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No.33132の一覧
[0] 【無印完結・チラ裏から】もしも海鳴市にキュゥべえもやってきたら?【リリカルなのは×まどか☆マギカ】[mimizu](2014/10/15 23:22)
[1] 【無印編】第1話 それは不思議な出会いなの? その1[mimizu](2014/08/15 03:40)
[2] 第1話 それは不思議な出会いなの? その2[mimizu](2012/05/19 14:49)
[3] 第2話 魔法の呪文はリリカルなの? マギカなの? その1[mimizu](2012/06/24 03:48)
[4] 第2話 魔法の呪文はリリカルなの? マギカなの? その2[mimizu](2012/05/15 19:24)
[5] 第2話 魔法の呪文はリリカルなの? マギカなの? その3[mimizu](2012/05/19 14:52)
[6] 第2.5話 見滝原は危険がいっぱいなの? その1[mimizu](2012/05/23 19:04)
[7] 第2.5話 見滝原は危険がいっぱいなの? その2[mimizu](2012/06/02 12:21)
[8] 第2.5話 見滝原は危険がいっぱいなの? その3[mimizu](2012/12/25 18:08)
[9] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その1[mimizu](2012/06/02 12:52)
[10] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その2[mimizu](2012/12/25 18:39)
[11] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その3[mimizu](2012/06/12 23:06)
[12] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その4 [mimizu](2012/06/12 23:23)
[13] 第4話 激突! 魔導師vs魔法少女なの! その1[mimizu](2012/06/17 10:41)
[14] 第4話 激突! 魔導師vs魔法少女なの! その2[mimizu](2012/12/25 18:59)
[15] 第4話 激突! 魔導師vs魔法少女なの! その3[mimizu](2012/06/24 03:38)
[16] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その1[mimizu](2012/06/26 21:41)
[17] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その2[mimizu](2012/06/30 23:40)
[18] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その3[mimizu](2012/07/04 20:11)
[19] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その4[mimizu](2012/07/07 16:14)
[20] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その5[mimizu](2012/07/10 21:56)
[21] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その6[mimizu](2012/07/15 00:37)
[22] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その7[mimizu](2012/08/02 20:10)
[23] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その8[mimizu](2012/08/02 20:51)
[24] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その1[mimizu](2012/08/05 00:30)
[25] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その2[mimizu](2012/08/15 02:24)
[26] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その3[mimizu](2012/08/15 19:17)
[27] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その4[mimizu](2012/08/28 18:17)
[28] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その5[mimizu](2012/09/18 21:51)
[29] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その1[mimizu](2012/09/05 01:46)
[30] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その2[mimizu](2012/09/09 03:02)
[31] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その3[mimizu](2012/09/15 05:08)
[32] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その4[mimizu](2012/09/22 22:53)
[33] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その1[mimizu](2012/10/17 19:15)
[34] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その2[mimizu](2012/10/31 20:01)
[35] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その3[mimizu](2012/10/31 20:13)
[36] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その4[mimizu](2012/11/23 00:10)
[37] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その5[mimizu](2012/11/23 01:47)
[38] 第8話 なまえをよんで…… その1[mimizu](2013/01/07 00:25)
[39] 第8話 なまえをよんで…… その2[mimizu](2013/01/07 00:33)
[40] 第8話 なまえをよんで…… その3[mimizu](2013/03/23 19:15)
[41] 第8話 なまえをよんで…… その4[mimizu](2013/03/29 19:56)
[42] 第8話 なまえをよんで…… その5[mimizu](2013/03/29 19:57)
[43] 第8話 なまえをよんで…… その6[mimizu](2013/04/06 18:46)
[44] 第8話 なまえをよんで…… その7[mimizu](2013/04/06 19:30)
[45] 第8話 なまえをよんで…… その8[mimizu](2013/04/06 19:31)
[46] 第9話 キミが望めばどんな願いだって その1[mimizu](2013/05/12 00:16)
[47] 第9話 キミが望めばどんな願いだって その2[mimizu](2013/05/12 01:08)
[48] 第9話 キミが望めばどんな願いだって その3[mimizu](2013/05/28 20:13)
[49] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その1[mimizu](2013/09/22 23:21)
[50] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その2[mimizu](2013/09/22 23:22)
[51] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その3[mimizu](2013/09/22 23:24)
[52] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その4[mimizu](2013/09/22 23:25)
[53] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その5[mimizu](2013/09/22 23:26)
[54] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その6[mimizu](2013/09/22 23:28)
[55] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その7[mimizu](2013/09/22 23:28)
[56] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その8[mimizu](2013/09/22 23:29)
[57] 第11話 わたしはアリシア その1[mimizu](2013/10/06 18:04)
[58] 第11話 わたしはアリシア その2[mimizu](2013/10/06 18:21)
[59] 第11話 わたしはアリシア その3[mimizu](2013/10/20 23:56)
[60] 第11話 わたしはアリシア その4[mimizu](2013/11/24 18:21)
[61] 第11話 わたしはアリシア その5[mimizu](2013/12/07 17:17)
[62] 第11話 わたしはアリシア その6[mimizu](2013/12/13 22:52)
[63] 第12話 これが私の望んだ結末だから その1[mimizu](2014/04/01 17:34)
[64] 第12話 これが私の望んだ結末だから その2[mimizu](2014/04/01 17:34)
[65] 第12話 これが私の望んだ結末だから その3[mimizu](2014/04/01 17:35)
[66] 第12話 これが私の望んだ結末だから その4[mimizu](2014/04/01 17:36)
[67] 第12話 これが私の望んだ結末だから その5[mimizu](2014/04/01 17:41)
[68] 第12話 これが私の望んだ結末だから その6[mimizu](2014/04/12 02:18)
[69] 第12話 これが私の望んだ結末だから その7[mimizu](2014/04/24 19:20)
[70] 第13話 それぞれの旅立ち、そして世界の終わり その1[mimizu](2014/05/04 02:13)
[71] 第13話 それぞれの旅立ち、そして世界の終わり その2[mimizu](2014/05/19 00:31)
[72] 第13話 それぞれの旅立ち、そして世界の終わり その3[mimizu](2014/07/31 22:10)
[73] 第一部 あとがき[mimizu](2014/07/31 17:05)
[74] 第二部 次回予告[mimizu](2014/07/31 17:07)
[82] 番外編1 魔法少女さやかちゃんの日常 前編[mimizu](2014/09/16 20:40)
[83] 番外編1 魔法少女さやかちゃんの日常 中編[mimizu](2014/09/16 20:40)
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[33132] 第12話 これが私の望んだ結末だから その4
Name: mimizu◆0b53faff ID:ab282c86 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/04/01 17:36
 アースラに戻ったリンディは時の庭園、延いてはプレシアの行方を追っていた。ジュエルシードの膨大な魔力エネルギーと共に忽然と消失した時の庭園。プレシアの言葉が確かならば、彼女はその力を使ってアルハザードに向かったということになる。しかしリンディはその言葉を全く信じてはいなかった。

 確かにプレシアの集めたジュエルシード十九個分の魔力ならば次元の壁を貫き、その先にある管理局ですら干渉することのできない世界に到達することも可能だろう。しかしその世界がアルハザードであるとは言い切れない。そもそも彼女の向かった先は数多ある次元世界のさらに向こう側の世界なのだ。例え次元の壁を超えることができたとしても、そこが果たして彼女の求めるアルハザードに都合よく繋がっているとは到底思えない。下手をすれば次元跳躍できたと思えただけで、どこか別の管理世界や管理外世界に行きついている可能性も十分にあった。

 だからこそ、リンディはアースラにある全ての機材、全ての人員を用いて、時の庭園が残した魔力の残滓を探る。少しでも手がかりが見つかれば、そこからプレシアの行方が掴めると信じて――。



「私はね、ジュエルシードの魔力を使ってワルプルギスの夜をおびき寄せるためにこの町にやってきたの」

 同じ頃、地上にいた杏子とアルフは、織莉子の口から衝撃的な事実を聞かされていた。思いがけない単語が織莉子の口から出てきたことで驚き戸惑う杏子。魔法少女なら誰でも知っているワルプルギスの夜の存在。絶対的な力を持つ超弩級の魔女。その名前を今、この場で聞くとは予想だにしていなかった。

「なぁ杏子、ワルプルギスの夜って一体なんだい?」

 その横でアルフは素直な疑問を杏子にぶつける。彼女は魔法少女ではなく、魔導師の使い魔。その名前を知らないのも無理のない話である。

「――ワルプルギスの夜っていうのは魔法少女に伝わる伝説の魔女の名前だ。その力は並みの魔女を遥かに上回り、身を守る結界を必要としない。だからワルプルギスの夜が通った場所は大災害が引き起こされると言われている。もちろんそんなワルプルギスの夜を倒そうと今まで何人もの魔法少女が戦いを挑んだらしいけど、誰一人として倒すことはできなかった。そんな圧倒的な力を持つ魔女のことだ」

「……そんな奴が本当にいるのかい?」

「あぁ。あたしたち魔法少女の間じゃあ知らねぇ奴がいないくらい有名な話だ。つってもワルプルギスの夜の存在は所謂、伝説の類の話だ。本当にいるかどうかは誰にもわかりゃしねぇ。なんたって戦った魔法少女は皆、そいつに敗れて散っていったなんて言われているぐらいなんだからな」

 だからこそ、杏子は訝しげな表情で織莉子を見降ろす。織莉子の言葉はワルプルギスの夜がいるという前提での言葉だ。それが杏子には解せなかった。ワルプルギスの夜と戦って生き残った魔法少女はいない。それが義憤に駆られて挑んだにせよ、それとも自分の住まう地域にワルプルギスの夜が偶然現れたにせよ、彼の魔女と相対して生き残れた魔法少女はいない。故に本当にワルプルギスの夜が存在しているのか疑う魔法少女までいるくらいだ。それなのにも関わらずハッキリとワルプルギスの夜の存在を肯定する織莉子の言葉はどこか不気味に思えた。

「杏子さん、貴女の疑問は尤もな話よ。でもね、私の魔法を考えればその答えは簡単に得られるんじゃないかしら?」

「――ッ!? 未来視か?!」

「その通りよ。私の魔法は未来を視ること。色々と制限はあるけれど、それでも本来ならば知り得ることのできない知識を得ることもできる。望む望まないに関わらずね。……だからこそ、私には視えたのよ。ある一人の少女を巡る運命の因果をね」

 脳裏に思い浮かぶ破滅の未来。人々が死に絶え、その次に大地、そして世界そのものが終焉していく。そんな未来。未来視という形で織莉子は何度となくそのような未来の姿を視てきた。だが破滅をもたらす存在は違えど、そこには必ずある一人の少女が関わっていることに織莉子は気付いていた。



「――本来ならワルプルギスの夜は海鳴市ではなく見滝原に現れるはずだった。そしてそこで一人の少女がキュゥべえと契約し、魔法少女になるはずだったの」



 織莉子の口から出てきた見滝原という言葉を聞き、驚きの表情を浮かべる杏子とアルフ。二人は共に見滝原のことは知っている。杏子はかつて自分が師事した魔法少女が住まう町として。アルフは偶然立ち寄ることになり、魔法少女と魔女の存在を知るきっかけとなった町として。

 だがそんな二人の様子は気にせず、織莉子は語り続ける。

「彼女はどこにでもいる普通の少女だった。父親と母親、そして生まれたばかりの弟とどこにでもあるごく普通の幸せな家庭に住まう優しい女の子だった。そんな彼女だけど人と違う点が一点だけあった。それは魔法少女としての素養。彼女の持つ素養はキュゥべえとただ契約するだけで、全ての魔法少女をも超えるほどに膨大なものだった。そんな彼女の存在にキュゥべえが気付かないはずがない。だからキュゥべえは彼女を魔法少女にしようと勧誘したの。だけど少女には魔法少女になる理由がなかった。何故なら彼女は現状の暮らしに満足していたから。もちろん時に悩み、時に悲しむこともあったけれど、それでも奇跡を祈るほどの願いを有していなかった。また彼女のことを大切に思っている魔法少女が、彼女がキュゥべえと契約しないように手を回していたのも大きかったのでしょうね。だから彼女は魔法少女になることなく、人として幸せに暮らしていけるはずだった。……だけどもしそこにワルプルギスの夜が現れて、彼女の親友とも言うべき少女が命の危険に晒されたらどうかしら?」

「そりゃキュゥべえと契約し、魔法少女になるんじゃないのかい?」

 織莉子の言葉にアルフがそう返す。

「えぇ。アルフさんの言う通り心優しい彼女ならば迷わずに魔法少女になるでしょうね。その先にどんな運命が待ち受けているのだとしても、彼女は親友を助ける道を選ぶでしょう。――そうして魔法少女になった彼女の力はキュゥべえの想像をも超えるほどの力だった。ただ一撃の元にワルプルギスの夜を倒し、彼女は親友を、大切な家族をワルプルギスの夜の魔の手から救った。……けれどその代償は大きかった」

 織莉子はそう言って言葉を区切る。織莉子の言葉の真意をアルフは未だに図り兼ねていた。話を聞く限り、厄介なのはワルプルギスの夜という魔女のみでそれ以外、後の憂いは何もないはずだ。――だがそれは魔法少女の契約システムの真実を知らないものの陥る思考である。もし魔法少女が最終的にどのような末路を辿るのかを知っていれば、その先に待ち受ける未来は容易に想像がついただろう。

「途方もない希望の祈りは、果てしなく深い絶望を生む。最強の魔法少女となった彼女はワルプルギスの夜を倒した代償として最悪の魔女となった。そして彼女の愛した親友と家族、そしてこの世界を滅ぼした。……これが私の視た未来の一つの結末よ」

「……ちょっと待ってくれ、織莉子。今、なんつった?」

「そう言えばアルフさんは知らなかったわね。魔法少女というのはね、いずれ魔女になる少女たちのことを言うの」 

「はっ?」

 キュゥべえに願いを叶えてもらう代償として魔女と戦う宿命を与えられる魔法少女。そんな彼女たちがいずれは自らが倒してきた魔女になるというのは、笑えない冗談にもほどがある。

「信じられないのも無理もないわ。私もこの真実を視った時、大きく取り戻したもの。……尤も杏子さんはそこまで驚いてないようだけれど――もしかしてすでに知っていたのかしら?」

「…………薄々そうなんじゃないかとは思っていたよ。もちろんそうじゃなきゃいいとは思ってたけどな」

 杏子は苦々しくそう答える。杏子とて、初めからその可能性を考えたわけではない。杏子は様々な町を渡り歩き、その中で数多の魔法少女と出会い、幾重もの魔女を狩ってきた。その中で不意に疑問に思ったのだ。何故、ソウルジェムの穢れを魔女の卵ともいうべきグリーフシードで浄化できるのかと――。魔法を使えば使うほど溜まっていくソウルジェムの穢れ。その色がグリーフシードの穢れた輝きと似ていると気付いた時、杏子はその考えに至ったのだ。

「確証があったわけでも、誰かに聞かされたわけでもねぇ。ただキュゥべえが何かを隠しているのは明らかだったからな。――今ならよくわかるぜ。あいつと契約して魔法少女になるってことは、それ以外の全てを諦めるってことなんだってな」

 杏子が頑なにゆまに「魔法少女になるな」と言い続けた理由もそこにある。魔法少女の行く末が魔女ならば、自分はもう手遅れだ。仮に魔女にならないとしても一生、魔女と戦い続けなければならないというのはそれだけで未来の自由を奪われたことを意味する。だがゆまは別である。確かに彼女は魔女によってその人生を歪められた。魔女の結界から助け出し、そのまま一緒に旅をするようになったのも成り行きのようなものだが、それでも彼女の未来は未だに輝かしい者だ。そんな未来をキュゥべえになんかに穢されることを良しとしなかった。

「何にしても魔法少女はいずれ魔女になる。もちろんソウルジェムが穢れきってしまう前にグリーフシードを使って穢れを落とすことができれば別だけれど、この真実を知った魔法少女の多くは自分の行く末に耐えられず、自ら穢れを溜め込むようになる。本当によくできたシステムだわ」



「――織莉子、キミにそう言ってもらえるなんて光栄だよ」



 織莉子がそう告げたところで、どこからともなく現れるキュゥべえ。その姿を見た瞬間、アルフは全身の毛を逆立てて威嚇し、杏子もまた織莉子を取り押さえていた手を離し、槍の切っ先をキュゥべえに突きつける。

「てめぇ、何しに来やがった!!」

「やれやれ、どうやら歓迎されてないみたいだね。でもボクの話を聞いてもなお、その態度を続けていられるかな」

 今にも殺されそうな状況であるにも関わらず、キュゥべえは余裕の態度を崩さない。そんなキュゥべえの姿に三人は訝しむ。

「御託はいいわ。用件を話しなさい」

 織莉子は立ち上がり、服についた土埃を払いながらキュゥべえに問いかける。

「それじゃあお言葉に甘えて。……織莉子、海鳴市にいる魔女なんだけどね、どうやらもうほとんど残っていないみたいだよ。ボクが確認する限り、残りの魔女はおそらく一体だけだ」

「なっ……!? そんなはずないだろ?! あんなに馬鹿みたいにいた魔女がもう一体しか残ってないなんて!!?」

「驚くのも無理はない。でも決して舐めてかかっちゃいけないよ。その一体というのは、大多数の魔女がなのはに駆逐されたことで、そのなのはに対抗するために一体に融合した魔女なんだから。流石にワルプルギスの夜ほどの力を持つとは言わないけれど、それでももう結界を必要としないくらいには力をつけているみたいだ。気を付けた方がいい」

 魔女が結界の外に出てくるという話を聞き、驚く杏子とアルフ。先ほどの織莉子の話によれば、魔女が結界の外に出るのは結界で自らの身を危険に晒しても良いほどの強い力を持つ者のみ。そう考えれば二人の驚きも当然だろう。

「……なのはさんはどうしたの? 彼女は海鳴市に魔女がいることを許容しないはずよ。それが結界から自ら出てくるとなれば尚更でしょう?」

 だがその一方で織莉子は疑問に思っていた。例えどれほどの魔女が誕生しようとも、この町にはなのはがいる。多少の魔女が喰い合い融合したところで、今のなのはには敵ではないだろう。そのことはキュゥべえもわかっているはずだ。

「そのなのはなんだけどね、どうやらワルプルギスの夜を追って行ってしまったみたいなんだ。だから今、この町を守れるのはキミたちしかいないんだよ」

「……そう、やはりなのはさんは行ってしまったのね」

 しれっと告げられたキュゥべえの言葉に織莉子はそう返す。それは十分に考えられる事態ではあったが、それでも避けて欲しい展開であった。すずかの意思を継ぐことを願ったなのは。そしてすずかの意思とは、例えその身を犠牲にすることになっても人々の平和を護ることであった。そんななのはがワルプルギスの夜のような強大な存在を目の前にして見逃すなどあり得ない。一応、この事態も見越してなのはに釘を刺してはいたが、どうやらさしたる意味はなかったようだ。

「ちょっと待て。なのはがワルプルギスの夜を追っていったってどういうことだ!?」

 そんな織莉子の横で声を荒げながらキュゥべえに掴みかかる杏子。

「キミたちがプレシアに気を取られていた頃なんだけどね、海鳴市海上にワルプルギスの夜が現れたんだ。それに気付いたなのはが迎撃に向かったんだけど、そのままワルプルギスの夜と共にどこかに忽然と消えてしまったんだ」

「……あの馬鹿、一人でなんて無茶をしやがるんだ」

 キュゥべえの話を聞いて、杏子はそう一人ごちる。魔法少女となったなのはは確かに強くなった。だがワルプルギスの夜は仮にも伝説に名を連ねる魔女である。伝説と呼ばれる以上、それ相応の力を兼ね備えているのは間違いないだろう。いくらなのはが魔法少女と魔導師のハイブリットとはいえ、たった一人で相手取るには聊か厳しい存在だろう。

「キュゥべえ、本当になのはさんの行方はわからないの?」

「そうだね。ボクが知っているのはワルプルギスの夜が空間に穴を開け、そこに入っていったところまでだ。今ではその次元の穴も閉じてしまっているし、その先がどこに繋がっているのかはボクには見当もつかないよ」

「……そう」

 キュゥべえの言葉に織莉子は納得したようにそう告げる。織莉子にはなのは、そしてワルプルギスの夜が向かった先がどこなのか見当がついていた。しかしそれは今、この場で口にしても詮無きことである。むしろ重要なのは、海鳴市に残っている最後の魔女を相手にするということだろう。

「何にしても今の海鳴市に残された戦力はキミたちと管理局の魔導師ぐらいだ。すずかが死に、フェイトとなのはの行方がわからない以上、この町を守ることができるのはキミたちしかいない」

「ちょっと待て。フェイトの行方がわからないってどういうことだ!?」

「言葉通りの意味だよ。キミがアースラから時の庭園に向かった後に、フェイトはボクが止める間もなくどこかへと転移していったんだ。これはボクの想像でしかないけど、おそらくプレシアの元に向かったんじゃないかな」

「そ、そんな……。だってプレシアは今、行方がわからないって……」

 その言葉を聞いてアルフは力なく膝をつく。フェイトと離れ離れになってしまったということはもちろんだが、それ以上にすぐにフェイトの元に駆けつけることができない状況ということにアルフは危機感を与えた。プレシアが向かったのはアルハザード世界。プレシアがジュエルシードの魔力ほぼ全てを集めなければ向かうことのできなかった世界。そんな場所にフェイトがいる。それもおそらくはプレシアと向き合うために。フェイトの使い魔としてその手助けができないことにアルフは茫然自失となっていた。

「……アルフさん、フェイトさんはきっと大丈夫よ。だって彼女は強い娘だもの」

 そんなアルフを織莉子は慰める。だが同時にキュゥべえの言葉に微かな違和感を覚えていた。キュゥべえは尋ねられたことに嘘はつかない。しかし尋ねられなければ、自分から話さないこともある。そしてこの場合、キュゥべえが告げなかった真実は、アルフを絶望のどん底にまで突き落とすには十分なものだと、織莉子は本能的に理解していた。それ故に彼女は敢えて藪蛇を突かず、自分の考えを口にすることはなかった。

「そう、だね」

 織莉子の言葉に力なく答えるアルフ。そんなアルフの姿を見て、織莉子は杏子に念話を飛ばす。

【杏子さん、アルフさんのことを任せてもいいかしら?】

【それはかまわねぇけど、てめぇはどうするつもりだ?】

【私はキュゥべえの言う海鳴市最後の魔女を倒しに行くつもりよ】

【馬鹿言ってんじゃねぇよ。相手は普通の魔女じゃねぇんだぞ。てめぇ一人で倒せるわけ……】

【確かにそうかもしれない。でも今のアルフさんを連れていくわけにはいかないし、それに杏子さん、貴女だって戦える身体ではないでしょう?】

 織莉子の指摘に杏子は口を閉ざす。彼女の言う通り、今の杏子は立っているだけでもやっとの状態だった。なのはのルシフェリオンブレイカーをその身に受けた時の傷は決して完治したわけではない。本来であるならば未だベッドで安静すべき身体を、ゆまを助けるために無理に動かしているに過ぎない。そのことに織莉子は気付いていた。

【貴女の目的はゆまさんを助けること。それは叶ったはずでしょう。ならばあとは私に任せなさい】

【そんなことを言って、てめぇ逃げる気だろ?】

【……否定はしないわ。今、ここで私は管理局に捕まるわけにはいかないもの。だから私はこのチャンスを利用して海鳴市から去るわ。それを邪魔するというのなら不本意だけれど、貴女を倒してこの場から離脱せざるを得なくなる。それは私としても本意ではないわ。だから杏子さん、ここは黙って見送ってくれないかしら?】

 その言葉に杏子は黙る。真っ直ぐ睨みつけるような表情で織莉子を見つめながら、杏子は自分がどうすべきかを考える。織莉子の言うことは確かに筋が通っている。杏子は管理局の人間ではなく、ゆまもすでにプレシアの手から救出済み。織莉子に対し不信感はあるものの、今の自分の身体とアルフの精神状態を考えれば、例え二対一だとしても織莉子を取り逃してしまうのは違いないだろう。かといってリンディに応援を頼むこともできない。リンディたちとしては織莉子から聞きたいことは山ほどあるのだろうが、優先すべきはあくまでプレシア。プレシアの行方がわからない現状で織莉子の方にまで手が回るとは到底思えない。だからこそリンディはこの場を杏子とアルフに任せてアースラに戻っていったと言えるだろう。

「……おい、アルフ。いつまでそうやって落ち込んでいるつもりだ?」

 だがそれ故に杏子はアルフを叱咤する。胸倉を掴み、無理やりアルフをその場に立たせる。

「で、でもさ、杏子。フェイトが、フェイトが……」

「だぁーッ!! フェイトの事を心配する気持ちはわかるが、そうしてウジウジしたところで何も変わりはしねぇだろ。どうせそうしてるぐらいなら、せめてこの町でも守って気分を紛わせろ!!」

「あ、あぁ……、そうだね」

 杏子のあまりの剣幕に戸惑いながら答えるアルフ。その様子を織莉子は呆気に取られた様子で見つめていた。そんな織莉子に杏子は念話を飛ばし、自分の答えを告げる。

【悪ぃけど、まだてめぇには聞きたいことは山ほどあるんだ。だから逃がすわけにはいかねぇよ】

 そんな杏子の言葉に織莉子は一瞬、虚を突かれるも、すぐに笑みを浮かべる。それは彼女の思惑通りに行かなかったにしては、実に満足げな笑みだった。

「――えぇ、わかったわ。ならまずは魔女を倒しに行きましょうか。三人で」

 こうして三人は海鳴市を護るための最後の戦いに向けて動き出した。



     ☆ ☆ ☆



 研究室に辿り着き、眼前に広がる惨状を目撃したプレシアは目を血走らせ頭を抱えた。アリシアの肉体が保管していたカプセルが無残にも砕け散っていた。プレシアはそんなカプセルに駆け寄る。足元には水溶液とガラス片が散らばっており、彼女の足を傷つけたがその痛みを感じないほどにプレシアは錯乱していた。

「アリシアは? 私のアリシアはどこにいるの?」

 それはこの場にアリシアの肉体が残されていなかったからだ。プレシアが今まで心血を注ぎ、再び愛するために蘇らそうとしていたアリシア。その姿がないとなれば、半狂乱にもなるだろう。

 しかし平静さを失いながらも、プレシアの行動は一貫して的確だった。視界の端に捉えたコンソールに向かった彼女は、そのまま監視カメラの映像を映し出す。時の庭園の至る所に仕掛けられた監視カメラ。それはこの研究室も例外ではない。プレシアはアリシアを映していた監視カメラの映像を巻き戻し、そこで何が起きたのかを確かめようとしたのだ。

 そうして映しだされた光景はプレシアにとって予想外のものだった。カプセルの中で突如として目覚めたアリシア。そのアリシアが魔法を放ち、カプセルを砕き、自らの足でどこかへ向かって歩き出す。それがこの場で起きた一部始終の映像だった。

「なんなの!? なんなのよ、これは?!」

 映像の中とはいえ、プレシアが愛して止まないアリシアが目覚め、どこかに歩いていく。それはとても喜ばしく、それでいて不可解な光景だった。この二十年、プレシアはアリシアのことだけを考えて生きてきた。アリシアを再び目覚めさせるために人生の全てを賭けて様々な研究を行ってきた。それでもアリシアを目覚めさせることができなかったからこそ、プレシアは未知の蘇生術が存在するであろうアルハザード世界に至る道を選んだのだ。

 だが映像の中のアリシアは、多少戸惑っている様子を見せるとはいえ、プレシアの記憶の中のアリシアそのもの。アリシアがカプセルを破る時に見せた魔法こそ、まだアリシアの知るはずのない技術だが、その魔力光は澄み渡る空色。遺伝子レベルで同一の存在であるフェイトですら、その魔力光は金色というアリシアとは似ても似つかないものだったのに、映像の中の彼女のそれは紛れもなくアリシアのもので間違いなかった。

 だからこそプレシアは血眼になってアリシアの行方を探る。それが本当にアリシアという確証はまだない。むしろ現在進行形で時の庭園を攻めているワルプルギスの夜や影魔法少女の見せる幻と考えた方が自然だ。しかし事実としてアリシアの肉体はこの場から消え去った。そのことがプレシアに期待を募らせ、同時に焦燥感をかきたてた。

 そうしてコンソールを弄ること数十秒、プレシアはアリシアの姿を捉える事ができた。それは時の庭園の中庭への入り口。現在進行形でなのはとワルプルギスの夜の戦いが行われているすぐ近くだった。

 それを見たプレシアは慌ててアリシアの元に向かう。……だから彼女は気付かなかった。その直後、アリシアの身体が青白い光に包まれ変質したことに――。




2014/2/17 初投稿
2014/4/1 誤字脱字修正、および後半部分を全カットしてその5へ


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