━━━━━ 龍宮マナ ━━━━━
 水が水路を流れる音とコンクリートで出来たトンネルの中を通り抜ける風の音の中、コツン……コツン……と高畑先生の革靴で歩く音が響き渡る。
 やれやれ、ここがバレてしまったか。
 どうやら私と古との試合の最中に、ネギ先生と刹那の式神が忍び込んでいたらしい。監視カメラの録画映像でそれらが確認出来た。今となっては後の祭りの話だがな。
 高畑先生の目的はここの調査と、あわよくば超の拘束といったところだろう。
 しかし少なくとも武道会が終わるまで超は姿を隠せない。授賞式と閉会の挨拶があるから結局は最低でも一度は皆の前に姿を現さなければならないからな。
 だからこんなところで拘束されるわけにはいかないのさ。
「やれやれ、こんな所まで来てしまたカ」
「ネギ先生にもらったダメージは大丈夫ですか、高畑先生?」
 ま、頚動脈絞められてうまく落とされただけなら、起きた後も普通に動けるから大丈夫だろうがな。
 超と私で高畑先生を挟み撃ちにする。
 道幅1mほどの狭い通路。空間的にはまだそれより広がっているが、水路があるので思うようには動けないだろう。
 とはいえ、甘く見ることをせずに超との2人がかりで無力化することにしよう。
「君達は…………どういうことだい?」
「仕事です」
「元担任に対し申し訳ないが、私には時間がないネ。明日、学祭が終わるまでの少しの間おとなしくしていてもらうヨ。
 手荒な真似をする気はなかたのだが…………何しろ時間がなくてネ。急遽この大会も開いた。本来なら一年かけて準備する予定だたヨ」
 …………そう簡単にはいかないんだろうがなぁ。ここのことはネギ先生にもバレているみたいだし。
 むしろ来たのがネギ先生でなくてよかったと喜ぶべきなのだろう。
「…………異常気象で世界樹大発光が早まったからかな?
 やはり君達は何か企んでいたのか。それならちょっと話しを聞かせてもらわないといけないようだね」
「…………何、たいしたコトではないネ。世界に散らばる“魔法使い”の人数は私の調べたところによると、東京圏の人口の約2倍。全世界の華僑の人口よりも多い…………。
 これはかなりの人数ネ」
「…………?」
「それにこの時代、彼らはは我々の世界とはわずかに位相を異にする“異界”と呼ばれる場所に、いくつかの“国”まで持っている」
「………………それで?」
「心配しなくても大丈夫ヨ、高畑先生。一般人に迷惑をかけるようなことはしない………………つもり。
 私の目的は―――」
 そう、私達の目的は―――
「彼ら“魔法使い”総人口6700万人。その存在を全世界に対し公表す。それだけネ。
 …………ネ? たいしたことではないヨ」
「魔法使いの存在を…………全世界に公表する?
 …………そんなことをして、君に何の利益が?」
「フフ…………もう少し話をしてもいいけど武道会で忙しいのでネ。悪いけど拘束させてもらうヨ、高畑先生。
 不自由な思いをさせるけど、拘束している間の食事は超包子の美味しいのを差し入れるから楽しみにしていて欲しいヨ」
「ハハハ、あいにくそういうわけにはいかないな。
 さっきの試合ではみっともないところを見せてしまったけど、これでもこういうのは君達より慣れてるんだ」
 それはそうだろう。
 最近は(ネギ先生のせいで)マダオとしての感じが強くなってきてはいるが、“悠久の風”に所属して数々の危険な仕事を引き受けている。戦闘能力の格付けはAA+。
 私も幼い頃から紛争地域を渡り歩いていたとはいえ、私と超の経験と足しても高畑先生1人には届かない。それらの実績に裏付けられた自信は理解出来るんだが………………高畑先生からやけに殺気を感じるのは何故だろう?
「…………元担当生徒達に対しては申し訳ないけど、僕にも事情があってね。何を企んでいるか聞かせてもらうよ。
 右手に“気”、左手に“魔力”。気と魔力の合一」
 『咸卦法』か。高畑先生の気と魔力が合わさり、その余波で強風が辺りに吹きまわる。
 ってか、おい。…………やっぱり何だか高畑先生の方が殺る気マンマンじゃないか?
「あの…………もしかして八つ当たり入てないカ?」
 …………喋っている暇はない、超。私が時間を稼ぐから、超は田中さん達を100体ぐらい連れて来い。
 どうやらアレは2人がかりでも無理っぽいぞ。
「一撃目はサービスだ。避けろ、龍宮君」
 あ、これ本気でマズイ。
 …………これもネギ先生のせいだと思うのは、私の被害妄想なのだろうか?
━━━━━ 長瀬楓 ━━━━━
 ズシィン! と鈍い音と同時に舞台が揺れる。これは…………地下で何かあったでござるな。
 しかし今は古との試合中。こちらを優先させてもらうでござる。
「隙アリでござる!」
「しまっ…………!?」
 舞台が振動した瞬間、拙者は古の蹴りを跳んで避けて、中空で虚空瞬動に入る直前だったので驚きはしたが直接な影響はなかった。しかし一方の古は蹴りを出した直後で、左足一本で不自然な体勢で立っていたでござる。
 古もすぐさま体勢を立て直して、構えようとしたときの予想外なイレギュラーな振動。この振動でさすがの古も虚を突かれたらしく、体勢を立て直すのに一瞬遅れてしまったようでござる。
 しかし、その一瞬があれば十分!
「くっ!?」
 虚空瞬動で古に突進して転ばせ、そのまま寝技に移る。こういう寝技だと拙者のように身体が大きい方が有利でござるからな。
 おお! 拙者の大きな身体がこんなところで良い方向に発揮するとは!
 …………組み付いたから特によくわかるでござるけど、古は本当に小さいでござるなぁ。
 いや、年齢的に考えると古の方が適正でござるし、刹那も確か古と同じ身長だったはず。
 むしろ古の方が刹那よりもスタイルは良いでござるな。
『……7! ……8! ……9! ……10! 試合終了!!!
 長瀬選手! 前年度ウルティマホラチャンピオンの古菲選手を降し、準決勝進出です!!!』
「…………拙者の勝ちでござるな」
「いや~、まいったアル。
 あの揺れに驚いてしまったアルよ。私もまだまだ精神修練が足りないアルな」
 フム。ネギ坊主の話によると、地下に怪しいものが見つかったので高畑殿がそれの調査に向かったとのことでござるが、それが何か関係あるのでござろうか?
 どうやら超殿は何かよからぬことを企んでいる様子。何かあってもおかしくはないでござるな。
 ま、拙者はとりあえずこの武道会を考えることにしよう。何かあればネギ坊主が言ってくるはず。
 何より次の試合はコタローをアッサリと倒したクウネル・サンダースという御仁との試合。
 しかも話によると、以前聞いたネギ坊主の父親が所属していた“紅き翼”のアルビレオ・イマと同一人物だとか。
 ネギ坊主が見せてくれた映像にも映っていたし、実際にネギ坊主に使われて体験したこともあるが、あの重力魔法は厄介でござるな。それに予選を見る限り体術も出来るようでござる。
 ネギ坊主からは胸を借りるつもりで挑めばいいと言われたからには、おそらくクウネル殿の実力は今の拙者よりも数段上なのでござろう。
 …………まあ、それはそれで楽しみなので構わないでござるが、ネギ坊主から負けると思われているのも癪でござる。せめて一本でいいからとりたいでござるな。
 そしてこの次はネギ坊主と田中さんとやらのロボット対決でござるか。
 今回ばかりはネギ坊主も一瞬で試合を終わらせたりしないでござろう。高畑殿との試合は酷かったでござるからなぁ。
 しかしアレはネギ坊主が高畑殿を買っている証でもあるでござる。もし高畑殿が弱かったりしたら一瞬で終わらせることもなく、自分と観客を楽しませるのに時間を使って戦っていたでござろう。
 …………残念ながら拙者達と戦う場合では高畑殿とのときとは違い、おそらく時間をかけてゆっくりと試合を行なうでござる。
 拙者達の修行具合を見るのとネギ坊主が楽しむために。
 ま……まあ、高畑殿は強かったからああなったでござる。だから高畑殿は気を病むことないのでござるよ。逆にエヴァ殿クラスを相手にする場合は時間をかけてゆっくりと攻め込むでござろうな。
 持久戦というか長期戦覚悟で。
 ネギ坊主が他者に勝っている優位点の一つは圧倒的な魔力量。しかも『咸卦治癒』もあるから、この2つを持って持久戦を挑まれてしまったらネギ坊主に勝てる者などいないのではござろうか?
 …………いや、別に短期決戦ならどうにかなるというワケではないでござるが。
 それはともかくとして、拙者もそのぐらいネギ坊主に力を出させるぐらいの高みまで登りつめたいでござるな。
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『さあ! 続きまして二回戦第三試合、ユニコーンガンダム選手 VS 田中選手の試合です!
 あのデスメガネ、高畑選手をアッサリと絞め落としたユニコーンガンダム選手! しかし田中さんも同じロボットだから絞め技は効かないぞ!
 そして対するは、一回戦でムキムキマッチョだった佐藤選手を脱げビームで全裸に剥き、会場中の観客の皆様を阿鼻叫喚に陥れた田中選手! あのユニコーンガンダム選手の素早い動きを捕まえることが出来るのか!?
 なお、解説席には田中さんの開発者の1人である、葉加瀬聡美さんにお越しいただいております』
『よ……よろしくお願いします』
 …………よりにもよって、葉加瀬殿もわざわざ田中さんが壊されるところを特等席で見なくてもいいでござろうに。
 でももしかしたらネギ坊主対策に何か策があるのかも? ネギ坊主をこの武道会に誘ったのは超殿だし、超殿たちなら核バズーカぐらい用意しててもおかしくないでござるからな。
 …………あれ? もしかしてさっきの古との試合中に起きた振動ってソレでござるか?
 超殿が麻帆良地下で核を製造しており、それが調査しにいった高畑殿との戦闘中に暴発とか…………。
 だとしたら超殿達を止めねばならないでござるな。
 いくら何でも核は洒落にならないでござるな、ハッハッハ………………コレ、本気でマズくないでござるか?
 常日頃から科学に魂を売った狂科学者と自称している超殿なら、核を用意してても本気でおかしくないでござるよ。
 マズイでござる。冗談抜きで麻帆良の危機かもしれないでござるよ。
『ところで葉加瀬さん。
 ユニコーンガンダム選手の持っている盾に“麻帆良大工学部”と書いてありますが、ユニコーンガンダム選手を作ったのは誰なんですか?』
『え? い、いや~、豪徳寺さん。実は私も知らないんですよね、アハハ…………。
(もしかして私に説明丸投げですか、ネギ先生っ!? 一回戦ではそんな盾持ってなかったじゃないですか!
 知ってるですよね!? 私が超さん一味で、解説役としてここに座っているのを知っててわざとその盾持ってきたんですよね!!!)』
 確かにあのネギ坊主は説明に困るのでござろうなぁ。
「あのロボットを作ったのはネギ先生です!」
 なんて言ったとしても、誰も信じてくれるわけないでござるし…………。
 ネギ坊主はその特異さゆえに麻帆良の表と裏の両方で知られてはいるが、さすがにロボットを作ったなどと言っても信じられるわけないでござる。
 魔法関係者以外にはあのモビルスーツは見せたことござらんし。
 かといって、
「実はアレはロボットではなく、中にネギ先生が入っているんです!」
 と本当のことを言ったとしても、今のユニコーンガンダムの背丈は普段のネギ坊主とは明らかに違うのでこれも信じてくれるわけないでござる。どうせ幻術なんかで何かの弾みで装甲が壊れたとしても大丈夫にしているでござろうしな。
 しかも今の時間はアリバイ作りのため、学園長の頼みでネギ坊主は麻帆良祭を見学に来た外国の客人の案内をしていることになっているので、ネギ坊主はここにいないことになっているでござる。
 それに加えて
『そういうことは秘密です』
 と、解説席に預けてあるネギ坊主が持っていた電光掲示板に表示されているし…………。
 完璧に遊んでいるでござるな、ネギ坊主は。
 葉加瀬殿はユニコーンガンダムとネギ坊主を結び付けるだけの説得力を持っていない。だから何も言えないんでござろうなぁ。
『それでは第十一試合ファイト!!』
 開始の合図とともに、田中さんの口が開かれてビームが発射される。一回戦では対戦者を裸に剥いた脱げビームでござるな。
 しかも前のは手加減していたのか、今回放たれた脱げビームは一回戦のビームよりも見るからに強力でござった…………が。
『おおーっと!? ユニコーンガンダム選手、田中選手のビームを左腕に装備していた盾でアッサリと防いでしまいました!
 むしろ脱げビームがユニコーンガンダム選手の盾の寸前で拡散されて弾かれてしまい、周りの観客の皆様の方が危なさそうだぁっ! なお、替えの下着だけなら左右会場門脇売店で売ってまーーす!!
 …………っていうか私が一番危なっ!?』
 ちなみにネギ坊主のあの盾は、“I‐フィールド”という魔力や気を斥力によって偏向させるバリヤーを発生することが出来るとのことでござる。
 『千の雷』などの上級魔法クラスを食らっても中の人は無傷で済むぐらいの対魔力を誇るでござる。あの脱げビームは『武装解除』ぐらいだろうから、簡単にあのように無効化出来るのでござるな。
 弱点といえば燃費はあまりよくないことでらしいでござるが、それもネギ坊主の豊富な魔力量にとっては誤差の範囲でござろう。
 一方、脱げビームがまったく効かないとわかると、田中さんは接近戦を挑むようにしたでござる。その大きな身体に似合わずになかなか素早い動きで接近し、茶々丸殿と似た格闘技にてネギ坊主に挑む。
 田中殿は茶々丸殿の弟に当たるらしいので、技が似てても当然でござるな。
 田中さんの繰り出す技は肘や足裏などに取り付けられているバーニアからのジェット噴射で、人間には不可能な急加速、急停止を織り交ぜた技となっている。あれは初見だと虚を突かれるかもしれないでござるな。
 だがそれもネギ坊主には当たらない。
 盾で防ぎ、腕でいなし、時には大きく離れて田中さんの攻撃を捌いていく。体術だけでも古より上だから当然でござろう。
 …………ところで、ロボット同士の戦いにはまったくもって見えないのはいいのでござろうか?
 いくら何でもこんな戦いでは不審に思う観客が出てくるのでは…………。
 しかし田中さんはこれで終わりかな?
 確かに田中さんの動きは凄いとは思うが、これではネギ坊主には全然届かないでござるよ。
 ネギ坊主が攻撃を仕掛けていないからまだ終わっていないだけで、ネギ坊主が攻勢に転じたらあっという間に終わるでござる。
 お、そろそろネギ坊主も攻撃するようでござるな。
 田中さんが大振りのハイキックを仕掛けてきたのに対し、ネギ坊主も真っ向からハイキックで田中さんの足を迎撃した。
 その結果、アッサリと田中さんの右足は脛から折られ、蹴りの衝撃でバランスが崩れる。そこにネギ坊主のヤクザキックが田中さんの腹にぶち込まれる。
 吹っ飛んだ田中さんは何とか左足だけで立ったままでいようとするが、ネギ坊主がそんな隙を見逃すはずもなく、背中に装着していたビームライフルの銃口を田中さんに向ける。
 これで終わったでござるな。やはりネギ坊主には敵わな…………って何ぃーーーっ!?
『おおっ!? 何と田中選手! 空に飛び上がってユニコーンガンダム選手のビームを避けたっ!?
 っていうかコレ本気で何なの葉加瀬!?』
『足なんて飾りです!
 偉い人にはそれがわからないんですよ、朝倉さん!!!』
『え? この人なんか怖いんですけど。
 あとユニコーンガンダム選手のあの銃はいいんですか?』
『豪徳寺さん、ハカセは科学に魂を売った狂科学者を自認しておりますので…………。
 そしてユニコーンガンダム選手のあの銃ですが事前に協議を行ないましたところ、禁止されている“火薬”を使った銃火器ではありませんし、田中選手のビームに似ているものでしたのでOKということです』
 田中さんの足の付け根から両足が外れ、ズゴゴ! と、そこからのジェット噴射で飛び上がったでござる!
 しかもネギ坊主に向けて両腕を向けたと思ったら、腕の肘から先がロケットパンチのように発射されたでござるよ!
 あ、でも有線だからロケットパンチではなくてワイヤードフィストでござるかな?
「おおーーー!? ロケットパンチだぜ!?」「スゲーーー!」「やっぱロボっつったらこーこないと!」「やるなーーー! 工学部!」
 田中さん大人気。
 しかしその大人気のロケットパンチは狙いがずれてしまったのか、ネギ坊主の両脇を外れてそのまま通り過ぎていっ…………たと思ったら、いきなりパンチがジェット噴射で方向転換し、ネギ坊主に再度向かっていったでござる。
 ネギ坊主も負けじと空に飛び上がってロケットパンチを避けたのでござるが、今度はロケットパンチの握り込まれていた拳が開かれ、ネギ坊主に対して指先を向ける。
 次の瞬間、その指先からビームが発射されたでござる!
『今度は指先から脱げビーム!?』
『逆方向から!?』
 …………何、この有線制御式5連装脱げビーム砲?
 足という重りを捨て去り、背中、肘などの間接部、そして足の付け根のバーニアで飛び回る田中さんはこれまたなかなかに早い。
 両腕の有線制御式5連装脱げビーム砲が自由自在に動き回り、ネギ坊主に向かって絶え間なく脱げビームを発射しているでござる。それに加えて田中さん本体も口から脱げビームを発射しているので、ネギ坊主は3方向からのオールレンジ攻撃にさらされている。
 ほほお、さすがにアレだけでは終わらなかったでござるか。葉加瀬殿達もなかなかやるでござるな。
 一方のネギ坊主は回避に専念している。口から発射される強力な脱げビームは盾で弾いているが、指から発射される脱げビームは何発か身体に当たってしまっているござる。
 ネギ坊主が全力で動けないのが痛いでござるな。全力で動いたら、ソニックブームが発生して観客席が大惨事になってしまうでござるからなぁ。
 だが、それでもネギ坊主には勝てないでござるよ。
 指からの脱げビームの威力は弱いらしく、身体に当たっても装甲で弾いているから問題なさそうでござる。盾に頼らずとも、『白き雷』までなら装甲だけで耐えれるでござるし。
 今は盾で弾いているけど、実際のところ口から発射される強力な脱げビームでもネギ坊主の装甲には傷一つ付けれないのでござるよ。
 要するに何やってもネギ坊主の装甲は突破出来ない。その上に…………、
『こう近付けば四方からの攻撃は無理ですね!』
 と、電光掲示板に新たな文が表示されたと思ったら、ネギ坊主は突進して田中さんとの距離を詰めていた。これで田中さんは自らに脱げビームが当たる恐れがあるので、手からのビーム攻撃は出来なくなったでござる。
 戦闘技能もネギ坊主の方が上でござるからなぁ。
 そしてネギ坊主は近づきながらいきなり振り向いてビームライフルを発射。銃口から奔った光は、見事にネギ坊主の後ろに回りながら脱げビームを撃とうとしていた田中さんの右手に直撃した。ビームに貫かれた右手は爆散したでござるな。
 右手を失った田中さんは口から脱げビームを発射し、無事な左手をロケットパンチとしてネギ坊主の後ろから攻撃させる。脱げビームが効かない以上、それぐらいしか出来ないでござるな。
 対するネギ坊主は口からの脱げビームは盾で弾き、後ろから飛んできたロケットパンチをぶつかる瞬間に前転するように避けた。
 そしてネギ坊主の上を通り過ぎていくロケットパンチに対し、オマケとばかりに身体を一捻りしながらオーバーヘッドキックで田中さんの方に蹴りつける。
 おかげで田中さんは自らの左手を身体の中心にぶつけられ、バランスを崩した。
 その隙をついてネギ坊主はビームライフルを発射し、田中さんは左手ごと身体の中心を貫かれた。しかも背中から伸びていた電力供給ケーブルも一緒に撃ち貫かれたから、エネルギー切れになってこれで終わりでござるな。
 いやー、なかなか面白い試合でござったな。葉加瀬殿たちの科学力も侮れないでござ…………って、今度は田中さんの首が分離した!?
 ビームライフルによって撃ち貫かれた田中さんはそのまま地面に落ちていくと思ったら、田中さんの首から上だけが分離して飛び上がっていくでござる!
 まだ続けるのでござるか!?
 しかもまたもや口からビーム…………いや、アレは違う?
『まだです! たかがメインカメラをやられただけです!!!』
 ネギ坊主は盾で防いだが、ただのペイント弾だったのが逆に仇となってしまったようでござる。
 胸の中心付近に直撃するはずだった弾を盾で防御したのはよかったが、盾にぶち当たった弾が蛍光ピンクの液体としてぶちまけられてしまって、それが顔にも付着してしまいピンク色に染まってしまったでござる。
 フム、確かにアレならネギ坊主の視界を奪うことが出来るでござるか。参考になるでござる。
 …………それでも届きはしないのが残念でござるがな。
 発射するのをペイント弾から脱げビームに切り換えた田中さんは、ネギ坊主の真上を飛び続けながら脱げビームを発射。
 しかし、それもネギ坊主が地面に降り立ち、天に向けてビームライフルを撃つまでの僅かな時間だけでござった。
 顔だけにもなって田中さんは諦めずに戦い続けたが、最後は顔をビームライフルで撃たれて爆散。
 田中さん、無茶しやがってでござる…………。
『イヤァッ! 私の田中さんがぁっ!?』
『うわっ! 何か本気でグロいんだけど!?』
 …………葉加瀬殿も可哀想に。
 ネギ坊主もネギ坊主でござるよ。
 これでますます葉加瀬殿達のマッド具合が激しくなったらどうするつもりでござるか?
━━━━━ 後書き ━━━━━
 待ちに待った時が来たんだ! 
 多くの修行が無駄で無かったことの証の為に…………。
 再び“平穏に生きる”という理想を掲げる為に! 駄目親父共の粛清成就のために! 
 麻帆良よ! 僕は帰ってきた!!!
 口からビームとワイヤードフィストってジオングみたいじゃね?
 そう思ってしまいましたのでこのネタです。
 1st原理主義者というわけではありませんし、実を言うと1stはアニメではあまり見たことがないのですよね。一応、劇場版三部作は持っているのですが。
 “THE ORIGIN”のアニメ化が発表されましたが、どうなっているのでしょう? 楽しみにしているのに。
 それと4/15に61話が投稿出来なかった理由は、朝倉の「~ムキムキマッチョだった佐藤選手~」というセリフは、最初は“だった”の部分が“の”だったのですが、それが原因のようでした。
 “の”を“だった”に変えたら普通に投稿できました。
 本気で何故?