━━━━━ 宮崎のどか ━━━━━
「いやー、それにしてもアスナもでかくなったな。
ガトウと一緒に旅してたころは今のネギよりも小さかったのに、もうこんなに大き「フシャァアアアーーーーッ!!!」って何だあっ!? アスナの頭撫でようとしただけじゃねーか!?」
「あらあら…………ごめんね、お義父さん。
ほーら大丈夫よ。私が好きなのはネギなんだから、そんなにお義父さんを威嚇しないの」
「…………何か最近ネギ君の性格が変わってきたなぁ」
「そうですね、木乃香お嬢様。
夜も一人で寝るようになっちゃいましたけど、私達に別の男性が近づくと嫌な顔されるんですよね」
そうなんだよね。だから最近小太郎君とは一緒に修行をしていないんだ。
むしろ小太郎君の方がネギ先生のプレッシャーから逃げるために、私達を避けるようになったというか…………。
ネギ先生ってば…………嫉妬してくれているのかな? ウフフフフ。
「そう思うんだったら、ネギ先生に「私のこと好き?」と聞いて「好きです」と強制的に言わさせるのを止めろ。しかも最低一人一日一回、ちゃんと目を合わせた状態を強制させてなんて…………。
毎回毎回、顔真っ赤なネギ先生がもういっぱいいっぱいな状態で、お前達と目を合わせて「好きです」って言うの見てたら可哀想になってくる。10歳児相手に羞恥プレイを強制すんなよ」
「拙者はしていないでござるよ」
「わ、私もそんなことしていない…………というか出来ないアルよ。そんなこと」
「ム、そう言われればちょっとやり過ぎかもしれんな。
だが反省もしていないし後悔もしていない」
「でもネギ先生は慣れてくれないですよね。むしろ私達が「好きです」とネギ先生に言うだけで、顔が赤くなってしまうようになってしまいましたし。
学園祭前までは私達が「好きです」と言ったとしても、平然として「ありがとうございます」とか「僕も好きです」って返してくれていたのですが…………」
「…………オイオイ、嬢ちゃん達…………」
ご、ごめんなさい。確かに最近浮かれ過ぎてました。
ネギ先生に「好き」って言ってもらえるのが嬉しいし、何よりネギ先生に「好き」って言えるのが嬉しくて…………。
でも学園祭が終わってもうすぐ一週間経つんだから、そろそろ学園祭気分から切り換えなきゃ駄目ですね。
それにもうすぐ期末テストもあることですし。
次の期末テストでも良い点数取れば、ネギ先生喜んでくれるかなぁ。
やっぱりユエやアスナさん達が勉強を頑張り始めたのが良かったのかな。
こう言っては何だけど、他の皆も“バカレンジャーには負けたくない!”って気持ちが生まれたみたいで勉強を頑張るようになったから、それで全員の成績が底上げされるようになったし…………。
「はいはい、大丈夫大丈夫。
ネギも教師モードだったら平気なのにねぇ」
「…………何だかネギのことが心配になってきた。
おい、ネギ。本気でこの嬢ちゃん達との将来はどうするつもりなんだよ?」
「マーーーオッ!!!」
「威嚇してくんな!」
「マーー「ネギ君、ウチらのことは将来的にどう考えてんの?」…………い、いや……色々と考えてはいるんですけどね」
「…………なぁ、エヴァンジェリン。俺の扱い軽すぎね?」
「お前、自分が何かネギに尊敬されるようなことしたと思っているのか?
魔法学校中退の“千の呪文の男”(笑)よ」
「…………ああ、そういえば実のところお義父さまって、魔法は10種類ぐらいしか使えないんでしたっけ?」
「え? そう言われればそうなんだけど……………………やべぇ。
別に今まで隠さずに言い放っていたことでも、息子の恋人に改めてそう言われると存外にダメージ来るわ」
「いや…………まだ恋人までは進んでいないと思うんですけど…………」
ネギ先生は東洋呪術も含めればきっと千種類ぐらい使えそうだなぁ。
そもそも『闇の魔法』と『闇の咸卦技法』を別カウントにすれば単純計算で3倍になっちゃうし、『闇の魔法』で複数の魔法を取り込むときの組み合わせを変えればもっと増えるちゃうし。
そ、それにしても、ネギ先生はちゃんと私達との将来のこと考えてくれてるんだぁ。
アスナさんから言われたように、ネギ先生が麻帆良にいることが決まっているのは私達が中学を卒業するまででしかない。
それからは麻帆良に残るのか、それともイギリスに帰ってしまうのかはわからない。
出来ればこれからも…………せめて私達が大人になるまでは麻帆良で一緒に暮らしたいけど、ネギ先生にも立場があるし、イギリスにいるネギ先生の従姉のお姉さんのこととかも放っておくわけにはいかない。
アスナさんや木乃香さん達は別にイギリスについていっても構わないらしいけど、私やユエなんかは家族のことがある。
…………そういえばネギ先生とのことって、本気でお父さん達にどうやって説明したらいいんだろう?
いや、そもそもネギ先生は私達のことをどうするのかな?
お互いに想いあえているとは思っているけど、真面目なネギ先生が私達のうちの一人を選んだりとか、全員を選ぶことを出来るかはわからない…………。
…………というか、そもそもネギ先生はまだ10歳なんだけどね。
「…………その、正直な話をすれば……まだ決めかねているんですよ。皆さんのことは他の人に渡したくないぐらい好きですけど、好きだけじゃどうにもならないのが世の中ですから…………。
いくら“本当の魔法はわずかな勇気”という言葉があるとはいえ、複数の女性と同時に付き合うというのは明らかに“わずかな勇気”とは思えませんし…………。
ネカネ姉さん達に紹介するための予行演習として父さんにこうやって皆さんと一緒に会いに来ましたけど、それでも結局まだ決めかねています…………」
「ま、10歳じゃしゃーねーだろ。
…………というか、お前そんな理由で俺に会いに来たのか?」
「は? 他にどんな理由があるとでも? 稽古をつけに貰いに来たとでも思ったんですか?
いいですよ。時間はもう8時間ぐらい残ってますから、この話が終わった後にでもやりましょうか?」
「おーし、いいだろ。この若くして英雄ともなった偉大かつ超クールな天才&最強無敵なお父様の力を生意気なガキに見せてやるぜ。
エヴァンジェリンが言ったお前の力が本当かどうか確かめてやる」
「うっさい。ボコボコにした後、転移魔法で宇宙空間に放り出すぞ」
「おい、このナギは幻で、本当はアルだぞ。
…………まあ、アルなら宇宙空間に放り出しても別に構わんか」
「(…………こんな感じのネギは初めて見るわね)」
「(でも何か楽しんでそうやない?)」
「(何だかんだでネギ先生も嬉しいんじゃないですか?)」
「(初めて会ったお義父さまに対して、どんな風に接すればいいかわからないだけっぽいですよねぇ)」
ウフフ、ネギ先生可愛いなぁ…………。
まるで必死に威嚇している子猫みたい。
私達のことを話しているときのネギ先生はモジモジしてて、また別の可愛さがあったけどね。
「…………ま、そんなどうでもいいことは置いといて…………」
「待てやコラ」
「何ですか? 魔法学校中退の“千の呪文の男”(笑)殿?」
「ケンカ売ってんだな? 買うぞ。父ちゃんそのケンカ買っちゃうぞ」
「なら、プロポーズに2年もかけたヘタレ(笑)…………の方が良かったですか?」
「っ!? …………ちょ、お前っ!? 何で知ってんだ!?
つーかア…………母親のことも知ってるのか?」
「アルビレオ・イマさんから詳しく聞き出しました。母のこととか、“墓守の宮殿”での最終決戦のこととか、魔法世界の秘密のこととかイロイロと…………。
のどかさんのアーティファクト、“いどの絵日記”使って無理矢理ですけどね。
今日のために時間をとる交換条件で、アルビレオ・イマさんに“いどの絵日記”を使った状態で質問を1つさせてもらったんですよ。
まあ、母のことは前から予想はついてましたし、アスナさんからも聞いてましたので別に驚いたりしませんでしたけど」
「そ、そうか………………確かによく考えてみれば、アスナがいるんなら知ってて当たり前か。
…………って、ネカネに紹介するときの予行演習で会いに来たんじゃなかったのか? 何でアルにそんな条件飲ませたんだよ?」
「いや、貰えるモノは貰っておく性質なんで。そして巻き上げられるモノは巻き上げておく性質なんですよ。別にクウネルさんには容赦する必然性は感じられませんでしたからね。
ああ、それと僕以外の人はまだ知らないから大丈夫ですよ。誰彼構わず言い触らしたりはしないから、そこは安心してください。色々と衝撃的なこともわかっちゃいましたし、公表するにしてもちゃんと考えてから公表しますので」
…………ネギ先生のお母さまって誰なんだろう?
出来るなら一度でいいから会ってみたいと思うんだけど、お義父さまと違って生きているかどうかもわからないし。
アスナさんは知っているみたいだけど、さすがにこれについては私達にも教えてくれない。
“黄昏の姫巫女”であるアスナさんにも関係しているらしいので、別に意地悪のためじゃないから仕方がないけど。
「……………………な、なぁ?」
「…………言っておきますけど、別に責める気とかはないですからね。
父さん達の力不足や、プロポーズに2年もかけたヘタレ具合(笑)をなじる気はあっても…………」
「…………悪ぃな。お前には何もしてやれなくて。
それと他に方法がなかったんだから…………仕方がねぇだろ」
「“魔法世界全てが敵になるのなら、魔法世界全てを滅ぼせばいいじゃない”」
「いや、そのりくつはおかしい!!!」
「でも僕はアスナさんを守るためなら、そのぐらいの覚悟はありますよ。守るのが木乃香さん達でも同じですけど。
まあ、『完全魔法無効化能力』持ってる上にその他にもイロイロと準備したおかげで魔法世界人相手なら無敵な僕が言うのと、父さん達では条件が違うのはわかっていますけどね。
それでも真面目な話、僕は魔法世界が戦場だったら、本気で魔法世界全てを相手にしても負ける気しないですし。
…………最悪な場合は父さん達の功績を全て無駄にすることになっちゃいますけど…………」
「やめろ。洒落になってないから本気でやめろ。
…………お前、もしかしてアレと同じこと出来んのか?」
「おそらくは。『完全魔法無効化能力』がありますのでね。
実際に魔法世界の空気を感じないと断言出来ないですけど、他にも切り札は用意してあります。
ま、相手が手出ししてこなければ、僕から仕掛けることはないので安心してください」
「余計安心出来ねーよっ!
…………ハァ、お前相手にすると疲れてくるぜ」
「…………別に『完全魔法無効化能力』を使わなくても、転移魔法を魔法世界と宇宙空間の間で繋げて、それを開けっ放しにすればいいだけなんですけどね。
そうすれば魔法世界の大気が全て宇宙空間に流れ出しますから…………」
「やめろって言ってんだろーがっ!!!」
…………ネギ先生、本当に楽しそうだなぁ。
何だかんだで人をからかうの好きだし、お義父さまって打てば響くような鐘みたいな人なんだねぇ。
っていうか、転移魔法を宇宙空間と繋げて開けっ放しにするのは、地球で行なってもマズイと思います。
「…………ま、そんなどうでもいいことは置いといて…………。
少なくとも来年の皆さんの卒業までには結論を出すように頑張りますので、申しわけありませんがもう少々待ってください」
「だ、大丈夫ですよ、ネギ先生!
ただ私達が焦っているだけなので、ネギ先生のペースで考えていただければそれでいいんです!」
大丈夫です。
ネギ先生が答えを出してくれるまで待ちます。
そもそも10歳のネギ先生にそんな急に結論を急かすつもりはありません。
ネギ先生が私達のことを選んでくれたらそれはすごく嬉しいことですけど、一番大事なのはネギ先生のお気持ちです。
私は…………ネギ先生のことが好きでいられるだけで十分に幸せなんです。
…………それに私達のことを必死で考えてくれるネギ先生も可愛いので、もうちょっとこのままでもいいかもしれないし。
何というか…………ネギ先生って大人っぽいのに可愛いんだよね。
グッドマンさんや佐倉さん、葛葉先生とか女子…………女子?だけで話しをすることもあるんだけど、そういうこと言ったら「貴女達はマダオ好きな気がする」って言われちゃったんだけど…………。
「…………まあ、お前らもまだまだ若いんだから、そんな急いで答えを出す必要もねえだろ。悔いの残らないように、ちゃんと色々と考えてから答えを出せよ。こういうのは一生モンだからな。
俺の経験談だから参考にしていいぜ。それがお前に教えてやれる唯一のことだ」
「………………フン。
まあ、せいぜい参考にさせてもらいますよ」
「………………ヘッ!
あ、ところで話は変わるんだけどよ。アルにいったいどういう質問の仕方をしたんだ? アルと約束したのは、1回だけの質問なんだろ? それなのに何で色んなことを知ってたんだ?」
「え? どういう質問って言われても…………、
“何を隠してるか?”
という質問をしただけですよ」
アレはいい質問でしたね、ネギ先生。
あの質問なら、一度に色んなことを聞け出せますもんね。
“いどの絵日記”を見たネギ先生も驚いてましたし、きっと大人の人がネギ先生に隠していたことを知ることが出来たんでしょう。
かなりの大事らしくて、私達にも秘密になってしまったのは残念ですけど。
━━━━━ ナギ・スプリングフィールド ━━━━━
「よーし、そんじゃ始めるか。
稽古をつけてやるぜ、ネギ」
「いいですよ。ルールはどうします? ハンデは?」
「はっ! 何でもアリに決まってんだろ。
それにハンデなんているわけねーよ。あんまり大人を舐めんなよ」
むしろ俺がハンデつけてやろーか?
英雄とまで言われたこのお父様を舐めんじゃねーぞ。
「駄目に決まっとるだろ、ナギ。何でもアリだったら、タカミチ級の強さの式神が数百体規模で襲ってくることになるんだぞ。ナギは自由にやれ。
ネギは式神使用無し、『完全魔法無効化』無し、肉体変化無し、転移魔法でナギをどこかに飛ばすのは無し。それとハンデとして私達の周りに結界を張って維持しろ。どうせ派手になるんだろうから必要だ」
「『居合い拳』は燃費が良くていいですよね。
魔法世界に行ったときのために、あれから急いで式神の量産に入りましたし」
…………え? 式神ったら、日本の関西呪術協会の連中が使ってたやつだよな?
ネギは東洋呪術まで使えんのか?
「…………って、お前らタカミチのこと知ってんのか?
エヴァンジェリンもさっきタカミチのことを話題に出してたけど…………」
「ん? ああ、知ってますよ。
僕がメルディアナ魔法学校に入学してからは何度も訪ねに来てくれました。どっかの誰かさんのせいでエヴァさんとは同級生だったこともあるみたいですし。
それとダイオラマ魔法球に篭って修行に励んだ結果、アルビレオ・イマさんが言うにはガトウさんという方よりも既に強くなっているそうです………………その分、老けましたけど」
「ついでに言うなら、ネギが私達のクラスの担任になる前はタカミチが担任だった。
今は…………アレだ。“悠久の風”の仕事が忙しくなったから、ネギに担任を任せて世界を飛び回っている………………ウン、そんな感じだ」
へー、ガトウよりも強くなったんか。タカミチも頑張ってるんだなぁ。
でも何で最後は目を逸らして言葉を濁したんだ?
それにガトウより強いタカミチ級の強さの式神が数百体?
…………さすがにそれは俺でも無理だわ。
「『闇の咸卦法』と『闇の咸卦技法』は?
それと『太陰道』は?」
「…………ま、それはいいだろ。ただし試合開始前に準備しておくのは駄目だ」
「了解です。…………あ、父さんのアンチョコは? アンチョコ見ないと魔法を唱えられないんじゃ?」
「それは昔の話だっ! 今は『千の雷』だろうと諳で詠唱出来るわっ!!!」
「何っ!? そうなのか!?」
エヴァンジェリンまでそう思っていたのかよっ!?
確かに魔法は10個も使えねーけど、十何年もそれらばっかり使ってたら俺でも覚えられるわっ!!!
「いや、だって…………お前、『登校地獄』かけるときってアンチョコ見てただろ?」
「『登校地獄』なんて使ったのはアレが初めてだからな。
さすがにそんなのまでは覚えられねーよ」
「……………………」
「文句あるなら言ってみろ、このガキャ」
「べっつにぃ~?」
うわ、ムカつく。
いったい誰に似たんだこいつは?
「どう考えてもお前だろうが。
もういいからさっさと始めろ。私達は離れて観戦しているから」
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おっし、じゃ始めるか。
親の真似事一つ出来ていない俺が言ったらいけねーことなんだろうけど、俺にも父親としてのプライドがあんだよ。
あそこまで散々言われっ放しってのは我慢出来ねーな。
それに…………本当に俺に勝つぐらいネギが強かったんなら、きっとこれからもネギは大丈夫だろうからな。
父親として何にもしてやれねー俺が出来るのはこんのぐらいしかねえだろ。
…………ま、“楽しんでいる”ってのは否定出来ないけどよ。
それじゃ、最初っから全開でいくぜっ!
「契約により我に従え高殿の王!
来れ巨神を滅ぼす燃ゆる立つ雷霆!
百重千重と重なりて走れよ稲妻!」
「『千の雷』か…………本当にアンチョコ要らないんだ。
じゃ、こっちは“魔力糸”展開」
ネギがそう呟くと同時に、ネギの掌から糸が湧き出てくる。
そしてその糸は地面に広がり、幾何学的な模様を描き始めた。
魔法陣だな。
しかし展開速度がめっちゃ早い。あの巨大な魔法陣書くのに1秒もかかってないぞ。
「行くぜ、オラァッ!
『千の雷』!!!」
俺の放てる最大威力の魔法。『千の雷』。
鬼神兵くらいなら楽に一撃で倒せる威力を誇る。
『完全魔法無効化能力』を使わないんなら、さすがにこれでならダメージを与えることが出来るはずだ!
「残念、『敵弾吸収陣』」
「げっ!?」
ネギが突き出した右手で『千の雷』を受け止めたと思ったら、展開された魔法陣が発動して『千の雷』を吸収しちまった。
アレがもしかしてエヴァンジェリンが言ってた『太陰道』かよ!? コッチの魔法を吸収するなんて反則じゃねーか!
しかも魔法陣は一秒もかからずに展開できる速度。
これだと無詠唱魔法ぐらいしか通じねーんじゃねえのか?
「固定、掌握、右腕装填! …………と。
これが『太陰道』と『闇の魔法』です。
『闇の魔法』は5歳のころには出来てました。取り込むのは治癒魔法でしたけどね。
『太陰道』はさすがに難しかったので出来るようになったのは最近ですけど、魔力糸による瞬時魔法陣構築を出来るようになってからは大分簡単に出来るようになりました」
「へ、へぇー………………そうなんか」
やべぇ、エヴァンジェリンが言ってたのって本気でマジだったんだな。
強く育ってくれたことは嬉しいけど、この微妙な寂寥感は何なんだろう?
「…………どうしよう。最初はエヴァさんのこととかでボコるつもりだったけど、クウネルさんから情報聞きだしたせいで冷めちゃったな。
幻相手に八つ当たりするのはみっともないし、本体が生きているのならソッチにした方がいいし。それにあまりアスナさん達にグロいのは見せたくないし…………」
「…………なーに言ってやがんだ。
もう勝ったつもりなのか?」
「強がるのはやめてくださいよ。
いかに父さんが従者を必要としないぐらい強い魔法剣士タイプでも、魔法を使えなかったら戦力は半減です。
対する僕は自由に魔法を使うことが出来ますけどね」
…………ぐ、それを言われると確かに辛い。
雑魚相手にならそれでも問題ないけど、例えばジャックと魔法無しでやれって言われたらさすがに無理だと思う。
俺とジャックは魔法有りで互角なんだからよ。
「ま、そんなわけなので、せっかくだから開発中の技を確かめてみることにしましょうか。“幻想空間”だから死ぬことはないので安心してください。
補助魔法陣、右腕に展開。『千の雷』の全てを光に変換。
光波長、周波数を同じに変換……変換完了。右前腕部全魔力を人差し指末節に収束、圧力を臨界まで加圧。3……2……臨界圧!」
そういって、ネギは右手の人差し指で俺を指差し、魔力糸が今度はネギの右腕に巻きつきながらとても小さな魔法陣を右腕に展開し始めた。
そして俺の放った『千の雷』の全てが人差し指の先端に収束されていく。
…………何つー魔力密度なんだよ。
ただでさえ『雷の暴風』の10倍以上とも言われる、対軍に使われる電撃系最大呪文『千の雷』なんだぞ。
それをあそこまで圧縮させるなんて洒落にならねーぞ。アレが相手なら、どんな障壁を展開してもブチ抜かれちまう。
「腹のど真ん中を狙います。避けるのなら横に。
下手に動いて心臓や頭を貫いたらどうなるかわかりませんからね」
ちょっ!? マジで洒落になってねー!
だけどなぁ…………意地があんだよ! 父親にはなぁ!!!
「ケッ! ビビってんじゃねぇぞ!
そんな様であの子達を守れんのかよ!?」
「拘束解除、全魔力解放。
…………なまいきだよ、おまえ」
親に向かって生意気とは何だっ! って………………あ、あれ?
何だか腹が熱い。下半身の力が抜けて立っていられなくなる。
…………もしかしてもう攻撃終わってたのか?
み……みえなかった。
た……ただなにかが光ったとだけしか…………。
バ、バカな…………。
「銃弾の速度が400m/s。ライフル銃でも1000m/s。そして雷の速度は150km/sと桁が違うんですが、光は30万km/sと更に桁が違います。
この魔力レーザー砲を避けれる人なんてこの世にいませんよ。避けるなら弾道を見切って、打たれる前に避けないとね。ましてや片手だけで弾ける人なんかいるはずがありません。
………………てかマズイ。脊椎貫いちゃった。少しは反応してよ。本当に腹のど真ん中当てちゃったじゃんか」
…………ああ、そっか。そりゃ立てなくもなるわな。
つか、そのガッカリした顔やめてくんね?
本気で父ちゃん傷つくから。
「クウネルさんに戻れば、ちゃんと怪我も治ってるはず…………だよね?
…………ま、いいや。とりあえず父さんの状態でも治しとこう」
……………………何でこんな子供に育ったんだ?
今更だけど、側にいてやれなかったことが本気で悔やまれる。
アリカぁ、悪い。
俺達のガキは元気に育っているけど、ちょっと元気が良過ぎるみたいだわ。
もう、あのお嬢ちゃん達がネギの手綱を握ってくれることを祈るしかないようだぜ。
ネギのことは別の意味で心配だけど、心配しなくても良さそうなのがせめてもの救いだな。
…………いや、本当に何でこんな子供に育ったんだ?
━━━━━ 後書き ━━━━━
ついにネギがドラゴンボールの技にも手を出し始めたようです。
そしてネギが原作の裏事情を全部知ってしまったようです。
本当に“何を隠してるか?”という質問は便利ですね。
でもそれのせいでナギは助かったようです。
本当はボコろうと思ってたけど、ナギが世界樹の下で生きてることが判明したのでそっちをボコることにしました。
それにこのネギの原作知識では“ナギが何者かと相討ち”となったことしか知りませんでしたので、ナギが死んだと思っていました。なので会えて結構嬉しかったみたいです。
え? 裏事情を知ったネギの反応?
「とりあえず、予定通りに“ょぅι゛ょ誘拐犯”壊滅させてから考えようか」
デスヨ。
ちょっと夏休みを満喫したら、いよいよ魔法世界編です。
あとナギは6年前のときはアンチョコ無しで『雷の暴風』唱えてましたので、多分もうアンチョコは要らなくなっている…………ハズ。
…………造物主が憑いていたせいだったらどうしよう?
ちなみに羞恥プレイがもう1週間続いてたらネギは家出してました。