私も全然気づかなかったな。私の魔眼でも見えないなんて、まったく影の薄い幽霊だ。
ネギ先生はクラス名簿に載っている生徒が、いつまでも経っても登校しないことを気にしたのがキッカケとして気づいたらしいが…………。
「それと改めて紹介しておくが、この子はネギの使い魔であるオコジョ妖精のアルちゃんだ。
この子に言えばネギにも伝わるから、緊急時にはそうするといい」
「よろしくお願いします、皆様。それと今まで黙っていて申しわけありません、アスナ様、木乃香様」
「本当にアルちゃん喋ってるわねぇ。さよちゃんにはビックリしたけど、アルちゃんにもビックリしたわ」
「気にせんでええよ~。魔法のことは秘密にしとかなアカンかったんやろ。
それにしても凄いなぁ。まるでディ○ニーみたいや」
「オコジョ妖精ですか。
失礼ですが、あまり聞いたことはありませんね。アルちゃんも魔法を使えるのですか?」
「はい、人間の魔法使いが使う魔法とは違いますが、オコジョ妖精も魔法を使えますね」
「へぇ~、アルちゃんも凄いんだねぇ」
「(こいつの声帯どうなってるんだろう?ってツッコミしちゃ、いくら何でも空気読めてねぇよなぁ…………)」
「ねぇねぇ、人間とは違う魔法ってどんな魔法が使えるの?」
「そうですねぇ。変わったところでは『仮契約』の儀式、人間関係の感知などが出来ます」
「『仮契約』? …………って、人間関係の感知ってどういうのなん!?」
「そのままの意味だぞ。人が他人に抱いてる好意を測る超能力があるんだ。オコジョ“妖精”と名乗るだけあって、特殊なことが出来るんだよ。
…………そういえば、ネギが私のことをどう思っているとかも出来るんだよな?」
「え? 出来ることは出来ますけど…………」
…………空気が変わった。
神楽坂や近衛、宮崎、エヴァンジェリンの目が輝きだした。
それにしても、あの“闇の福音”がここまで熱を上げるとはなぁ。
「…………ヘ、へぇ~?」
「うわー、ウチってネギ君にどう思われてるんやろ?」
「は、はわわわわ…………」
「…………アルちゃん。ちょっと見せてくれてもいいか?」
「皆様の目が怖いです。…………ネギお兄様はまだ10歳の子供ですので、おそらく皆様が期待するようなものは出てこないかと思いますが…………。
ち、ちなみにこれが参考例の好感度ランキングですね!」
友 親 恋 愛 色 計
ネカネ. 1 10 1 10 0 22
アーニャ. 7 9 1 9 0 26
ドネット 3 3 2 3 0 11
「各10点満点のパラメータ5種類に分かれていまして、それぞれが“友愛”、“親愛”、“恋愛”、“愛情”、…………“色欲”を表しています。
数値はニュアンス的に…………そうですね、0=無関心、1~3=嫌いじゃない、4~6=普通に好き、7~9=かなり好き、10=大好き、といった感じです。
“友愛”は友人として、“親愛”は親兄弟…………要するに家族として、“恋愛”は恋人として、“愛情”はどのぐらい愛しているか、“色欲”…………は0だから関係ありませんね。
合計値も表していますが、ネカネお姉様とアーニャお姉様を見ていただければわかるように、一番合計値が高ければ一番愛されているというわけではありませんね」
おいおい、勝手に見せていいのかい? …………と思ったが、これなら問題ないか。
この表を見る限り、やっぱりネギ先生は10歳の子供だなぁ。
「えーっと、確かネカネさんってネギの従姉のお姉さんで、アーニャちゃんは幼馴染の妹みたいな女の子だったわね。
…………ネカネさんへの“親愛”と“愛情”が10点ってのは凄いわねぇ」
「え? アーニャお姉様の方がネギお兄様より年上ですけど…………」
「やっぱり家族で母親代わりってのは強いんやなぁ…………。
でも“友愛”と“恋愛”が1点ってことは、完璧に家族としか見ておらへんなぁ」
「全体的に“恋愛”と“色欲”の数値が低いですね。
…………“色欲”って要するに、…………いやらしいことですよね?」
「その“色欲”が見事に0点でござるなぁ」
「“恋愛”の1点と2点も似たようなものアルよ」
「10歳じゃ仕方がないだろ。むしろ私はこの表見て安心したけどな」
「そうか? 10歳にもなってそういうことに全く興味がないというのは、逆にネギの将来が不安だがな」
「ムゥ…………ネギ先生が紳士ということはいいのですが、恋愛に興味を持たれていないというのは困りものですね」
「ド、ドネットさんって誰なんだろう? この人は“恋愛”が2点あるけど…………」
「ドネット様はメルディアナ魔法学校の職員でして、ネギお兄様の祖父である校長の秘書のような方です。校長を通じて少し付き合いがありまして、ネギお兄様が言うには“年上の綺麗なお姉さん”だそうです。
そして現在の皆様への想いはというと……………………あ、あら?」
な、何があった!? おそらくネギ先生が私達をどう思っているか書かれているであろう巻物を見たアルちゃんが、慌てて巻物を閉じたぞ?
「ア、アルちゃん、どうしたの?」
「い、いえ、ちょっとこれは予想外というか…………」
「…………予想外? もしかして、ウチラのこと何とも思ってへんのかなぁ?」
「そ、そんなことはあるまい…………アルちゃん、見せてくれ!」
「ちょっと待ってください。これはさすがに「茶々丸っ!」って駄目です! 離して下さい!」
「失礼します、アルちゃん」
おいおい、いいのかこれは? といっても止める奴がいないな。誰もがバツが悪そうな顔をしている中に、隠し切れない興味が混じっている。
まあ、私もあのネギ先生が他人をどう想っているかということなら、少しは興味あるのだがな。
ゴクリ、と生唾を飲み込む音が複数聞こえた。
…………全員の目がマジだな。
「…………よ、よし、開くぞ」
「待ってください、エヴァンジェリン様! 見ないでください!!!
アスナ様達もその巻物を見ないでください!」
「いいや! 限界だ、見るねっ!!!」
止める間もなく、バッ、っと開かれた巻物に書かれている内容へ釘付けになる私達。
そこに書かれていたのは……………………。
友 親 恋 愛 色 計
明日菜 4 7 6 7 0 24
木乃香 3 8 5 7 0 23
エヴァ . 6 3 7 6 0 22
刹那 6 3 4 5 1 19
茶々丸 5 4 3 6 0 18
のどか. 5 4 4 5 0 18
千雨 4 4 4 4 0 16
マナ.. 4 2 3 3 0 12
古菲 4 2 2 3 0 11
夕映 3 2 2 3 0 10
楓. 3 2 1 2 0 8
さよ. 1 1 1 1 0 4
「…………フッ、フハハハハハハハハッ……。私が“恋愛”においてトップだ! やはりネギも私のことをそういう目で見ていたんだな!!!
“色欲”こそ0点だが、それでも私が…………あ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、エヴァちゃん! 合計点は私の方が上でしょ!?
それに“愛情”が高い私の方がネギに愛されているんじゃな…………い?」
「あや~、“親愛”が8点でこの中では一番高いわぁ。
ネギ君はウチのことを一番家族と想ってくれているんやなぁ、エヘヘ…………え?」
「…………違うんです。これは違うんです。誤解なんです…………」
「(マスターと同じくらい私に“愛情”を感じてくださっているのですか…………)」
「は、はわわわわ…………い、意外と高い? 同じ魔法使いのエヴァンジェリンさん達や、一緒に暮らしているアスナさん達を除いたら私がトップ…………そ、そんな、ネギ先生…………」
「た、高くはないが低くもないな。全体的に“普通に好き”なのか。べ、別に嫌ってわけでも嬉しいってわけでもねぇけど…………って、おい?」
「“親愛”と“恋愛”が2点アルかぁ。居残り授業で迷惑かけてばかりだったからアルかね?」
「の、のどか…………嬉しがるのはいいのですが、衝撃的なことが書かれているですよ……………………」
「…………拙者は“恋愛”が1点でござるな。さよ殿は会ったばかりらしいから仕方がないとはいえ、拙者は恋愛対象外なのでござろうか?」
「はううぅぅ~~~。最低点です。でも、月曜日からは生徒としてネギ先生と過ごせるので、これから仲良くなっていけるんです!」
私は…………こんなものだろうな。
魔法関係で話をしたことは何度かあるが、特別に何かあったわけじゃない。それに別に成績のことで迷惑掛けているわけじゃないからな。
“年上の綺麗なお姉さん”であるドネットという人より“恋愛”が1高いのか。
フフフ、悪い気分ではないな。…………まぁ、エヴァンジェリンの半分以下だがな。
それにしても、ネギ先生は見事に“色欲”が…………“色欲”が?
「…………せ、刹那、10歳児に手を出すのはさすがにマズイと思うぞ?」
刹那への“色欲”が1点あるよ、おい?
「…………おい、桜咲刹那?」
「…………桜咲さん?」
「ち、違います! エヴァンジェリンさん、神楽坂さん! 私は何もしていないんですっ!!!」
いや、その言い訳は通らないだろう。
他の人は見事に“色欲”が0なのに、刹那だけが1点ある。
…………アレか? 刹那がネギ先生をソッチ方面に目覚めさせちゃったのか?
刹那はネギ先生にいったい何をしたんだ?
「…………せっちゃん?」
「嘘ではありません、木乃香お嬢さま! わ、私は…………」
「ほ、本当です。ネギお兄様と刹那様が修行するときは私も一緒にいましたから証言できます。
おそらくネギお兄様が刹那様を意識してしまっただけで、2人は別に変なことしたりしていないですよ!」
「…………そうかえ。何にせよとりあえず、ちょっと“ O H A N A S H I ”しようか、せ っ ち ゃ ん ?」
「…………は、はいぃ…………」
笑顔のはずの近衛が怖い。というか、無表情の神楽坂が特に怖い。いつもバカっぽく朗らかな神楽坂があんな無表情になるとは…………。
ああ、コッチにも来ないでさっさと帰ればよかった。
━━━━━ 後書き ━━━━━
好感度ランキングはズレていないでしょうか?
自分のPCではちゃんと見れるのですが、もしかしたら見にくい方もいらっしゃるかもしれませんが、何卒御容赦ください。
そしてこの好感度ランキングは実際の数値です。アルちゃんにお願いして、数値を捏造したりはしていません。
原作では“親”のパラメータは「ネギに対して“親心”を感じているか?」という項目ですが、この作品では「“家族”として愛しているか?」という設定ですので、ネカネのことを娘と思っているわけではありません。
やはり前世のエヴァへの初恋が残っているためか、“恋愛”はエヴァが多めです。
せっちゃんへの“色欲”については、せっちゃんに思いっきり恥ずかしがられたせいでネギも意識しちゃっただけです。
ちなみにこのネギの根っこは、仙人と幼児を足して2で割ったような感じです。
せっちゃんはまだ自分が半妖であることは言えてません。
というか、ネギの起こしたことのショックが大きすぎて、自分が半妖であること自体忘れてます。
【ネギの被害者リスト】
メルディアナ学校長:燃やされた
カモ:去勢された
鳴滝姉妹:悪戯し掛けて返り討ち
エヴァンジェリン:紅茶吹かされた
バカレンジャー:勉強地獄
学園長:ストレスによる急性胃潰瘍にて吐血 ← rank up!
さよ:知らないうちに成仏させられるところだった
魔法先生一同:「この子ホントにどうしよう?」という困惑
愛衣:幼児退行させられた
高音:露出狂の嫌疑かけられた
刀子:露出狂の嫌疑かけられた
バレーボール:破裂させられた
タカミチ:コーヒー吹かされた+担任クビ
刹那:勉強地獄+バカホワイト就任
明日菜:失恋