━━━━━ 高畑・T・タカミチ ━━━━━
「やぁ、京都では大変だったみたいだね。皆が無事に帰ってこられて何よりだよ」
「あれ? おじいちゃんはやっぱり無理なんですか?」
「…………うん、そうみたいだよ」
ネギ君からの報告を受け取ったら吐血して、また入院したからねぇ。
おかげで出張から急遽戻った僕が学園長の代わりに、今後のことについて皆と話し合うことになったんだよ。他の先生は皆して逃げちゃったし。
それにしても、まさか“完全なる世界”が京都にいたとは…………。
しかもアスナ君の記憶も戻ったらしいし、電話で聞いたときにはビックリしたよ。
でもとりあえず皆が無事で良かった。
…………まあ、アスナ君の記憶はね。
フツーの女の子として幸せに暮らして欲しいという気持ちもあるけど、文字通り命懸けでアスナ君を守った師匠のことだけでも思い出して欲しいという気持ちの両方が今までにずっとあった。
だから記憶が戻ったと聞いても「ああ、そうなのか」で終わらしてしまった僕がいる。
むしろアスナ君から「ガトーさんの墓参りをしたい」なんて電話で言われたからには、嬉しい気持ちの方が大きいぐらいだ。
師匠の墓は魔法世界にあるからすぐにというわけにはいかないけど、それでもそうしてくれたら師匠も浮かばれる。
もちろん記憶が戻ったことによる障害なんかがあった場合は別だけど、再び記憶を消すなんてことはもうしたくない。
師匠は「幸せになる権利がある」といって記憶を消すように言ったけど、今のアスナ君なら記憶があったとしても幸せになれるだろう。
いや、もともと記憶を消さなくても幸せになれたんだろうな。
あれは僕達のエゴだったかもしれない…………。
「さて、今後のことについてなんだけど、改めて確認をさせて欲しいし、何より京都での一件で少し事情が変わってしまった。それについても皆と話し合わなきゃいけなくなってね。
貴重の春休みの一日だけど、少し話をさせてくれ」
「“ょぅι゛ょ誘拐犯”のことですよね?」
…………そうなんだけど、長谷川君と僕との間でニュアンスがちょっと違っていないかい?
「まあね。“完全なる世界”が生き残っていた上に何かを企んでいると判明した以上、ちょっと予定を変えなくちゃいけなくなった。
そもそもネギ君が京都でやりすぎたというかなんというか…………過去にネギ君のお父さんのナギが彼らの企みを阻止して、今回の京都ではネギ君が彼らの企みを阻止したからねぇ。さすがにここまでいくと、ネギ君が彼らに狙われる可能性が否定出来ないんだ」
「そして木乃香お嬢様です。阻止したとはいえ、もう狙われることがないとは限りません」
「うん。もう既に聞いているとは思うけど、今のところ決まっているのは“ネギ君を正式に魔法先生扱いにし、木乃香君と刹那君をネギ君担当の魔法生徒とする”ということだね。
ネギ君は麻帆良の中でもトップクラスに強いし、狙われる可能性がある木乃香君と同室。しかもネギ君自身が筆頭テロ対象者だ。言い方はアレだけど、狙われる可能性がある子は一纏めにした方が守りやすい。
ネギ君の魔法先生としての主な仕事は“木乃香君達を守ること”。そして“木乃香君達を鍛えること”。幸いネギ君の教師としての修行は順調だから、魔法先生としての活動が増えても問題はないだろう。
まあ、今までとあまり生活に変わりはないから安心してくれていいよ。基本的に今までの修行に木乃香君を混ぜてくれればいいだけだから。後は“完全なる世界”に警戒してくれればいい。
それと長瀬君や古菲君には悪いが、もし“完全なる世界”にこれ以上関わりたくないのなら、別荘での修行も遠慮してもらってネギ君が来る前の生活に戻って欲しいんだけど…………。
その顔を見るとその気は無さそうだね。それだと君達も木乃香君達と同じく、ネギ君担当の魔法生徒扱いにさせてもらうけどいいかな?」
「あい。もちろんでござるよ」
「私も同じアル。友達を見捨てたりはしないネ」
「わかった。そのように手続きをしておくよ。
それとエヴァから魔法を習っている夕映君と宮崎君も、ネギ君担当の魔法生徒になるか、それとも別の魔法先生から魔法を習「「ネギ先生でお願いしますっ!!!」」…………わかったよ。宮崎君、最近性格が変わったね。
それと木乃香君と同室のアスナ君。君はどうする? 予想はついているけど、改めて聞いておきたいんだ」
「もう忘れるのはイヤよ。ネギや木乃香達を見捨てるのもイヤ。
それに私も自分の身を守れるようになった方が良いと思うもの」
「そもそもアスナさんはタカミチの被保護者ですからね。
木乃香さんや僕が狙われるなら、アスナさんだって狙われてもおかしくありません」
…………そうだね。記憶が戻った以上、それしかないか。
京都ではアスナ君が“黄昏の姫巫女”だということはバレなかったみたいだし、ネギ君もいるから大丈夫だとは思うけど、それでもこうなったからには魔法に関わらずにすむなんてことはもう無理か。
ネギ君にはアスナ君から事情を話したみたいだけど、やはりアスナ君のことはネギ君に任せるしかないか。僕は出張に行かなきゃいけないし………………何よりネギ君、僕より強いし。
それと他の子達にはアスナ君の詳しい事情はまだ話していないみたいだけど、いつ話すかはアスナ君達に任せよう。
…………そういえばネギ君も『完全魔法無効化能力』を持ってるけど、ネギ君の場合は“黄昏の御子”とでもなるのかな?
「…………私はどうしようかな?
あれからいろいろ考えたんだが。魔法関連に関わりたくは無いという気持ちはあるけど、聞いた話を総合的に考えてみると“関わりを持たなかったら平気なのか?”という疑問が残る。
テロリストが私の都合を考えてくれるわきゃねーし、魔法世界とやら全てを敵にまわしている“ょぅι゛ょ誘拐犯”相手なら、麻帆良に住んでるというだけでも危険性がある。
それならいっそのこと積極的に身を守る手段を手に入れた方がいい………………というよりもネギ先生に「“ょぅι゛ょ誘拐犯”潰してきて☆」とかお願いすれば、それで全て終わる気が…………」
「いや、さすがにそれは時間がかかると思いますよ。片手間で出来ることじゃありません。
“ょぅι゛ょ誘拐犯”は魔法世界にいるでしょうし、僕にも麻帆良での修行がありますので…………」
時間がかかっていいなら出来るってことだよね、それ?
でもネギ君なら本当に出来そうなのが怖い。
「とりあえずネギ先生の近くが一番安全そうだよな。“台風の目”的な意味で考えて。
…………むしろネギ先生の側から離れて、ネギ先生が何をしてるかわからなくなる方が逆に怖い。魔法を習うかどうかとかはまた今度決めます。別に今すぐ決めなきゃ駄目ってわけでもないでしょう」
「その場合の台風は“ょぅι゛ょ誘拐犯”じゃなくてネギということね」
「ネギ君の周りが滅茶苦茶になるのを特等席で観覧することになりそうやね」
「でも一番安全なのは確かですね。精神的にはともかく…………肉体的に限ってのことですが」
「否定出来なさそうなのが一番怖いな。
ああ、私は今まで通り傭兵扱いのままでいい。自分の身ぐらい自分で守れるさ」
ネギ君、京都で本当に何をやった?
報告書に書かれていたこと以上のことしてるだろ、絶対…………。
「ではそれでいこうか。もちろん後になってやめたいと言っても問題ないから、その場合はいつでも言ってくれ。
ネギ君、責任は重大だよ。彼女達を身体的にだけでなく精神的にも守るようにね。京都のときみたいに“自分が怪我しても彼女達は怪我してないからいいや”みたいな考えは慎むこと」
「わかってます。僕だってわざわざ痛い思いをしたいとは思いません。
それに京都での戦いで魔力容量が更に大きくなりましたからね。あのような無様な目には二度となりませんよ」
…………また強くなったのか。この子ホントにどうしよう?
「今の僕なら、ジャック・ラカンさんにだって勝てます!」
「イヤ、京都行く前から勝てたと思うが…………」
「少なくとも僕には絶対勝てるよね」
というか、エヴァを含めた麻帆良の全戦力相手でもネギ君なら勝ちそうなんだけど…………。
━━━━━ 近衛木乃香 ━━━━━
んふふ。これでウチもせっちゃんもネギ君の魔法生徒やー。
皆がネギ君と修行してるのはよく見てたけど、ようやくウチも参加出来るんやね。
しかもウチが重点的に習うのは、ネギ君お得意の治癒魔法。手取り足取りネギ君に魔法を教えてもらえるかも…………。
とはいえ、京都のときみたく命がかかってるんだから、そんな甘いことばかりは言ってられないわ。せめて皆の足手まといにはならないように気をつけないとアカンな。
どうせお父様や実家の関係でこの魔法に関わらずにはいられないんやから、出来ることはやった方がええよねー。
「…………というわけで、ウチらはネギ君と『仮契約』をしたいんですけど問題ないですよね?」
「え? “というわけ”って、何がというわけなんですか、木乃香さん?」
え? だって“ょぅι゛ょ誘拐犯”に狙われている以上、出来る限りのことはした方がええやん。
それにこれからはネギ君を中心に修行とかしていくし、“お試し契約”を使った相互主従になってお互いに召喚出来るようにとかしといた方がいろいろ便利やし…………。
「え? いや、確かにネギ君と『仮契約』してくれたら、君達にも強力なアーティファクトが手に入るかもしれない分、君達の安全にも繋がるんだけど…………いいのかい?
それに“お試し契約”? 何だい、それは?」
「そういえばタカミ…………高畑先生は、ネギが『仮契約』を自分と自分の間でしていたこと知らないんだっけ?」
「聞いた話によると、生徒間での『仮契約』は問題ないようですが、教師と生徒の間の『仮契約』はどうなんでしょう?」
「ウルスラのグッドマンさんと麻帆良中の佐倉さんだっけ? しかも同姓間での『仮契約』みたいだしね。
わ、私達やネギ先生みたいな異性間の教師と生徒の間の『仮契約』はしても大丈夫なんですか?」
「確かに『仮契約』によるアーティファクトは魅力的ですが、僕のアーティファクトで“お試し契約”を既にしてあるのでそこまですることはないのでは?
そもそも異性間の『仮契約』は恋人とか夫婦とかそういう関係でするのが一般的です。『仮契約』したら僕とそういう関係にあるということに他人から見られてしまいますけど…………」
バッチこいや!
お父様からもネギ君の“魔法使いの従者”になってもいいという許可はもぎと…………貰ってるし、そもそもウチらの命がかかってるんやしねー。
「…………ネギ君はウチらと恋人になるのは嫌なん?
ウチはネギ君のこと好きやで」
「いや、それは光栄です…………っていうか、『仮契約』するって本気でソッチの意味での『仮契約』なんですか?」
「だ、駄目かしら?
私もネギのこと好きよ。だからそういう意味で『仮契約』して欲しいんだけど…………」
「言っておくが、私はしないぞー。
するのは神楽坂、近衛、桜咲、宮崎、綾瀬の5人か? 長瀬達はどうするんだ?」
「え? 長谷川さんまでスルー?
てっきり長谷川さんなら、僕が複数の女性と『仮契約』するなんて反対なされると思っていたのですが…………」
「イヤ、京都旅行でハッキリとわかった。ネギ先生の相手は1人じゃ無理だろ。というか、もう好きにしろよ。
それにネギ先生がはっきり断らないってことは、どうせ心情的以外ではデメリットよりメリットの方が大きいってことなんだろ?
そこら辺の判断はネギ先生はシビアだからな」
「イヤ、それは確かにそうなんですけどね。木乃香さんとアスナさんは特に。
2人とも僕がいなくとも狙われる可能性が高いのですから、『仮契約』によるアーティファクトと、“お試し契約”を併用した相互主従は強力な力になるとは思います。それに刹那さんは木乃香さんの護衛で、木乃香さんから離れないでしょうし…………。
でも僕はまだ修行中の身で、そもそも10歳にもなってないんですよ。それなのに人生のパートナーにもなるかもしれない人が最低5人って…………。
しかも木乃香さんとアスナさんはしょうがないにしても、宮崎さん達は危険に巻き込まれるかもしれないんですよ」
「修行中の身がリョウメンスクナノカミを一撃で葬るなんてしないだろ、常識的に考えて。
それとアホなこと言うな。のどか達はお前といることを覚悟して一歩踏み出したんだ。踏み出した者がより多くのリスクを負うのは当然だ。
だが、それが何だ? 安全圏で惰眠を貪る腐った豚よりよほどマシ。掴むに値するものはリスクの先にあるさ」
「僕は安全圏で惰眠を貪るのも好きですけど…………」
「ネギの場合は“周りの腐った豚を皆殺して安全圏を確保してから惰眠を貪る狼”だろうが。
しかも安全圏は移動式。さきほど千雨がお前の近くを“台風の目”と言ったが、実に的確な表現だな。安全圏で惰眠を貪る腐った豚よりよほど質が悪い」
わかるわ、その例え。
ネギ君の場合、“とりあえず”という理由で自分の敵を殲滅しそうやな。自分の敵にならなさそうな人は放置するんやろうけど。
「…………わ、私も『仮契約』お願いしようアルかな~、なんて…………」
「まあ、ネギ坊主が主君というのも悪くないでござるな」
「7人目!? …………タカミチ、魔法先生として一言」
「ぼ、僕に振るのかい!?
…………うーん、僕は『仮契約』したことないからアレだけど、とりあえず麻帆良から『仮契約』の相手に文句を言うということはないね。
『仮契約』は“個人と個人による神聖な儀式”という意識が強いから、それに対して組織が口を出すなんてことは出来ないよ。あくまで個人と個人の関係だから、役職云々という問題は通常は出ない。
とはいえ、表の世界でもその感覚でいられるのは困るね。表の世界の教師と生徒という関係はもう確立しちゃっているんだからね。…………まあ、その辺の心配はネギ君だからしていないけど」
節度を守れば良いってことなんかな?
もともと一気に勝負を決めようなんて思ってなかったからええけど。ネギ君はそんなことしたら反発しそうやしね。
…………でも、寮の部屋の中では今までよりくっついてもええよね?
「だから、この場合ならネギ君の気持ちが優先だと思うよ。
彼女達はむしろ君と『仮契約』したい気持ちの方が強いみたいだから、是非もないみたいだけど」
「…………いや、まあ。その……自惚れというわけじゃないですが、姉弟や家族として以外の…………男女の関係としても皆さんに好かれているんだろうとは思っていましたけど」
「や、やっぱりわかってたん?」
「それは…………京都旅行ではキスまでされたんですし、アレを姉弟や家族としてのスキンシップと言うには無理があるかと。
もちろん皆さんのことは好きですけど、僕はまだ恋愛とかよくわからなくて…………。そもそも皆さんは自分以外の人とも僕が『仮契約』しても平気なんですか?」
…………う、やっぱり焦りすぎたんかな?
そりゃあ、確かにウチとせっちゃんだけ見てくれたらそれに越したことはないんやけど、でもこれ以上このままだとネギ君のこと好きな子がどんどん増えてきそうなんやもん。
せめてここにいる皆だけにしてほしいんや。
「むしろウチとせっちゃんはいつまでも一緒にいたいから、2人でネギ君のお嫁さんになりたいなぁ~、って」
「そ、そこまで深く考えなくてもよろしいのではないですか、ネギ先生?
確かに人生の一大事でしょうけど、こういってはなんですが『仮契約』してようとしなかろうと別れる人達は別れてしまいます。……………………刀子さんとか。
ネギ先生が私達のことを少しでも好きでいてくれるなら、これから『仮契約』を通してゆっくり私達の仲を深めていけたら良いかと…………」
「形から入っていくのも悪くないわよ。
実際、木乃香のお母さんは見合い結婚みたいだけど幸せだったみたいだし、そもそも私達はネギのこともう好きになってるしね」
「わ、私もネギ先生のことが好きです!
もし良かったら、せめてお友達からでも始めて頂けたら…………」
「そうです。ネギ先生は確かに10歳ですが、私達だってまだ14歳です。
ですから結論を急がなくてもいいと思うのです」
「え、えと…………それでしたらお友達からよろしくお願いします」
うんうん。
最初はお友達からでええんよ。それから少しずつ私達のことを女の子と見てくれればええんやから…………。
━━━━━ ネギ・スプリングフィールド ━━━━━
なんかトントン拍子に『仮契約』しちゃった。しかも7人同時に。3年になってないのに7人って、明らかに原作よりハイペースですよね。
ドサクサに紛れて告白もされちゃったし、これからどうしよう?
告白されるなんて前世も含めて20年生きてて初めてです。前世では原作みたいに、のどかさんを助けるような最初のキッカケがなかったので、のどかさんとは“目と目で見詰め合う”ような感じで終わっちゃいましたし。
…………。
……………………。
………………………………ゴメンナサイ。嘘言いました。
告白されたのは前々世も含めて初めてです。告白されたのは40年以上生きてて初めてです。
…………本当にどうしよう?
ハーレムなんて関係、うまくやっていく自信ないですよ。元々はただの一般人の会社員だったんですから。
“恋愛は原作が終わってから”にしようなんて思っていましたが、皆さんから告白されたときに頭の中が真っ白になりました。それで思わずOKしてしまいましたけど、よくよく考えてみたら危険なのでは?
フェイトにはアスナさんのことは気づかれていませんけど、多分僕はフェイトの殺すリストのトップランカーを爆走中でしょう。そんな僕の側にいると皆さんが危険な目に遭ってしまうかも…………。
初志貫徹して“ょぅι゛ょ誘拐犯”を絶滅させてからにすればよかったのに、今となってはもう後の祭りです。
あ、マズイ。ヴィルさん…………ヘルマン卿が次に来る。
原作みたいにヘルマンなんぞに皆さんの裸体を晒すわけにはいきませんし、見つけ次第に速攻で始末しなきゃ。
…………そりゃ、いつかはこうなるかとは思ってましたよ、原作的に考えて。
でもいきなり告白まで来るとは考えていませんでしたよ。そもそも何で皆で一斉に『仮契約』と告白を?
もしかして全員で結託済み?
うわぁ~、今考えると“恋愛は原作が終わってから”なんて思っていたのは、もしかしたらただ恋愛に自信がなかったために後回しにしていただけかもしれません。
マジで皆さんとこれからどんな風に付き合っていけばいいかわかりません。
長瀬…………違った。楓さんはいいですよ。男女の関係ではなくて、本来の意味での主従の関係が強いみたいですから。…………でもたまに目を開けて僕をジッと見詰めてるのは何でだろう?
まあ、もちろん別に焦らなくてもいいとは思いますけどね。
原作と同様にまだ二次性徴が来ていないですから、それこそ大人の付き合いなんてまだ無理なわけですし。
皆さんが僕のこと好いていてくれたのはわかりますよ。エヴァさんは駄目親父のことがあるから、今回は『仮契約』しなかったみたいです。
そういえばアーニャやネカネ姉さんに何て言おう? 原作みたいにアーニャに怒られるのかなぁ? 原作みたいにネカネ姉さんに…………あれ?
原作ではネカネ姉さんに
「彼女達が僕の“魔法使いの従者”だよ」
とか紹介してなくね?
もしかして、原作ではパートナー出来たことをネカネ姉さんにはまだ言ってないのか?
アーニャには宮崎さんと綾…………じゃなかった、のどかさんと夕映さんが言って怒られてたけど、何だかんだで有耶無耶になってましたよね。
僕の場合は何て説明すれば怒られなくてすむんでしょう?
ネカネ姉さんはこの前来た手紙でも「修行の期間中に素敵なパートナーが見つかることを祈ってるわ♪」とか言ってたから、
「ネカネ姉さんに言われた通り、ちゃんと素敵なパートナーを見つけたよ。しかも7人も♪」
とか言えばなんとか…………ならないですよね。絶対泣かれますよね、というか気絶されますよね。
…………ヤバイ。コレ本気でどうやって説明しよう?
それに将来どうしよう?
ヘタしたらまだ増えますよね。可能性としては長谷川さんと茶々丸さん、もしかしたらエヴァさんも。…………え? ヘタしたら10人?
アーニャは…………どうなんだろ?
でも原作と違って、早乙女さんや朝倉さん、佐々木さん達は僕の“魔法使いの従者”にはならないでしょうね。
原作みたいにカモ君じゃなくてアルちゃんですし、魔法バレするキッカケ作ったら“マジで学園長に惚れさせる”ってエヴァさんが前に脅していましたから、これ以上魔法バレは増えないはずです。
それに僕も皆さんでもう一杯一杯です。
…………罰ゲームの内容聞いた皆さんは慄き、学園長は「ワシが罰ゲーム?」と拗ねてましたけど。
まあ、そんなことはどうでもよろしい。
しかし、それでも最低7人。増えたら10人以上養わなきゃ駄目なんですよね。どうやって生活費稼ごう?
『咸卦治癒』使って医者に? …………イヤ、『咸卦治癒』は対象と接触しなきゃいけないから、皆さんに対する不義理に…………。男相手に接触するのもやだし。
拳闘士にでもなるか? …………イヤ、実力的に大丈夫かもしれなくても、それだと魔法世界に移住しなくちゃならない。何とかして地球でも出来る職業に…………。
となると、『咸卦治癒』を『闇の咸卦技法』に発展させるか? そうすれば接触しなくても対象を治療出来ますからね。
攻撃と違って回復は出力調整難しいんですけどね。『咸卦治癒』で他の人を治すのは、あくまで僕の身体を治す効果を副次的に利用しているだけですから。
でも、それしかないか…………。
原作のネギはそこら辺のこと、どう考えていたんだろう? …………って、考えてないですよね、10歳ですもんね。
マズイ、本気でどうしたらいいんだろう? 原作でのどかさんに告られたネギが知恵熱出してぶっ倒れたり、いろいろと悩んだりしていましたが、当事者になると本気でどうしていいかわかりません。
…………それとも誰か一人に選ぶ?
でもヘタレな自分では女性を振るなんてこと自体出来そうにないです。女性に泣かれるのは困る。どうしていいかわからなくなる。本気で困る。焦って頭の中が真っ白になる。
アスナさんがタカミチ相手に失恋したときもそうでした。夜、ベッドの中で僕を抱きしめてずっと泣いていたのに、僕は優しくあやすように背中を叩くしか出来ませんでした。
女性を姉や女子生徒として扱うやり方はわかるけど、男女間としての付き合い方なんかわかんないです。覚えてないです
こちとら20年間ずっと彼女無しだったんですよ。
…………こうなったからには、本気でさっさと“ょぅι゛ょ誘拐犯”潰しますか。原作みたいに皆さんを危険な目に遭わせるわけにはいきません。
ある程度は原作沿いに進めるとはいえ、原作知識が役に立たなくなるところまでいったら、速攻で潰して後顧の憂いを立ちましょう。
とりあえずはヘルマン卿迎撃の準備を今のうちにしておきましょう。“ょぅι゛ょ誘拐犯”対策の名目で、女子寮要塞化の許可は貰いましたからね。
ヴィルさんには大変お世話になりましたが、気絶したアスナさんを下着姿に着替えさせるようなエロ悪魔は許して置けません。
もしもそんなことしやがりくさったら、ヴィルさんと同じように無間地獄に落ちてもらいましょう。となるとヘルマン召喚の方法を考えておかないといけませんね。
…………随分と物騒な考えしてますね、自分。
落ち着け、落ち着くんだ。気による身体制御で心を落ち着けるんだ。
………………そもそもヘルマン卿自体ちゃんと来るのかな? 村の壊滅なんか起こってないし………………ま、いっか。準備しておいて、来なかったら来なかったで別にいいし、来たら来たで殺ればいいか。
…………フゥ、焦ってもしょうがないから、気長にやっていくしかないんですかねぇ?
あ、そうそう。皆さんのアーティファクトは原作通りでした。
あえて言うなら、アスナさんの“破魔の剣”が最初から大剣バージョンだったぐらいです。
記憶が戻ったせいなんですかね? もう『咸卦法』も使いこなせていましたし。
━━━━━ 後書き ━━━━━
ネギ、齢10歳にして人生の墓場へ片足を突っ込む、の巻。
とはいえ元々ヘタレなネギですので、どうしていいかわからなくて混乱中です。
混乱する
↓
気を使って沈静化
↓
混乱に対する耐性強化
↓
反応しないネギにいらつく乙女達
↓
乙女達の攻勢激化
↓
混乱する
↓
気を使って沈静化
↓
以下エンドレス
ネギが根本的な原因に気づくのが先か、業を煮やした乙女達に襲われるのが先か。ネギの方が先に無間地獄に落ちるようです。
とはいえ18禁にはしないから大丈夫ですよ。…………15禁にもしないですからね。