「…………ぅ、ふぁ、もうちょっと優しく…………」
こんばんは。初めて血を吸われる感覚に戸惑って、変な声を上げてるネギです。
エヴァさんの甘い声だと思いましたか? 残念。僕ですよ、僕。
あの後、自分がしばらくホテル暮らしをして住居を探すことをエヴァさんに知られたところ、エヴァさんの家に居候させてもらえることになりました。
アーニャとアルちゃんが麻帆良に来たら、彼女たちも一緒に住んでいいそうです。
おそらく学園長たちはこれを狙っていたんでしょうね。何も言いませんでしたし。
タカミチはすぐに出張しなければいけないらしく、自分の面倒はみていられないそうですから。
それに加え、これから定期的にエヴァさんに血を提供しなければならないので、食生活を含めてエヴァさんが面倒見てくれることになりました。
本当にエヴァさんは料理を習っていたみたいです。茶々丸さんの手を借りずに、とても美味しい料理をご馳走してくれました。
…………本当にキャラ変わってるなぁ。
むしろ、このエヴァさんが自分の好みに思いっきり直球でストライクだったので、一緒に生活できてラッキーなんですが。
でもマズイです。エヴァさんが可愛くてクラクラしてきました。
エヴァさんはソファーに座った自分と向かい合った状態から、首筋に歯を突き立てて血を吸っています。
さっきから「エヴァさんの髪の毛サラサラしてるなぁ」とか、「エヴァさんは良い匂いするなぁ」とかしか考えられません。
エヴァさんの背中に手を回して抱きしめたらあったかくて気持ちいいんだろうなぁ…………。
「んひゃっ!!!」
うわ、血を吸い終わったエヴァさんに首筋舐められたら変な声出してしまいました。
邪な考えを見抜かれたのでしょうか?
「ふう、美味しかったよ、ぼーや。ありがとう。
だけど疲れてるんじゃないか? ちょっと血が濁っているぞ」
確かに疲れてましたけど、この数分で更に疲れました。
子供でよかった。大人だったら絶対エヴァさんに反応してしまいます。
「確かにちょっと疲れてます。
初めて飛行機に乗って、初めてウェールズの外に出ましたから」
「そうか、すまないな。それなのに血を吸わせてもらって。
ああ、血を失ったばかりなんだからあまり動くな。水分を摂ったほうがいい。
茶々丸、ぼーやに飲み物を」
「了解しました。少々お待ちください」
…………茶々丸さんは原作とは変わりがないようです。
まあ、茶々丸さんは原作中に成長して、どんどん機械っぽさがなくなっていくというか、人間みたいになっていきますからね。これからどんな風に変化していくかまだわかりません。
せっかく一緒に暮らせるんです。キャラ崩壊しないように気をつけて見守っていきましょう。
「さっきも言ったが血を提供してくれてありがとう。
さすがに中学生を15年も続けていると飽きてしまったからな。
この学園から出て行く気はないが『登校地獄』は解除しておきたい」
「そんなに気にしないでください。血でよかったらいくらでも提供しますよ。
駄目親父の仕出かしたことの償いです。マグダウェルさん」
自分の隣に腰を下ろしたエヴァさんにお礼を言われます。
いえいえ、エヴァさんとは仲良くなりたいですからね。
京都修学旅行のときにはよろしくお願いしますよ。
「顔色が悪いな。少し血を吸いすぎたかもしれん。
…………ほら横になるといい」
うおっ! エヴァさんの膝枕キタコレ!!!
しかも頭も撫でられています。
駄目だ。顔が赤くなるのが止められません。
「それと“マグダウェルさん”という呼び方はやめろ。
これからは家族として一緒に生活していくんだ。家族を名字で呼ぶなんておかしいだろう」
「は、はい。ありがとうございます」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
エヴァさんの優しい声と太ももの感触に引き込まれそうになります。
マズイ、本気で惚れそうだ。
何でナギはエヴァさんを振ったんだ!?
勿体なさすぎる。惚れてまうやろー。
チラとエヴァさんの顔を見上げると目が合い、ニッコリと笑いかけられました。
「“お母さん”と呼んでくれてもいいんだぞ?」
「坊ちゃま。紅茶をお持ちしました。
砂糖とミルクはどうしますか?」
「………………いえ、さすがにそれはお断りします。エヴァさん。
砂糖はいりません。ミルクたっぷりでお願いします。それと“坊ちゃま”は止めてください。茶々丸さん」
そういうオチだと思ったよコンチクショウ!!!
クソッ! なんて並行世界だ!
ぜんぜんナギのこと諦めてないなぁ、この人は!!!
「な、何故だ!? 何故“お母さん”と呼んでくれないのだ!?」
「しかし坊ちゃま。
坊ちゃまはマスターの御子息となられる御方ですので、“坊ちゃま”と呼ぶのは当然のことかと…………」
「この幼い姿がいけないのか!?
確かに実年齢は600歳を超えているとはいえ、同じくらいの年齢に見える女性を母と呼ぶのは抵抗があるかもしれんな。
だが安心しろ、ぼーや。そんなもの幻術を使えば何とでもなる!!!」
「いえいえいえいえいえ! そういうことじゃありません」
「ならばどういうことなのだ!? 私はぼーやの母に相応しくないとでもいうのか!?」
ああ、もう。どうすりゃいいんだこの人は!?
これから世話になること考えると機嫌損ねるのは後が怖いし。
ていうか泣きそうにならないでください。お願いします。
「ぼ、僕は3学期から教育実習生として、エヴァさんたちのクラスの担任補佐をすることになっています。
そんな僕が生徒のことを“お母さん”と呼んだり、生徒に“坊ちゃま”と呼ばれるのはおかしいと思います」
「た、確かにそうだが。…………く、それでも、せっかく…………」
「僕はここへ修行のためにやってきました。それなのにエヴァさんに甘えてしまったら修行になりません。
僕のことを考えていただけるならお願いします、エヴァさん」
「む、むうううぅぅぅ…………。
ぼーやがそこまでいうならしょうがない。ちゃんと学校では“ネギ先生”と呼んでやろう。
茶々丸、お前もだ」
「了解しました。学校では坊ちゃまのことを“ネギ先生”とお呼びします」
「いえ…………坊ちゃまと呼ぶこと自体を止めて欲しいんですが」
2-A連中にばれたら絶対大騒ぎになってしまいます。
「さて、今日はもうお開きだ。
明日はぼーやの身の回りのものを買いにいかなければならないからな。忙しくなるぞ。
風呂に入って早めに休むとしよう」
無視ですか…………。
いいですよ、もう。もう疲れました。好きにしてください。
「よし、では一緒に風呂に入ろうか?」
「お断りしますっ!!!」
「何故っ!? くっ、これが反抗期というやつなのか!?
私は諦めんぞ。必ずぼーやに“お母さん”と呼ばれてみせる!!!」
クソッ! なんて並行世界だ!!!
━━━━━ 後書き ━━━━━
とりあえず今回の投稿はここまでです。
Arcadiaでの本格的な投稿はこれが初めてですので、まずはここまでで様子見をします。
行間の取り方などの書き方に問題ありましたらご指摘お願いします。