━━━━━ 長瀬楓 ━━━━━
「皆さん、休めましたか?
もう安心していただいて大丈夫ですよ。フェイト・アーウェルンクス、月詠の2人は未だ逃亡中ですが、ネギ君の話では戦える状態ではないとのことですので。
天ヶ崎千草、犬上小太郎は捕縛済み。主犯の天ヶ崎千草にはそれなりの処罰があると思いますが…………」
「死刑ね」
「死刑やね」
「死刑だ」
「お前ら…………ネギ先生が治療のために天ヶ崎千草にずっと付きっ切りだからってそこまで怒るな」
「…………天ヶ崎千草は心神喪失状態なので、もしかしたら病院行きになるかもしれません。むしろネギ君が今してくれている治療が成功しなければ、介護人すら必要な感じです。
犬上小太郎の方は年齢もありますし、ネギ君からの言葉もあります。彼にもあまり大きな罰はないかもしれません。ネギ君の要望で、これからひたすら表と裏両方の勉強三昧になりそうですがね。具体的に言うと“偏差値60ぐらいまで”がネギ君の要望です。
(“死刑”って…………木乃香を麻帆良にやったのは失敗だったか?)」
まあ、天ヶ崎千草はあそこまでしたら、もう何も出来ないでござろうな。
犬上小太郎の方もあの性格を考えたら、普通の罰より勉強漬けのほうが効果的そうでござる。拙者でもイヤでござるよ、そんなの。
フェイトはかなりの怪我、月詠も新たなメガネが出来るまではどうせ戦えないだろうから、とりあえずこの旅行での危険は去ったということでござる。
…………ネギ坊主はそれでも油断しないのでござろうけど。
「昨日の事件…………終わったのは今日に入ってからですから、今日の事件とも言うべきかもしれないですが、事件のせいで皆さんお疲れでしょう。少しは寝れましたか?
もうすぐ食事の準備が出来ます。中途半端な時間ですが、朝食兼昼食として召し上がってください」
「…………ネギはまだなの?
私達には休めって言ってそれっきりだったけど?」
「ええ。ネギ君はまだ天ヶ崎千草の治療です。それと麻帆良に送る報告書作成と自分の身体の診断もしていましたね。
もうすぐ終わる頃だと思いますよ」
「ネギ君が一緒にいてくれれば、こんな疲れは吹き飛ぶんやけどなぁ」
「木乃香さん達はいいじゃないですか。本山に戻るまでとはいえ、『咸卦治癒』で少しは治療してもらえたのですから。
のどかや私はネギ先生に触れてすらいないのですよ」
「そうやけどなぁ…………それにしてもあのネギ君は反則やわ。ネギ君が大人になったらあんなになるんやなぁ。
一度体験してもらえればわかると思うけど、あんまりネギ君にあの姿になってもらわない方がええかもしれんわ。なぁ、せっちゃん?」
「…………はい。抱っこされたと思ったら、次に気づいたときは本山にいました…………」
「うう…………お姫様抱っこしてもらった木乃香さんは羨ましいけど、確かにあのネギ先生はカッコ良すぎるよね。
お姫様抱っこされたら、私だったら気絶しちゃいそう…………」
「…………………………」
大丈夫でござるか、古? 時折思い出したようにボォーっとするでござるな。
まあ、気持ちはわかるでござる。まさかネギ坊主があのように成長するとは…………。
それにしてもお姫様抱っこでござるか。
拙者が小さいときは、修行で疲れ果てた拙者を親があのように抱っこして家に連れて帰ってくれた覚えはあるが、大きくなってからはスッカリないでござるな。
麻帆良に来る前には親より大きくなっていたでござるし。
あのネギ坊主なら、拙者でもお姫様抱っこ出来そうでござるなぁ…………。
「ネギ君はあの肉体年齢を操作出来るようになったことを詳しく調べるとも言っていました
ネギ君はおそらく大丈夫だろうとは言っていましたが、あれはネギ君の負担が大きいかもしれませんので、程々にしておいた方がよろしいでしょう」
「それはそうですね。とりあえずお前らもネギ先生が来てから聞けよ。
それと観光は結局どうする? さすがに今日これからってのはなんだけど、もう安全みたいだし明日から観光に行くか?」
「良いでござるな。せっかく京都に来たのだから、少しは観光してみたいでござるよ」
「そのときは私達の方から案内兼護衛として数人出しましょう。このままお帰りになられたら私達の立つ瀬がなくなってしまいます。それもネギ君が来てから話し合うとよろしいでしょう。
…………おや、丁度ネギ君も来たようですし」
お、そうでござるな。
パタパタと軽い足音が聞こえるでござる。
…………足音がやけに軽すぎでござらんか?
「あ、みなさんここにいたん「ネギが小っちゃい!?」…………ですね」
いつも小さなネギ坊主が更に小っちゃくなってるでござる!?
…………身長90cmぐらいでござるな。あの肉体操作は大きくなるだけでなく、小さくなることも出来るのでござるか…………。
「…………ええ、今はまりょくの回ふくをゆう先するために、3才ぐらいのからだになってます。
とりあえずぼくにしゃべらせてください。ジリジリとよってこないでください。手をワキャワキャとうねらせないでください。
…………コホン。天ヶ崎千草のちりょうはおわりました。心の方もひとまずは大丈夫でしょうが、もう術者としてはふっき出来ないと思います。
まほらへのほうこくもおわりました。なんかほうこくを受けとった学園長が血をはいちゃいましたけど、ガンドルフィーニ先生たちがかわりにちゃんと引きついでくれました。
それとぼくのからだはもんだいなさそうです。むしろもっとべんりになりましたので安心してください………………それではちょっとからだを元にもどしてきムグゥッ!?」
あ、逃げようとしたけどアスナ殿達に捕まったでござる。
そんな姿でここに来るから…………。
「ちょ、ちょっと待って! 抱っこさせて!!!」
「何コレ!? ネギ君が小っちゃいやん!?
アスナ、次はウチに貸してぇな!」
「ネ、ネギ先生が3歳のときはこんなに可愛かったのですか…………」
「う、うわー、ネギ先生可愛いですぅ!」
「待てぇっ! 私にも貸すんだ!!!」
「ムゥーーー!? ムグゥーーーッ!?」
「(あれだけ滅茶苦茶やったネギ君を揉みくちゃにするなんて、木乃香といいこの子達って怖いもの知らずだなぁ…………)」
ネギ坊主も大変でござるなぁ。
…………おや、巫女殿。何でござるか?
食事の準備が出来た? なら腹も空いたし、食事にするでござるよ。
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「で、ネギ先生。結局どうなんだ? 大丈夫なのか?」
食事も終わり、お菓子とお茶で一服中。
あ、この金つば美味しいでござる。
ちなみにネギ坊主は食事前に元の10歳の姿に戻っているでござる。
何かあの子供の姿を久しぶりに見る気がするのは気のせいでござろうか?
…………きっと昨日のネギさんとネギ殿のインパクトが大きすぎたせいでござるな。
「ええ、大丈夫です。本質が変わって魔族になったというわけじゃありません。僕は今までと同じ、ネギ・スプリングフィールドのままですよ。
どうやら『咸卦治癒』の力を最大限使うとき、細胞が活性化して肉体が変化するみたいです。ですがあくまで『咸卦治癒』を利用して変化しているだけであって、元の僕自体が変わったわけではないようですね。
変化の具合もいろいろと内容も変えられるみたいで、それぞれ特徴があるみたいです。最初になったマッチョな身体だったら、パワーは極端に強いけどスピードが極端に落ちる。次になった20歳くらいの身体だったら、成長した分元の身体よりも平均的に強くなる。さっきの3歳ぐらいの身体だったら、パラメータはかなり弱体化するけど省エネ、といった感じです」
「へぇ~。凄いアルな………………もしかして本気で不老になったアルか?」
「いえ、そういうわけではありません。
肉体を変化するのに魔力と気を消費する上、変化する具合が大きければ大きいほど消費は激しくなります。それに変化を継続させるには常に魔力と気が必要です。
今は変化継続の消費量より自然回復量の方が多いので、肉体をずっと変化させていても問題ありません。しかし、何十年後かには回復よりも消費の方が多くなるでしょう。
そうなったら『咸卦治癒』が切れて元の年齢に戻りますので、結局は老いて死ぬことに変わりませんね」
「なるほど、そういうことだったのか…………私のように闇の眷属になったわけではないのか。
(逆に言えば、魔力と気があれば永遠に生きていけるということか…………その手段さえあれば、ネギは私と一緒に永遠を…………)」
それは何よりでござる。
さすがにネギ坊主が闇の眷属になってしまったら夢身が悪い。
…………いくら元からあまり違いはないように感じられるとしても。
それに闇の眷属になって暴走したら京都が壊滅するでござるしな。
少し目にしただけでござるが、あのリョウメンスクナノカミよりネギ坊主の方が明らかに強いでござる。
…………本気でネギ坊主が暴走しなくてよかったでござるなぁ。
「…………別に闇の眷属になったとしても気にしませんけどね。エヴァさんみたいになるだけみたいですし。
あ、でもなるとしても大人になってからの方がありがたいですね。さすがにずっと子供の姿のままというのは…………」
「むぐ…………前半の言葉は嬉しいが後半の言葉は余計だな。
(もしかして、ネギの協力さえあれば私の身体も成長できるかも? さすがにネギが大人になったら、相手するのは大人の身体の方がいいだろうし、麻帆良に帰ったら本格的に研究してみるか。
『闇の咸卦法』で? …………あれは私には無理だな)」
「ネ、ネギ先生はそれで平気なんですか!?
人間じゃなくなったとしてもいいんですか!?」
「? どうしたんですか、刹那さん? 急にいきなり?
…………別に平気ですよ。僕がどう変わろうと自分のことを“ネギ・スプリングフィールド”と認識出来るのならば、僕は何があっても“ネギ・スプリングフィールド”です。
とはいえ、肉体が変わると精神もそれに引っ張られるように変わってしまう気がするので、大人にならないうちはあまり年齢を変えたりしない方がいいかもしれません。
戦闘でやむを得ず、という場合は是非もありませんが、それ以外でしたら幻術もあります。だから今度から年齢を変える必要があったら幻術を使おうと思います」
「…………いろいろあるみたいだけど、ネギが何ともなくて良かったわ。
(記憶戻ったことどうしましょ? 言い出す機会がないわね。やっぱり麻帆良に戻ってから一応タカミチと相談して…………って記憶封印したのはタカミチなのよね。
また封印されることはないとは思うけど、不安だからまずネギに話してから、ネギと一緒にタカミチや学園長に話すことにしましょうか。
…………不安だからネギに話すだけよ、ホントよ)」
「それなら一安心です。
お預かりしたネギ君が取り返しのつかないことになったとしたら、いったいナギやお義父さんにどうお詫びすればいいのかと…………」
「ちっ、あの姿はお預けか。
しょうがない。10年後を楽しみに待つことにしよう」
いや、その方がいいでござるよ。
普段がネギ殿バージョンだったら、絶対に教師的にマズイことになるでござる。
しかも明日菜殿と木乃香殿は同室で一緒の布団で寝るという間柄。
ヘタしたら襲われるでござるな。…………ネギ坊主が。
「それで明日の観光ですか?
いいんじゃないでしょうか。もうフェイト達の危険はなさそうです。もちろん僕も一緒に行きますし、関西呪術協会からも数人出してくれるそうですからね。それなら大丈夫でしょう。
とはいっても、個人行動は厳禁ですよ」
「…………フム、ではそのようにしましょうか。
となると今日は時間が空いてますね。実はネギ君を案内したいところがあるのです。近くですから夕方までには戻れますので。その案内したいところというのは、ナギが京都に住んでいたときの家なんですよ」
「…………ナギの、だと? いや、私にはネギが…………しかし、でも…………」
おや? 顔が赤いでござるな、エヴァ殿。
やっぱりまだネギ坊主の父君のことを忘れられないのでござるかな?
━━━━━ 桜咲刹那 ━━━━━
「ここです。10年の間に草木が茂ってしまいましたが、中はキレイなものですよ」
天文台……なのかな?
3階建ての細長い建物で屋根が丸くなっている
家の中に入ってみると、壁一面本棚に本がギッシリと詰まっている。
梯子があるにはあるけど、もしかしてあれで本をとるのか?
何か少し危険そうな感じが…………。
「へぇ~、ウチの父って本読むんですか?
アンチョコ読んで魔法唱えていたらしいし、そもそも魔法学校中退だから勉強とか嫌いなんだと思ってましたけど?」
「…………ア、アハハ、ナギは確かに若いころはヤンチャでしたが、大人になってからは少し落ち着きましたので…………」
「考えてみれば、京都に住んでいたってことは詠春さんのお世話になっていたということですよね。
ウチの父のことですから御迷惑お掛けしたんじゃないですか?」
「だからお前はナギのことをどう思っているのかと小一時間…………」
辛辣ですね、ネギ先生。
でも逆に言えば、父親だからこそ辛辣に言えるのでしょうね。
物心ついたころには既にいなかったらしいから、どんな風に接したり表現したらいいかわからないのかな?
ネギ先生は他人への悪口は言わない。
ネギ先生がそういう風に他人を辛辣に言ったり悪口を言うのは、それこそ御自分の父親ぐらいのことに関してのことしか私は聞いたことはない。
私達が勉強会でいくらバカさ加減を発揮したとしても根気強く教えてくれたし…………って、今さらながら10歳の子供に勉強を教わる私達っていったい?
…………ネギ先生だからしょうがないな。ウン。
「詠春さんから話を聞いたとき、もしかしたらフェイト達はここを目的にしていたのかとも思いましたが、そういうわけじゃないようですね。
最近誰か入った形跡はありませんし、無くなっている物もないようです」
「ふむ、そう言われればそうですね。
…………あと巻き込まれてしまった皆さんにも、色々話しておいた方がいいでしょう。“完全なる世界”が今だ暗躍していることがわかった以上、今後のことについては麻帆良に帰ってからお義父さんと相談していただく必要があります。
お義父さんからの話では、ネギ君はもう大部分は理解しているようですが、念のためにナギや“完全なる世界”については当時の関係者であった私からも話すべきでしょうね」
そう言って長が取り出したのは一葉の写真が入った写真立て。それにはネギ先生の父親や若い長達、“紅き翼”の人達が写っていた。
以前、ネギ先生が以前見せてくれた“紅き翼”関連の雑誌では見たことない写真だな。おそらく仲間内で撮ったプライベートの写真なんだろう。
夜に長が言っていたけど、ネギ先生の父親であるナギ殿は確かにどこか悪ガキのような雰囲気を持っている。正直言って10歳のネギ先生の方が大人っぽい。
ましてや成長したネギ先生に至っては…………いや、変な想像をするな、私。
「へぇ~、この写真は初めて見ました」
「20年前の写真です。ナギはこのとき15歳でした」
「(懐かしいわねー。あ、ゼクトも写ってるのね。私は結局ゼクトとはほとんど喋らなかったけど)」
「ネギ君達も知ってのとおり、私はかつての大戦でまだ少年だったナギと共に戦った戦友でした。
そして20年前に平和が戻った時、彼は既に数々の活躍から英雄…………“千の呪文の男”と呼ばれていたのです」
「でもそれって元々は自称だったんですよね?」
「え? …………ええ、そうです」
「しかも“千の呪文”とか言ってる割には、10種類も魔法を覚えていなかったんですよね?」
「…………その通りですが、今はあまり関係ないのでそのことについてはまた今度に。
(自業自得です、ナギ。恨むなら若いころの自分を恨んでください)」
そ、そうだったんですか?
てっきり“千の呪文の男”というぐらいだから、ネギ先生みたいに数々の魔法を使いこなすことが出来る人だと思っていたのに…………。
“千の呪文”というのはあくまでも自称だったのか。
…………ネギ先生なら実際に千種類ぐらい使えても不思議じゃないけど。
「オホン。以来、彼と私は無二の友であったと思います。しかし……彼は10年前、突然姿を消す。
彼の最後の足取り、彼がどうなったかを知る者はいません。ただし、公式の記録では1993年死亡。
それ以上のことは私にも…………すいません、ネギ君」
「いえ、別に気になさらなくとも。
もし本当に生きているのなら、そのうちひょっこり会えるかもしれませんし」
「何を言ってる、ネギ? 奴は確かに10年前に死んだはずだ?」
「あれ? エヴァさんに言ってませんでしたっけ?
僕の知り合いに、6年前に父と会ったという人がいるんですよ。僕がいつも持ってるこの杖も、そのときに父から僕宛に贈られたものらしいですし」
「そんな……奴が…………“千の呪文の男”が生きているだと?」
「でもその知り合いって、昼間っから酒飲んで管を巻いてるようなおじいちゃんですけどね。
父が迷惑をかけたみたいで、子供だった僕にもよく愚痴を零してましたよ」
「はぁっ!? それじゃ駄目じゃないかっ!?」
「いやぁ、僕が直接会ったわけじゃないので何とも言えないです」
…………それ、もしかして酔っ払ったおじいさんが見た幻影なんじゃ?
あ、でも杖っていう証拠があるからなぁ。
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「それでは鍵をお渡ししておきますので、いつでも好きなときに来てください」
「ありがとうございます。とはいっても、麻帆良-京都だと気軽に来れないですけどね。
…………転移魔法陣を家の中に…………イヤ、駄目だな。霊脈としては良いわけじゃないから、これだと陣の維持が大変だし…………」
フム、転移魔法陣を設置してくれたら、木乃香お嬢様もこれからは気軽に里帰りすることが出来るな。
幸い今回の一件で、木乃香お嬢様が実家に里帰りするための障害は全てなくなったので、これからは気軽に里帰りを出来るようになった。
昨日の夜……というより今日の夜明け前、興奮して眠れない木乃香お嬢様と私の2人で今後のことについての話をしたが、やはり木乃香お嬢様は西洋魔術師の道を選ばれることをお決めになったようだった。
木乃香お嬢様は西洋魔術を選ぶことにお決めになったけど、それでも木乃香お嬢様と長は親子なのだし、今回の事件で東西も融和の道を徐々に歩んでいくだろうから里帰りに問題はないだろう。
木乃香お嬢様は麻帆良や友人から離れたくないと仰られているし、それに…………その、ネギ先生とも離れたくないらしい。
うん。木乃香お嬢様がネギ先生のことを本気になったみたいだ。
今まではネギ先生のことは“弟”としての想いが一番強かったらしいけど、今回の旅行で頼りになるネギ先生を見てたら、その想いが少しずつ変わっていったらしい。
極めつけは大人になったネギ先生。あのネギ先生を見てから、“男性”としてのネギ先生意識してしまったみたいだ。
…………確かにアレは反則ですよね。
何というか…………大人のネギ先生には甘えたくなる雰囲気があるというか、本当にカッコよくて大人の男性という感じがする。普段から紳士的だし。
お……お姫様抱っこされたときなんか、あの大人のネギ先生の顔が近くにあるだけでパニクってしまった。アレは反則です。意識することを強いられてしまいます。
それに幼児のネギ先生も抱き締めて頬擦りしたいぐらいに愛らしかった。
普段のネギ先生も可愛くて抱き締めたいとか思ったことも正直あるけど、そんなことは恥ずかしくて出来ない。しかし、あの幼児のネギ先生なら恥ずかしがらずに素直に愛でられそうだ。
あの2人のネギ先生には、あまり普通の女の子として過ごしてこなかった私でも正直言ってクラッときました。
………………え? 筋肉?
…………。
……………………。
………………………………何ノコトデスカ?
私達ガ見タノハ大人ノネギ先生ト幼児ノネギ先生ダケデスヨ?
コノチャンモソウ言ッテイマシタシネ…………。
…………エヴァンジェリンさんやアスナさん、宮崎さんといったライバルがいるが、こうなったからには木乃香お嬢様も引く気はないようだ。
頑張ってください、木乃香お嬢様。
私もお嬢様の恋を応援いたします。
「(せっちゃん、せっちゃん。今日のお風呂、何とかしてネギ君を大浴場じゃなくて内風呂の方に連れて来れんかなぁ?)」
「(え? それはさすがに無理だと思いますが…………)」
「(ええ~、ええやん。ウチとせっちゃんとネギ君の3人で一緒にお風呂入ろ)」
屋敷内には前に入ったような大浴場だけでなく、協会の者が入る小さな内風呂もある。普段はともかく、さすがに客人が来られたときは大浴場で協会の者も一緒に入るわけにはいかないからだ。
確かにその内風呂だったらネギ先生とゆっくり…………じゃなくて。
…………わ、私は一緒に入らなくとも結構です!
木乃香お嬢様とネギ先生のことは応援いたしますが、私は別にネギ先生のことは…………。
「(もう、満更でもないくせに~。せっちゃんだってネギ君のこと好きなんやろ?
ええやん、それやったらいつまでもせっちゃんとも一緒にいれるやん。ライバルが多いんやから、ウチらは2人で協力してネギ君をゲットするんや)」
「(そのようなことなさらなくとも、これからはずっとお傍におります!
…………それにネギ先生だって、私の本当のことを知ったら…………)」
「(そんなことない! ネギ君はせっちゃんに翼があることなんて気にするわけあらへん!!!)」
…………木乃香お嬢様、ありがとうございます。
今後についての話をしたとき、私は木乃香お嬢様に今までズルズルと言えなかったことを全てを打ち明けた。
秘密をバラすのは怖かったけど、私の白い翼を見た木乃香お嬢様は「綺麗」と言ってくれた。一族の掟なんか気にすることはないとも言ってくれた。
これからもずっと一緒にいようって、このちゃんは言ってくれた。
そうですね、ネギ先生だったら気にしないでしょうね。
木乃香お嬢様を守るという誓いも果たせたし、神鳴流に拾われた私を育ててくれた近衛家への御恩も返すことが出来た。
だからこれからは、友達としてこのちゃんと昔みたいに…………。
…………そもそもネギ先生の方がイロイロとぶっ飛んでるし、確かに気にするわけないだろうなぁ。それらは追々と。
「(木乃香お嬢様、皆さんにいいですか?)」
「(…………ええの? 皆のことだから大丈夫だと思うけど、せっちゃんが嫌なら無理しない方が…………)」
「大丈夫。ありがとう、このちゃん。
…………すいません、皆さん。聞いていただきたいことがあります。私は皆さんに秘密にしていたことがあるのです」
「刹那君?」
「大丈夫です、長。これは私の願いです。
皆さんにはこのことを知って欲しい」
バサァッ! と背中から翼を出す。
今までの私……2学期までの私だったら、こんなことはしなかっただろう。
これもネギ先生のおかげかな?
あの人は良くも悪くも他人を動かしてしまう。ネギ先生との修行と勉強で私も変わることが出来た。
昔の私なら今の私のことを“軟弱”とでも思うかもしれないが、今の私は今の私のことが好きでいられる。
「…………これが、私の正体です。
昨夜、ネギ先生が召喚した中に烏族という妖怪がいましたが、私はその烏族と人のハーフなのです。この白い翼は烏族の中では禁忌とされており、いろいろとありまして私は神鳴流にお世話になることとなりました」
「…………エヘヘ、寝る前にも見せてくれたけど、やっぱりキレーなハネやなぁ」
「…………立派になりましたね、刹那君」
「ふぅーん、カッコイイじゃん」
「天使みたいですねー」
「烏族というとカラスですか?」
「はぁー、何か刹那さんに隠し事があるとは思っていましたけど、こういうことだったんですか。
翼ですかぁ。便利そうですね。…………僕でも出来るかな?」
「へぇー………………ま、今さらだな。吸血鬼とかロボットとかネギ先生とかが既にいるんだし」
「…………長谷川、何故その中にネギ先生が同列で入っているんだ?」
「千雨さん、私は正確にはガイノイドです」
「私は間違っていないと思うアルけど?」
「むしろネギ坊主の方が人間離れしてるでござるな」
「というか誰でもいいから今のネギの発言にツッコミいれろ」
ありがとう、皆さん。皆さんみたいな友人を持てて私は嬉しいです。
それと私は絶対にツッコミません!!!
誰か! 他の人がネギ先生にツッコミをし…………え? 何で『咸卦治癒』発動させてるんですか?
何でネギ先生の背中がうねり始めて、筋肉や骨が動いている音がするんですか?
「…………いけるな。ハァッ!」
メリメリメリメリィッ! そんな音がして、ネギ先生の背中から翼が生えてきた。
ただし私のような鳥の翼ではなく、コウモリのような肉と皮と骨で出来たような翼だけど。
…………本当にやっちゃった。“悪魔の翼”って言葉が思い浮かんだのは気のせいかな?
「わぁー、意外と出来るもんですね」
「「「「「………………………………」」」」」
「ちょっと飛んでみます。
杖や浮遊術で空を飛んだことはありますけど、翼で空を飛ぶのは初めてですよ」
…………え? ちょ!? 初めてなのにそんな勢いよく羽ばたくと…………あ、ネギ先生が飛ぶ方向を間違ってナギさんの家に突っ込んだ。
壁に穴が開き、ネギ先生はそのままその穴の中に入り込んでいってしまった。…………あそこは天文望遠鏡があったところじゃ…………?
「…………練習が必要ですね」
「「「「………………………………」」」」」
…………うん、無理。
「…………実は他人にこの姿を見せたら、その人の前から姿を消さなければならないっていう一族の掟がアルンデスヨ」
「せっちゃん!? 何を言うてるの!?」
「イエイエ、ヤハリ一族ノ掟ニハ従ワナイト。………………じゃ、そういうわけで!」
明日に向かって飛び去らさせていただきまグェッ!?
…………こ、このちゃん! 飛ぼうとしてたウチにいきなり飛び掛るなんて危ないでしょ!!!
「ずっと一緒にいてくれるって言ったやん!
大丈夫や。ネギ君はまだ子供だから、(別の意味で)やって良い事と悪い事の区別がつかんだけや! ウチとせっちゃんの2人でちゃんと教えていけばええんやよ!!!」
「いやいやいやいや!
無理やって! アレはどう頑張っても絶対無理やよ、このちゃん!!!」
「ハッハッハ、木乃香が不穏当なことを口走った気もするが…………とりあえず逃がさんぞ、刹那」
「木乃香さんと刹那さんはやっぱりそうなんだー。
…………ねぇ、夕映? 私達も一緒に…………」
「そ、それでいいのですか、のどか!?」
「…………いっそのこと、一度皆で同盟組んだ方がいいかもしれないわねぇ。
まずは皆でネギをちゃんとした男の子に育て上げてから…………」
確かにネギ先生のことは好きやけど、いくら何でもアレは無理やって!!!
ああ、もう! 何でネギ先生は人の気持ちも知らずに…………。
ぎゃいぎゃいわいわい、と辺りが騒がしくなる。
本当に、今までだったら考えられない私がいる。
良くも悪くもネギ先生のおかげで私は変われた。
とりあえずそのことはネギ先生に感謝しよう。
「…………む、腕も増やせるかな?」
だから私は何も聞いていないっ!!!
━━━━━ 後書き ━━━━━
…………何かユピー混じった。
でも、幻海式を突き詰めたら遺伝子操作とかもきっと出来そうですよね?
とりあえず、これにて京都旅行編は終了です。
ショタネギは文字打つのメンドイのでもう出さないと思います。
大人ネギとネギさんは出番あるかも?
……………………特にネギさん。
それと別にネギは『霊光○動拳』を継承しているわけではありませんよ。
【ネギの被害者リスト】
メルディアナ学校長:燃やされた
カモ:去勢された+『仮契約』儀式の手伝い
鳴滝姉妹:悪戯し掛けて返り討ち
エヴァンジェリン:紅茶吹かされた
バカレンジャー:勉強地獄
学園長:ストレスによる急性胃潰瘍にて吐血(2度目) ← new!
さよ:知らないうちに成仏させられるところだった
魔法先生一同:「この子ホントにどうしよう?」という絶望
愛衣:幼児退行させられた
高音:露出狂の嫌疑かけられた
刀子:露出狂の嫌疑かけられた
バレーボール:破裂させられた
タカミチ:コーヒー吹かされた+担任クビ+マダオ就任
刹那:勉強地獄+バカホワイト就任
明日菜:失恋
関西呪術協会:変態集団疑惑+吹っ飛ばされた
天ヶ崎千草:勝っても負けても“死”?+心を連れていかれた
“完全なる世界”:“ょぅι゛ょ誘拐犯”
ルビガンテ:名前忘れられた
月詠:メガネ壊された
フェイト:○○化?
リョウメンスクナノカミ:出番無し
ナギの家:半壊 ← new!