━━━━━ 近衛木乃香 ━━━━━
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………!」
…………このお姉さんも大変やなぁ。
昨日、ネギ君の魔法で酷い目に遭ったり石になったばっかりで疲れてるんやろうに、こんな夜中に山道を全力で走るなんて…………。
ウチはお猿さんに抱っこされて、自分の足で走ってないから平気やけど。
せっちゃんとネギ君早く来ないかなぁ。誘拐されたときは怖かったけど、さっきのネギ君達見てたら安心したわ。お父様やアスナ達も無事みたいやし。
ネギ君達なら、ちゃんとウチのこと助け出してくれるって信じられる。
…………むしろさっきのネギ君見てたら、このお姉さん達が可哀想に思えてきてしもうた。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………。
お嬢様、何でそんな憐れむような目でウチを見られるんですか? …………ウプッ!」
走りながら喋るのは辛そうやから止めた方がええと思うけど。
いくらネギ君が治療したとはいえ、一度はネギ君の魔法で瀕死になったのは変わりないんやから。
「こ……これから向かうところには、危な過ぎて今や誰も召喚出来ないという巨躯の大鬼が眠っています。
じゅ……18年ぐらい前に一度暴れたときは、お嬢様のお父上とあの坊やの父親のサウザンドマスターが封じたらしいです。
でもそれも…………お嬢様のお力をお借りすれば制御可能となります。その召喚に成功すれば応援部隊はもちろん、あの坊やだってものの数やありません………………ウプッ!」
…………別にわざわざウチに説明せんでもええのに。
顔色悪くなって吐きそうになってるやん。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………! そうや、ウプッ! あの力さえあればいよいよ東に巣食う西洋魔術師達に一泡吹かせてやるんや!!! …………ウプッ!」
…………このお姉さんも本当に大変やなぁ。
っていうか、お姉さんのこの状態でその召喚なんか出来るんやろか?
あ、森抜けたみたいや。大きな池があって、その真ん中に祭壇みたいのがある。
そんでその祭壇のところに…………。
「オー、ヤット間抜ケガ来タミタイゼ、御主人」
「ん? ようやく来たのか。随分と待たせおって…………」
エヴァちゃんとチャチャゼロちゃんがおった。
っていうか、他にも本山で見た人がたくさんおるな。何かビキビキと青筋立てて怒ってるけど。
あれ? 本山の人達って石になったとちゃうん?
「…………え? な……何で? 応援が来るまで1時間って…………?
まだ30分以上は余裕があるはず…………」
「敵ノ言ウコト信ジテンジャネーヨ、コノ阿呆」
「いや、ネギが言うには“5分だろうと55分だろうと1時間以内”ということらしいぞ?」
「自分デモ信ジテナイコトハ言ワナイホーガイイゼ、御主人」
「いや、そうなんだがなぁ…………それにしても今回の旅行ではネギの予想が本当に尽く当たるな。ネギの頼みでこの場所に用意しておいた転移陣を本当に使う羽目になるとは思わなかった。
ネギの魔力を使ったとはいえ、本山とここを何往復もして術者を運ぶのは面倒だったぞ。
(ネギの奴、あの女の記憶を読むときに“僕は嘘はつかない”という暗示もかけていたらしいからなぁ。ネギの言葉を信じて1人でのこのこと来てもしょうがないか。
…………それでも一応嘘をついていないというのが嫌らしいが)」
そういえばネギ君が昨日の夜、エヴァちゃんにそんなこと頼んでたなぁ。
「彼女は最悪の場合、リョウメンスクナノカミという鬼神を呼び出すつもりみたいでした。
“念のため”そのリョウメンスクナノカミが封じられている祭壇へ直行出来る様に、祭壇近くに転移陣を用意しておいてください」
……って。だからウチらより先にここへ来てたんか。記憶を読めるって本当に便利やねぇ。
「…………ほ、本山の術者達は石になったはずじゃあ…………?」
「ネギのことを“治癒術師”と言ったのはお前らだろう。あんな石化、ネギの手に掛かれば簡単に治せるらしいぞ」
「いやはや、ネギ君は凄いですね。まだ10歳にもなっていないというのに。
…………石化から回復してみたら、私に銃口を向けていたネギ君がいたときは驚きましたがね」
あれ? この声って?
「ウキャッ!?」「ンンッ!?」
うわっ!? ビ、ビックリしたぁ。
ウチを抱っこしていたお猿さんが急に消えてもうて、地面に落ちると思ったら中空でキャッチされた…………って、やっぱりお父様やー。
良かった、無事やったんやなぁ。
「お、長ぁっーーー!?」
「おや? 何を驚いているんですか、天ヶ崎千草?
先ほどネギ君が「詠春さんや明日菜さん達も無事ですよ」と、ちゃんと言っていた筈ですが?」
あー、そういえば一字一句同じこと言うてたな。
…………絶対ネギ君、わざと言ったんやろうなぁ。
「ハハハ、木乃香。怖い思いをさせてしまいましたね。もう大丈夫ですよ。
…………そして天ヶ崎千草。ウチの娘が随分お世話になったようですねぇ」
「ア、アハハハハハ………………終わった。ウチ終わってもうた」
「ああ、天ヶ崎千草。ネギからの伝言があってな。「狐狩りはまず狐が巣穴に逃げ込まないように、狐の巣穴を塞ぐことから始めます」だそうだ。
…………まあ、相手が悪かったと思って諦めろ」
お姉さん終了のお知らせ。
…………このお姉さんも心底大変やなぁ。
「…………それにしても、何で私達までここに来なきゃいけねーんだよ」
「しょうがないでしょ、千雨ちゃん。
あの広いお屋敷に私達だけでいるってのは不安だし」
「さすがにそれは怖いですよ~」
「申しわけありません。
私ではネギお兄様のように皆様の護衛が出来るわけではないので…………」
「アルちゃんは気にしなくていいですよ。
っていうか、いくら石化治癒魔法が入っていたとはいえ、ネギ先生のビーム・マグナムとやらを人様に向けてぶっ放す方が抵抗があったです」
「ハハハ。お嬢様方のお手伝いに、関西呪術協会の長として感謝いたしますよ」
「オイ、御主人。全然暴レレネージャネーカ。
今カラアノ坊主ドモニ混ジッテキテイイカ?」
「私だって転移魔法使っただけで出番が終わりそうなんだ。ワガママ言うな」
あ、アスナ達もおるんやね。皆無事でよかったわぁ。
これであとはせっちゃんやネギ君達が無事に戻ってきてくれれば終わりやね。
「あ、木乃香。ネギから“白紙仮契約カード”預かってるわよ。もうネギが従者の方にサインしてあるから、木乃香は主人の方にお願いね。
そのうちネギが連絡してくるから、そのときにネギを召喚してだってさ」
おお~、ウチもようやく出来るんか。
しかもウチがネギ君のご主人様や~。
━━━━━ フェイト・アーウェルンクス ━━━━━
…………手強い。
それが僕のネギ君に抱いた感想だった。
「クッ、『万象貫く黒杭の円環』!」
「散弾ではなぁっ!!!」
硬い。あの4枚羽根の魔力装甲を突破するには『障壁突破 石の槍』クラスが必要みたいだ。
だけど、常に空中をそこそこ速い速度で飛び回っているから、地面から伸ばす『石の槍』が当てれない。かといって、中空から出す『石の槍』では威力が足りない。
そしてもう一つ厄介なのはあの火力だ。
胸の部分と4枚羽根からのシャワー状の光線と、その4枚羽根の先にあるそれぞれの腕に持たれたガトリングガンから大量の弾がビュンビュンと飛んでくる。
威力的には僕の障壁なら充分耐えれる攻撃…………なんだけど、
「いいぞ、ベイべー!
逃げる奴は“召喚された鬼”だ!! 逃げない奴はよく訓練された“召喚された鬼”だ!!
ホント日本は地獄だぜ! フゥハハハーハァーッ !!!」
「ヌワァーーーッ!」
「た、助けて、オヤビーンっ!」
召喚された鬼にとっては致命的な攻撃だ。
一発一発の攻撃力は高くないとはいえ、ああまで大量に浴びせられてしまうと、そこそこ強い鬼でないと耐えることが出来ない。
鬼の数も150体はいたのが、もう30体ぐらいにまで減らされている。戦闘が始まってからまだ10分も経っていないのに。
何よりも厄介なのは彼の戦い方だ。
僕を相手にしつつ、流れ弾で確実に鬼を減らすように戦っている。流れ弾といってもむしろ全方位攻撃で自分の仲間達に当てないようにしているだけの弾幕の張り様だ。
そして僕自身相手には負けないように戦っているだけとしか思えない。まずは鬼を掃討し、自分の仲間達に千草さんを追わせるつもりだろう。
マズイ。これ以上鬼を減らされたら、あっという間に押し切られて鬼が全滅する。そして彼の仲間達が千草さんの後を追うだろう。
幸い、まだ召喚された中でも別格の力を持つ鬼がまだ残っている。…………あの弾幕の嵐を生き残ったんだから当然だけどね。
僕がネギ君さえ完璧に抑えれば、ネギ君の仲間相手でもリョウメンスクナノカミ召喚までの時間稼ぎぐらいは出来る筈…………なんだけど。
僕が接近戦で攻撃している間はネギ君もあの大火力は発揮出来ない。
だから僕がネギ君に接近戦を挑んで彼の注意を引きつけようとするんだけど、それも両腕に持った魔力剣2本を使った神鳴流で防がれてしまう。この防御が崩せない。
…………というか、本気で『弐の太刀』が厄介すぎる。
僕にとってここでの戦いはあくまでオマケに過ぎないので、こんなところで万が一にも致命傷を負うわけにはいかない。
そのためにネギ君に届かせるための後一歩を踏み込めないでいる。
しかも大火力は発揮できないとはいえ、
「ファンネルっ!!!」
「ええいっ! またこの小っこいのが!?
ちょこまかと鬱陶し「隙アリぃっ!!!」グハァッ!? や、やるやないかっ、神鳴流の嬢ちゃん!」
「いや、楽だね。この仕事」
「っていうか、ネギ坊主の豹変振りは突っ込まなくていいアルか?」
「え? 銃を乱射するときってこのセリフを言わなきゃ駄目なんじゃないんですか?
映画でこういうシーン見たんですけど…………」
「ネ、ネギ先生ぇーーーっ!? 子供が変な映画見ちゃ駄目ですよっ!!! っていうかどんな映画なんですか、それはっ!?」
あの“ファンネル”と呼んでいるものが彼女達のフォローにまわり、着実に鬼達を減らしていく。
かといって僕が彼女達を襲おうかという素振りを少しでも見せると、ネギ君は僕に猛然と攻撃を仕掛けてくる。
…………マズイ、手詰まりだ。ネギ君を抑えきれない。
「強いなっ! 糸目の姉ちゃん!」
「お主もなかなか見所あるでござる。
まだ何か力を隠しているようでござるが、ネギ坊主が怖いので本気を出す前に倒させていただくでござるよ」
「へっ! 女に本気が出せるかよぉっ!!!
(ってか、マジで変身する暇すら与えてくれんわ、この姉ちゃん)」
小太郎君も完璧に抑えられてる。
例え小太郎君が自由でも、ネギ君に立ち向かったら5秒で落とされそうだけど。
月詠さん? 開始2秒で落とされたよ。しかもネギ君の手によってね。
開始直後、ネギ君はいきなり『七条大槍無音拳』とかいう強力な『居合い拳』を撃ってきた。
鬼は薄く広くネギ君達を包囲する位置にいたから被害は威力の割りに少なかったけど、アレで鬼が30体は喰われたよ。月詠さんもそれでノックアウト。
ちなみに今は『凍てつく氷柩』で氷の中に封じられている。ネギ君は氷系魔法まで使えるみたいだね。
そのときの桜咲刹那のしょぼくれた顔は同情に値したよ。
気を取り直して鬼退治で鬱憤を晴らしているみたいだけど。
しかし参ったね。
ここまでワンサイドゲームになるとは思わなかった。
ここは一つ、仕切り直しするしかないか。このままではあと5分も持たないだろう。
そうと決めたら空へ大きく跳んで、ネギ君から距離をとる。
「小太郎君! 月詠さんを連れて離れるんだ!
ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!」
「むっ!? 大きい魔法が来ます! 僕を中心に円陣防御を!!!
『解除』! ラス・テル・マ・スキル・マギステル!」
ネギ君が僕の意図に気づいたのか、魔力装甲を解除して仲間達を集合させる。小太郎君はその隙に離脱。
残った鬼がネギ君達に攻撃を仕掛けるが、ネギ君を中心とした円陣を組んだ彼の仲間達がそれを防ぐ。
魔力装甲を解除したのは、解除しなければ詠唱魔法が使えないということなのだろう。魔力装甲を纏ってから彼は一度も詠唱魔法を使ってこなかったから。
死人を出すわけにもいかないけど、おそらくネギ君によって防がれるだろうから全力で行く。
…………鬼も巻き添えになりそうだけど、還るだけだから気にしないでおこう。それに手加減できる状況じゃないし。
「おお 地の底に眠る死者の宮殿よ
我らの下に姿を現せ」
「契約により我に従え高殿の王!
来れ巨神を滅ぼす燃ゆる立つ雷霆!
百重千重と重なりて走れよ稲妻!」
ネギ君の詠唱が早い。僕より後に唱え始めたのに同時に詠唱が終わった。
しかも雷系最大呪文の『千の雷』?
『冥府の石柱』はその特性上、巨岩を呼び出してから攻撃することになるので『千の雷』より更に一呼吸攻撃が遅れる。
間に合うか?
「『冥府の石柱』!」
「左腕固定! 『千の雷』!
右腕固定! 『断罪の剣』!
術式統合! 『雷の剣』!!!」
? 『千の雷』を直接放たずに雷の剣へ変化させた?
いったい何をする気だ?
「並びに神鳴流決戦奥義、『真・雷光剣』! 相乗!!!」
右腕の『千の雷』で作った剣に、気が注ぎ込まれていく。
普通なら気と魔力は反発するのに、まるで『咸卦法』のように2つが融合していく。ネギ君は『咸卦法』まで使えるのか?
…………あれはマズイ。とてつもなく嫌な予感がする。
緊急転移で離脱しよう。
もう『冥府の石柱』は呼び出した。あとは放っておいても勝手に落ちてくれるから問題はない。
「『闇の咸卦技法 神鳴ノ剣』」
━━━━━ 龍宮マナ ━━━━━
圧巻。
まさにその一言に尽きる。先ほどまで空に浮かんでいたいくつもの巨大な岩が、ネギ先生の一振りによって塵と消えた。
空に向かって放たれたから良かったものの、もし地上に向けて放たれたとしたら、想像したくないぐらいの破壊を生み出すだろう。
…………10歳の身空でよくぞここまで。
何がこの子をこんなにも強くしたのだろう?
「…………逃げられました。『神鳴ノ剣』が当たる前に転移魔法で逃げたようです」
「そうかい、残念だね」
「私達も鬼を全て片付けたアルよ」
「ネギ先生、あんな大技を放って疲れてるでしょうが、今すぐ木乃香お嬢様の奪還へ」
「大丈夫です。さっきエヴァさんからの念話がありまして、木乃香さんは無事に助け出されたそうです。
のこのこと天ヶ崎千草がリョウメンスクナノカミ封印の祭壇へ来たらしいですよ」
それは何よりだ。
今回はネギ先生のおかげで楽が出来て良かったな。
「すまないでござる。
犬上小太郎とやらには逃げられたでござるよ」
「問題ないですよ。どうせ天ヶ崎千草のところ、祭壇で待っていればやってくるでしょうからね。
…………皆さん大きな怪我はないですよね? 今から木乃香さんに僕を祭壇へ召喚してもらい、その後に僕が皆さんを召喚します。祭壇の状況を少し調べてから召喚しますので、2~3分ぐらいでしょうがそのまま休んでいてください。
フェイトが戻ってくることはないと思いますが、一応は油断しないでくださいよ」
「はい、ネギ先生」
「了解。召喚する前に念話よろしく」
「では少しの間、待っていてください。
では木乃香さん、お願いします。…………え? 呪文? 『召喚 木乃香の従者 ネギ・スプリングフィールド』と唱えてくれれば。
…………いや『しょーかん』じゃなくて『召喚』です………………え? …………あの、エヴァさんとかアルちゃんそこにいますよね?
ええ、はい。…………はい、それではよろし
…………セリフの途中で消えちゃった。
この旅行で東西どちらを選ぶか決めるまでは教えれなかったとはいえ、こんなことになるなら近衛に呪文を教えておけばよかったな。
あくまで結果論でしかないが。
それにしても、戦闘のときの魔法使いとしてのネギ先生と、2-Aの生徒を相手にしているときの教師としてのネギ先生。
どちらも同じネギ先生なんだが、やはりどうもチグハグな感じだな。
「…………ネギ先生は凄いな」
「そういえば龍宮は別荘に来ても勉強会に参加するだけで、修行には参加してないから知らなかったのか。
…………私達もあそこまでの大技を見るのは初めてだけどな」
「………………本物の戦場をくぐり抜けてる真名に聞きたいアルけど、西洋魔術師って皆ネギ坊主みたいなのカ?」
「いやいやいや! それは違うぞ、古! …………って、そうか。古はこちらに来てからそんなに経っていないし、近くにいるのがネギ先生だけだからな…………。
私も今までいろんな強者を見てきたが、ネギ先生はその中でも5本の指…………いや、もしかしたら一番強いかもしれないな」
「やっぱりそうアルか。
西洋魔術師が皆ネギ坊主みたいだったら自信なくすアルヨ」
普段からああいうバグキャラ見てたら、古に悪影響が出るんじゃなかろうか?
「ネギ先生のおかげで木乃香お嬢様が無事に助かったのはいいけど、それにしてもネギ先生には困ったものだ。
何か最近、ネギ先生はワザとやってるんじゃないかと思えてきた…………」
「ネギ坊主はいつもワザとだと思うでござるよ。
…………いや、言いたいことはわかるでござるが」
「私もわかる。しかしこういう言い方はアレなんだが、ネギ先生に嘘をつく頭があるとは思えないな」
別にネギ先生の頭が悪いと思っているわけではない。
むしろ天才と言っていいだろう………………アホの子でもあるが。
何というか…………普通の人間ならば“嘘をつかなければ切り抜けられない状況”になったとしても、ネギ先生なら別に“嘘をつかなくてもその状況を切り抜けられる”のだろう。
つまりネギ先生は“嘘をつく必要がない”。
だからそれ故に、ネギ先生は“嘘をつくという発想がなくなった”のように思える。
前々から思っていたが、ネギ先生はアンバランスだ。
間違ったことをしているわけでもないし言っているわけでもない。だがそれでも何かが違っているとしか思えないことをする。
確か以前、何かの本で、
“天才と一般人とでトータルすれば能力量に差は無いが、天才の場合は一般人であれば誰でも出来ることが出来ない反面、一般人には困難なことをた易くこなしてしまう”
というような記述を読んだ記憶がある。
ネギ先生にも当てはまりそうだな。“好感度ランキング”なんか見てもそうだったし…………。
“学園祭”に関係してくるので、障害になりうるネギ先生のことは超が更に詳しく調査した。
メルディアナでも似たような感じだったらしいな。
メルディアナで生活していたときのことの調査でも、“チグハグ”や“アンバランス”のような言葉が報告書に多く載っていたように感じられた。
…………メルディアナの人達も可哀想に。
あの『神鳴ノ剣』とやらを放ったとき、もしフェイトに逃げられていなかったとしたら、フェイトを殺していたことになるのをネギ先生は気づいているのだろうか?
気づいていなかった? その場合、もしフェイトを殺していたとしたら、ネギ先生はどういう反応をとるのだろうか?
それとも気づいていた? その場合、ネギ先生は“人を殺す”ということをどのように捉えているのだろうか?
…………心配だな、あの子の将来が。
今はその天才性で何かコトが起きても凌いでいるが、もし自分の手に負えない状況に陥ったらどうするのだろう?
『皆さん、聞こえますか?
今から皆さんを召喚しますけど、大丈夫ですか?』
「はい、全員大丈夫です」
ネギ先生からの念話か。
フゥ、もう少しでこの仕事も終わりだな。
そういえば超の奴、“学園祭”のときはどうするつもりだ?
正直、私ではネギ先生に勝てないぞ。
一応今までの戦闘の映像は出来る限り撮影しておいたが、映像を見たとき超の反応が面白いことになりそうだな。
…………というより、もしかして“学園祭”の時には私がネギ先生の相手をしなければならないのか?
…………。
……………………。
………………………………超の仲間から抜けたら駄目かな?
━━━━━ 後書き ━━━━━
気分は『約束された勝利の剣』!!!
魔法世界人は魔法世界にいれば良かったんだよ!
またオリジナル技が出ました。
うん、中二病が擽られる。
…………ルビあってますかね? 『雷の剣』。“エンシス”=“剣”はあっているはずですが、“雷の”=“フルグラリース”が微妙です。
いや、コレに近い感じの名前なのは確実なのですが…………。
『雷の投擲』の“雷”とか、『雷の暴風』の“雷”とかいろいろありますよね。
今回は『魔法の射手 雷の一矢』の“雷”を使いましたが、ハッキリ言って勘です。いくら調べても、正しいのがわかりませんでした。
一番これが近いかな? と思って使っただけなので、もし正しい使い方がわかる人がいたら教えてください。
あと千草終了のお知らせ。
“天国への扉”には“記憶を読む”以外のもう一つの能力があります。“記憶を書き込むことによって相手の行動・記憶を制御することが出来る”っていう能力が。
記憶を読めるのは便利ですけど、記憶を書き込めるのはもっと便利ですよね。ウン。
今回の旅行で原作知識からネギのしたことは
“石化治療魔法のマグナム弾を予め大量作成”
“月詠のメガネ没収・破壊”
“リョウメンスクナノカミが封印されている大岩近くの祭壇に転移陣用意”
“天ヶ崎千草の記憶の読み込み・書き込み”
…………おかしいなぁ。
一個一個は大袈裟なことじゃないのに、全部合わさると本気で悪魔の所業になったのは何ででしょう?
それとビーム・マグナムは“お試し契約”を結んでたりしていない人でも、引き金を引けば誰でも使えます。
あとフェイトは『石の槍』を、京都でエヴァの腹をぶっ刺したときみたいに地面から出してる場面と、単行本25巻にてネギと戦っているときに中空から出してる場面があります。
地面から出さなくとも中空から出せるならそっちの方が使い勝手が良さそうですが、わざわざ地面から出してるとなると理由があると思われます。
そのためこの作品では地面から出す方が威力が高い、という設定です。
一応のオリジナル技解説。
これらはあくまでこの作品のオリジナルです。ご了承ください。
『居合い拳 弐の拳』
神鳴流の『弐の太刀』と『居合い拳』を組み合わせた技。障壁をすり抜けてボコれる。
こう螺子りこむように打つべし! 打つべし! 打つべし!
『雷の剣』
その名の通り、雷系魔法で構成された剣。
別に『千の雷』でなくても構成可能。
構成魔法にもよるが、中級魔法の『白き雷』だけで構成しても、『魔法の射手』を利用しているビームサーベルより威力は数段上。
今回は『断罪の剣』と“術式統合”をして更に威力を上昇させているが、威力が下がっていいなら『断罪の剣』を使わずに“形状変化”のみで可能。
今回の『雷の剣』は気体に相転移どころか、物質の第4の状態である“プラズマ”に相転移させる威力を持つ、が…………物理学的に正しいかは突っ込まないでください。いや、マジで。
『神鳴ノ剣』
『雷鳴剣』や『雷光剣』などの雷系神鳴流奥義と、『千の雷』や『雷の暴風』などの雷系西洋魔術を組み合わせた技。
気と魔法の相乗効果により、爆発的な威力を得られる。
ちなみに“第九話 あなたと合体したい”で
> 「未完成というか、もう少し別のものにも発展させられそうな感じなだけで。
> 一応それ自体は完成しています」
とネギが言ってた、『闇の咸卦法』を別のものに発展させたものがこれら、『闇の咸卦技法』のこと。
一応は伏線張っていましたよ。エヴァの別荘での修行で完成済みです。
『闇の咸卦技法』
『闇の咸卦法』は『闇の魔法』と同じく、早い話がただのドーピング。
しかし『闇の咸卦技法』は“気”と“魔法”を融合させたものを“放出”する技法の総称。
“ダイの大冒険”で例えると、“竜闘気”と『竜闘気砲呪文』の違い…………のようなものですかね?
『竜闘気砲呪文』よりも『ギガストラッシュ』の方が適当かもしれませんが、とりあえずそんな感じです。
最初は『闇の神鳴流』とかで考えていましたが、別に『神鳴流』に限定せずに使えるだろうから『闇の咸卦技法』と相成りました。