アムロは、νガンダムのモニター越しに自分たちを助けてくれた戦闘機部隊…コスモタイガーと言ったか…の母艦と思われる、《戦艦》フレイヤを見ていた。グラップ級いや、ホワイトベース…ネェルアーガマより大きいな、ラー・カイラムほどではないが自分達の世界なら間違いなく艦隊旗艦クラスの戦艦だ。
白を基調とした海上艦のように連装の砲塔が艦橋を中心に艦の前後に睨みを利かすように付いている。しかもそのサイドにカタパルトブロックではなく空母クラスの艦艇がくっ付いているのだ。いわいる、三胴艦という奴だろう。これだけの船を所有するコスモアドベンチャーという組織は一体…
アムロの分析は、検討外れなのだが、其れも仕方のない事だろう。
アムロ達の居た世界では、コスモアドベンチャーという宇宙の冒険者など居なかったからだ。そもそも、太陽系の木星域が活動限界のUC時代では、冒険者の意味など無いといっていい。精々、スペースクルザーでコロニー付近を飛ぶ金持ちがいるくらいで個人所有の軍艦など無いと言いっていいだろう。
しかも、先程、通信したフレイヤの艦長…明らかに少女だったぞ、いくら女性の年齢は読みにくいとはいえどう見ても10代だ…しかも下手をすれば半ばぐらいにも見えたぞ。
ブライトもホワイトベースの艦長就任時は19歳だったが、あれは、艦の軍人が先の戦闘で皆戦死した為、残った士官がブライトのみだったためだ…
MSをも圧倒する高性能戦闘機、艦隊旗艦並みの戦艦を所有する聞いた事も無い組織、その艦長が、10代半ばから後半の少女、警告もなしに攻撃してきた謎の敵に異世界…
考えれば考えるほどに頭を抱えたくなる。
アムロは、νガンダムから通信ワイヤーを発射しシャアのギラ・ドーガと接触回線を繋ぐ。
「シャア、この後どうする?」
「どうするも無いだろう、こちらは、酸素も推進剤も切れ掛かっている。今は、フレイヤの誘導に従うしかあるまい」
「ああっ、それはそうなんだがな…どうも相手が読めなくてな」
「それは、私も同じだよ…あの優と言う少女が、あの船の艦長かも怪しいものだしな」
「どういうことだ?」
「なに、ミネバのことを思い出しただけだ」
シャアは、フレイヤの艦長が、子供と言っていい優がしている事で一瞬、ミネバのことを思い出していた。
ジオン公国を支配していた、デギン・ザビの次男、ドズル・ザビ、その娘、ミネバは、ネオ・ジオンの象徴として大人たちに物心付く前から利用されていた。
外界と隔絶したアクシズという世界で教育と刷り込みにより、偏見に満ちた少女となっていた。
その時のことを思い出し、苦虫を潰した表情浮かべる。
「成る様にしかならんか、歯がゆいな」
「珍しいな、貴様が、そんな事を言うとは」
「茶化すな、アムロ!! 交渉材料もなければ、命が助かる為には何としてでもフレイヤに保護されなければならんのだ…」
「そうだな…シャア、正直貴様が、やった事は許せない、だが、状況が状況だ頼りにさせてもらうぞ」
「了解した、アムロとりあえずは、フレイヤの誘導に従おう…その後は、慎重にこの世界の情報を聞き出すんだ」
「分かっている…ケーラ、クエス、ハサウェイ…着艦体制に入るぞ、MS用のカタパルトデッキじゃないからな。慎重に行けよ」
「「「了解」」」
5機のMSは、フレイヤ左舷空母ブロックの滑走路の誘導灯に向かって進んでいった。
「4機のロボットと大型戦闘機1機が、本艦に接近してきます。彼らが此方と会談する一行のようね」香織がレーダーを見ながら言う。
「メインスクリーON」優が指示を出すとフレイヤが、メインスクリーン、ホログラムスクリーンを起動させ近づいてくるMSを映し出させる。
黒と白のモノトーンのロボット、デュアルアイに角…たぶんアンテナだろうけど何でVの字であんなに目立つ位置なのよ。
緑のモノアイにピンクのモノアイのロボット…
それに緑のモノトーンの機体に近い形のロボット…
本当に人型の機動兵器なんだ…
優は、近づいてくるMSを驚いた表情でみていた。人型機動兵器などそれこそSFアニメや映画にしか出てこない夢物語の兵器だからだ。
それにしても、コスモタイガー隊からの映像を見た優は、あのロボットが、星間戦闘用の兵器とは思えなかった。戦闘機の中でも対艦戦闘に主眼を置いた芋虫型戦闘機は、その重武装ゆえに他の戦闘機に比べ、スピードが劣るのだが…あのロボットは、其れにすら全く追いつく事が出来ずにいたからだ。それに技術班の解析では、ロボット使用している、粒子兵器では戦闘機はともかく艦船には、駆逐艦クラスですらダメージを与えるの困難とのことだった。
技術形態が、違うだけではなく、まるで過去から迷い込んだような印象が受ける。優が、MSを見て感じた第一印象がこれであった。
「フレイヤ、左舷滑走路にあのロボットを誘導して、滑走路誘導灯点灯」
「了解しました。誘導ビーコンを送ります」
「海賊の戦闘機の母艦が、まだ近くにいるかもしれないわね…隆に連絡、小隊各員に無人機2稀づつ付けて、周辺の哨戒にあたるように」
「了解、隆さん…ストーム小隊は、無人機を2機づつ付けて哨戒任務に就いて下さい」
「こちら、山本、了解した。…ストーム小隊各機出るぞ」
香織からの連絡を受け、隆がコスモタイガーのコックピットに飛び乗る。
「ストーム2、了解」
「ストーム3、了解」
「ストーム4、了解」
「ストーム5、了解」
隆の小隊である、ストーム小隊の隊員たちも手早く発進準備を整えていく。
「無人機、重力カタパルトに移動…発艦準備完了」
無人のコスモタイガーも整備員とフレイヤのコントロールにより右舷の滑走に移動していく。
隆たちストーム小隊が、次々に発信すると無人機もその後追うように発艦していった。
「各機、無人機を連れて散開、索敵を開始しろ」隆の号令のもとストーム小隊は、それぞれの担当エリアに散っていった。
「ベガ級突撃艇は、コスモホークを発進させて輸送艦の直衛に当たらせて」
コスモタイガー隊が偵察に出たのを確認すると優は、海賊の来襲を警戒し無人コントロールの突撃艇に指示を出した。
「総員、第一級警戒態勢…足の短い芋虫が居たんだから…近くに敵船がいる確立は高いわ…気を引き締めるように…愛香さん、アモンさんは、ロボットのパイロットの出迎えをお願いします。その後は、ブリッジに案内してください」
「分かったわ」
ホログラムスクリーンに映る、愛香が答える。
優は、着艦態勢に入ったロボット見ながらどう相手の情報を聞き出そうか考えていた。
アムロ達は、フレイヤの誘導ビーコンに従いMSをフレイヤ左舷の飛行甲板に着艦させた。
その後、技術班の隊員の誘導に従いながら大型機用のエレベーターを使い艦内に入った時、急に体が重くなるのを感じた。
何だ!!…突然の事で一瞬罠かと慌てるが、その後は特に何も無く、体の重みも次第になれたのか違和感は、無くなっていた。
何だったんだ今のは、
「アムロさん」
「何だ? ハサウェイ」
「此処、重力がありますよ…さっきの体が重く感じた時に慌ててしまってコックピット内で立ち上がってしまったんです。そしたら、体が浮くことなく立ち上がれたんです!!」
ハサウェイの言葉を聴き、アムロもまた、立ち上がってみるが確かに無重力状態での浮遊感がまるで無かった。
シャアやケーラ、クエスも同様のようで驚きの声が聞こえてくる。
ますます、SFファンタジーだな…遠心力での人工引力でなく重力発生装置なんてものが本当にあるならな…アムロは、自分たちの常識がまるで通用しない事に頭を抱えたくなる。
だが、こんな事で驚いていた事が馬鹿馬鹿しく思えるくらいの衝撃を受ける出会いが待っていることをアムロは、知る由も無かった。
MSから降りたアムロ達は、自分たちを迎えに来てくれた人物を見て固まっていた。あまりの事に思考がついていかずに、頭の中が真っ白になっていた。
自分たちに話しかけてきた、セミロングの黒髪を無造作に後ろで束ねている眼鏡をかけた、アジア系の美女は、固まっている自分たちを不思議そうに見ているが、アムロもシャアもそんな事に気が付かないほど混乱していた。
愛香と名乗った、アジア系の美女の隣にいる人物…人物と言って良いのかも甚だ疑問だが…それを見たとき暫く思考が停止してしまっていた。
そこに居たのは、2メートルを超える巨体を重そうな装甲服で包み仁王立ちしている、ワータイガーだったからだ。
「俺の顔に何か付いているのか?、それともリシュタス人を見るは、初めてなのか?」ワータイガーの男…アモンが、問いかける
アモンとしては、笑顔で言ったつもりなのだが、それを見たケーラは、「ヒッ」と小さな悲鳴を上げるほどおびえていた。
「すまいな、私たちは、リシュタス人というの聞いた事が無いし、貴方の様な種族ともあった事が無いのだ」シャアが答えるとアモンは、ぞれじゃ仕方ないかと肩をすくめながら言う。
「とりあえず、こんな所で立ち話もなんだし…ブリッジに案内するわ…艦長も待ってるしね」
愛香は、そう言うと先導するように歩いていく。
アムロ達もその後を付いて歩いていくが、あまりに想定外の事が立て続けにおきたため…暫くの間、誰一人として一言も話す事は無かった。