━━━━━ 超鈴音 ━━━━━
「…………何とか戻ってこれたぞ、超」
「無事でよかたヨ、龍宮サン」
いや、ホントに。
正直言て、高畑先生があそこまで凄いとは思てなかたヨ。
ちなみにあの後の流れを簡単に説明すると、
私が離脱、龍宮サンが足止め
↓
田中さん100体投入して龍宮サンが離脱
↓
田中さん100体アサリ撃破されて私達絶望
↓
気を取り直して私が罠の準備を始める
↓
龍宮サンが高畑先生を罠の地点へ誘導
て、感じネ。
ちなみに仕掛けた罠は高畑先生でも脱出・破壊出来ないような広めの部屋に、今動かせるだけの田中さんとBUCHIANAを置いておいただけネ。そこに高畑先生を誘導し、部屋に閉じ込めて出れないようにしたのヨ。
念話妨害もしてあるし、これで高畑先生はこの武道会が終わるまでは足止め出来るはずヨ。
あの部屋に睡眠ガスでも使うことが出来たら良かったけど、あいにくそんな設備は用意してなかたネ。
「どのくらい戦力を用意したんだ?」
「田中さんを400体、それとBUCHIANAを10体ネ。
高畑先生の撃破ではなく、時間稼ぎを最優先にしているから少なくとも2時間は持つ…………と思うヨ」
「…………まあ、そのぐらいなら何とかなるだろう…………きっと」
明日の本番前に戦力の約2割を消費するのはマズイけど、そうでもしなければ本気で今日で終わてたかもしれないヨ。
少しばかり高畑先生を甘く見ていたネ。監視カメラで今行なわれている戦いの様子を見ていると、ヘタしたら1時間ぐらいで終わらせるペースで田中さん達を壊しているし。
………………コレ、後でちゃんと息切れしてくれるよネ? ペース落ちてくれるよネ?
それとBUCHIANAを置いたのは失敗だたかナ?
BUCHIANAは田中さんより火力がデカイ分、身体が大きくて鈍重ネ。
だから高畑先生相手では…………多対一の戦いではその長所を生かせない。BUCHIANAは高畑先生のような強者1人ではなく、普通の魔法先生数人に当てた方が戦果が期待出来たようネ。
それに一番最初にあの狭い通路で仕掛けたのがそもそもの間違いネ。
逃げ場がないぐらいに通路一杯に居合い拳を撃たれてしまい、反撃する間もなく100体の田中さんを失てしまたヨ。
「私はこれから田中さん達の移設作業に移るヨ。その後、閉会式に出て〆の挨拶をしたら身を隠す。
龍宮サンはここから離れて、学園の動きを探て欲しいヨ。これが高畑先生の独断で、学園が本格的に動いているかどうかをネ」
「了解。…………言っておくがネギ先生には手を出すなよ。これ以上面倒事を増やされても困るぞ」
わかてるヨ。
武道会でネギ坊主の生い立ちとかを明かそうとも考えていたけど、そもそも“ネギ坊主”は参加していないことになているから無理ヨ。
身元を隠すのは本人的に当たり前のことなんだろうけど、少しはコチラのことも考えて欲しいものネ。
━━━━━ アルビレオ・イマ ━━━━━
二回戦も全て無事に終了。
どうやらキティが言っていたように、ネギ君は私のことを知っているようですね。さっき戦ったコタロー君が私のことを知っていたのも、ネギ君が教えたからなのでしょう。
コタロー君は実力的にはまだまだですが、勝てないまでも一矢報おうとする気概は心地良いものです。後の試合のことを考えないような激しい攻めでしたけどね。
ネギ君という強者を既に知っているせいなのか、負けたことは認めることは出来る上に向上心を失わないという真っ直ぐな心意気で持っているようです。
あのタイプは自分が弱いということを知ってしまったら心が折れてしまうこともありますが、ネギ君とのいざこざで“敗北”を知っているということなので、コタロー君はこれからもまだまだ伸びていくでしょう。
次の試合は私と、ネギ君の従者であるナガセカエデさんとの試合。
あいにくネギ君達がどのような修行をしているかはネギ君の結界で把握出来てませんが、学園長の話では皆さんなかなか腕が立つとのこと。面白い試合になりそうです。
それにネギ君の強さはいったいどれほどなのでしょうか?
学園長はに言葉を濁されてしまいましたし、ネギ君が京都での一件について出した報告書を拝見させてもらったところ、“アーウェルンクス”と互角以上に戦ったらしいじゃないですか。
いやはや、まだ10歳だというのに末恐ろしいですね。
しかし、これなら我が友からの10年来の頼み…………いえ、約束を果たすことが出来そうです。
「こんにちは、ネギ君」
「……………………」
…………え、反応ナシ?
「…………こ、こんにちは、ネギ君」
「……………………」
「……あの~、もしもし?」
「……………………」
あ、あれ? 完璧に無視されてしまうんですけど?
せっかく準決勝が始まるまでの10分間の休憩で、ナギと戦えることを伝えようと思ったのに…………あ、もしかして?
『…………ネ、ネギ君? 聞こえてますか?』
『はい、何でしょうか。アルビレオ・イマさん?』
…………なるほど。念話でなら反応アリですか。
少しばかりネギ君と話しをしてみようと思ったのに無視されるというのは予想外でしたが、考えてみれば変装のためにこの格好をしているんだろうから、“ネギ君”と呼びかけても反応してくれないのは仕方がないですかね。
…………念話で反応してくれればいいんじゃないかとは思ってしまいますが。
『ああ、私のことはクウネル・サンダースとお呼びください、ネギ君』
『…………はあ、それで何の御用でしょうか、アルビレオ・イマさん?』
『いえ、ですからネギ君。私のことはクウネル・サンダースと『何の御用でしょうか、アルビレオ・イマさん?』………………私のことはクウネル・サンダースとお呼びください、ユニコーンガンダム君』
『はい、わかりました。クウネル・サンダースさん』
…………“ネギ君”じゃ駄目ですか。
念話なのに徹底しますねぇ。
『ところでもうすぐクウネルさんのの試合が始まるみたいですけど?』
『…………そうですね。それでは話はまた後ほどということで…………』
誰もいない控え室なら“ネギ君”として話してくれると思ったのですが、どうやらこの大会中はユニコーンガンダムで通すつもりのようですね。
まあ、私もクウネル・サンダースという偽名を使ってますので何も言えませんけど。
やれやれ。少しネギ君と話してみたかったのに、変なところで時間を無駄にしてしまいました。変装しているのにネギ君と呼びかけたので、意固地になってしまったのですかね?
ま、ネギ君は私のアーティファクトのことを知っているみたいですので、別にわざわざナギと戦えることを伝えなくても構いませんか。
『あ、それと派手な魔法は使わないでくださいね。
どうやら何か企んでいる生徒がいるらしいんですよ』
『…………わかりました』
…………自分勝手なところはナギに似てますね。
それともアリカ様似でしょうか? あの方もマイペースなところをお持ちのようでしたし…………。
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『クウネル・サンダース選手対…………長瀬楓選手ーーー!
一回戦では中村達也選手を一撃で沈め、二回戦では前年度ウルティマホラチャンピオンの古菲選手をカウント負けに追い込んだ長瀬選手。しかし、その実力はまだ全てわかってはおりません!
片や底知れぬ強さを見せ付けるクウネル選手。こちらもまだ実力の程はわかっておりません。
両者いったいどういう試合を行なうのでしょうか!?』
今年は本当に豊作ですね。
このカエデさんもかなりの実力を持っているのが舞台で対峙しただけでわかります。
「クウネル殿、貴殿の目的はエヴァ殿から聞いているでござる。しかし拙者、長瀬楓。本気で当たらせてもらうでござる。
むしろネギ坊主からは「何やっても死なないから、殺す気でいってもOKデスヨ」と言われているので、胸を借りるつもりの本気の全力の遠慮無しで挑まさせていただくでござる」
…………いや、確かにこの身体は本体ではありませんし、元からカエデさんに負けるつもりは毛頭ありませんでしたが、ネギ君の言うことは随分と過激ではありませんか?
もしかして私ってネギ君に嫌われてますかね? さっきも無視されましたし…………。
“紅き翼”のことをよく調べていたらしいですが、ネギ君自身には別に何かしたというわけじゃないんですけどねぇ。
キティに何か吹き込まれたのでしょうか?
しかしキティがそんなことをする心当たりなんて………………結構ありますね。いや、これは失敗失敗。
…………まあ、でも問題ないでしょう。
私としてもネギ君の従者の力を見てみたいと思っていましたしね。従者のカエデさんの力がわかれば、主人のネギ君がどれだけ育っているかもわかるというものです。
「…………いいでしょう。お相手致しますよ」
『それでは準決勝第十三試合…………Fight!!!』
審判の開始の合図が響きましたけど、カエデさんは動きませんね。ジワリジワリと慎重に距離を詰めてきます。
小太郎君のように特攻してくることはさすがにありませんか。
「ふっ…………!」
かと思えば、瞬動でいきなり接近戦ですか。しかも一瞬で影分身を3体繰り出して
これはビックリ。瞬動に入るまでの気配がまったく感じれませんでした。
『おおーっと! 長瀬選手、一瞬で間合いを詰めたと思ったら、そのまま4人に分裂してクウネル選手に襲い掛かる! 二回戦で犬上選手も使っていた分身攻撃!
いつから麻帆良はビックリ人間大集合の街になったんだーーーっ!』
元からですよ、審判のお嬢さん。
『しかし、クウネル選手も落ち着いて対応していますね』
『はい、素晴らしい身のこなしですね』
これほどの密度の影分身を見るのは20年ぶりですし、カエデさんのその長い手足を活かしての体術もなかなかです。
主人であるネギ君はカエデさん以上なのでしょうかね。ま、それは決勝を楽しみにすることにしましょう。
…………私が戦うわけではないのがとても残念ですが。
それなら今の心躍るこの戦いを楽しまさせて頂きます。
確かにカエデさんは年齢にそぐわない力をお持ちですが、この私もナギ達と一緒に戦場を駆け回った身です。
若い者達にはまだまだ負けられないところを見せてあげましょう。
「むっ!? 消え…………?」
ちょっと卑怯ですが、転移で距離をとらせていただきますよ。そして重力魔法で牽制を…………。
フフフ、楽しくなってきました。
『クウネル選手が瞬間移動!?
しかも何だか黒い球を生み出して長瀬選手に攻撃をしています! あれはいったい何なんでしょうか!?』
ネギ君からは魔法をあまり使わないようにと言われましたが、カメラとかは使えないようなので別に問題ないでしょう。
カエデさんが放ってきた気弾を魔法障壁で弾きながら、こちらも続けて重力魔法で攻撃………………お、虚空瞬動ですか? その年齢でいよいよ素晴らしい。
さて、それではドンドンいきますよ。
「くっ! …………『契約執行』!」
む、カエデさんから魔力の気配がしたと思えば、いつの間にかカエデさんが両手に持っていた棒から光の剣が伸びていました。
アレは……ネギ君が使っている“ビームサーベル”とやらですね。ネギ君が麻帆良に来たばかりの頃に行なわれた魔法先生との模擬戦で見たことがあります。
『契約執行』でネギ君から魔力を供給してもらったのでしょう。カエデさんのようにネギ君の従者ならば、魔力を供給してもらうことによってネギ君と同じようにビームサーベルが使えるみたいですね。
しかも咸卦法が使えなければ気と魔力は反発するものですが、供給された魔力は全てビームサーベルに使われているみたいなので平気のようです。随分と器用ですねぇ。
しかし、ビームサーベルでは接近しない限り、私に攻撃することは出来ないですよ。
対する私は今までのように重力魔法を放っていれば近寄らせないことが出来ま「ハッ!」…………って、アレ?
ビームサーベルで魔法が斬られた?
今のはいったい…………?
「まさかこんなアッサリとコレを使う羽目になるとは…………。
もう少し拙者だけでも戦えると思ったのでござるがなぁ」
「いえいえ。カエデさんも良い動きをしてますよ。逃げに徹されたら苦労しそうです。
…………ところで、手に持たれているのは何なのでしょうか?ネギ君のビームサーベルのように見えますが、それでも重力魔法を斬るなんてことは出来なかったはずですが…………」
「よく知っているでござるな。もちろんその通りでなのでござる。術式研究の結果、ビームサーベルに『完全魔法無効化能力』を付与することに成功したらしいでござるよ。
言ってしまえばアスナ殿の“破魔の剣”の劣化版でござるな」
なるほどなるほど、そういうことですか。
ネギ君が『完全魔法無効化能力』を持っていたことは学園長から聞いていましたが、まさかそこまで扱いこなせるようになっているとは思っていませんでしたよ。
そういえば告白阻止のための対策を考えて、ソレを実行可能にしたのもネギ君の研究があってのことと聞きました。
どうやらネギ君はナギのように戦闘だけしか出来ないのではなく、そういう魔法研究の適正もあるようですね。
アスナさんの“破魔の剣”は見たことはないですが、おそらくカエデさんの言い方からしてアレと同じく『完全魔法無効化』の効果を持つ剣ということなんでしょう。
彼女の能力から考えて、そういうアーティファクトが発現するのは当然ですか…………。
しかし参りましたね。
となると、さきほど魔法を斬られてしまったように、魔法はもう効かないと考えた方が良さそうです。
「いや、それどころか今のクウネル殿の身体も消せるらしいでござるよ。
その身体は魔力で作った分身なのでござろう?」
…………え? ちょっとばかりソレは洒落にならないんですけど。
もしかして、その剣に当たったら一撃死ですか?
「さすがに死にはしないと思うでござるが、それでもその身体を構成している魔力をゴッソリと削ることは出来るらしいでござるな。
クウネル殿が派手に魔法を使ったりしたら拙者もコレを使っていいと言われていたので、遠慮ナシに使わさせていただくでござるよ」
…………いやはや、少しばかりネギ君の従者の力を見ようと思っただけなのに、少し困ったことになってしまいましたね。
まさかネギ君がそんなものを用意していたとは…………。
カエデさんに負けるとは思ってはいませんが、まさか祭りで本気を出すわけにもいきませんので、一撃も食らわずにカエデさんを倒すのは少し難しそうです。
倒せないこともないですが、決勝で戦う力が残るかわかりません。本体でないのが今になって響くとは…………。
参りましたね。
我が友の頼みを叶えるために、何としても決勝に勝ち進まなければいけません。
…………ここは一つ、私のアーティファクトを試してみることにしましょうか。
━━━━━ ネギ・スプリングフィールド ━━━━━
うーむむむ…………。
楓さんに渡したビームサーベル(完全魔法無効化ver)があったら十分に勝機があると思ったのですが、どうやらそんな簡単にはいかないようですね。
ちなみにユニコーンガンダムの背中についているビームサーベルを貸しました。
しかしアルさんのアーティファクト。“イノチノシヘン”相手ではあのビームサーベルは効果がないようです。
詳しく言いますと、“イノチノシヘン”の能力である、特定人物の身体能力と外見的特長の再生を行なっているときは効かないみたいです。
楓さんも何とかガトウさんに何とか一撃入れましたが、それでアルさんに戻ったり身体が分解されたりすることはありませんでした。
分身体のアルさんなら致命傷を与えることが出来たはずですが、やはりアーティファクトともなると勝手が違うようですね。
思い返せばあのビームサーベルを改造したときの実験の過程で菲さんの“神珍鉄自在棍”と打ち合ったことがあるのですが、普通に打ち合えてましたね。
きっとそれと同じことなんでしょう。
アスナさんの“破魔の剣”とか、それこそ『リライト』でしたらキャンセル出来るのかもしれませんが、あのビームサーベル程度では無理のようです。
楓さんも言った通り、アレはあくまで“破魔の剣”の劣化版ぐらいの性能しか持ち合わせていないので出来ないようですね。
…………“破魔の剣”も無理かな?
…………お、今度は詠春さんに変化した。
ちぇっ、楓さんがアルさんに勝ったら、それはそれで面白い展開になると思ったのに…………。
せっかくのお祭りです。楽しまなければ損というものですよ、アッハッハ。
しかし、楓さんも本当に強くなりましたねぇ。
ガトウさんや全盛期の詠春さん相手でも十分に戦えてますよ。やはりウチのパーティーでは楓さんと刹那さんがツートップですね。
ま、さすがに勝つまでは無理でしょうが、これも楓さんにとっては良い経験になるでしょう。
あー…………徐々に押されてきましたねぇ。
楓さんにはアーティファクトを使わせないようにも助言しておきましたが、さすがにアルさん相手なら仕方がないです。
お、やはり最後は駄目親父ですか。原作と一緒ですね。
あーあ、原作と一緒に最後には楓さんを舞台に叩きつけて………………よし、駄目親父殺す。
原作見たときから思っていましたが、アレは14歳の女の子相手にはちょっとやりすぎじゃありませんかね?
真面目な話、死んでもおかしくない攻撃ですよ。楓さんが舞台への激突の瞬間に技を外したから無事だったものの…………。
『おおーーーっ、長瀬選手ギブアップ! しかし無理もありません! ボロボロだ!
ここでクウネル選手の決勝進出が決定ーーーーーっ!!!』
むぅ、やはり勝てませんでしたか。アーティファクトが反則ですよねー。
でもよくよく見てみれば、アルさんのローブの裾部分が少し斬れてます。
どうやらビームサーベルで一撃入れることは出来てたようですね。
楓さんも何だか晴れ晴れとした顔をしてますし、思った通り楓さんにとっては良い経験になったのでしょう。
よし、それに免じて半殺しですましてあげ………………む、待てよ。
今のは“イノチノシヘン”でも“全人格の完全再生”の方の能力じゃないから、駄目親父じゃなくてアルさんがやったことなのか。
なら駄目親父は許してあげましょう。
━━━━━ 後書き ━━━━━
ちなみにタカミチが田中さん100体を殲滅したのは幽々白書の“幽助&桑原 VS 陰魔鬼”を想像していただければわかりやすいと思います。
数撃ちゃ当たるわ。
さすがにあの下水道通路の中で『千条閃鏃無音拳』とかやられたら、いくらたつみーでも逃げることは出来ませんよね。
ネギの“紅き翼”殺すリスト上位3名は、ナギ、ラカン、アルです。
そして次話はいよいよ決勝です。