━━━━━ 龍宮マナ ━━━━━
「「「………………………………」」」
「「「「「………………………………」」」」」
「「「………………………………」」」
「「「「「………………………………」」」」」
「…………お、おおーっと、ちょっと待っていただけますか?
木乃香お嬢様にお目通りお願いしたいと思いまして…………」
「何者だ、貴様らっ!?」
「いや、もう無理だから」
「「うぐっ!?」」
冷静なツッコミだ、長谷川。そして恥ずかしがるな、刹那。
まあ、相手の気勢を削げたのは悪くないんだがな。
敵は3人。変わった着物を着てる女が1人。中心に立っていることから彼女がリーダーだろう。そしてネギ先生ぐらいの男の子と私達ぐらいの女の子が1人。女の子は刀を持っていることから神鳴流か?
数ではコチラが有利だが、コチラには守らなきゃいけない素人がいるからな。
…………ってアレ? いつの間に近衛達の周りに障壁が?
『コチラからは手を出さないでくださいね。戦闘になるにしてもアチラから出させます。それと真ん中の人は新幹線で僕達の様子を探っていた人です。
敵対意思はありそうですが、殺気までは感じません。あくまで予想ですが、無理矢理にでも木乃香さんを西に連れ戻したい人でしょう。残りの2人は傭兵みたいな感じですね。
茶々丸さん、録画の方は大丈夫ですか?』
『問題ありません。ハイクオリティな映像をお約束します』
『数がコチラよりも少ないのに仕掛けてきたということは、腕に自信があるか彼女達は陽動の可能性があります。というか、僕達の後ろにもう1人隠れてますね。
エヴァさんは障壁の周囲で警戒を、茶々丸さんは障壁内部で映像を撮りつつ木乃香さん達の護衛。無茶はしないでくださいね。この映像は重要な証拠になるのですから。
他の人はまだ動かないでください』
ネギ先生なのか…………障壁が張られたことに気づけなかった。
しかも魔力の糸を使った有線念話? 相変わらずネギ先生は多芸だな。どうせ“便利そうだから”ということで開発したんだろうが…………。
それに私達の後ろにもう一人? 私にも全然わからないんだが…………?
そして、汚いなさすがネギ先生きたない。
映像という証拠をバッチリ残しておいて、関西呪術協会との交渉材料にするつもりか?
『ええ、その通りです。これで木乃香さんは東西どちらでも選べることになるでしょうね~。
東を選びたいときは「こんな人達がいる西になんか行きたくあらへん!」って言えばいいですし、西を選びたいときは「直訴してでもウチを西に戻したい人達の心意気に打たれたわ!」って言えばいいですから。
ドッチにしても関西呪術協会の弱みをゲットです』
…………人の心を読まないでくれ。そしてモノは言いようだな。
「「「………………………………」」」
「「「「「………………………………」」」」」
「…………つ、続けてええですか?」
「「「「「どうぞどうぞ」」」」」
「コホンッ! …………で、では改めまして、関西呪術協会の天ヶ崎千草と申します。この度は木乃香お嬢様にお願いがありまして、お目通りを願ったのです。
危害を加えるつもりはありませんので、どうぞその障壁を解いていただけないですか?」
『…………木乃香さん。残りの2人も名乗るように言っていただけませんか。そうすれば障壁を解くと。
解いたとしても、コンマ秒で再び張れますので安心してください』
『了解や』
ああ、着々と証拠が集まっていく…………。
どうしてこう腹黒いんだ、ネギ先生は?
「……………天ヶ崎千草さん、ですか。変わった着物やなぁ…………。
それで他の2人はドチラさん? 名前も知らない人とは仲良くは出来ないえ」
「これは失礼しました。ホラ、2人も名乗りぃな」
「…………犬上小太郎や」
「私は神鳴流の月詠いいます~。よろしゅうに~」
残り2人の名前もゲット。
偽名の可能性もあるが、私達を侮っているようだし、おそらく本名なんだろうなぁ。
『●REC』
『…………あの着物って、京都では普通なんですかね?
露出も多いし、何だか日本の女性のイメージが崩れていきます…………』
『ち、違いますよ、ネギ先生! 勘違いしちゃ駄目です!!!』
『そうやで、ネギ君! 天ヶ崎って人が変わった趣味を持ってるだけなんや!!!』
『…………もしかして、アレが関西呪術協会の正式な制服だったり?』
『ええぇっ!? それやったらウチ絶対西に戻らんわ!!!』
刹那と近衛も大変だな。
生まれ故郷が変な風に思われるのは嫌なんだろうが…………。
それにネギ先生のせいで、近衛の中では関西呪術協会が変態集団になっていくぞ。
━━━━━ 天ヶ崎千草 ━━━━━
やばいわ。お嬢様達の反応に呆気にとられてしもうたわ。障壁も張られてしもうたし、これだとアッチのペースやんか。
何とかして新入りが木乃香お嬢様を攫う隙を作らな…………。
「(何か変な感じになってしもたな…………やっぱ千草姉ちゃんの着物って変だよな?)」
「(実を言うとウチもずっと変だと思ってましたわ~…………雇い主さんの趣味やから言わへんかったけど)」
…………アンタラは黙っとき!
特に月詠はん! アンタのゴスロリだって変やろ!?
「…………年の問題じゃないのかなぁ? それで木乃香さん、障壁どうします?」
「? 年がどうしたん、ネギ君?
…………まあ、ちゃんと名乗ってくれたんだし、一度解いてええよ。それで? 天ヶ崎さんはウチに何の用?」
「お目通りを許していただきまして、おおきに。まずはお礼を言わせていただきます。
聞くところによると、木乃香お嬢様は関西呪術協会や関東魔法協会など裏のことを知ってしまい、この旅行で東西ドチラを選ぶかをお決めになるとか…………。
そこでウチは、是非とも関西呪術協会を選んでいただきたいと思って参上したんです」
「…………アンタと一緒のトコは選びたくないわ」
えっ!? 思いっきり木乃香お嬢様の目が冷たいんやけど!? ウチ何かした!?
それにあの坊や。ウチの心読んだ!? っていうか、誰が年やっ!?
「な、何か失礼をしましたでしょうか?」
「いや、失礼も何も…………何なん? 何なん、その着物?
思いっきりネギ君に日本のこと勘違いされるやろ。日本の伝統壊してるのアンタやろ。それとも何? 関西呪術協会の人は皆、アンタと同じ格好してるん?」
「やっぱりあの着物って何か違いますよねー?
それと表情と目線を見てたら、考えてることはだいたい予想はつきますよ」
「ネギ君は見たらアカン!
勘違いしたらアカンで。普通の着物は前にウチが着てたような服で、あの変なお姉さんが着てるのは着物やないで!!!」
「そもそも木乃香お嬢様の前に出てくるのに、その露出は何なんだ、貴様!? 肩や胸元をそんなに曝け出して恥ずかしくないのか!?
おい! 犬上小太郎といったな! スマンが学ランの上着を天ヶ崎千草に貸してやってくれ。その女は木乃香お嬢様やネギ先生の目に毒だ!!!」
「うえっ!? わ、わかったで………………ホレ、千草姉ちゃん」
「お、おおきに…………」
…………アカン。何か泣きそうになってきてしもた。小太郎達にもボロクソに言われるし、坊やには簡単に考えてること予想されるし…………。
ウチのファッションセンスってそんなに変なんか?
完璧に木乃香お嬢様に嫌われてしもうたみたいやし、ホントどないしよ?
「まあ、落ち着いてください、木乃香さん。天ヶ崎さんがせっかく直訴に来たのだから、話ぐらいは聞いてあげていいんじゃないですか?
…………でもアレ? 天ヶ崎さんは竹の棒とか持ってらっしゃいませんね?」
ハ? 竹の棒?
「? 日本の直訴ってそうなんじゃないですか?
「直訴でござる! 直訴でござる!」
って、竹の棒の先に直訴状を挟みこんでお殿様に差し出すのでは? いやぁ、天ヶ崎さんは凄いですねぇ。死を覚悟してまで直訴するなんて…………」
「はぁっ!? “死”!? 千草姉ちゃん死ぬんか!?」
「え? 違うんですか? 直訴する人は死罪を覚悟して行なうようなことTVの時代劇でやってましたけど?
だから天ヶ崎さんは、この直訴に勝っても負けても死ぬしかないんじゃ…………?」
「そ、そういえばそんな話聞いた覚えあるわ。
…………千草姉ちゃん、そこまで覚悟を決めてたんか」
「…………そうなんか。だったらウチも話ぐらいは聞いてあげなアカンな。
死を覚悟してまで直訴するなんて、生半可な覚悟やないわ」
何かどんどん大げさになっていっとる!?
いや、確かに長の娘を誘拐なんかしたら死罪になってもおかしくはあらへんけど、この子達が言うとるのは絶対どこか間違うとるわ!!!
っていうか、小太郎も信じてるんじゃないわ!!!
「………………でもなぁ、そもそもウチに関西呪術協会を選んでほしいと本当に思ってるかどうかわからんしなぁ。
もしかしたら実は西に戻ってほしくない人で、ウチに危害を加えに来たのかもしれんし」
「そ、そんなことありません!
ウチは木乃香お嬢様に、是非とも次代の長になってほしいと思っております!」
「………………修行も何もしてないウチが次代の長て…………他の次代の長候補の人達って、修行も何もしていないウチよりも駄目なんか?」
「え!? …………駄目、というワケやありまへんが、力不足は否めませんな。
正直な話、最近の関西呪術協会は東に比べて落ち目です。関西呪術協会を立て直すためには、やはり木乃香お嬢様のお力が必要なんどす」
「………………ウチのような素人が長になっただけで、関西呪術協会を立て直せるとは思えへん。それこそ長となるための修行を積んできた人達の方が立派に組織をまとめれるんやないの?
ウチは今まで普通の女子中学生やったから、帝王学なんか学んだことないで」
「いえいえ、細かいコトはウチら下々の者にお任せくださいませ。
木乃香お嬢様は今は眠っているそのお力をウチらに貸していただければ、それだけで結構ですえ」
「…………黙って聞いていれば、天ヶ崎千草! どう考えても木乃香お嬢様を操り人形にする気ではないか!?」
ちっ! うるさい小娘やな………………まあ、ウチもどう考えても、今の理由は苦しかったからしゃあないか。
しかし、木乃香お嬢様はおっとりしてそうな方と思ってたのに、実際に話してみると頭が回るな。
残念や。自発的に西に戻ってきてくれたら、素晴らしい長になれたやろうに…………。
「あの~、天ヶ崎千草さん。危害を加えるつもりは無いと言うのなら、僕達の後ろに隠れている人は誰ですか?
伏兵を置くなんて、どう考えても危害を加えるつもり満々だと思うのですが?」
「な、何のことですか!?」
新入りのことがバレとる!?
新入りが隠れていることを知っているウチでさえも、新入りがどこに隠れているかわからへんのに!?
「だから表情と目線でわかりますって。僕達の後ろを探るように見たことが何度かありましたし、そもそも今の焦り方は自白しているのと同じです。
というわけで、障壁を再び張らさせていただきます。そんな人の前に木乃香さんを無防備で立たせて置くわけにはいきません。
そして茶々丸さん、学園長を通じて関西呪術協会に連絡を」
「うぐっ!?」
「へぇ~、お前、ネギって言ったな。やるやんか! 治癒術師と聞いてたから期待してへんかったけど、結構楽しめそうや!」
「千草はんは駄目どすなぁ~」
…………もう、ウチ泣いてもええよね?
どうせウチなんか……………………くそっ! もうこうなったら力ずくでいくしかないわ! 本山に連絡をされたらマズイ。
…………よし! 『無間方処の咒法』発動や。これでもう逃げられへんで、坊や達!!!
「ええいっ! こうなったら力ずくで木乃香お嬢様を頂戴いたします!」
「大丈夫かい、千草さん?
…………僕にはファッションセンスというものはわからないから、何とも言えないけど…………」
「気にせんといて…………って、何でコッチに来るんや、新入り!?」
水たまりを媒体にした転移術で、コッチに新入りが来よった!?
『無間方処の咒法』で閉じ込めてるし、素人が5人もいるから後ろに逃げられる心配はあらへんけど、ここはどう考えても挟み撃ちにするところやろ!?
「…………無理だよ。彼は僕のことに気づいていたから不意打ちは無理だし、お姫様達を守っている障壁は後方部がとても厚くなっている。前方部は薄いからワザとだろうね。
千草さんと話している間にも、彼らの影で千草さん達から死角になっている障壁後方にトラップがどんどん仕掛けられていってたし…………。
あそこまでやられると面倒だ。それならコッチから攻めた方がいい」
「気づかれちゃったか。魔法の隠蔽には自信があったんだけどなぁ。
…………? ………………ッ!?」
可愛い顔してホンマにけったいなことしまんなぁ、あの坊や。
アレ? 新入りの顔みて驚いてるけど、何かあったんやろか? もしかして知り合いか?
「…………ちょっと聞いていいかな? 何で君がここにいる?」
「…………何で、とはどういうことだい、ネギ・スプリングフィールド君?
僕は今まで君と会った覚えはないけど」
「ああ、僕も君と会ったことはないね。しかし、多分君は僕が知っている人…………イヤ、違うな。年齢があわない。少なくとも子供ではなかったから、弟とか息子?
…………君は“アーウェルンクス”だろう?」
た、確かに新入りの名前は“フェイト・アーウェルンクス”のはずや。
何でこの坊やが新入りの名字を知ってるんや?
「天ヶ崎さんの表情を見る限り、当たりのようだね。もう一度聞く。何で君がここにいる?」
「…………君が僕の何を知っているか知らないけど、まぁ教えてあげよう。僕の名前はフェイト・アーウェルンクス。
ここにいる理由は研修だよ。イスタンブールの魔法協会から日本の関西呪術協会へ、日本の呪術を学びにね」
「戯言をよくも。…………天ヶ崎さん! あなたは彼が何者か知っているんですか!?」
「な、何のことや!?」
「彼は……………………アーウェルンクスは、
見た目5~6歳の女の子を誘拐して、その女の子を怪しげな儀式の生贄にして世界を滅ぼそうとした、魔法世界全土に指名手配されている秘密結社の一員ですよ!!!
今度は木乃香さんを何かの儀式の生贄にする気かっ!? そんなことはさせない! 木乃香さんは僕が守るっ!!!」
…………。
……………………。
………………………………な、
「「「「「「「「何やってーーーっ!?」」」」」」」」
「…………人聞きの悪い言い方をしないでくれないかい」
女の子を生贄に!? 新入りも否定せんし!?
何で新入りがこんなことに参加したのか不思議やったけど、木乃香お嬢様を生贄として狙っていたんか!?
━━━━━ 後書き ━━━━━
別ニ嘘ツイテナイデスヨ。
チャント本当ノコトダケ言ッテマスヨ。
部活巡りでのちうたんとのときを思い出していただければわかりますけど、ネギはなるべく嘘つかないようにしてますし、嘘をつくにしても必要なこと以外は嘘つかない、キルアみたいな嘘のつき方しますよ。
そもそも本当のことだけ言ってるので、ネギが悪いわけじゃないですよ。
…………僕は悪くない。
だって、僕は悪くないんだからっ!
木乃香の長い沈黙部分では、ネギからの念話を聞いています。
これでいろいろと関西呪術協会にチクることを確保しました。
それと“直訴”についてですが、実際は“直訴したから死刑”、ということは少なかったそうです。
ちゃんと正当な理由があったら、もしくはその直訴に勝訴したら無罪放免だったらしいですね。詳しくはWikiで。
…………もちろんネギは知っててやってますがね。
ネギ君絶好調。
【ネギの被害者リスト】
メルディアナ学校長:燃やされた
カモ:去勢された+『仮契約』儀式の手伝い
鳴滝姉妹:悪戯し掛けて返り討ち
エヴァンジェリン:紅茶吹かされた
バカレンジャー:勉強地獄
学園長:ストレスによる急性胃潰瘍にて吐血
さよ:知らないうちに成仏させられるところだった
魔法先生一同:「この子ホントにどうしよう?」という絶望
愛衣:幼児退行させられた
高音:露出狂の嫌疑かけられた
刀子:露出狂の嫌疑かけられた
バレーボール:破裂させられた
タカミチ:コーヒー吹かされた+担任クビ+マダオ就任
刹那:勉強地獄+バカホワイト就任
明日菜:失恋
関西呪術協会:変態集団疑惑 ← new!
天ヶ崎千草:勝っても負けても“死”? ← new!
“完全なる世界”:“ょぅι゛ょ誘拐犯” ← new!