━━━━━ 近衛詠春 ━━━━━
『小太郎君が脱走…………ですか?』
「…………え、ええ。申しわけありません。今朝、座敷牢を覗いたらいなくなっていたそうです。おそらく昨日の夜のうちに脱走したのだと思います。
付近一帯を捜索しましたが見つからず、もう遠くに逃げてしまったかと…………」
…………すっごく言いづらい。
明らかな関西呪術協会のミスで、おそらくネギ君に恨みを持っているであろう者の脱走を許してしまったのですから。
最近の犬上小太郎君は大変大人しくなっていて、勉強も真面目にやっていたということですので見張りの者も油断していました。
『…………小太郎君は僕のことについて普段から何か言ってましたか?』
「最初は…………そうですね。特に勉強することになった理由がネギ君だったので、そのことについてはよく愚痴を言ってました。
しかし最近は勉強で手一杯になってあまり喋らなくなっていたらしく、そろそろカウンセラーに相談しようかという話が出ていたぐらいでしたので…………」
小太郎君の勉強はわざわざネギ君が管理してくれていました。
関西呪術協会は麻帆良みたく教師が在籍しているなんてことはさすがにないですのでね。中学生レベルの勉強なら教えることは出来なくもないですが、それでも専門の教師に任せた方がいいですから。
その甲斐もあって、小太郎君は順調に成績を伸ばしていきました。とはいえ元々が酷かったので、ようやく平均ぐらいですがね。
…………まあ、その専門の教師が10歳というところには目をつぶっておくとしましょう。
私達がしていたのは週一でネギ君から送られてくる大量のプリントを小太郎君に渡し、ちゃんとやっているか見張り、わからないところがあったら答え、そのわからないところをネギ君に報告する、ぐらいでした。
しかし順調に成績を伸ばしていったのはいいのですが、どうやら時が経つにつれてどんどん送られてくるプリントが多くなっていったそうです。小太郎君がかなり頑張れば終わるぐらいの。
でも“ちょっと”でもなく“すごく”でもなく“かなり”頑張ればなので、小太郎君はどんどん憔悴していったらしいのです。
微妙ですよね、“かなり”って。
多いんだけど多すぎでもないというか…………“すごく”だったらもうとっくに倒れていて、“ちょっと”だったら今でも楽に勉強していたんでしょうに…………。
「それとなんですが、洗面器に残っていた水から妙な魔力の痕跡があったそうです。
水を媒介にした通信魔法か何かをしていた可能性があります」
『水を媒介にした…………ですか、フェイトを思い出しますね。彼は水を媒介にした転移魔法を使っていましたから。
わかりました。こちらでも気をつけておきます。木乃香さんのことは僕が守りますので、どうか安心してください。』
「…………木乃香のことをよろしくお願いします。
ネギ君に御迷惑をかけて申しわけありません。木乃香がワガママを言っておりませんか?」
『いえいえ、とんでもない。普段お世話になっているのは僕の方ですので、木乃香さんのワガママは大歓迎ですよ』
それならいいんですがね。
あの事件以来、木乃香とは以前よりも頻繁に連絡をとるようになりました。連絡手段は電話だったり手紙だったりしますが、立場のことを考えてあまり連絡のとれなかったときに比べたら、木乃香との距離はずいぶんと近くなったと思います。
これもネギ君のおかげですね。
ネギ君なら木乃香を任せられるでしょう。
例え将来、関西呪術協会と関東魔法協会が争うようなことがあったとしてもネギ君なら木乃香を守ってくれるでしょうし、もしかしたらそのときにはネギ君と一緒にウェールズに永住してるかもしれませんしね。
そもそもネギ君なら東西両方を一度に相手取っても負けなさそうなのが怖いです。
…………本当はまだ木乃香には恋愛は早いと思いますが、今まで木乃香の面倒を見てあげることの出来なかった私が口を出せることじゃありません。
まあ、ネギ君はナギと違って真面目な良い子ですし、関東と関西の確執のことを考えなくてもネギ君なら問題ありませんね。
『小太郎君かぁ…………。
女子寮の警備に番犬でも飼おうかなと思ってたから丁度良いかな?』
…………それって比喩的な表現なんでしょうか? それとも直接的な表現なんでしょうか?
確か小太郎君は狗族のハーフでしたよね?
こういうところは不安なんだよなぁ…………。
━━━━━ 長谷川千雨 ━━━━━
「…………というわけですので、しばらくの間は皆さんと一緒にいてください。ちびちうさん」
「ふーん、侵入者……ねぇ。それは確かなのか?」
…………侵入者か。
京都の一件以来、今までは特に何もなかったけど、ついに“ょぅι゛ょ誘拐犯”が動き出したってことなのかね?
やれやれ、せっかくの放課後だってのに変なことになっちまったな。撮影に良い感じにノッてたって言うのにめんどくさい。
そりゃあ身の安全に変えられるわけないけどさ。
…………私も変わったもんだよなぁ。
いつの間にかネギ先生に敬語使わなくなってきたし、以前までなら侵入者とか言われたら焦ってたんだろうけど、今では別に「ふーん」で終わらせてるし。
こいつらの修行とかたまに見てたらそうなっちゃったんだよなぁ…………っていうか本気で死にたいのか、その侵入者とやらは?
「ええ。“学園結界”内部に異物が数体、そこそこ大きいのが1つ、小さいのが3つばかりの計4つが入り込んだのを確認しています。
どうやって“学園結界”をすり抜けたのかまでは不明ですが、僕が“学園結界”に重ねて張った探知結界には気づかなかったようです。
まあ、“学園結界”が別系統で二重になっているなんて思いもしなかったんでしょうけどね。学園長にすら黙って張っておいた甲斐があったというものです。
侵入者については学園長には報告済ですが、あいにくタカミチがいない上に中々の実力者らしいので迎撃はまだ見合わせています。
一般人が巻き込まれないように手配してますので、それが終わり次第に…………幸い今日は雨で元々外に出てる人が少ないですからね。人気の少ないところに入り込んだら僕が潰します」
「ん? ネギ先生の担当はこの女子寮の警備なんだろ? それなのにネギ先生が出るのか?
ネギ先生の強さだったら問題ないんだろうけど、もしかして侵入者ってネギ先生が出ないといけないぐらい強いのか?
というか探知結界張ったの秘密にしてたのに侵入者のこと報告して良かったのか?」
「いえ、魔法先生数人がかりなら問題ないでしょうね。僕や封印を解いたエヴァさん1人で楽勝。今の皆さん+龍宮さん+茶々丸さんなら余裕。龍宮さんと茶々丸さん抜きでも問題なく勝てる程度です。
問題なのは、その侵入者が少数で秘密裏に侵入しているということです。この場合だと侵入者の目的は“戦闘”や“破壊”ではなく、おそらく“調査”や“陽動”、あとは“誘拐”などだと思われます。もちろん威力偵察や鉄砲玉の可能性はありますがね。
しかし動きからすると、おそらく侵入者の目的は麻帆良についての“調査”でしょう。さっきから世界樹の魔力吹き溜まりなどの重要地点に移動してますから。
先ほど探知結界に念話妨害機能を加えましたので、麻帆良の情報が流出しているということは今のところないです。だから情報の流出を避けるためにも、僕が出て速攻で潰した方が良いと学園長に提言しました。
それと魔法先生方には他に侵入者がいないかを手分けして調べてもらう予定です。アスナさん達に女子寮の警備を任せても大丈夫なぐらい強くなってますし、ちびちうさんは念のためにここで待っていてくれればいいです。
あと学園長に侵入者の報告をしたときは「まあ、ネギ君じゃしなぁ……」で終わりましたよ。…………何ででしょうね?」
慎重というか臆病というか大袈裟というか…………ネギ先生らしい発想だな。
“戦力の逐次投入は厳禁”とかアスナ達の修行でよく言っているし、やっぱり魔法使いっていうより“魔法を使える軍人や警察官”って感じなんだよな、ネギ先生は。
本人が言うには“夏休みの宿題は夏休み開始3日で全て終わらせるタイプ”ってことらしいけど、私にはよくわからん。
あと学園長ってネギ先生のこと本気で諦めてないか?
「了解。そういうことならさっさと終わらせてくれ。
それと…………木乃香を何とかしろ。正直言ってうざってぇ」
「自分で言ってくださいな。
それに万が一抱えて逃げるようなことがあったら、今の子供の姿の方が楽なんですけどね」
「え~、ええやん。千雨ちゃんかわえーんやし」
「この頃の千雨ちゃんは今と違って目つきが可愛いわね~」
「フム。…………おい、千雨。今度はコッチの服を着てみないか?」
…………ああ、そうだよ。少し前にコスプレ趣味がバレたんだよ。よりにもよってネギ先生が私のHPを見て、その後に履歴を消さなかったことからバレちまったんだよ。
くそっ、やっぱり変なところで抜けてやがる、このガキ。
…………いや、コスプレ趣味がバレても別に変な目で見られることはなかったし、こんな風にむしろチヤホヤされるのは悪くねーんだが…………何つーか、うざったい。
楓以外は年齢詐称薬を使うときは大人になる奴らばっかりなんで、今の私みたいに子供の姿になってるのが珍しいんだろうな。こういう風に子供扱いされて可愛がられることが多くなった。
今の私は木乃香の膝の上にいる。頭撫でてきたり抱きしめてくるのがうざったい。
そしてエヴァンジェリンが差し出してきたのは、リボンやフリルをふんだんに使った白ゴスロリか…………。
エヴァンジェリンとは服の趣味が少し違うけど、それでも服について話し合ったり、エヴァンジェリンをコスプレデビューさせてやろうとしたら学園長に泣いて止められるぐらいに仲良くなった。
やっぱり600年を生きた人形師ってのは伊達じゃねーな。服について興味深い意見を聞くことが出来たぜ。
「しかし、ネギ先生が1人で出て本当に大丈夫なのですか?
もちろん皆の中でも…………いえ、この麻帆良の中でもネギ先生が一番強いのでしょうし、木乃香お嬢様や皆さんはもちろん、女子寮も私達が絶対守り抜きますが…………」
「うーん、普通なら他の魔法先生にお任せしますけどね。
さっきも話したように関西呪術協会から小太郎君が脱走したらしいんです。これはいくら何でもタイミングが良すぎます。となると狙いはほぼ僕関連でしょう。
それなら他の魔法先生を巻き込むのは避けたいですし、僕が出てさっさと終わらせた方が早いですし、新しく開発した技も試してみたいですし、そもそも最近は実戦してないから丁度いいかなぁ、と思いまして。…………甘く見るつもりはありませんけどね。
ま、侵入する方が悪いので問題ないでしょう」
逃げろ、侵入者。今すぐ逃げろ。
「…………冗談はともかく、倒すだけなら他の魔法先生達で全然問題ないんですよ。しかし、逃げられて情報の流出を避けるためならそうですね。例えば
“気配を遮断して出来るだけ接近して”
“封鎖結界で逃げられないようにして”
“念話妨害で連絡とられないようにして”
“余計なことをされないように速攻で倒す”
などのイロイロなことが必要です。他の魔法先生方…………龍宮さんもそうですが、そのうちのいくつかは出来る人はいますけど、さすがにそれら全部を出来る人はいないですね。
かといって大勢だと察知されてしまい、戦闘になる前に逃げられるかもしれないですので駄目です。超遠距離から極大魔法での攻撃出来たら楽に殲滅出来ますけど、それだと麻帆良が壊れちゃいますし。
それに僕は女子寮の警備を任されていますけど、そもそも女子寮を攻撃された時点で負けだと思うので、こういう場合は積極的自衛権を行使させてもらいます」
「…………倒すだけじゃ駄目というわけですか」
「確かにな。その話でなら私が出来るのはせいぜい気配遮断ぐらいで、結界や念話妨害などは呪符を使わんと駄目だろう。それだとあまり強力なものは出来ないだろうな。
狙撃で仕留められるのならそれでもいいが、敵が4人いるのなら逃げられる可能性はある」
「そういうことです。敵の目的が情報収集なら、例え自分が死んだとしても情報を盗み出せればそれで彼らの勝ちです。僕達と敵では勝利条件が違うことがあるかもしれないというのは、常に頭の中に入れておいたほうが良いと思いますよ。
さて、それでは行ってきますので、皆さんはここで警戒しつつ待っててください。エヴァさんもよろしくお願いしますね。アルちゃんも皆さんの側にいてね。
携帯は電源を切っておきますので繋がりません。もし何かあるときは念話でお願いしますが、それでも緊急のとき以外は控えてください。それでは…………」
「わかってる。さっさと片付けて戻って来い」
「はい。いってらっしゃいませ、お兄様」
鏡に潜り込んでどこかに行くネギ先生。鏡……光を使った転移魔法だったか? 撮影してたときに念話が来て「今は大丈夫だ」つったら、いきなり鏡からネギ先生が出てきたのには驚いたな。あんな魔法もあるんだ…………。
それにしても考え方が相変わらずシビアだ。発想が10歳のガキじゃねーよ。
…………いきなり“お試し契約カード”の念話で呼びかけられたときは久しぶりで焦ったが、ついにこういうときが来たのか。
魔法について忘れるなりすればこんなところにいなくても済んだんだろうけど、逆に忘れていたらこんなことが起こっていたなんてわからなかったんだよな。
ネギ先生がいるんなら結局どっちでも大丈夫なんだろうけど、それでも知らないところで知らないうちに何かが起こっていたなんてのは嫌だ…………。
…………ちゃんと全員無事に終われるのかな?
「…………さて、せっかく時間が空いたんだからガールズトークでもするか。こうして全員が集まるのは久しぶりだな。
茶々丸、茶を入れて来い」
「はい。木乃香さん、台所をお借りします」
「あ、ウチも手伝うよ」
「お菓子何かあったかしら?
ネギがこの前作ったクッキー残ってたと思うけど…………」
…………余裕だな、こいつらは。無事に終わることを確信しているというか何というか…………。
ネギ先生の実力なら問題ない…………というより、むしろ侵入者に同情した方がいいぐらいだから当然なんだろうな。
それでも刹那はお札を部屋の隅に置いたり、楓や古菲が戸締りを改めて確認したりとかのやることはやっている。こいつらも完璧に普通の女子中学生じゃなくなったよなぁ。
あと私も一度着替えた方がいいかもしれんな。
いつまでもちびちうで狐耳セーラー服のまんまじゃ駄目だろ。いらないとは思うけど、一応動きやすいようにズボンに履き替えておくか。
「なあ、一度部屋に戻って動きやすい服装に着替えてこようと思うんだけど構わないか?」
「え? …………念のために止めておいた方がいいでしょう。
いや、十中八九は大丈夫ですが、こういうのは神経質になるだけ損はありませんから」
「でも確かにその格好は何かあったときだと危ないわねぇ。
ズボンならネギのやつがあるからそれで我慢してちょうだい。ベルトで留めて、裾を捲くれば今の千雨ちゃんの背丈でも大丈夫でしょ」
「わかった。それでいいから貸してくれ。
お前ら全員が戦闘態勢なのに私だけ一人コスプレ状態ってのは、さすがに浮いていて嫌なんだよ」
…………ネギ先生のクッキーを勝手に取り出したときからわかってたけど、ネギ先生のズボンを勝手に拝借するなんて本当に家族になってんだよな、コイツラ。
悪いことじゃなさそうだからいいんだけどさ。
魔法を知ってからもう2ヶ月。いろんなことがあった。
年齢詐称薬で小さくなってちうの妹としてもコスプレデビューしたり、ネギ先生をガンダムコスプレデビューさせたりとかな。コイツラとの勉強会で今度の中間テストで良い点も取れそうだし、いつの間にか普通の学園生活を送っているようになった。
…………リア充ってこんな感じなのかな? その……コイツラとも…………“友達”みたくなってるし…………。
別に嫌ってワケじゃあ…………ないけどさ。
…………コ、コスプレデビューは何気にネギ先生が乗り気だったんだよ。ノリノリでポーズ決めてるネギ先生見てたら、やっぱりネギ先生にも10歳の男の子っぽいところもあるんだなぁ、って少し安心した。
そのおかげでネットアイドルランキングで2位にトリプルスコアで勝てたのも儲けモンだったけどさ。
いや~、ネギ先生のガンダムで既存の私のファン以外の関心を持たせることが出来たのが最大の勝因だったな。
コミケなんかでロボットのコスプレしてる奴らなんか目じゃないぐらいリアルなロボットが、このネットアイドルの女王であるちう様と一緒に写ってる写真なんてファンの皆も予想だにしてなかったろうに。
フフフ、ネットアイドルブログ史上稀に見るヒット数を稼がせてもらったぜ。
…………でもアレも一応魔法なんだよな? ネットで公開しても良かったのか?
まあ、見た人の反応に“魔法”なんて単語は一つも出てなかったから、アレが魔法だなんて思われていないだろうけどさ。
普通は思わねーか。
あんなロボット見せられて「コレは魔法なんです!」って言われても信じる奴なんかいねーよな。リアルを追求するために細かなネジまでちゃんと再現してあるし、あのガンダム。
そういうところも狙ってやってるんだろうなぁ、ネギ先生って…………。
あくまでネギ先生にとって魔法は“手段”って感じなんだよな。
………………そういえばずっと不思議に思ってたんだけど、“ガンダム”って何なんだろ?
“ユニコーン”はわかるけど、その後ろのガンダムってどういう意味なんだ?
「はーい、お茶淹れてきたえ。
もう少し詰めて座ってーな」
「ありがとうございます、木乃香お嬢様。
この部屋の防備も完璧にしました。それに女子寮の警備システムの起動も問題なく出来ています。これで他の生徒の皆さんはよほどのことがない限り部屋から出ようとは思わなくなりますし、もし誰かが部屋から出たり入ったりしてもわかります。
綾瀬さんとのどかさん、初めての本番ですが警備システムの使い方は大丈夫ですね?」
「ネギ先生にちゃんと教わっているので大丈夫です。
私とのどかと木乃香さんのうち、念のために常時2人で警備システムをコントロールしますので、アスナさん達はいつでも動けるようにしておいてくださいです」
「そうだね。30分交替ぐらいでいいかな?」
「ウチまで回ってくる前にネギ君が終わらせてまうのにネギ君添い寝権1日分」
「賭けにならないわよ、木乃香」
「…………緊張感無いな、お前ら。
刹那も言ってたけどネギ先生を1人で行かせて本当に良かったのか? お前らの性格だったらネギ先生を1人になんかしないで、一緒に戦うとか言い出しそうって思ってたんだけど?
そのために今まで散々修行をしてきたんじゃないのか?」
それがさっきから不思議だった。
コイツラの性格だったら何としてもネギ先生の力になろうとするだろう。コイツラは良くも悪くもお人好しだし、何よりネギ先生に惚れているんだしな。
それなのにネギ先生を1人で行かせるなんて本当に良かったのか、お前ら?
「アハハ、そうなんだけどね。
足手まといになるかもしれないし、何よりネギが1人で良いって言ったからね」
「ネギ君はウチらの手が必要なときはちゃんと言ってくれるからなー」
「そうですね。京都旅行のときは確かにそうでした。
あの頃の私達は今より数段弱かったのに、ネギ先生はそんな私達に協力を求めてくださいましたし」
「それにネギ先生私達のことを信じてくれていなかったら、女子寮の警備すらも任せてもらえなかったと思います」
「ええ。もし私達が自分達の身を守れないほど弱かったとしたら、おそらくエヴァンジェリンさんの家にでも避難させられていたですね」
「ネギ坊主は拙者達のことを大事にしてくれるでござるが、それでも過保護ということではないでござる。
ネギ坊主だけで九割九分、そして拙者達の手も借りれば十割の安全を確保できる場合だと、ネギ坊主は迷うことなく後者を選ぶでござるな」
「修行のときでもそうアルよね。多少の怪我は治すから構わないというか…………」
「もし命の危険がかなりの確率であって、私達がいても変わらないとしたらネギは1人で行くだろう。
ただし、私達が追いかけてこないように拘束して安全なところに避難させてからのことだがな。それをしないということは今回はネギ1人で本当に大丈夫なんだろ。
…………まあ、せっかくネギが“学園結界”の術式を解析して私を“学園結界”の対象外にしてくれたから、少しばかり外で暴れたい気はするんだがな。
だが面倒を避けるためにジジイやタカミチ以外の関係者には、一応はまだ“学園結界”の対象になっている設定だからな。今回は我慢することにしよう」
「…………あれは本当にやってよかったのでしょうか?
マスターが力を取り戻せたのは幸いですが、ネギ先生がマズイことになるのでは?」
「大丈夫ですよ、茶々丸さん。
お兄様は「バレるようなヘマはしてない!」って自信たっぷりに言ってましたから、外では今まで通りに指輪で力を封印していただければバレませんよ」
あー、確かにな。
ネギ先生は確かにそんな感じだ。消極的に身を守るんじゃなくて、積極的に身を守るタイプだからな。
それとネギ先生は基本的に1人で物事を進めるタイプだ。ソッチの方が早いから。
そしてアスナ達が危険な目に遭い、傷つくことは許容出来ないだろう。ただし、取り返しのつかないほどのという前提が、“危険な目”や“怪我”の前につくが。
多少の怪我をしてでも、より確実に安全を手に入れる方法を選ぶんだろう。
やれやれ、全くネギ先生は相変わらず子供じゃねーや。
基本的には子供じゃないのに、応用的には子供って言ったらいいのかな? 普通は逆だと思うんだが…………。
━━━━━ 後書き ━━━━━
ガンダムコスプレ見て“魔法”って想像した人いたら凄いですよね。一応ネギも考え無しではなく、いろんなことを考えた結果でコスプレデビューしました。
学園祭とか学園祭とか学園祭とかいろいろです。
そしてちうたんリア充まっしぐら。
さすがにエヴァをコスプレデビューさせようとしたら、学園長に泣いて止められましたが…………。
エヴァは着飾ったりコスプレとかしたらネギが喜ぶので満更ではありませんでした。
ネギはアスナ達からは基本的に信頼されてはいます。むしろ大袈裟すぎるので別の意味で心配されてます。
ですので、ネギにもし手伝うようにお願いされたとしたら
「今日もまた弱いもの虐めする仕事が始まるわ(涙)」
「もうやめて! 標的のライフは0やで!」
とかなります。
さて、次話でいよいよ虐さ…………実験開始です。
ヘルマンの運命はいかに!?