古代と雪が、地球に帰還した2日後、優達の姿は、英雄の丘にあった。
「沖田艦長並び地球を救うために命をかけ戦い散って行った、誇り高き宇宙戦士達に敬礼!!」
古代の号令と共にその場にいた全員が、胸の前に腕を持っていき宇宙戦士の敬礼をし黙とうをささげる。
ヤマト初代と最後の艦長となった沖田十三の像がたたずむ英雄の丘に古代をはじめとする旧ヤマトのクルーとその家族、一族が集まっていた。
黙祷を捧げ終えると、そこは、宴の場となった。久しぶりに会う旧ヤマトクルーたちは、それぞれの近況を報告しあう者、今の連邦政府に対する不満を口にする者、さまざまであった。
旧ヤマトは、その活躍とは裏腹に実に短命の船であった。建造からわずか3年でその生涯を終えることになる。その短い生涯の中で地球の運命をかけた戦いを幾度となく繰り返すことになる。
わずか3年・・・されどなんと密度の濃い3年間だったのだろう、その後数十年、変わらぬ友情と連帯感が今この場にも確かに存在している。旧ヤマトのクルーたちの表情を見ればそれが分かる。
度重なる、危機を力をあわせ乗り越えてきた自信と信頼が、ヤマトの乗り組員だったと言う誇りが彼らを今も一つにつないでいるのだ。
優は、それを羨ましく思う。私にも何時か…こんなにも素晴らしい絆で結ばれた仲間が出来るのだろうかと
「姫ちゃんも、明日、よいよ星の海にでるんだね」
優に妙齢の美しい女性が話しかけてきた。眼鏡をかけたスレンダーな美女だ。セミロングの黒髪を無造作に後ろで束ねているが、その魅力を損なうことはない。
ちなみに姫とは、優の愛称の一つである。名字から呼びやすい2文字をとった在り来たりの愛称だったのだが…小学生の低学年ぐらいまでは、姫や姫ちゃん呼ばれることを気にした事は無かったが、中学生ともなると流石に姫と呼ばれるのは恥ずかしいと思うのだがその思いとは裏腹に優と名前で呼ぶのは、家族と旧ヤマトのブリッジクルーぐらいで多くは姫の愛称の方が定着している。
「佐渡先生、姫ちゃんって呼ぶのはもうやめて下さいよ、結構恥ずかしいんですよ」
「あら、姫ちゃんは姫ちゃんじゃない? 呼びやすいし」
日本酒を飲みながらケロっとした表情で佐渡先生と呼ばれた女性は優に答える。
「呼び易いって、優も2文字じゃないですか。漢字なら1文字ですよ」
「いいじゃない、姫ちゃんは姫ちゃんなんだから」
日本酒を手酌し始めケラケラと陽気に笑うこの女性は、佐渡愛香。旧ヤマトクルーで10年前に亡くなった佐渡酒造の玄孫である。
酒造と同じく医の道へと進み、今や名医として地球連邦にその名を知られている。年齢的には50近いがクローニング技術の応用で肉体年齢(細胞年齢)は24歳前後で優にとっては年の離れた姉のような存在でもあった。愛香も優の事を可愛い妹のように見ている節もありこれはあいこであろう。
「姫ちゃん、明日の予定は聞いているの?」
「うん、明日の正午にメトロポリスの第7ドックに来るように言われたけど・・・行き成り出発のドックが変更になったりして…何か聞いていませんか?」
優は、今朝英雄の丘に集まる前に古代に言われたことを思い出していた。
初の星間旅行と言うこともあり色々な手続きをし終え、準備も出来ていたのだが、古代から行き成り当日の集合する宇宙港の場所が変更が伝えられたのだ。
オービタルリングにある20の宇宙ドックのうち9つが民間の宇宙ドックなのだが当初、優も民間の宇宙ドックから民間船に乗って出発するはずだった。
しかし、古代は、メトロポリスの第7ドックに集合するように優に言ったのだ、手回しの良いことに民間船のチケットは、既にキャンセルされていた。メトロポリス第7ドックと言えば連邦軍の地底ドックである。何故、そんなところに集合するのか優には、分からないのだ。
「ふ~ん、まだ、何も聞いてないのか、古代おじさんも人が悪いな・・優ちゃん明日は、サプライズがあると思うから楽しみにしていてよね」
「愛香さん、ソレはまだ、ヒミツのハズですよ」
そう言って現れたのは赤いボディのロボットだった。人型、それも人間に限りなく近いアンドロイドが主流となった現在に於いては、かなり珍しい円柱形のボディにキャタピラ状の足など、3世代は昔のデザインである。
「アナライザーじゃない、またスカートでもめくりに来たのかしら…でも残念ね、今日は、ジーパンよ。ちなみに姫のスカートめくったらスクラップにするわよ」
愛香は、現れたロボットにそう言いながらに日本酒の入った杯をわたす。
「アッ―、愛香さんヒドイ、ワタシだっていつもスカート捲りをしているわけでは無いのです。」
アナライザーと呼ばれたロボット怒りながらも愛香から盃を受け取るとそれを頭から浴びる。浴びるほど飲むとはよく言うが…酒を浴び酔っ払っているこのロボットは、アナライザー、旧ヤマトの乗組員でヤマトの最初の航海から最後までずっと一緒に戦ってきた唯一のロボットである。
外見は、100年前と全く変わっていないがセンサーや分析能力、各種オプションは、最新のバージョンに換装されている。
愛香の医学の師でもあり曾祖父でもある佐渡酒造とも良き飲み仲間だったと言うアナライザーは、愛香とも良き飲み仲間であった。
「サプライズ? 何があるの?」
優は、2人に聞くが
「当日のお楽しみよ」「それは、ヒミツです」
と2人に言われてしまう。
「「へぇ~、でも、サプライズって言うのは私たちも興味があるわね」」
そうユニゾンして会話に加わってきたのは、二人の美少女だった。
「麗さん、詩織さん」
「姫ちゃん、ヤッホー」
と手を上げて近づいてくる紺に近い黒のロングヘアーの活発そうな少女が、山本麗。
その麗の後ろで手を振りながら近づいてくる同じく紺に近い黒髪をサイドテールしている少女が山本詩織。
この2人は、ヤマトの艦載機コスモタイガー隊の山本と椎名の玄孫で双子の姉妹である。姉が麗で妹が詩織で姉は、椎名譲りのスレンダーな美少女であるのに対して妹は、かなりの巨乳の少女である。
一瞬、アナライザーの全身が、ピコピコと激しく点滅したが愛香の一睨みで収まったようだ。ただ、2人ともミニスカートなのだがその下にデニムのレギンス着ているのを見たアナライザーが、残念そうに見えたのは気のせいだろうか・・・
「姫ちゃん、明日、出発場所が防衛軍の第7ドックになったの?」
「うん、明日の正午に第7ドックに来るように進おじさんに言われたんだけどね」
「第7ドックと言えば、新造艦やテスト艦なんかの専門ドックだったな・・・」
麗と優の会話を聞き疑問の声を上げたのは、加藤健二、コスモタイガー隊の加藤四郎の玄孫である。
「加藤ハ、相変ワラズ加藤四郎ニソックリダナ」
アナライザーが、言うように健児は、若かりし頃の加藤四郎に瓜二つで宇宙戦士訓練学校で飛行科の制服を着るとあまりのそっくりさで教官が驚いたほどであった。
麗、詩織、健二の3人もまたコスモタイガーのパイロットを目指し日夜、宇宙戦士訓練学校で汗を流している。
「でも、急に変更なんて大変ねじゃない?」
「うん(ゴッゴッゴッゴッゴ)」優が、詩織に答えようとすると大気を震わせながらアイオワ級宇宙戦艦が英雄の丘近くの上空を通り宇宙へと上がっていく・・・
「でけぇ、船だな」
健二が空を見上げながら、通り過ぎる戦艦を見てつぶやく。
優もまた、空を見上げながら考えていた。
まっサプライズって言っているし…これ以上愛香さんたちに聞いても無駄みたいね。当日の楽しみにしておけばいいか。優は、そう思うとすれ以上追及しようとはしなかった。
いつの間にか、日は落ち空には星々が輝き始める。
優は、明日はよいよ、宇宙に外宇宙に行くんだ、そう思うと優は、自然に空の先にある星々に宇宙に向ってそっと手を伸ばしていた。