小ワープに成功したフレイヤは、木星星域に到達していた。その後、船体チェックを行い異常が無い事ないことを確認すると直ちに、大ワープ、連続ワープのテストに入った。
そして、地球を出発して10日後、目的地のビルトフェルト暗礁宙域に到着した。
途中、いくつかの地球型の惑星やテラフォーミングされた星や衛星、コロニー都市などに寄り、コスモアドベンチャーギルドで乗組員の募集をするが、地球を出て数日しか経っていない14歳の少女の船に乗りたがる船乗りなどいるわけも無かった。
居たとしても…コスモアドベンチャーに登録したのはいいが、自前の船も無く、酒場で管を撒いているしかないような奴が、からかい半分で声をかけてくるのが関の山だった。
それでも、人の少なかった機関部、技術部、整備部などの学生があわせて15名ほど名乗りを上げたのは予想外の幸運と言えた。
未熟なのは、お互い様…とりあえずは、ビルトフェルト暗礁宙域での訓練で物にしていけば良いし…とりあえず期間は、3週間を予定しておこう。優は、艦長室で航海日記をつけながら、訓練内容を組み立てていた。
艦長室よりブリッジに戻った優は、艦内放送のスイッチを入れると
「これより、フレイヤは、ビルトフェルト暗礁宙域に突入します、突入後直ぐに訓練を開始します。総員、配置についてください」と指示を出す。
フレイヤは、ビルトフェルト暗礁宙域に突入していった。
ビルトフェルト暗礁宙域は、一応地球連邦領ではあるが地球から58000光年も離れた古戦場である。ワルキュリア人が、多くの惑星を作ったが、無数の独立政権や異性人との戦いで100光年の範囲の星は、全て破壊されていた。戦いが終わり、ワルキュリア人が、新たな星を創るが、戦争のたびに破壊され、これを繰り返すうちに、無数の星の残骸、小惑星やガス帯、無数の宇宙船や要塞の残骸が浮かぶ、宇宙での有数の難所となり、新たに星を創る事も出来なくなっていた。
また、ジャンク漁りや地球連邦の領内としては、宇宙海賊が多く出ることでも有名である。
訓練1日目
「フレイヤ、近距離、中距離、長距離、最大射程にあるデブリに適当にマーキングをしてそのデーターを各砲塔に伝達」
「了解しました」
「まずは、停止状態での砲撃を行います。砲手のいる砲塔は、マニュアルでそれ以外は、フレイヤお願い」
「了解しました」
「一番砲塔、配置完了」
「二番砲塔、配置完了」
「四番砲塔、配置完了」
「コスモタイガー隊、全機発進準備完了」
「医療班、配置完了」
「こちら機関部、総員配置完了」
「技術班、整備班」配置完了
各部署からの報告を聞き
「総員配置につきました」香織が優に伝える。
「全砲、右翼の敵(デブリ)距離8000に照準あわせ!!」
優の号令にあわせ各砲塔が、旋回し始める…
フレイヤの操る砲塔は、直ぐに照準を合わせるが、やはり戦車砲や突撃艇の小型砲しか扱った事が無い砲手にとっては、難しいようで砲塔が何度も左右鈍れるよう旋回させている。
やっと照準をあわせ、砲撃を開始するが命中率は、6割といった所だろう。
その後、微速、通常航行速度、戦闘速度、最大戦速、回避運動を行いながら等、様々な場面を想定しての砲撃訓練を行う。静止状態でも6割程度の命中率だった砲撃が、高速駆逐艦並みの速力を誇るフレイヤが速度を上げる度に命中率が下がっていく。
それに対して、AIフレイヤが制御している砲塔からの砲撃は、命中率100%であった。
「相手は、回避行動もとらない隕石郡にデブリよ、慌てなくていいからよく狙いなさい」優が、まだ慣れていない砲手に落ち着くように声をかける。すると、命中率が少しづつ上がり始めていく。元々、最新鋭艦として造られたフレイヤは、砲撃の制度も高く、レーダーや照準、自動追尾装置も高性能な物を搭載している。その為、余程、緊張してたりテンパっていなければ、、訓練性でもそこそこの命中率をたたき出すことは十分可能なシステムなのだ。時間をかけてそのシステムに慣れ始めるとその命中率もターゲットに照準を合わせるスピードも飛躍的に上がっていった。
また、同時に攻撃を受けた事を想定しての救助訓練に破損箇所の応急修理訓練、それにコスモタイガー隊による、デブリ密集空域での偵察訓練に空戦訓練、戦艦のデブリや小惑星を敵艦に見立てての対艦戦闘訓練など多岐にわたった。
食事と小休憩をはさみ、ほぼ訓練という内容であった。
2日目
1日目と同様の訓練を繰り返す。ぎこちなかった照準も大分スムーズになり命中率も上がってきていた。また、フレイヤと連携も取れてきて咄嗟の場合も目標の大きさ等で個別、同時砲撃など行えるようになっていった。
フレイヤから発進した、コスモタイガー隊は、隆、健二、麗、詩織が、それぞれ4機ずつ率いて計5機で1小隊とし4小隊をつくり、フレイヤ方向に流れてくるデブリ帯を敵編隊に見立てて攻撃を仕掛けていた。
まずは、全機によるロングレンジからのミサイル攻撃を仕掛ける。コスモタイガー隊から放たれた軽80発のミサイルが、次々にデブリに命中し破壊していく
その後、隆と健二の率いる2小隊が、デブリの進行方向の正面から麗と詩織の小隊がその左右から攻撃を仕掛けた。デブリとすれ違いざまにパルスレーザーを浴びせてゆく。コスモタイガー隊が、デブリ帯を抜けるのと同時にフレイヤの主砲から放たれた砲撃がデブリ帯を吹き飛ばした。
一度補給に二フレイヤに戻ったコスモタイガー隊は、補給後直ぐに最出撃をする、今度は、AIフレイヤが操作する無人機のコスモタイガーとの連携訓練を始めるのだった。有人機20機を含む合計61機のコスモタイガーが、次々にフレイヤから飛び立っていく。
「全機に告ぐ…今回の任務は300キロ級の小惑星のクレパスを抜けての奇襲を想定しての訓練だ、先頭は、俺のストーム小隊が行く、麗と詩織の小隊は中央、殿を健二のライトニング小隊で行く、無人機は、有人機に2機づつ付く形で行く」隆の指示が、コスモタイガー隊にとぶ。
「了解・・・先導は、任したわよ」麗が翼を振りながら答える。
「全機クレパスに突入するぞ!!」隆の号令と共にコスモタイガー隊は、その速度を上げて一糸乱れぬ動きで全機クレパスに突入していく。
クレパスは、1000メートル級の宇宙戦艦が4隻並んで航行できる幅があるものの無数の鍾乳石のように突起した岩が柱の様に幾つも並びまたルート迷路のようになっておりコスモタイガー隊は、それらを縫うように飛翔していく。
「ヤバッ、今機体の腹に掠った」麗の小隊の女性パイロットの肝を冷やしたような呟きが通信器から流れる…
それでもスピードを落とさずに機体を岩柱を次々に避けて飛ばしているその技量は感嘆に値するものだった。
そしてクレパスの中でやや広い空間に出た時だった・・・先頭を飛んでいた隆のコスモタイガーのコックピットにロックオン・アラートが鳴り響く
「なんだと!!」突然の警報に機体を旋回させると先程まで居た場所にパルスレーザーが撃ち込まれる。
立て続けに撃たれるパルスレーザーを躱しながら敵を確認すると、小型の戦闘ターゲットドローンの編隊が模擬戦用のパルスレーザーを乱射しながら向かってきていた。
「たく・・・姫もやってくれるな、ストームリーダーより各機へ、どうやら姫からのプレゼントらしい、敵戦闘用ドローン数20、他にも伏兵がいるかもしれん用心しろよ、全機タリホー」
隆の号令と同時にコスモタイガー隊は、猛禽のごとくドローンに襲いかかっていく。戦闘ドローンは、小型で機動性も高いが最新鋭のコスモタイガーD17の性能には及ばずまた、数も20機と少なくたちまち駆逐されえていく。
狭い空間でのドックファイトだったが、奇襲戦ということでコスモタイガー隊は、クレパスから出ることなく高機動戦を行い、撃墜判定をただの一機も受けることなくすべてのドローンを撃ち落としていた。
「伏兵の反応も無いわ」詩織が、最後ドローンを撃墜するとそう報告する。
「見たいだな、各機編隊を組み直せ、もう目標は、目と鼻の先だ、最後まで気を抜くなよ」隆の指揮の元、コスモタイガー隊は、再び編隊を組むとクレパスを進んでいく。
「目標地点でまあと15秒、全機対艦ミサイルのロック解除・・・5.4.3.2.1、全機上昇!!」
隆の号令と共に一斉に急上昇でクレパスから飛び出していく61機のコスモタイガーは、攻撃目標のゴルバ型浮遊要塞の残骸に向け次々にミサイルを放っていった。
「目標の破壊を確認、全機帰投する」隆は、未だに爆発を続けるデブリを見ながらそう言うと機体をフレイヤにと向けたのだった。
その後も、コスモアドベンチャー必須のスキルとして小惑星やデブリ(ジャンク)から資源の発掘や回収訓練も開始する。船体アームや作業艇を出し、小惑星やジャンクから資源を発掘、回収していく。
これまた、なれない作業の為か船体アームぶつけて曲げてしまったり、作業艇を小惑星に擦ってしまったりと逆に壊してしまう場面もあったが、これも整備班や技術班による、修理訓練と教材として利用されたのだった。
3日目
昨日、フレイヤ(AI)に資源回収を続けるように頼み、休んだ優たちは、フレイヤの格納庫、四隻の突撃艇にめい一杯積まれた資源と、発掘中にの小惑星に山のように詰まれた売り物になるジャンクが積まれているのを見ることになる。とりあえず、艦内工場で、大型コンテナを多量に作り、それに入りきらない資材や資源を入れ牽引し最寄のギルド基地に向ったのだが、そこでまた一つの問題が起こったのだった。
スペースコロー群、テキサスサイドにあるコスモアドベンチャーギルド所有のコロニーに入港する。
入港して直ぐに資源やジャンクを買い取るバイヤーが、集まるドックへとフレイヤを進める。
そこで、ギルド、民間のバイヤー達に交渉し売るものの値段を決めるのだが、優が、交渉に行くと、相場よりかなり安く買い取り額を提示してくるのだ。
「レアメタルが、5000クレジット…レアアース3500クレジット、資源、資材、ジャンクが、合わせて6500クレジットってところだな嬢ちゃん」赤毛で大柄な筋肉質の男のバイヤーが、つけた値段は、現在の相場の半値よりやや上と言ったところだ。
「そんな!!…幾ら何でも安過ぎるわ!!」あまりの金額に優がバイヤーに食って掛かる。
チッ、ガキの癖に見たことも無い新鋭艦なんぞのに乗ってるんだ、どこぞの金持ちの嬢ちゃんだろうが…
つまり、年齢的にコスモアドベンチャーの名声的にもフレイヤのような、オリジナルの最新鋭艦もてるはずの無い優が、金持ちの娘の道楽でコスモアドベンチャーの真似事をしているように見られてしまったのだ。
「そんな事は無いぜ、最近この種類の資源や資材はだいぶ安くなってんだ…これでも、初顔合わせってことで大分、レートは良くしてるんだぜ、贔屓にして貰いたいからな」バイヤーは、内心とは裏腹に人のいい笑顔を浮かべて言う。
「えっ、でも」と優が、何かを考えるように口ごもるのを見て
バイヤーは、後一押しと思い言葉を続けようとするが、その時、バイヤーの後ろから男が話しかけてきた。
「ほう、いつからそんなに安くなったんだ?、これじゃ、海賊船を拿捕して売っても弾代にすらならないな」
「あん、誰だ言い掛かりを付けるのは!!」バイヤーが、商売の邪魔をした声の主の方に振り向き啖呵を切るが、その姿を見ると見る見るその表情を強張らせていく。
「随分、アコギな事をしてるじゃないか」
「アモンの旦那…この嬢ちゃんと知り合いで?」恐る恐るといった感じでアモンに聞く。
「ああっ、俺たちの雇い主だ」
「この、嬢ちゃんが」驚いたように優を一度見ると、アモンに向き直る。
その後、アモンとバイヤーとの値段交渉が始まり、結果的に総金額26000クレジットの収入になった。それでも相場並みかやや低いぐらいであろう。
優は、稼いだお金を使い弾薬・食料・消耗品・乗組員の娯楽用品などを補給すると再び訓練に戻った。
4~9日目
砲撃、対空訓練、高機動回避運動、比較的損傷の軽い廃艦を使っての修理や改造訓練、フレイヤとコスモタイガー隊の連携攻撃訓練、艦内に敵が侵入したと想定した白兵戦訓練などその訓練は、壮絶を極めていた。
艦内食堂で食事をしていた、愛香や隆、それに付き合っていたアナライザーが、「「優「姫」ちゃんは、確かに古代さんの血を引いてるぜ(わ)」」と愚痴るほどであった。
また、採掘やジャンク回収訓練も行い、訓練後の休憩時間や睡眠時間中は、フレイヤが引き続き行うことで、2日に一回は換金する事が出来ていた。
そして10日目
いつものように訓練をしているたのだが、香織が、奇妙な通信波をキャッチした。
何これ…SOS…救援要請!!
「艦長、ビルトフェルト暗礁宙域、D117フィールド・ポイントF143空域よりSOS信号受信…救援要請です!!」香織が叫ぶように報告する。
「どこからの救援要請なの?」
「それが…通信の出力が低い上にどうやらレーザー通信のようで…そこまで…」香織が申し訳なさそうに言う
「レーザー通信!? …非常時にレーザー通信なの超空間通信でなくて」優が、聞き返す。
星間を旅する宇宙船には、基本どんな文明LVの惑星とも通信が出来るように各種、通信装置が、搭載されているが普通星間内を航行する船は、光より早い超空間通信を行うことが普通で緊急時にレーザー通信を悠長に送る事はまず無いと言っていい。
超空間通信機が壊れているか、超空間通信以外でこちらの通信装置で対応不可能な超光速通信法があるのか、超空間通信の技術がないのか…1番以外は、アンノウンの確立が大…
でも、救援要請をキャッチしたのだから…やっぱり助けないと
「香織さん、全艦に通達、本艦は、救援信号をキャッチした為、現場に急行する。場合によっては、戦闘もありえる。各員、配置に付くように」優が、そう指示を出すのと同時に香織が、全艦に通達し、アナライザーが、フレイヤを発信させる。
優は、この後、最初の運命の出会いをするのだった。