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No.33028の一覧
[0] これじゃない聖杯戦争【Fate/Extra】(完結)[いんふぇるの。](2014/08/23 20:17)
[1] 契約[いんふぇるの。](2012/05/06 15:49)
[2] 黄昏[いんふぇるの。](2012/05/06 13:06)
[3] 覚醒[いんふぇるの。](2012/05/08 20:45)
[4] 初陣[いんふぇるの。](2012/05/16 20:22)
[5] 約束[いんふぇるの。](2012/06/10 22:23)
[6] 騎兵[いんふぇるの。](2012/07/16 18:57)
[7] 決着[いんふぇるの。](2012/08/18 11:23)
[8] 迷い[いんふぇるの。](2012/08/20 23:06)
[9] 想像[いんふぇるの。](2012/08/25 21:04)
[10] 令呪[いんふぇるの。](2012/09/03 11:42)
[11] 道程[いんふぇるの。](2012/10/26 12:55)
[12] 戦争直前[いんふぇるの。](2012/10/27 23:56)
[13] 在り方[いんふぇるの。](2012/12/09 17:45)
[14] 名無しの森[いんふぇるの。](2012/12/16 20:05)
[15] [いんふぇるの。](2013/01/11 08:33)
[16] 裁判[いんふぇるの。](2013/01/12 22:59)
[17] [いんふぇるの。](2013/01/22 19:18)
[18] 雪原の策謀[いんふぇるの。](2013/03/01 07:45)
[19] Interlude:獣[いんふぇるの。](2013/03/01 02:39)
[20] ただ、前へ[いんふぇるの。](2013/05/10 22:31)
[21] 選択[いんふぇるの。](2013/05/28 19:03)
[22] 少女達の死[いんふぇるの。](2013/07/06 22:05)
[23] ハンティング[いんふぇるの。](2013/08/12 17:17)
[24] 憤怒[いんふぇるの。](2013/08/27 13:03)
[25] 届かない思い[いんふぇるの。](2013/11/05 19:42)
[26] 深淵の知識[いんふぇるの。](2014/01/06 23:26)
[27] 創るは世界、挑むは拳[いんふぇるの。](2014/02/15 20:14)
[28] ぼーいみーつきゃっつ[いんふぇるの。](2014/02/18 23:14)
[29] 神話の戦い[いんふぇるの。](2014/02/20 20:05)
[30] 憎しみの果てに[いんふぇるの。](2014/03/30 19:37)
[31] いってきます[いんふぇるの。](2014/07/14 08:33)
[32] 背負ったモノは[いんふぇるの。](2014/07/28 20:34)
[33] おかえり / ただいま[いんふぇるの。](2014/08/01 21:20)
[34] これじゃない、聖杯戦争[いんふぇるの。](2014/08/07 19:26)
[35] かつてあった未来:狐は月で夢を見る[いんふぇるの。](2014/08/07 19:25)
[36] サクラ色の想い[いんふぇるの。](2014/08/23 09:17)
[37] 外伝:雪原と白猫と少年[いんふぇるの。](2012/07/02 15:21)
[38] 外伝:エクストラエキストラ[いんふぇるの。](2014/08/05 20:24)
[39] 番外編:赤王劇場[いんふぇるの。](2012/09/06 19:02)
[40] 番外編:いつか、どこかでの再会[いんふぇるの。](2012/12/12 08:35)
[41] 嘘予告:これじゃないCCC[いんふぇるの。](2013/04/04 21:39)
[42] 番外編:安らかな日々を貴方に[いんふぇるの。](2013/06/14 17:42)
[43] 番外編:その男、SG持ちにつき[いんふぇるの。](2013/07/20 23:34)
[44] 番外編:ときめき☆サヴァぷらす[いんふぇるの。](2014/03/18 14:47)
[45] 番外編:幸せの向こう[いんふぇるの。](2014/12/18 21:48)
[46] 番外編:VSタマモナイン[いんふぇるの。](2015/01/02 00:22)
[47] 設定とか裏話とか[いんふぇるの。](2014/08/31 22:22)
[48] 外伝:あの花の名を覚えていますか[いんふぇるの。](2015/08/03 21:26)
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[33028] Interlude:獣
Name: いんふぇるの。◆06090372 ID:5e37ad7c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/03/01 02:39



暗いそこ。

静かなそこ。

何もないそこで。

獣は暖かさに包まれていた。

獣は、優しい温もりの中で、『それ』の傍に座り幸せに包まれていた。

悠久よりも長く、久遠よりも遥かに求めていた『それ』の傍にいる。

暗く、静かで、何もない世界に居ながら。

その事実だけで獣は万来の幸福に包まれていた。

唯一、不満があるとすれば、獣は『それ』に触れることを許されていない、といこと。

獣に許されたことは、無防備な『それ』を外敵から守るための盾となること。

逆にいうと、そもそも獣にできることはその程度しかない。

それ以外の機能を獣は持っていない。

だが、獣はその機能だけで満足している。

『それ』が危機にさらされたときにのみ、守るという行為の中で『それ』の盾になることで初めて触れることができるのだ。

だから獣は満足していた。

盾となる機能しか持たされずに生み出された獣。

獣は所詮、本体から切り離された尾の一つ――端末の一つでしかない。

消え逝く本体が、自我の薄れる直前に、『それ』を守るために切り離した稚拙な端末でしかない。

故に、出来ることは少なく、そもそも何かをする能力もほとんどない。

獣はただ、己の能力の限界の許す限り――いや、自身の存在の全てをかけて『それ』の盾となり守るだけなのである。

いつか、本体が自我を取り戻し、端末が本体に還るその日まで、獣は『それ』を守り続けるだろう。

そんな、酷く制限された生を獣は――とても、喜んでいた。

獣にあるのは、圧倒的幸福感。

例え、己が切り離された端末といえども、『それ』の傍に居ることができる。

その事実だけで十分なのだ。

触れることを最小限とされたことに不満はあれど、触れる機会はある。

実際に、数度ではあるが、『それ』に触れる機会はあった。

あれは、良かった……と、獣はその顔を喜悦に染め、過去の出来事を陶酔する。

普段は傍にいる己にまったく気づいてくれない『それ』も、触れているときだけはその双眸に獣を映してくれる。

その情景を思い出し、獣は身震いする。

まるで発情したように熱に浮かされ、酒に酔った様なふわふわとした浮遊感を感じている。

獣の現状を言い表すなら、幸せに溺れている、だろうか。

性質の悪いことに、獣は溺れることを喜んでいることだ。

そんな極楽浄土にいる獣が、ふと、その顔を嫌悪に歪めた。

ここ最近、獣が守る『それ』に近づいてきた輩がいたことを思い出したのだ。

普段、『それ』の傍に居れるのは獣だけだ。

だが、その輩はどういう手段か知らないが『それ』に近づいてきた。

獣は近づいてきた不貞の輩に対し、激しい嫌悪と噴出す憎悪を持った。

だが、その不貞の輩は、『それ』の傍までくることはなく、離れた場所で声をかけてくるだけだった。

本当ならば、その輩の喉笛を喰いちぎってやりたいと獣は思ったが、そうするためには『それ』から離れなければならない。

それは嫌だ。

この暗い空間から出ることはできないが、『それ』から離れるぐらいはできる。

だが、獣は離れない。

嫌だから。離れたくないから。

だから、不貞の輩は睨むだけにしてやった。

もっと近づいたらこの牙を突き立ててやると思ったが、侵入者はこれ以上近づくことも無く去っていったので、良しとした。

その嫌な出来事を思い出し、獣は顔をしかめる。

次は無い――と。

そう想った瞬間、獣は素早く立ち上がり、全身の毛を逆立て威嚇する。

その想いが引き寄せたのか、誰かが……また、侵入してきたのだ。

それも、前回とは違う。

確実に、とてつもなく早く、それも、敵意をもって近づいてくる。

敵意、敵意だ。

近づいてくるだけで殺してやりたいというのに、侵入者はあろうことか敵意を持っている。

だから獣は侵入者を――
















「剥き出しのその魂――――見つけたあぁぁぁぁぁぁぁ!」



「つ・か・ま・え――――」









「な、に、これ――?」

――喰った。

柔らかな肉に牙を突きたて喰らいつく。
筋繊維を断ち、血管を引きちぎり、骨を噛み砕き、神経を磨り潰す。
臓物を食い破り、噴出す血を飲み干し、溢れ出る魔力を取り込み、その『魂』を喰らい、存在を消化する。

獣は外部の脅威に対し、盾となる機能しかない。
だが内部に脅威が来るのならば、直接攻撃することができる。

ならば今必要なのは盾ではなく刃だ。
敵を殲滅し撃滅し消滅させる刃が必要なのだ。

「ああ!?嫌!嫌ぁ!」

いまや獣は刃でしかない。
慈悲もなく容赦も無く、ただ敵を滅する刃でしかない。
与えられた機能の範囲を超え、与えられた能力の限界を超える。
獣は全身全霊で、その存在の全てを賭けて敵を滅する刃となる。

だから獣は――








「食べないで!!やめ――!」

喰った。








暗いそこ。

何もないそこ。

静かになったそこで。

獣は暖かさに包まれていた。

金色の毛は血に染まり、自慢の美しさは見る影も無い。

だが、獣は幸せだった。

獣は――彼女は守れたのだ。

あらゆる外敵から、『それ』を守る。

それだけが、獣の喜びであり生きる意味。

だから、獣は、いつか彼女に還るその日まで――



――主の傍で、温もりにまどろむ――


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