はじめまして、滝川剛という者です。某所でのガンダム全面規制を受けて、此方に来ました。加筆修正を加えた方をちまちまと投稿します。
まだまだ未熟なので、至らぬ点をご指摘下さればありがたいです。それを糧に精進したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
このお話は、TSもの、ギャグものです。内容は、もしも高町なのはの前世がマスターアジアで、尚且つ記憶を持っていたならです。
翠屋次女『高町なのは』マスターの記憶を持った彼女が、魔法渦巻く世界で、ガンダム・ザ・ならぬ、エース・ザ・エース東西南北中央不敗スーパーなのは目指して、リリカル世界に多大な迷惑を掛けるお話です。
漫画超級! の設定が入っており、一部今川作品ネタがあります。キャラ崩壊、東方不敗()なのでご注意下さい。それでは第1話をどうぞ。
※どうしても感想返しの書き込みが出来なかったので、代わりにこちらで感想を下さった皆様にお礼を述べさせて貰います。
第1話 師匠転生すの巻
地平線から燃えるような朝日が顔を出し、熾烈な闘いを終えた海岸を暖かく照らしていた。その眩い光に照らされ、今一人の男が息を引き取ろうとしていた。『東方不敗・マスターアジア』である。
愛弟子であるドモン・カッシュの腕の中、マスターアジアは燃える朝日を眩しそうに見詰めた。
「……美しいな……ドモン……」
生きて日の目を見るのはこれで最期であろう。ドモンもそれは判っている。その両眼から溢れる涙を堪えながらも応えた。
「ハイッ、とても美しゅうございます」
マスターアジアは頷くと朝日に向かい、涙に濡れた目を見開いた。最後の力を振り絞る。ドモンもそれを察し2人は同時に叫んだ。
「流派 東方不敗は!?」
ドモンは溢れる涙のまま同じく朝日に向かい、
「王者の風よっ!」
マスターも涙を溢れさせ叫ぶ。
「全……新……!」
「系列!」
ドモンの叫びにマスターは、残り滓のような最期の力を込めて拳を握り締めドモンと共に叫んだ。
「天破侠乱っ! 見よ! 東方は赤く燃えているうううっっっ!!」
数奇な運命に翻弄された、師匠と弟子の最期のやり取りであった。マスターアジアは満足だった。それを最期にその手が力無く落ち、その目は静かに閉じられた。
「師匠おおおおぉぉぉっっ!!」
ドモンの慟哭が辺りに響き渡る。マスターの死を悼むように海猫が乱舞し、波は猛り海岸を強く打った。
愛弟子ドモン・カッシュに抱かれ赤く燃える東方の下、マスターアジアはその波乱の生涯を閉じた。その表情は安らかであった……
マスターはふと、温かい温もりの中を漂っているような感覚に気付いた。
妙な感じだった。目覚めているような、目覚めていないような曖昧な感覚。身体はタールの中に沈んだように、言う事を聞かない……
思考もままならない。ただ温かさと、優しさが周りに溢れている気がした。そう思ったのも束の間、再び意識が薄れて行く……
ひどく眠かった……
その状況が長く続く……
永遠にも感じられる時の流れ。それでも少しづつだが意識が明確になりつつあった……
そしてある日、ようやく意識がいくらか明確になった。
此処は…… ?
マスターは目を開く。見慣れない部屋の中に居るらしい。
これが……死後の世界……地獄と言うものか……
そんな事を思う。今までの所業から当然だと思った。すると突然、巨大な女の顔が、ずいっとばかりに視界を埋め尽くした。
何だ? このモビルファイター張りに巨大な女は!?
信じられない程大きな女が間近に迫っている。マスターアジアは危険を感じ、とっさに女から離れようとする。しかし身体は思うように動かないままだった。
ぬうう…… 死んだこの身では、満足に動く事もままならぬのか……?
それでも動かぬ身体にムチ打って立ち上がろうとする。おぼつかないながらも、直ぐ近くに有った柱のような物を掴む。ヨロヨロだが身体を起こし、立ち上がる。その時妙なものが目に入った。
何と!?
柱を掴む紅葉のような小さな手、それは紛れもなく赤子の手であった。柱と思ったものは、ベビーベッドの柵であったのだ。訳が解らないマスターはいきなり抱き上げられていた。先程の巨大な女だ。
「見て見て なのはが捕まり立ちしたわよ」
「おうっ、可愛いなあ、なのはお父さんだぞおおっ」
さらに巨大な男が現れ、満面の笑みを浮かべてマスターの頬っぺたをむにむに撫でる。
「私にも抱かせてよおっ」
「美由希あんまりはしゃぐと、なのはがビックリするだろ」
更に巨大な子供の兄妹がこちらを見上げているのが見えた。女達が大きいのではない。マスターが小さいのだ。
「何だとおおおおっ!?」
そこでやっとマスターアジアは自分が赤ん坊になっている事に気付き驚愕した。ちなみに叫んだつもりだったが、小さな口から出たのは、ダアダアであった。
東方不敗マスターアジア、本名シュウジ・クロス。元『シャッフル同盟』にして最強の『キング・オブ・ハート』の称号を持っていた男は、何故か別世界地球の高町家次女、『高町なのは』として再びこの世に生を受けたのである。
それも前世の記憶を持ったまま……
どうやら今まで意識がハッキリしなかったのは、赤ん坊の脳故だったようだ。状況を把握したマスターは、ベビーベッドに寝かせられながらも考える。
これも……前世の悪行の報いか……
もう観念するしか無かった。何故こうなったかは解らないが、高町なのはとしてやって行くしか無さそうである。赤ん坊の身ではどうしようも無い。
何か意味が有るのかもしれんな……
ちんまい腕で腕組みをする。さっぱり似合わないと言うか、愚図ってるようにしか見えない。それは置いておいて、
これも自然の摂理か……まさしく輪廻転生なり!
赤ちゃんでもやはりマスターである。こんな時でも直ぐに持ち直した。こうして、元東方不敗マスターアジアこと高町なのはは、この世界で一からやり直す事を決意した。マスターらしい器の大きさである。
細かい事を気にしていたら、素手でモビルスーツは碎けないのだ。
そしていささか早いと言うか早すぎるが、9年近い歳月が過ぎていた。
まだ少し空気が冷たい春先の朝。ようやく暖かくなって来た朝日が室内を柔らかく照らしていた。高町家の食卓である。
テーブルに着き新聞を読んでいる渋めの中年男性は、高町家経営の喫茶店『翠屋』のマスターでマスターの父……では無く、なのはの父親士郎さんである。
そしてキッチンで朝食の支度に勤しんでいる、優しげで綺麗な女性は、なのはの母親桃子さんだ。喫茶翠屋のパティシエでもある。
「お腹空いたあっ」
「何だ美由希、だらしないぞ」
賑やかに入って来たのはなのはの兄で、士郎父さん似の整った顔立ちの大学生恭也兄さんと、姉で眼鏡っ子の可愛らしい高校生美由紀姉さんである。自宅に有る道場で、朝稽古を終えて来たところだ。
高町家は代々剣術家の家系でもあるので、2人共鍛練を欠かさない。
「あら なのははまだかしら?」
桃子母さんが今だ姿を見えない末娘の事を聞いた時、
「おはようございます、父上母上、兄上姉上、今日も良い天気で何より ぬわっはっはっ」
可愛らしい少女の声で、えらく爺くさいと言うか時代錯誤な挨拶が朝の高町家に響いた。声質と言葉使いがまったく合っていない。ハッキリ言って違和感有りまくりである。
姿を現したのは、白い制服を着た小学生の可愛らしい少女であった。茶色がかった髪をおさげにし、ピンク色のリボンを着けているこの少女『高町なのは』こそ、転生したマスターアジアの成長した姿である。
なのはの喋り方にみんな慣れっこなのか、家族みんなで普通に挨拶を返す。士郎父さんは新聞を置くと、愛娘に尋ねていた。
「おはようなのは、今朝も早くから出ていたね 今日もジョギングかい?」
「左様です、朝の張り詰めた空気が心地好い、これも早起きの賜物でしょう……」
しみじみと小学生とは思えないと言うか、ジョギングから戻った元気なおじいちゃんのような返事をするなのはであった。
ペロリと朝食を平らげ、なのはは鞄を背負い学校に行く準備を整えた。どうでもいい駄情報だが、その動作一つ一つに無駄が無い。流れるような動きである。
「それでは学校に行くので、しばしの間さらば!」
「行ってらっしゃい、車に気を付けるのよ」
「心配無用、母上!」
声を掛ける桃子母さんに、なのはは自信満々に笑いながら靴を履くと、おさげ髪を揺らして猛烈なスピードで走り出した。何か走る足の動きが見えない。桃子母さんはその後ろ姿を見送りながら、
「すっかりあれで固定されちゃったわねえ……やっぱりあまり構ってあげられなかったせい……?」
深いため息を吐くのだった。
小学校に入学したなのは、その小学生とは思えない言動と、堂々とした態度とで、着いたあだ名が『じいさん少女』ともう一つ、『師匠』であったと言う……
*
さて……朝の通学路である。
通勤のサラリーマンや学生が行き交う中を、通学中のなのはは疾風の如く駆け抜ける。目にも留まらぬスピードで、人々の間をぬってスイスイ進んでいた。何故か腕組みで。今日も朝から全力全開のようだ。しかし学校の方角とは逆のようだが……
しばらく行くと、前方から通学に使っているバスがやって来た。なのはは悪戯っぽい笑みを浮かべると、通りすがり様にバスの上へと、ひらりと飛び乗った。
腕組みをしながら屋根の上に立ち、おさげ髪とスカートをなびかせて、気持ち良さそうに風に吹かれる。
(フフフ……こうしておると、『風雲再起』の背に乗って、大地を駆けたのを思い出すのお……)
などと弟子にして愛馬の事を思い出し、感慨に耽りながらその小さな背に哀愁を漂わせるなのはだった。
そのバスの後部座席に、2人の少女が座っていた。なのはと同じ白い制服を着ている。外国人の勝ち気そうな少女『アリサ・バニングス』と、カチューシャを着けた大人しそうな少女『月村すずか』である。
いつものバス停でなのはが乗り込んで来ないのを見て、アリサはため息を吐いた。バスの天井に視線を向けると、おもむろに窓を開け上に向かって叫んだ。
「なのは! またアンタ屋根に乗ってるわね、迷惑だから降りなさい!!」
屋根の上で、王者の風ならぬ朝の風を楽しんでいたなのはは苦笑を浮かべた。その様子は、孫にたしなめられるご老人のようである。
なのはは仕方無く次の停留所で屋根から降り、バスにちゃんと乗り込んだ。アリサ達の所へ向かう。
「まったく……なのははロクな事をしないわね……」
アリサは隣に座るなのはに、さも呆れたように文句を言うが、口元は笑っている。いい加減馴れているようだ。
「なのはちゃん、おはよう……」
すずかは微笑んで挨拶する。なのはもニコリとし挨拶を返す。
「ウムッ、アリサもすずかもおはよう、今日も良い天気で何よりだ」
「なのはは相変わらず、爺くさいわね……」
なのはは気さくに2人と話している。アリサとすずかは友人である。小学年の時に、ある事件が元で仲良くなったのだ。片や前世を合わせると大体58歳、片や9歳の少女達人は世代を越えて、妙な友情で結ばれていた。
まあ……なのはからすると、孫の相手をしているのに近いかもしれないが。アリサとすずかは、この異様なまでに頼りになる同級生に良く懐いているのである。
私立聖祥大附属小学校。なのは達が通う学校である。所謂名門校と言うヤツだ。其処で他の生徒に混じって授業を受けるなのはの姿が有る。
元々博識で教養も高く、本来なら授業を聞き流してもいいのだが、元居た世界より数百年は過去で別世界らしいこの地球は色々と興味深く、楽しんで授業を受けているのである。
本人は普通を装っているが全然隠しきれておらず、クラスの同級生達からは『なのは師匠』と慕われていた。
体育の授業。今日はドッジボールのようだ。その中で、異様に気合いの入っている2人の少女が居た。1人はなのは、もう1人はすずかである。チームが別れた少女達はニヤリと笑い合う。
「なのはちゃん、今日は負けないよ!」
普段大人しいすずかにしては、珍しく気合いが入りまくっている。
「フフフ……抜かしおるわ、すずかよ全力で掛かって来い 儂が全て受け止めて見せようぞ!」
体操着ブルマに着替えたなのはは、可愛らしい外見に似合わず腕組みで不敵に笑う。とっても偉そうであった。
ピイッ~ッ!
ゲーム開始の笛が高らかに体育舘に響き渡る。それと同時になのはとすずかは叫んだ。
「行くぞ、すずかあっ! ドッジボールファイトォッ レディィッ!」
「ゴオオオオッ!!」
その瞬間、コートは戦場と化した。
「うぎゃあああっ!?」
「キャアアアアッ!」
「あべしっ!?」
「ひでぶっ!!」
次々と悲鳴が上がる。約2名の投げ合う、凶器と化したボールによってあっという間にコート上の人数が減ると言うか、吹っ飛ばされて行く。
「なのはちゃん 今日こそアウトにして見せるよっ!」
約2名の片割れ、すずかが人間とは思えないスピードでコートを疾走しながら叫ぶ。
「フハハハハ すずかよ、お前に儂が倒せるとでも思っておるのか!?」
そしてもう1方の片割れ、なのはは腕組みをしながら上半身のみの動きで、ボールをひょいひょい避け高笑いする。
「ええいいっ!」
すずかの超スピードボールが、なのは側チームに襲い掛かった。パッコーンと快音を響かせてアウトになるなのは側の同級生達。アウトになった子供達は、ボールがぶつかった箇所を擦りながらも外野に着く。
流石に2人共、手加減をするくらいの良識は有ったようだ。下手をすると死人が出そうなので一安心である。
さて……以前より遥かに劣るとは言え、なのはと渡り合えるすずかだが。実は彼女、特殊な一族の末裔で、常人を遥かに上回る身体能力を持っているのだ。
以前はその事で悩んだ時もあったのだが、人間の身で常識外れのなのはを見て、
(私って思ったより大した事なかったんだ。だってなのはちゃん凄いし!)
とダイナミックに勘違いし今では特に身体能力を隠してもいない。なのはが居るので誰も気にしない。しかしなのはを人類のカテゴリーに入れていいものか悩む所であるが……
しかしすずかにしてみれば、自分が全力でぶつかっても勝てない程の相手が居るのは嬉しいのだろう。
さて戦況だが……なのはと同じチームでまだ生き残っていたアリサは、すずかの球をおでこにパッコーンと受けてしまった。こぼれ球が上空に上がる。
「儂に任せておけい! アウトになどさせん!」
なのははボールを追い、米つきバッタのように飛び上がった。軽く5メートルは跳んでいる。空中でボールをキャッチすると、素早くすずかを狙ってボールを投げ付けた。唸りを上げて飛ぶボール。すずかは避けず微かに笑みを浮かべ、
「なのはちゃん手加減したね、それが命取りだよ!」
彼女はボールの勢いに逆らわず、ふわりと右手でボールを包み力のベクトルを変えてやる。相手の力をそっくり返してやるのだ。更にすずか自身のパワーも上乗せし、まだ着地前のなのはに向かって手加減無しで投げ付けた。
「でええええええいぃぃっ!!」
なのはピンチである。ボールはドギュルルルッという擬音がピッタリな勢いで彼女に迫る。当たったら普通に死にそうだ。すずかは拳を握り締め勝利を確信し叫んだ。
「なのはちゃん、空中だと何処にも逃げられないよ! 私の勝ちだああぁぁっ!!」
何かキャラが変わっているというかノリが変である。なのはに悪い意味で影響を受けてしまっているようだ。
「甘いわぁ! すずかぁぁっ!!」
なのはが吼えた。その右手が闇色の光を放つ。
「ダァクネス、フィンガアァァッ!!」
輝く右手が真っ向からボールをガッチリと受け止めていた。摩擦熱で焦げたような臭いが辺りに漂う。
「ふははははっ! なっちゃいない……なっちゃいないぞすずかぁぁっ!!」
すると、高笑いするなのはの右手のボールがダークネスフィンガーのパワーに耐えきれず、ポンッと破裂した。破片が炎に包まれてパラパラとコートに落ちる。
ピピ~ッ!
審判の先生の笛の音が響き渡った。
「高町さんアウト!」
「何と!?」
ようやくコートに着地したなのはは愕然とした顔をする。
「ボールの破片が落ちたから高町さんはアウトね……次はボールを破裂させないようにっ」
何時もこんな光景を見慣れている先生は至って普通に注意した。周りの同級生達も、今日は師匠の負けかあ~、今日の賭け俺の勝ち、給食のプリンも~らい、などと慣れたものである。この世界も中々おおらからしい。そんな中なのはは右手を見詰め、
「まだ『気』のコントロールが甘いのう……これでは人間に使ったら、頭が西瓜の如く砕けてしまうわい……」
などと恐ろしい事をぶつぶつ呟いている。恐ろしい小学生であった。そんななのはを見てすずかはクスリと笑う。
(なのはちゃん、また強くなってるね……あの頃よりずっと……)
彼女には、なのはが今のゲームでも力をセーブしていたのが良く判っていた。本気を出したらとても敵うまい。
あの頃……それは小学1年生の時……なのは、すずか、アリサが仲良くなった切っ掛けのある事件の事である……
つづく
一応Gガン流に嘘次回予告を。
皆さんお待ちかねええっ! なのはに襲い掛かる凶悪の武装集団に、血に飢えた剣鬼! それらになのはは敢然と立ち向かうのです! 幼き身で果たして闘い抜く事が出来るのでしょうか? なのはの雄叫びが轟くのです!!
魔闘少女リリカルマスターなのは『師匠色々と爆発してみるの巻』にレディィィッ、ゴォオオウゥゥッ!!