━━━━━ 佐倉愛衣 ━━━━━
「いや~、あの武道会凄かったね。あまりの人気振りに観戦チケットがプラチナチケットになったみたいじゃん。超りんの誘いで司会兼審判やって良かったよ。
え? 超りんが何であの大会開いたかって?
…………いや、別に聞いてないけど、やっぱり宣伝とかそういう目的だったんじゃないの?
超包子が出してた出店とかも繁盛してたみたいだったし…………」
…………超さんの大会で司会兼審判をしていたネギ先生のクラスの朝倉さん。
どうやら彼女は何も知らないみたいですね。
超さんが魔法先生から逃げ切ったらしいので、少しでも情報が欲しかったのですが…………。
「お、くーちゃんに楓も凄かったよ~…………って、あれ? くーちゃんどうしたの?」
「……………………」
「何でもないでござるよ。大会が終わって気が抜けたのでござろう。
(…………恥ずかしさのあまりに上の空になるぐらいだったら、ネギ坊主に『咸卦治癒』を頼まなければよかったのに…………)」
「(おい、ネギ先生は古にいったい何やったんだよ?)」
「(ネギ坊主……いや、大人verのネギ殿が、古を膝の上に載せて後ろから抱きしめたそうでござるよ。それに加えて真名からイイのを食らった脇腹の治療のために、服の中に手を入れられて直接患部をそっと優しく撫でられたとか…………)」
「(…………それなんてエロゲ?)」
「(しかもトイレの個室で2人っきり、という背徳空間ででござる)」
「2人して何コソコソしてんの、千雨ちゃんに楓?
ま、いいや。私はこれから武道会で優勝したユニコーンガンダムってのが、いったいどこで作られたのか調査しなきゃいけないからね。
コーヒー奢ってくれてアリガト。じゃあねん!」
学園祭2日目、午後1:30。告白阻止の当番が終わったので、少し遅いですけどカフェで昼食をとることになりました。でも他のお客が少ないのでちょうど良かったかもしれないです。
入った店には偶然にもネギ先生の従者の方たちがいらっしゃいました。まほら武道会も終わったので昼食をとりに来ていたみたいで、せっかくなので同席です。
ネギ先生は一度魔力溜まりを回って、結界や要石などの確認をするらしいので今はいませんけどね。
ううぅ…………告白阻止の警備は暇でした。それこそネットに上がっていたまほら武道会の映像を見るぐらいしかやることありませんでしたよ。
だって、ネギ先生の張った結界のおかげで告白阻止ポイントには誰も入ってきませんでしたし、間違って入ってくる人を見張るシステムも完備されていたので動き回る必要がなかったんですもん。
ちなみにそのシステムは、立入許可魔法符を持ってない人が入ってきたら警報が鳴ったり、結界内の様子をまるでミニチュアのジオラマのように立体映像で表示させることが出来たりするんですよ。ちなみに作ったのは全部ネギ先生です。
最初のうちはお姉さまが張り切っていたので実際に歩き回って警備していましたが、人っ子一人いない空間を歩き回っているうちにいつの間にか元気を失くしていきました。
あとは立体映像で監視しながら本を読んだり、まほら武道会の映像を見たりしての時間潰しです。
もちろん忙しいよりは良いんですが
「せっかくの学園祭なのに、私達はいったい何をやっているんだろう?」
という疑問が湧いて出てくるのは止められませんでした。
「いいなー、神楽坂さん達。
好きな人と学祭デートかぁ。憧れちゃうなー」
「何を言っているのですか、メイ。私達にはまだそういうことは早いです」
この後、神楽坂さん達はネギ先生と一緒に学園祭を回るようです。
ネギ先生はあの告白阻止警備システムを作ったので警備当番は免除されてますし、まほら武道会で超さんの企てを阻止するなどの大活躍ですから、そのぐらい息抜きをするのは当然ですよね。
…………お姉さまなら
「教師と生徒の関係でそんな不純異性交遊はいけませんっ!」
なんて言うと思ったけど、どうやらそんな気はないようです。
そもそもネギ先生達の関係は見ていて微笑ましい感じですしね。フフフ…………。
ネギ先生が麻帆良に来てから、お姉さまは少し変わったと思います。
昔のお姉さまなら“崇高な使命があるから、恋愛などの些事にかまけている暇はありません!”って感じだったんですけど、ネギ先生を見てたら
「“偉大な魔法使い”になるためには魔法の力を磨くだけでなく、人としての成熟も必要」
という考えに至ったようです。
実際、ネギ先生見てたら私もそう思います。
…………何というか、ネギ先生の力も心意気も“偉大な魔法使い”に値する立派なものですが、それでもやっぱりどこか違うと思うんですよね。
凄いとは思いますけど、ああなりたいと思わないというか憧れることが出来ないというか…………。
いや、ネギ先生は凄いんですよ。
私やお姉さまも魔法についてアドバイスをもらったりしたことありますし、そもそも今回の告白阻止警備システムの構築などの実績もたくさん持ってます。
…………それでも何というか…………ねぇ?
「お待たせしました。結界の方は大丈夫でしたから、これからも遊びに行けますよ。
6時からの“でこぴんロケット”のライブに誘われている以外は予定らしい予定はありませんので、どこか行きたいところがあったら言ってください」
あ、お帰りなさい、ネギ先生。
いいなー、神楽坂さん達。ネギ先生と一緒にいれて。
ネギ先生みたいになりたいとは思いませんけど、神楽坂さん達みたいにネギ先生からああいう風に想われるのはうらやましいんですよね。
あ、別にネギ先生のことが好きってわけじゃないですよ。
でも、ああいうプラトニックな関係は憧れちゃいます。
まあ、たくさんの女の子と付き合っているのはどうかと思いますけど、ネギ先生の幼さだとそれ以前の問題ですからね。
二股とか三股とかじゃなくて、幼稚園ぐらいの男の子が「皆大好き!」って無邪気に言っている感じです。お姉さまも言ってましたけど、別に嫌悪感はないんですよね。
むしろ微笑ましいです。
それに…………どちらかというと、表現的には“二股をかけている”じゃなくて“二股に裂かれている”って感じなんですよねぇ。
たまに学生生協で着せ替え人形にされるネギ先生を見かけちゃうとそう思います。
………………私達も参加したことありますけどね。
ネギ先生のどこか諦めた顔が可愛かったです。
「その前に少し失礼。……ネギ先生、超鈴音のことについて何かわかりましたか?」
「ああ、グッドマンさん。お疲れ様です。
動ける魔法先生総出で探しているみたいですが、まだ見つかってないみたいですね。僕も手伝おうかと申し出たのですが、学園祭を楽しむようにと言われまして。
とりあえずお料理研究会とか量子力学研究会とかの、超さんが行きそうなところを教えておきましたけど…………」
「それは当然ですわ、ネギ先生。
何でもかんでもネギ先生に頼っていたら私達のためになりませんもの」
「…………それはわかるんですけどねぇ。でもさっさと超さんから詳しい事情を聞きたいとは思うんですよ。このタイムマシンのことを含めて…………。
ああ、魔法先生から超さんが逃げたときって、もしかしたらタイムマシンを使って過去か未来に行ったと思うんですよ。ですから、逃がしてしまった場所に誰か張り込ませておくか、最低でも監視カメラを仕掛けておくことは言っておきました」
タイムマシン、ですか…………。
本当なんでしょうかね?
あ、ネギ先生が嘘をついているってわけじゃないですよ。ただ本当にタイムマシンなんてものが存在するのが信じられないだけで。
まあ、この学園祭期間しか使えなかったり、消費魔力がとんでもないような欠点があるみたいですけど…………。
それにしても、超さんは何で“魔法をバラす”なんてことをしようとするのでしょうか?
ガンドルフィーニ先生の話だと、“強力な力を持つ人間が存在することを秘密にしておくことは、人間社会にとって危険ではないか?”と言っていたらしいですが…………。
それに“魔法をバラす”なんて出来るのでしょうか?
私達魔法使いには魔法バレへの対応策は幾つもありますし、専門の対策機関だってあります。例えば
「魔法使いが存在する!」
なんて、テレビのニュース番組で叫んだとしても、事態の収拾は可能なはずです。
そもそもイタズラと思われて終了でしょうね。魔法を実際にテレビで使われたとしても、トリックか何かと思われるだけでしょう。それなのにどうやって魔法を世界中の人達に信じさせることが出来るのでしょうか?
「ネギ先生はそこら辺のことわかりますか?」
「…………あくまで予想ですけど、方法としては“世界樹の魔力”を使うんじゃないでしょうか。
それこそ世界樹の魔力……だけじゃ足りないから、儀式魔法で他の麻帆良と同等の聖地と共振・増幅させれば、世界中の人間全てに魔法を信じさせるような『強制認識魔法』をかけることだって可能でしょう。
というか、こんなわざわざ世界樹の魔力が溢れ出す学園祭にあわせてこんなことを企むとしたら、それ以外には考えられないですよ。
だって今は告白阻止とかのために警備が増強されているんですよ。そんな時期にわざわざ実行するということは、この時期じゃないと出来ない理由があるということなんでしょう」
「…………そう言われればそうですね」
「それと何故“魔法をバラす”なんてことをしようとするのかは…………未来人が過去に来てやる事といったら“歴史の改変”がお約束じゃないでしょうか」
…………未来人、ですかぁ。
でも確かに絡繰さんや武道会に出てた田中さんみたいなロボットは、現代の科学力では作れませんよねぇ。
「“歴史の改変”…………ですか。
しかし、何故“歴史の改変”なんかしようと考えて…………いや、そもそも“魔法をバラす”ということで歴史は変わるのですか?」
「桜咲さん。今まで何百年と秘密にしてきたものを世界にバラすとなると、歴史の一つや二つは変わってもおかしくありませんよ」
「メイの言う通りです! 歴史的な大事件…………ヘタしたら魔女狩りの再来ですわ!
超鈴音は何を考えているのかしら!?」
「落ち着いてください、グッドマンさん。…………魔法をバラすことにもメリットはあります。それは魔法の力をおおっぴらに使えるようになることですね。
隠匿のために使っている労力を人助けのための力に回せば、もっと多くの人を助けることが出来るようになります。それに魔法使い自体の数も増えるでしょうね。簡単な治癒魔法を病院関係者に教えるだけでも、怪我で亡くなる人は少なくなるかもしれません。
…………しかし魔法を少し習っただけの俄か魔法使いによる、魔法を使った犯罪も激発するでしょうね」
「それでは混乱の方が大きすぎることになりませんか?
魔法で助けることが出来る人が増えるより、混乱で犠牲になる人の方が多くなってしまう気がしますし、ネギ先生の言った通り魔法による犯罪が増えることになりそうですよ。
それに超さんがそのようなことを考えていないとは思えませんが…………」
「えー、やったら“地球の滅亡を回避するため!”とかやないの」
「え!? それじゃ大変じゃないの!
超さん捕まえちゃっていいの!?」
地球の滅亡!?
うわー、ますます映画みたいな話になってきちゃいました。
でも確かにわざわざ未来から来るとなると、そういう事情なんでしょうか?
「まあ、地球滅亡は言い過ぎかもしれませんが、超さんは“魔法を秘密にし続ける”よりも、“魔法をバラす”方がより良い未来になると考えているのではないでしょうか。
…………いや、超さんの性格なら違うか。世界が多少悪かったとしても、彼女なら自分の力でより良い世界に変えていこうとするでしょう」
「それはそうアルね。超の性格ならきっとそうするアル。
でもそれをしないで過去に来たってことは、自分の力では出来なかったってことじゃないカ」
「…………より良い世界にするために来たんじゃなく、よりマシな世界にするために来たってことかしら?
だったら地球の滅亡は言い過ぎかもしれないけど、何らかの悲劇が未来で起こるってことになるかもしれないわね」
…………何だかドンドン難しい話になってきちゃいました。
超さんにも何か事情があるということみたいです。確かに意味もなく、魔法をバラすことなんてしないですよね。
そういう事情あったとしたら、超さんを捕まえていいんでしょうか?
それで例えば地球の滅亡なんてことになったらどうすれば…………。
━━━━━ エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル ━━━━━
「…………で、アルの奴はどうしたんだ?」
「僕に何か用があるみたいでしたけど、今はせっかくの学園祭ですからね。
ですので学園祭後に会うことになりました。図書館島の地下にお住まいになっているようですよ」
アハハハハ! アルの奴め、ザマーミロ!
ネギがアルをボコボコにするのを見てたら笑いが止まらなかったぞ。しかも情けない悲鳴も出してたしなぁ! オマケに終わった後は随分とションボリしてたけど、あんなアルは初めて見れたよ!
いやー、今日の酒はなんだか美味しいなぁ。ハッハッハ。
それにしてもアルはやっぱりネギのことがわかっていなかったようだな。
基本的にネギは“目には目を、歯には歯を”だ。
だからネギはあの反則のような分身体で出場したアル相手だからこそ、同じく反則ではないぐらいの戦い方をしたのだろう。せめてあの分身体で戦わなければマトモに相手をしてくれたのだろうに。
ナギの遺言? そんなもの気にするわけなかろう。
いくら理由があったとはいえ、真面目に出場している人間が他にいるにも関わらず、自分のために反則を使って勝ち上がろうなんて奴にネギが手加減するわけがない。
つまりアイツは出場した瞬間にネギにボコられることが確定していたわけだよ。
…………それにしてもアルの奴が図書館島の住んでいたとはな。
私がナギに封印されて中学生を繰り返していたということも知ってて放っておいたのだろう、あの古本めが。
ネギがアルに会いに行くときは私もついていって、アルの奴とたっぷりと話し合うことにしよう。
「それと超鈴音はどうするのだ?
お前のことだからさっさと捕まえて、残りの学園祭を楽しむと思っていたのだが…………」
「せっかく他の魔法先生方がやってくれるというので、今回は皆さんにお任せしようかと。もちろん取り返しのつかないことになりそうだったら僕も出ますけどね。
何というか…………知らなかったとはいえ、僕って麻帆良に来てからイロイロと滅茶苦茶やってしまったじゃないですか。ですので少しは自重しようと思います。麻帆良の魔法先生方にも面子があるでしょうからね。
…………そういえば、茶々丸さんはもう超さんの方にいったのですかね? 茶道部の野点に誘われていたのですが、大会が終わってすぐに中止の連絡がありまして…………」
ネギが遂に正しい意味で他人を慮れるようになったのか。
よかった。本当によかったよ…………。
これもタカミチ達がその身を犠牲にしてネギに常識を教えてくれたおかげだな。アイツラには感謝しなければならないなぁ。
…………考えてみれば私も丸くなったものだな。アイツラに感謝しようと思うなんて。
でも、ネギ見てたら“自分はああなるまい!”って思ってしまうんだよなぁ…………。
悪の魔法使いである私だが、
「お前はネギより酷い」
とか言われてしまったら、さすがに泣いてしまう自信がある。
ああ、それと茶々丸がいなくなったのは、タカミチが無双をやったせいらしいぞ。
結局、タカミチは武道会が行なわれている裏で、武道会にも出てきた田中とかいうロボットを500体ほど壊してきたらしい。
いくら超鈴音でも500体ものロボットを用意するのは手間だったろうからな。本番であろう明日の前に500体も戦力を失ってしまい、プランの練り直しでもしているのだろうよ。
それと同じくこれ以上の戦力低下は避けたいがために、茶々丸とネギの接触を断たせたのだろう。
だって超鈴音はもう宣戦布告同然のことしてるから、ネギだってそれに対応して有無を言わずに茶々丸を拘束してもおかしくないからなぁ。
…………いや、絶対やるだろ。
さっき終わった学園祭2日目終了のクラス打ち上げにも超鈴音、茶々丸、ハカセ、龍宮の4人は参加しなかったのもそれのせいだろう。
というか何でアイツラはあんなに元気なんだろうか。2日連続で夜中まで騒いでいるなんて…………。
まあ、さすがに朝にはもう力尽きていたようだがな。私達は今みたいに“別荘”で休めば問題ないが、あれが若さか…………。
バンドやった奴らもいるし、青春を謳歌していて何よりだ。
ネギ達と一緒に見に行ったが、たまにはああいうのもいいものだな。
和泉がライブの前に物凄く緊張していたのはマズイと思ったが、ネギを膝の上に載せて頭撫でたり頬をいじったり抱き締めてたりしたら、いつの間にか落ち着いたらしい。
…………別にネギは『咸卦治癒』は使っていなかったらしいが、一応気持ちはわかる気がする。
「まったくもって難しい…………めんどくさい話になってきましたねぇ。素直に学園祭を楽しめれれば良かったのですが…………。
まぁ、この“航時機”は興味深いものですけどね」
「フム、さすがの私もタイムマシンなんぞ見るのは初めてだから、やはり興味はあるな」
「…………よかったら見てみますか?」
「いいのか? それも超鈴音に繋がる証拠品なのだろう?」
「分解したり、壊したりしなければ大丈夫ですよ。そういうのは学園祭の後でしましょう。
今日の学園祭が開始されるときには返してくださいね」
「ん、わかった。どうせ手にとって軽く見るつもりのだけだったからな…………まだな」
「それと調べるのは別荘の外に出てからの方がいいかもしれません。
もし現実とは違う時間の流れの“異界”である別荘内で誤動作した場合、どうなるかわかりませんからね」
「それもそうだな」
それなら丁度いいな。
ネギは別荘に入る前にもう一度告白阻止ポイントの要石のチェックに行ったから、私達より別荘に入るのは現実時間で30分ぐらい遅かった。だから私達が別荘を出れる頃になってもネギは出ることが出来ない。
それなら外に出て、タイムマシンを少し弄ってれば適当な時間潰しになるだろう。
「それじゃあこの式神符も持っててください。これ1枚に僕の全魔力量の半分ぐらいを篭めてます。
もし“航時機”が誤動作してしまったときは、式神に“航時機”を使わせて元の時間に戻ってください。
ああ、式神でも“航時機”を使うことが出来るのは確認済みですよ」
全部で5枚か。なら10回以上は跳べるな。
それなら何かあっても大丈夫だろう。
「というか、跳んでみちゃ駄目か?」
「うーん、不安ですから出来れば僕と一緒の方がいいんですけど…………。
そのタイムマシンは超さんから渡されたものですからね。わざわざ僕に渡されたということは、何らかの罠が仕掛けられているかもしれません。
…………その式神符は残り20枚ぐらい残ってますから、使われても別に構いませんよ」
「…………20枚? よくそんなに作ったな。お前の全魔力量の半分なんだろう?」
「『咸卦治癒』さえ使った状態で休めば、一晩で8割以上の魔力が回復しますからね。逆に使わなければもったいないんですよ。
あ、『千の雷』クラスの魔力量の式神符なら80枚ぐらいありますから、これも持ってきますか?」
さすがにそこまではいらんわ。
ちびネギハーレムには心惹かれるものがあるが、それをしたらちびネギ達と戯れている間にネギ本人をアスナ達にとられてしまうしな。
そして相変わらず『咸卦治癒』が便利過ぎる。ネギの8割っていったら、私の全魔力量の約3倍だぞ。それを一晩で回復出来るのは明らかに反則過ぎる。
…………というか、この式神符1枚で私の全魔力量の2倍なのか。このバグめが。
まあ、『咸卦治癒』があればこそ、教師の仕事も魔法先生としての仕事も、自主鍛錬もアスナ達の修行の面倒などの全てをこなすことが出来るのだろうがなぁ。
「…………しかし、お前にしては柄にもなく不安そうだな。
超鈴音のことがそんなに気になるのか?」
「ん? …………当たらずも遠からずというか…………。
それに超さんが敵だとしたら、いったいどこまでやっていいのかがわからないのが不安ですね。正直言いまして、常識を知ってしまったから逆に最近“加減具合”というのがわからなくなってきていて…………」
「と、とりあえず殺すなよ…………?」
「そのぐらいはわかってますよ。
この前に来たヴィルさんみたいな人なら別に気にならないんですが、さすがに自分の生徒相手だと後味悪いですからねぇ…………」
まるで“潰さないように蟻を踏むのは力の加減が難しいんだ”とでも言いたいような顔はヤメロ。
洒落にならんから。
「私は約定で助けることは出来んが、何かあるのならアスナ達にも助力を頼め。
お前ならちゃんとわかってはいるだろうがな」
別に止めを刺すときだけに私達の力を借りるだけじゃなく、普段から私達を頼りにして欲しいものだな。
でも、結局ネギは1人でやりたいのだろうな。ネギは私達が危険な目に遭い、傷つくことに耐えられない………………わけでもないか。傷ついてもいいけど、自分の目の届かない場所には行かないで欲しい、って感じだろうか?
それ以前にネギ1人で本当に大抵のことはこなせてしまうことで話を終わらせてしまうんだよなぁ…………。
やっぱりネギの一番厄介なところは戦闘力でもなく魔力量でもなく、この性格というか考え方だ。
「僕ってRPGゲームでは、その町で手に入る最強装備を手に入れてから次の町に行くタイプなんですよねぇ」
と以前言っていたが、むしろ“最初の町の周りでLV99まで上げてから旅に出発しそう”と思ってしまうのは私だけだろうか?
ネギならきっと“泥にまみれるのが嫌だから、泥地を炎で乾かすか氷で凍らしてから前に進む”ぞ。
“泥にまみれるのを恐れるな”と言いたいが、ネギはそれ以上に前準備をシッカリし過ぎるから何も言えんわ。
少しでいいから弱いところも見せてくれ。頼むから。
大切に思ってくれているのは嬉しいが、過保護過ぎるのはあまり好かんのだ。
━━━━━ 後書き ━━━━━
ちゃんとエヴァのことはたよりにしてますよー。
いやぁ、エヴァはじつにたよりになるなー。
…………別に会話でオカシイ所なんかありませんでしたよね?
そして超のネギの魔力消費を激しくするという罠が全然役に立っていませんでした。
別に超がああすることを予想していたわけではなく、本当に単純に魔力がもったいないから式神符を作っていただけです。
あと嘴広鴻はRPGはさっさと進めていくタイプです。