━━━━━ 犬上小太郎 ━━━━━
「…………というわけで、当初の予定通りに仕掛けるで!」
「? 何怒っとんのや、千草姉ちゃん?」
「何でもあらへんわ!!!」
おー、怖。そんなにコケにされたのが気に食わんのか?
それに知らないうちにミルクティーをプレゼントされて、お茶のペットボトルを捨ててもらってたっちゅーことは、おそらく千草姉ちゃんの顔は見られてるやろうからな。
それやったら今更引けんのやろ。上からの命令無視して監視してたなんてこと知られたら、後でどんな罰食らうかわからへんしな。
ま、俺としては戦えりゃそれでいーんやけどな。でも話からすると、半分は素人で男は1人だけかいな。
しかもその男は俺と同じくらいの年らしいけど、治癒術師らしいやん。
千草姉ちゃんを出し抜けるぐらいやし、瞬動とか使えるらしいからそれなりに出来るかもしれんけどなぁ…………。
「…………で? どこで仕掛けるんだい?」
「街中で仕掛けたら邪魔が入るかもしれへんし、本山の麓で仕掛けるわ。本山の侵入者防止の仕掛けを利用させてもらうで。
本山の中には手出せんけど、外側の仕掛けならウチでもいじれるやさかい。『無間方処の咒法』で閉じ込めて、そこで木乃香お嬢様を頂戴するんや」
「本山の間近で仕掛けて大丈夫なん?」
「危険なのはわかっとるけど、そこでしか勝負するところがあらへん。本山の術者相手でも、20~30分ぐらいなら入れないようにしてみせるわ」
「千草さんの見立てで邪魔になりそうなのは、背の高い女性2人とウチと同じ神鳴流剣士がお1人。それと“大戦の英雄”の息子さんと魔法生徒のお嬢ちゃんがお1人。あとは中華服の拳法使いらしきお嬢さん、ですかー。そんで残りは皆素人さん。…………ロボットの女の子はどうなんやろ?
…………まあ、ウチとしては是非とも神鳴流の剣士さんとやりあいたいですー」
「あー、それだったら俺は英雄の息子っちゅーのをやるわ。女殴るは趣味やないからな」
「だったら、僕と千草さんで残りかい?」
「…………うーん、それはちとキツイかもしれなぁ。
相手にするのは出来ても、木乃香お嬢様を攫うには人が足りん。かといって、式神に命令させて木乃香お嬢様を攫うのは危ないし…………」
「…………なら、最初に千草さん達3人に出て彼らの目を引き付けてもらって、隙を突いて僕がお姫様を攫おうか?
千草さんの負担が大きいけど、式神を大量に使えば何とかなるだろう?」
「…………それしかあらへんかなぁ。小太郎は女殴れへんから、女の護衛のついとるお嬢様を攫わせるのは無理やろうし…………」
ほっといてくれんか。嫌なモンは嫌やっちゅーねん。
「かといって、月詠はんにお嬢様を任せるのは危ないしなぁ」
「えー、ウチは斬りたいですー」
「わかっとるわ。しゃーない。それでいこか。
…………新入り、わかっとると思うけど、木乃香お嬢様に怪我させたらあかんで」
「…………わかってるよ」
…………コイツもわからん奴やなぁ。
何でもイスタンブールっちゅーところから研修に来た西洋魔術師らしいけど、何でこんなのに参加してんだか?
いつも無表情で人形みたいやし。
ま、ええ。頭脳労働は千草姉ちゃんの仕事や。
何か妙な真似したらブン殴ればいいやろ。
さーて、英雄の息子っちゅーのに、少しは骨があればいいんやけどなぁ。
「あ、小太郎。あの坊やには、“空を飛ぶことが出来るか射程数kmの飛び道具がないと勝てない”らしいで」
…………。
……………………。
………………………………何、やて?
「距離を置いての魔法戦が得意みたいやな。空飛びながら、魔法をバンバン撃ってくるらしいわ。西洋魔術師の定石やな。
今回は『無間方処の咒法』で閉じ込めるし、木乃香お嬢様を置いて逃げたりはしなさそうな子やったから、そんなに気にしなくてもいいかもしれへんけどな。いつも通りに距離を詰めて、魔法を詠唱する暇をあたえんようにな。
体術もそれなり…………というか、ウチに感づかれずに近寄れるぐらいのことは出来るみたいや。アンタは油断する癖あるから気ぃつけなアカンよ」
「お、おう! 任せてや!!!」
あ、あれ? 確か本山の仕掛けの『無間方処の咒法』って、半径500mぐらい範囲あらへんかったっけ?
あんまり空中戦はやったことないんやけど、大丈夫やろか?
━━━━━ 古菲 ━━━━━
…………これが京都アルかぁ。京都駅は麻帆良みたいに都会だたのに、電車とバスでちょっと移動しただけでこんな山になるとは…………。
私の故郷をどこか思い出すアルね。あそこも古さだけだったら京都にも負けないアルし。
「ここが炫昆神社ですか。伏見稲荷大社に似てるですね」
「千本鳥居だね~」
「ここから境内まで少し歩きます。上り坂ですが一応舗装されていますし、途中で休憩所もありますので大丈夫ですよ」
「…………そりゃありがたい。今日は新幹線に電車にバスと、乗り物に乗りっぱなしで疲れてるからな」
「長谷川は運動不足アルね」
「お前らと一緒にすんな」
いや、確かに私達は鍛えてるし、本屋達も図書館探検部の活動で平気みたいだけど、長谷川の運動不足は致命的アルよ。
というか運動不足よりも、座りぱなしによる腰痛の方が辛そうアルね?
「大丈夫ですか、長谷川さん? 何でしたらおんぶしましょうか?」
「…………いくら魔法使いといっても、さすがに10歳の子供におんぶしてもらうような真似は出来ないです」
「ネ、ネギ! 私は疲れてしまったぞ!!!」
「ちょっと、エヴァちゃん抜け駆け!? ネギ! 私も!!!」
「え!? えええっ!? ネギ先生、私も…………その…………」
「え? …………この状況で僕にどうしろと?」
…………ネギ坊主も大変アルねぇ。
アスナとエヴァにゃんも変わったし、本屋も好感度ランキング見てから積極的になてきた気がするアルよ。
おそらくネギ坊主からは嫌われていないことがわかたし、むしろ好かれている方だとわかたから積極的になたアルね。
「というか、エヴァさんは戦力の1人なんですから、僕がおんぶするのはちょっと…………」
「…………そういえば、そんな話もあったな」
「忘れてたんですか?
エヴァンジェリンさんも一応、木乃香お嬢さまの護衛ということで学園長から旅費が出ていますので、仕事はしていただかないと困るんですが…………」
「でもここまで安全に来れたんやから、もう平気とちゃうんかな?」
「そうですか? 僕的にここら辺が一番危険な場所だと思うんですけど?
人目につかず、派手なことをしても関西呪術協会が揉み消してくれる。確かに関西呪術協会本山の近くですから、何かあっても本山から5分もあれば駆けつけてくれるでしょうが、逆に言えば5分で終わらせれば問題ありません。
本来、誘拐などは時間をかけずにサッと終わらせるものです。それこそ車で擦れ違いざまに誘拐すれば一瞬で終わりますから」
「…………相変わらず子供らしくない考え方をするね、ネギ先生は。私達の横を通り過ぎる車を警戒していたのはそのためか」
「だから、何でネギ坊主はそんな考え方をするアルね? というか、何で誘拐の手口について知ってるネ?」
「ええ。しかも見た感じここからは脇道等は無い狭い一本道。これだと前後で挟まれたら逃げれません。僕だったらココで仕掛けますね。
それと誘拐の手口については、ボディーガード派遣会社の教育資料でです」
「…………ふむ。確かにそう言われればそうでござるな。
少しは用心した方がいいみたいでござる。せっかくここまで何も無しで来たんだから、最後まで気を抜かない方がいいでござるよ。
そして古。もういろいろと諦めた方がいいでござるよ…………」
「フォーメーションを決めましょう。まず非戦闘員の明日菜さん、木乃香さん、宮崎さん、綾瀬さん、長谷川さんの5人を中心とします。
もちろん刹那さんは木乃香さんの護衛を最優先。古菲さん、茶々丸さんは非戦闘員の皆さんの守りを優先して離れないように。
そして僕が前衛、龍宮さんが中衛、エヴァさんは後衛で前を進みます。長瀬さんは最後尾について、後方を警戒してください。
もし敵らしき人が来たら、明日菜さん達を囲んで障壁を張りますので、明日菜さん達はその場から動かないようにお願いします。
それと神鳴流が敵にまわっている可能性があります。『斬魔剣・弐の太刀』使ってくる人の場合、龍宮さんは最優先でその人を妨害してください。その隙を突いて僕が速攻で潰します。
あ、それと明日菜さん達は『契約執行』は相手が手を出してくるまでしないでくださいね。手は相手側から出させますので」
「…………そこまで警戒する必要ないんじゃないかな~、と思うんだけどさ、ネギ?」
「念のためにです」
やはりネギ坊主はどこかおかしいアルよ!?
言てることは決して間違ていないはずのに、違和感しか感じないのはどういうことネ!?
「それに新幹線の中でも関西呪術協会らしき人がコチラの様子を伺っていたみたいですし…………」
…………新幹線でのアレか。いきなりネギ坊主が中空に魔法で文字書いたから何かと思えば、どうやら監視がついているということだたアル。
そういうことなら用心するのはわかるケド、それなら何故その人にミルクティーをプレゼントしたアルか?
というより、その場で何とかした方が良かたのではないアルか?
……………………ああ、どうせ正当防衛ということにしときたいアルね。
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「…………あ、アレが休憩所ですね。いったんここで休憩しましょう。自動販売機とかお手洗いもあるみたいですし。
休憩所周辺に結界張りますけど、目の届かないところには行かないでくださいね。龍宮さん、長瀬さん、2人でまずお手洗いの中を調べてください。他の皆さんは安全を確認したあとにお願いします」
「了解」「承知したでござる」
「………………ようやく休憩所か。助かった…………」
「…………木乃香が小さい頃、山奥で育って刹那さん以外の友達がいなかったということがよくわかるわ」
「…………実を言うと、木乃香さんのお父さんが木乃香さんの面倒を学園長に丸投げしていたことをあまり良く思っていなかったのですが、これで納得出来たです。
私が木乃香さんのお父さんの立場なら、次代の長云々という事情がなくても麻帆良に送るですよ」
30分ぐらい歩いたけど、休憩所があることからこれで半分ぐらいアルかね? となると全部で5~6kmぐらい?
確かにこんな山奥で子供独りは寂しいアルね。
自動車は狭い石畳の上に鳥居が邪魔するから通れないし、そもそも入り口の階段で駄目ネ。
自転車で坂道降りたら面白そうアルけど、登りが地獄ヨ。そもそも石畳のせいで上手く走れないだろうし、結局歩きしかないアル。
「到着予定時刻を遅めに関西呪術協会に伝えておいて正解でした。
えーっと、それでは15分後に出発としましょうか。それでもさっきよりペースを少し落としても間に合いますから、ゆっくり休んでください。…………あ、もしかして自動販売機の缶にも何か仕込んでたり…………?
飲む前にちょっと僕に貸してください。魔法で毒とか入っていないか調べます」
「……あの、ネギ先生。いくら何でも「刹那、もう気にするな」…………そうだな。やっぱりいいです。それでネギ先生の気が済むのなら……」
「自販機は120円か。こういうところなら、ぼったくり価格があると思ってたのに…………」
「あ~、富士山の自動販売機とか有名やね」
「あれは違うだろ。山に登って自販機の中身補充するための人件費が高いから、ああやって値段に反映にされるんだろ。
ぼったくる気持ちも少なからずあるんだろうけどさ」
「…………ここの自動販売機の中身の補充って、誰やってるんだろ?」
「業者の人…………はここまで来たりしませんよね。…………もしかして関西呪術協会の人が?」
「…………イメージと大分かけ離れてるでござるなぁ」
トイレも綺麗だし、人の手がちゃんと定期的に入っていそうネ。
巫女さんが自動販売機の中身を補充する絵を想像したら変アルけど。
しかしこの調子だったら、どうやって食料とか必要なものを本山に運び入れているアルかね?
「…………しかし、ここまで過剰に警戒しておいて、結局「何もありませんでした」となったら、とんだ骨折り損のくたびれ儲けだな。
左右は竹林で見るところがないから別に構わんが…………」
「警戒するのは悪いことじゃないと思いますけど」
「それはそうなんだがなぁ。せっかくの京都旅行なのに…………」
「明日から京都観光出来るんだからいいじゃないですか」
「だけど、明日はネギは木乃香達についてるんだろ?
…………そうだ、ネギ。あとで血を吸わせてくれ。明日の観光中に襲われたら困るからな。一応このネギがくれた指輪で力は少し取り戻してるが、それでも万全ではないからな」
「…………僕としては、少なくとも初日の今日だけは万全の状態でいたいんですけどね。夜襲でもされたりしたらコトですし。
いくら『咸卦治癒』で回復するといっても、一時的に弱体化するのは間違いないですから」
「うーん、ネギが言ってることはわかるんだが………………な、なら賭けをしないか?」
「? 賭けですか?」
「そうだ。私は“これから本山に着くまでに敵が襲ってこない”方に賭ける。つまり“これから本山に着くまでに敵が襲ってこなかったら”、血を吸わせろ。
明日はどうせ本山に詰めっぱなしなんだろ。それなら本山の連中がいることだし、多少ネギの力が弱まっても平気なはずだ。
それよりも私が観光に出たときに、魔力不足のせいで捕まって人質にでもされたら大変じゃないか?」
…………観光に出なきゃいいのでは? と思うのは気のせいアルか?
それに、“幻想空間”とやらでエヴァにゃんがネギ坊主と戦うのを観戦したガ、いくらそれより弱体化してるとはいえエヴァにゃんを人質にするのは無理だと思うアルよ。
というか、ネギ坊主はホントに何なのアルか?
あの戦い見たら、私が1000人いても勝てないアルよ。
「ハァ…………それですと、“これから本山に着くまでに敵が襲ってきたとしたら”どうするんですか?」
「フム、何が欲しい?」
「いや、特にないですけど」
「そうか。ならどーしよーかなー。……………………うん、そうだ。それなら“これからほんざんにつくまでにてきがおそってきたら”、きすしてやろう。
…………正確には、“これから本山に着くまでに敵が襲ってきてそれを撃退したら”、キスしてやる」
ガタタッ!!!
ヒィッ!? ビックリしたアルよ!?
アスナとコノカと本屋が急に立ち上がったアル!?
「…………エヴァちゃん、ちょっとトイレまで来てくれない?」
だから、アスナのその無表情は怖いアルよ!!!
「フン! これは私とネギとの賭けだ。関係ない奴は黙ってろ」
「…………そもそも僕とエヴァさんがその賭けをする意味がないんですけど?」
「いやいや、違うぞ。“これから本山に着くまでに敵が襲ってこなかったら”、さっき言った通り私に危険がある。だが血を吸えば対抗策になる上に、私の食欲も満足出来る。
そして“これから本山に着くまでに敵が襲ってきてそれを撃退したら”、初めての実戦を潜り抜けたネギへの褒美だ。お前はまだ模擬戦以外したことないだろう?
お前の実力なら襲われてもやすやすと退けられるだろうが、褒美があった方が気合が出るだろう。
私が賭けに勝ったら私が嬉しい。ネギが賭けに勝ったらネギが嬉しい。実に公平な賭けではないか。
…………それとも何か? 私からの褒美のキスは嬉しくないとでも言うのか?」
「いえ、それは嬉しいですけど…………何か根本的に間違っていませんか?」
「べつにまちがっていないぞ。…………よし、これで賭けは成立だな!」
「…………そうなのかなぁ?」
ソレってドッチに転んでも、結局はエヴァにゃんの勝ちアルよ。
やはりネギ坊主はまだまだ子供アル。全然エヴァにゃんの思惑に気づいてなさそうヨ。
…………しかし、エヴァにゃんの印象がこの1ヵ月でとても変わたアル。
以前までは人間嫌いの気難しい女の子と思ていたガ、今のエヴァにゃんは同性の私から見ても、ただの可愛い恋する乙女アルよ。
「ちょ…………ちょっと待ったぁっ!!!」
「そ、そうですよ! ネギ先生は教師なんだから、生徒とキスなんて駄目ですよぉっ!」
「ムゥ~、エヴァちゃんそれはずるっこやで………………ネ、ネギ君てキスしたことあるん?」
「え? まあ、従姉に頬とか額にされたことならありますけど…………」
「ネ、ネギはファーストキスはまだなのか…………。いやぁ、私も最初は頬とか額にしてやろうかと思ったが、そういうことなら口にしてやろうかなぁ?」
…………恋か。どういうものなのアルかね?
私はまだ経験してないからわからないアル。
結婚するなら私より強い男と決めていたから、考えてみればネギ坊主はその候補に相応しいアル。ネギ坊主のように強い男は初めてだし、その強さも腕力などの身体能力ではなく、技術で裏打ちされた強さアル。
将来的に筋力で男には負けてしまうであろう、女の私が目指すに相応しい強さネ。
精神的に年上のはずの私達より落ち着いているし、“心技体”のうち“心”と“技”の2つは、既に完成されていると言ても過言ではないアルよ。
それに“体”の方は10歳だから仕方ないアル。おそらくもう数年もすれば素晴らしい身体になるアルよ。
「だ、駄目っ! だったら私も賭ける! …………本屋ちゃんは、教師と生徒だからしないのよね?」
「ええぇっ!? そんなぁ!?」
「負けちゃ駄目です、のどか!」
「あ~、やったらウチも賭けに参加するわ」
「…………あの、僕の意見は?」
コノカまでも参加するアルか。コノカはいつもはネギ坊主に普通に接してるけど、誰かが抜け駆けしようとすると参加するアルな。
前に言てた“誰かにとられちゃうのは嫌”という気持ちからアルかね?
…………最近は中武研なんかで組み手しても、組み手相手をネギ坊主と比較してしまうようになたし、正直ネギ坊主のことは嫌いじゃないアル。
でも、あの中に入るのは大変そうだし、そもそも古家の婿には来てくれなさそうネ。
それにアルちゃんの好感度ランキングじゃないけど、ネギ坊主への私の想いは“恋愛”という感じじゃないアルよ。
………………真名や楓達もそうだろうガ、“諦め”とか“呆れ”とかの項目が好感度ランキングにあたら、多分8点以上はいくアルね。
恋とはどういうものなのアルかねぇ? そして私はネギ坊主のことをどう思てるネ?
「んじゃ、ウチが勝ったら“ネギ君に和食の作り方を教えてあげる”え。
あくまで家事の手伝いをしてもらうためやからな。ウチにメリットはちゃんとあるで」
「わ、私は“ネギ先生のオススメ恋愛小説のベスト10”を教えて下さい!」
「うーん、私はそうねぇ………………こ、今度“2人っきりの付きっ切りで勉強教えて”! 負けの場合は、全員エヴァちゃんと一緒の奴ね!!!」
「そうやなぁ。ウチを襲ってきた人たちから守ってくれるんやから、お礼するんは当然やね」
「は、はい! ネギ先生が頼りです!」
「…………僕の、意見…………」
…………やはり、ネギ坊主は何だかんだ言ても子供アルね。あんな風に皆にオモチャにされるネギ坊主も新鮮アル。いつもは手玉に取ている方だから、あんなネギ坊主は初めて見たアルよ。
ネギ坊主も年相応に子供っぽいところもあるネ。
「…………しかし、ネギ坊主があんなにタジタジになるのは初めて見たでござるな」
「初めて私と一緒に寝たときはあれより混乱してたけどなぁ」
「あー…………私の感じた印象だと、ネギ先生はちゃんと理性で計算して物事を進めるタイプだからな。あんな風にわけがわからないまま力押しされると弱いんじゃないか?
理解出来ることには滅法強いけど、理解出来ないことにはとことん弱いタイプだと思う」
「…………随分とネギ先生のことをわかってるですね、長谷川さん」
そう言われれば、確かにネギ坊主はそんな感じアルね。やはりネギ坊主も“心”の修行はまだまだアルか。
それといつも手合わせでは“技”で挑んどいたガ、今度は力押しも試してみるアルかね?
『咸卦法』とか使われたら駄目アルけど。
━━━━━ 天ヶ崎千草 ━━━━━
…………何とか間に合った。本山の侵入者防止の仕掛けをいじって、展開しても本山に様子が伝わるのも遅くしたで。
小太郎や月詠はんはこういう作業に向いとらんから、ウチ独りでやらなアカンかったわ。
「で、木乃香お嬢様達はどうや?」
「まだ休憩所で休憩中や。結界張られたから何喋ってるかまではわからんかったけど、今荷物まとめてるとこやから、もうすぐ出発するんやないかな」
「そか。『無間方処の咒法』は休憩所から300mほど進んだところの広場を中心に仕掛けたわ。
…………新入りは?」
「フェイトはんなら木乃香お嬢様達の後ろ側に移動しました。計画通りに行動するらしいですー」
「…………あ、動いたで」
「よし、ならウチらも行くで。『無間方処の咒法』を仕掛けた広場で勝負や。
それと最初は攻撃したりしたらアカンよ。新入りが木乃香お嬢様を攫うチャンスを作るんや」
小太郎があの坊や、月詠はんが木乃香お嬢様の護衛の相手をする。
つまりウチが残りを相手するんやけど、背の高い女2人と金髪のお嬢ちゃんとロボットの女の子と中華服の女の子の5人も相手にせなアカン。
熊鬼と猿鬼を手強そうな背の高い女2人にあてて、残りを子ザル式神使って数で攻めるしかあらへんな。
さすがにキツイと思うんで、新入りには早めに勝負してほしいわ。
木乃香お嬢様達がコッチに近づいてくる。もうすぐや。もうすぐ東の裏切り者共に一泡吹かせてやれるで。
…………先頭を歩いてる坊やと目あっとるの気のせいかな?
もしかして気づかれとる? 隠れてるのに?
………………あ! よ、よし、『無間方処の咒法』の範囲内には入ったわ。これでいつでも木乃香お嬢様達を閉じ込めれる。
いくら気づかれないように術式をいじったとはいえ、展開した瞬間に本山の連中に気づかれる可能性はあるから、『無間方処の咒法』を展開するのは戦闘になる直前やな。
…………それと、やっぱり坊やと目あっとるんやけど?
ええい! 構わへん!!!
今更こんなところで引けるかいな!!!
「行くで」
「おうよ!」
「了解ですー」
隠れていた崖の上から3人で飛び降りる!
新入りに気づかれないよう、ウチらは派手にいかんとな!!!
「おおーっと、ちょっと待「「「「キターーーーーーッ!!!」」」」…………な!? 何なんやっ!?」
「……………………皆さん、何で賭けに負けて喜ぶんですか?」
え!? 何でこの子達、襲われて喜んどるの!?
━━━━━ 後書き ━━━━━
原作でもネギ達が30分ぐらい走ってから、ようやくちびせつなが罠にかかったことを確信してましたので、実際に入り口から境内までは結構距離があると思います。
関西呪術協会の本山というからには侵入者防止の仕掛けなどは当然あると思いますので、それを利用したことにします。
そして『無間方処の咒法』は、原作では出ることは無理でも入ることは可能みたいですが、ココでは千草がいじったために出入りの両方とも不可能という術式にしています。
ここら辺はオリジナル設定ですのであしからず。
さて、ついに千草達がネギと対峙します。
千草達の運命は如何に!?
そしてネギは前世も含めて20年間、ファーストキスはまだでした。