地球の引力圏を脱出したフレイヤは、地球からある程度の距離を取り他の艦船航行に邪魔にならない位置で静止した。
そのブリッジでは…
優は、暫くメインスクリーンに映る地球を見ていた。訓練では、何度も見ている景色であったが…自分の船で見るその景色は感慨深いものであった。
アナライザーは、無言で操作パネルを操作し船の向きを変えた。ブリッジの窓から直接、地球が見える。
優は、艦長席から立ち上がるとブリッジの前いの方にある戦闘指揮席(戦闘班長の座る席)まで歩いていく。ブリッジの窓から見える地球に見入っていた。
ついに、地球から旅立つのね…
旅行気分だったのにまさかコスモアドベンチャーとして…しかも艦長としてこうして地球を見ることになるなんて思ってもみなかったわ。
眼下に見える青く美しい星。度重なる戦火にみまわれ、一度は死の星となった地球も100年にわたる人類のテラフォーミングにより、ガミラス戦役前の地球以上に豊かな自然の星となっていた。
綺麗な星、だけど其れだけじゃない…何度もで立ち上がる人類を育んできた母なる星。
私は、今から母なる星から飛び出してこの無限の宇宙を公開して行くんだ…
持ち前の好奇心でワクワクする反面、未知への恐怖やコスモアドベンチャーとしての選択で起こりうる出来事に対する責任とプレッシャー…
14歳の小娘の船に乗ると言ってくれた愛香やアナライザー達対する感謝と嬉しさと
何時の間にか優は、自分の瞳が潤んでいるのに気が付く…こんな顔見せれないな。
そう思った時だった。
「オービタルリングより『ベガ級、突撃艇』が、本艦に急速接近中!!…数は4隻」
優と同じく地球に見入っていた香織が、レーダースクリーンの点滅に気が付き慌てて叫ぶ。
「接近中の突撃艇のシグナル確認、防衛軍の物ではありません。コスモアドベンチャー…冒険者の船です」
フレイヤが、自分のセンサーで捉えた情報を報告すると同時に接近中の突撃艇をメインスクリーに映し出した。
突撃艇は、150メートルから45メートルの小型艇の事で高速で敵に突撃しその火力をぶつける戦闘艇のことである。
100メートル未満のものは、その防御力は戦闘機に毛が生えた程度でしかない。ただ、ワープが、可能なためコスモアドベンチャーが、最初に購入する船や小さな自治領の警備艇として活躍している。
ベガ級突撃艇は、全長75メートル、武装は小型回転式高出力素粒子砲が2基、艦首ショックカノン1門 2連装パルスレーザー4基、そして船外に波動ミサイル4発を搭載できる。形としては、コスモハウンドを少しシャープにし装甲と砲塔がつき大きくしたような形をしている。小型戦闘機のコスモホークを一機搭載できるため駆け出しのコスモアドベンチャーに人気がある突撃艇である。
「全艦、第一級戦闘配備!! 香織さん!! 至急、接近中の戦闘艇に通信、本艦に近づく目的を」優涙をは拭いながら、矢継ぎ早に指示を出すが、内心は焦りと自責の念が湧き上がる。
(地球に見とれて…対応が遅れるなんて…)
「全艦、第一級戦闘配備!! これは訓練ではない! もう一度繰り返す、全艦、第一級戦闘配備!! これは、訓練では無い」香織の声が、艦内に響き渡る。
「フレイヤ!! 各砲塔起動、アナライザー!!…突撃艇の右翼下、距離7000、回り込んで!!」
優は、指示を出すが…突撃艇に近づかれすぎてる。戦艦ならともかく…駆逐艦クラスのフィールドと装甲じゃベガ級の艦首衝撃砲は脅威だ…
その時、ブリッジに男の怒声が、響き渡った。
「幾ら、不意を付かれたとはいえ対応が遅いぞ!!」
「えっ、えっ」
「その声は、健二君ね…」
突然の怒声に驚いている優とは対照的に香織は、呆れた様に手元のコンソールを操作するとメインスクリーンに加藤健二の姿が映し出される。
「悪い悪い、あまりに隙だらけだったから思わず、急接近しちまった。だが、さっき言った事は本当だぞ…」
「ナラ、ソウイウ悪フザケヲスルトドウナルカ…教エテヤロウカ」
いつの間にか戦闘指揮席に座ったアナライザーが、フレイヤの各砲等を突撃艇に向ける。
「馬鹿野郎…マジで砲塔をこっちに向けるな、突撃艇には、山本姉妹とこその友人の女性パイロット候補生も乗ってるんだぞ」
フレイヤの主砲が、旋回し突撃艇に狙いを定めるのを見て慌てて健二が叫ぶ
「チッ」そう呟くと、アナライザーは操縦席に戻っていく。
「お前、今、舌打ちしたろ!! 口も舌も無いくせに!!」
「健二、話が進まん…こちら突撃艇グラディウス以下4隻、貴艦の指揮下に入る」そう言って通信に割り込んできたのは、麗と詩織の兄…山本隆だ。
年齢19歳、外見年齢は、17~20前後、長めの茶髪が、肩の辺りまできている。妹と同じく戦闘機パイロットとして訓練学校を卒業している。
「えっ、いいの?」優が、思わず素で聞き返す。
「ああっ、俺と加藤、麗に詩織を含めパイロット候補生20名、後は、突撃艦砲手8名、機関部員8名、整備士4名の軽40名だ」隆が答える。
「皆、ありがとう…本当にありがとうございます」優は、頭を下げる・・・うれしくて泣きそうな顔が、見られるのが嫌だったのかもしれない。
「艦長が、簡単に頭を下げるなよ…とりあえず、全員そっちに移りたいから接舷するぞ」
「了解しました…香織さん、全艦にこの事を通達してください。 フレイヤ接舷用デッキ用意して」
「「了解」しました」」有の支持を受け香織とフレイヤ実行する。
「あっ、ところで突撃艇は、どうするの」優が聞くと
「ああっ、4隻とも無人コントロールシステムが付いている、フレイヤでコントロールできるはずだ」
「確認しました、コントロール可能です」フレイヤが答える。
「それじゃ、接舷するぞ」隆は、そう言うと通信をきった。
20分後、突撃艦4隻の乗組員をフレイヤに移し終えると麗と詩織は、ブリッジに来ていた。
「ハロハロ、姫、昨日ぶりー」麗は、ブリッジに来るなり優に抱きつく。
「ちょっ 麗さん」
優が、両手をバタバタさせるが、麗がガッチリと抱きしめていて抜け出せそうに無い。
「お姉ちゃん、まずは報告しないと」
「あっ、そうだったわね、お兄ちゃんと健二、パイロット候補生は、コスモタイガーの格納庫に行ったわ、機関部員これも訓練生だけど、エンジンブロックに向かわせたわ、砲手も整備員の各部署に行かせたわよ」
麗は、自分の近くにフォログラフスクリーンを展開させ、配置した場所映しながら説明していく。
しばらく、艦内の人員配置を見て優は、OKのサインを出す。
「でも、姫も大変よね…コスモアドベンチャーの艦長なんて聞いてなかったんでしょ?」
報告を終えた麗が、優に大変だったねと笑いかける。
「うん、全然聞いてなくてしかも雪風型自律AI搭載艦で一人で宇宙に出ろなんて言われた時は、本当に頭の中が真っ白になったわ」優が、苦笑しながら言う。
「うわ~、近所の散歩じゃあるまいし古代のおじさんも無茶考えるな」詩織が、呆れたように言う
「全く、無茶苦茶もいいところよ、幾ら、雪風型自律AIが優秀だと言ったって一人なんてないわよ」麗が、声を荒らげて言う。
「でも、愛香さんのアナライザーも来てくれたし、麗さんたちも…あれ、そう言えば、麗さん達は、どうしてこのことを知ったの?」
優は、英雄の丘で麗も詩織も健二も愛香が言っていたサプライズの意味を知らなかった事を思い出す。
「あー、私と詩織で宴のあとに愛香さんとアナライザーを追いかけてね」
「うん、それでお姉ちゃんと二人で直談判のつもりで聞きに行ったんだけどね…私たちが口止めされてるのは、姫ちゃんだけだからねって言って、あっさり教えてくれたわ」
「そう、それで、お兄ちゃんや健二に連絡とって、仲間集めて姫を追いかけてきたってわけ」麗が、得意げに言う。
「でも、本当にいいの「姫、私も一緒に来た皆もね、姫と一緒に星の海を行きたいと思ったのよ、それは、姫が可哀想だとか同情とかでなく、共にこの先も一緒に歩いて行きたいからただそれだけの事」
「うん、だから気にしないでね。それより年齢も近いし同じ女だし、何かあれば相談してくれると嬉しいかな」
満足に人員配置もできていない船に乗ることに本当に良いのか心配した優が言おうとした言葉遮るように言った麗と詩織の言葉に優は、嬉しさのあまりまた、涙が滲むの感じながら、二人に抱きつきながら「ありがとう」と繰り返していた。
その後、しばらく優と麗、詩織は、雑談をすると麗たちは、コスモタイガーの確認と整備の為、ブリッジから出ていく。
そして、再び優が、艦長席に座ると
「艦長、これからどうしますか?」
フレイヤが、優に今後の予定を聞く。
「うん、今回の事でやっぱり、私もクルーも経験が足りないことが分かったわ、ビーストウォーリアと医療班以外は、候補生が殆どだし」
優は、そう言うと何かを決意したように続けた。
「なので、ビルトフェルト暗礁宙域にてしばらく訓練をしたいと思います」
「ビルトフェルト暗礁宙域ですか…了解しました」
「香織さんは、全艦にこのことを伝えてください…アナライザー、テストを兼ねて小ワープを行います。ワープ準備」
「了解デス」
香織は、艦内放送でビルトフェルト暗礁宙域で訓練を行うこととワープ準備にはいることを伝える。
「各員配置完了」香織が、報告する。
「波動エンジン出力上昇」フレイヤがエンジンの出力を上げていく。
「ワープ10秒前。9.8.7.6.5.4.3.2.1.…ワープ」
アナライザーが、カウントにあわせコンソールを操作しワープのレバーを引くのと同時にフレイヤは、光に光の航跡を残し消えていた。