なのは不在の海鳴市に生まれた最後の魔女。織莉子の本音を言えば、彼の魔女と事を構える意義は薄い。確かに数百体の魔女が融合した存在は脅威だ。しかしそれでも世界を揺るがすには程遠い。仮にこの場で織莉子が手を下さなくとも、いずれは杏子や管理局の手によって屠られるのは間違いない相手である。なのはに対する義理はあるが、それ以上の理由はない。 そもそも彼女は矢面に立って戦闘するタイプの魔法少女ではない。戦うことができないわけではないが、どちらかと言えば後方支援タイプの魔法少女だ。前衛で戦ってくれるパートナーがいて初めて、織莉子の力は十全に発揮できる。そして今、織莉子には信頼できる前衛のパートナーがいない。並みの魔女ならともかくとして、仮にも相手は海鳴市の魔女の中で最後まで残るほどの強敵だ。今の織莉子では死力を尽くしたところで勝つことは難しいだろう。(……彼女たちが万全の状態ならば、あるいは簡単に倒すこともできたのかもしれないけれどね) 織莉子は自分と並走する杏子とアルフの姿を見る。今のこの二人、特に杏子はまともに戦えるような状態ではなかった。彼女が受けたルシフェリオンブレイカーによる傷は未だに癒えていない。本来ならば戦うのはもちろん、こうして駆けているだけでも激痛が伴っているはずだ。それをおくびも表情に出さない杏子はある意味で流石だと言えるが、あくまでそれだけだ。戦力として期待するのは無理な話だろう。それに対してアルフは肉体的には万全な状態だが、その精神面が追い詰められていた。主であるフェイトが行方不明という事実。それによって先ほどから心ここに在らずといった状態だ。そんな二人を連れて戦うというのは考えようによっては一人で戦うよりも厳しい状況だった。「杏子さん、今の内に聞いておきたいのだけれど、このままの状態で戦って勝算はあると思う?」「そんなの、相手を見てみなくちゃわからねぇよ」「本当にそうかしら? 貴女なら相手の戦力を予測し、その上で現状の戦力と照らし合わせるということぐらい容易に行えると思うのだけれど……」「……チッ、てめぇの思っている通りだよ。おそらくこのまま挑んでも勝てねぇ。せめてあたしかアルフが万全の状態であれば、まだわからなかったけどな」 織莉子の問いかけに杏子は苦々しく答える。杏子としては答えたくなかったことだが、それでも現状の戦力を冷静に見つめてそう判断せざるを得なかった。実際に戦闘になった時、おそらく一番の足手まといになるのは自分であることは、彼女が一番よくわかっていた。それでも彼女が戦場に赴こうとしているのは、これから戦いを挑む魔女以上に織莉子のことを警戒していたからだ。 そもそも彼女たちが魔女に戦いを挑みに行くことになったのは、そう織莉子が提案したからである。だがもしこの提案に乗らなければ、織莉子とはあの場で敵対状態になっていただろう。そうなった時、彼女を逃がさず制す自信が今の杏子にはなかった。身体が万全に動くのならば問題ない。如何に織莉子の魔法が強力だろうと、少なくとも五分の戦いに持ち込める自信はあった。あの場にアルフもいた以上、八割以上の確率で織莉子を逃がさずに済んだだろう。 しかし現実はそうではない。自分は手負い。そしてアルフはキュゥべえの言葉に心乱されている。故に織莉子を逃がさないためには魔女に戦いに挑む以外の選択肢は残されていなかったのだ。「杏子さん、私の魔法はその性質上、前線に立って戦えるようなものではない。そのことは貴女もわかっているでしょう? だけど本来、前線に立って戦うべき貴女とアルフさんは万全の状態じゃない。普通の魔女ならいざ知らず、相手は仮にも海鳴市の戦いを最後まで生き残った魔女よ。このまま何の策もなく戦いを挑んだとしても勝算はないでしょうね」「ま、そうだな。でもさっきも言ったと思うが、てめぇ一人で魔女との戦いに行かせるわけにはいかねぇぞ。そのまま逃げられかねないからな」「わかっているわよ。けれど言ってしまえば今の貴女たちは足手まといにしかならない。賢明な杏子さんならその自覚はあるわよね?」「……否定はしねぇよ」「それがわかっているのなら話が早いわ。だから杏子さんには私が魔女を相手にしている間にやってもらいたいことがあるの」 そう言ってから織莉子は自分の案を杏子に告げる。それは作戦というには稚拙過ぎるものだった。けれど同時にそれを否定できるような代案を杏子は持ち合わせていなかった。それでも織莉子が提案してきた以上、素直に従うわけにはいかなかった。「正直に言っていいか? ――いくらなんでも無茶が過ぎるぞ。そんな回りくどいことをするくらいなら、まだ時期を置いて戦った方がマシだと思えるぐらいだ」 そもそも今の戦力で戦いに挑む方がどうかしているのだ。あと一日でも経てば杏子の身体は今よりはまともに動くようになっているだろうし、アルフも平静を取り戻すことができているかもしれない。それどころか管理局の手を借りることも、なのはやフェイトの行方がわかり共闘することさえ可能かもしれなかった。「そうね。でもそういうわけにはいかないわ。相手は他の魔女を喰らい尽くしているのよ。そんな相手が次に狙うのは誰なのか、聡い杏子さんならばすぐにわかるでしょう?」 魔女が本来喰らうのは、人間である。魔女同士が喰い合う自体を引き起こしていた海鳴市が異常なのだ。そんな魔女同士の喰い合いで最後まで勝ち抜いた魔女。ジュエルシードの力があったとはいえ、まだ魔法少女の枠の中で結界を生み出したキリカでさえ小学校を一つ丸ごと飲み込むほどの結界を創り出すことができたのだ。最低でも同程度の被害が出ることは間違いない。 以前までの杏子であれば、そんな被害など気にも止めなかっただろう。しかし今は違う。ゆまに出会い、管理局で過ごし、そしてすずかの死に様を見てきた今の彼女にとって、救えるはずの命を見捨てることはできない。その規模が数百ともなれば尚更だ。「もちろん、これはとてもリスクの高い戦いであることは十分承知しているわ。それでもこの戦いにおける勝機はこれしかない」「……ま、そうだな。だけど本当にいいのか? 失敗したら一番リスクが高いのはあんただぞ?」「そのぐらいのリスク、構わないわよ」 織莉子はうっすらと笑みを浮かべる。相手の魔女の実力がどれほどのものかはわからない。しかしどんなに少なく見積もっても、普段の彼女たちが戦ってきた魔女よりは遥かに上なのは違いない。仮に考え得る策が全て成功したとしても勝てるかどうかはわからない。彼女たちが今から挑もうとしているのはそんな相手なのだ。それ相応のリスクは覚悟の上だ。「……っと、どうやらここが結界の入り口のようね」 そんな話をしている間に三人は結界の入り口まで辿り着く。それに気付いて足を止める織莉子と杏子。やはりアルフは集中力を欠いていたのか、入口から通り過ぎるが、すぐに二人が足を止めていることに気付き、その場に戻ってくる。「アルフ、いい加減気を引き締めろよ。フェイトのことが気になる気持ちはわかるが、それで油断して死んでしまったらどうしようもないんだからな」「わ、わかったよ」「ならいい。――それと織莉子、一応、その案には乗ってやる。アルフには後であたしの方で説明しといてやるから安心しな」「えっと、一体何の話だい?」「それは魔女の元に向かう道すがらに説明してやる。とりあえず今は結界の中に入るぞ」 その掛け声を合図に三人は魔女の結界の中へと入っていく。こうして彼女たちの海鳴市における最後の戦いの幕が上がった。 ☆ ☆ ☆ ワルプルギスの夜、それは魔法少女の伝説の中に語り継がれる存在だ。結界を必要としない超弩級の魔女。並みの魔女や魔法少女など歯牙にもかけず、ただその場に現れるだけで全てを蹂躙していく存在。その力の前では如何なるものも無意味。敵対すれば最後、その命を賭して戦ったとしても傷一つつけることのできない存在だ。 しかし今、そんなワルプルギスの夜を相手に善戦している魔法少女たちがいた。一人は少女というには幾分か成熟しきった肉体。それはさながら子供から大人へと変化したばかりの若々しさを感じさせる少女だった。彼女が放つ黒炎は全てを飲み込み、襲いくる影魔法少女を蒸発させていく。その攻撃は敵としてみれば恐ろしくあり、そして味方からみれば頼もしくもあった。 それに対してもう一人の少女はまさに少女と呼ぶにふさわしい幼い容姿をしていた。その手に握る戦斧は少女の身の丈に対してどこかアンバランスさを覚える大きさで、それを精一杯振り回す姿はどこか微笑ましい。だがそこから放たれる青い稲妻の力は本物だ。音を置き去りにする勢いで放たれる雷撃は、ワルプルギスの夜が生み出す影魔法少女の身体を貫き、その活動を停止させていった。こちらの少女はまだどこか魔力を持て余している感じがあったが、それでもその実力は並みの魔法少女や魔導師と比べて頭一つ抜きんでていると言っても過言ではなかった。 二人に共通して言えること、それはとても幼く、それでいて稀有な才能を持つ少女ということだ。見た目で言えば二人の年齢には大きな隔たりがあるように思える。しかしその実、二人の元々の肉体年齢はほとんど同様のものだ。けれど彼女たちは片やより戦闘に適した肉体へ、片や自らが憧れ望んだ肉体へとその魂の置き場を移した。共に慣れ親しんだ肉体ではなかったが、すでに彼女たちは自身の肉体を使いこなしていた。大人の肉体を得た少女は、その長い四肢を活かして、近づいてきた影魔法少女を大きく薙ぐ。デバイスを直接、叩きつけられた相手は一気に燃え出し、その生命活動を停止させる。もう一人のより幼い肉体を手に入れた少女は敵の群れの中に自ら飛び込み、身軽な肉体と雷撃魔法の性質を活かして、内側から敵を感電させていった。 その戦いに一切の無駄はなく、それでいて目にもとまらぬ速さでワルプルギスの夜の使い魔たる影魔法少女を殲滅させていく。一秒に一体の頻度で生み出されていた影魔法少女だったが、ここにきてついにその速度を上回り始めていた。 ワルプルギスの夜を打倒すべく戦い続ける少女たちの名は高町なのはとフェイト・テスタロッサ。それは平均的な魔法少女や魔導師の年齢からみればとても幼い、運命に翻弄された少女たちの姿だった。 戦いの中でフェイトが感じていたのは、プレシアとアリシアに対する申し訳なさであった。プレシアの望みであったアリシアの蘇生。それは結果的に望まぬ形で叶ってしまった。フェイトが乗り移るという形でアリシアは蘇り、そのアリシア本人の意識は表に出てくることは叶わない。ここにいるのは紛いものの自分。それがフェイトにはどうしても許せなかった。 例え一度だけでもいい。アリシアとプレシアに直接、話をさせてあげたい。そのためには今、ここにいる自分が邪魔になる。アリシアとして創られ、アリシアであることを望み、アリシアになることのできなかった自分。プレシアからすれば、自分の存在は忌々しく思えても当然だろう。 だからフェイトはアリシアからの伝言を半分しか伝えなかった。アリシアのプレシアに対する思いのみを伝え、自分に関わる部分は黙殺した。今更、フェイトはどんな顔をしてプレシアに愛されたいと、愛して欲しいと言えるだろうか。自分は彼女の最大の望みが叶うチャンスを潰してしまったのだ。そんな自分には愛される資格はない。この戦いでプレシアを守ったら最後、フェイトはその命を絶つつもりだった。 故に彼女の戦い方は自分の身を顧みない。敵陣の真ん中に飛び込み、その身に電撃を宿して殲滅する。その色は本来の自分の魔力光ではなく、アリシアのもの。それを見る度に、フェイトは痛感する。 ――ここにいるのは『アリシア』でも『フェイト』でもない。『別の誰か』だ。 プレシアに愛され続けたアリシア。プレシアに愛されたいと願ったフェイト。今、ここにいる自分はそのどちらでもない。差し詰め、プレシアを助け続けたいと思う誰かだ。アリシアの身にフェイトの魂を宿した彼女は、戦いの中で自分の在り方を徐々に歪めていっていた。 ワルプルギスの夜と戦うことになって、なのははどんどんとその存在を変質させていった。人間であることを止め、魔法少女として生きていくことを決めたなのは。しかし今にして考えると、海鳴市で魔女と戦っている時はまだ人間でいられたのではないかと思う。確かに魔女と数日もの間、常に戦い続けるというのは、とても人間業とは思えない。だがそれでもあの時のなのはは自らの身体が傷つくことを極端に恐れた。それはダメージを受けることで満足に戦えなくなることを危惧した故だったが、改めて考えればそれは人間としての当然の本能があったからなのかもしれない。 けれど今のなのはは敵から受ける攻撃に恐れはない。もちろんダメージを受ければそれに伴う痛みを感じる。しかし今のなのはそれに怯むことはない。むしろその痛みを糧として、次なる攻撃へと繋げることができる。必要とあらば肉体すらも切り捨て、新しい肉体を創り出す。そんな彼女をもう『ニンゲン』と呼ぶことはできないだろう。 だがそれでいいのだ。夜の一族という人とは違う種族に生まれ、それでも『人』であることを望んだすずか。そんな彼女は最終的には人を護るために人であることを捨てようとした。 おそらく今の自分を見れば、すずかが悲しむことは間違いない。人を捨て、友を捨てた自分を彼女が生きていれば叱咤されたかもしれない。 それでも、もうなのはは止まれない。立ち止まることは許されない。すでになのはは知っている。この世界が危ういことを。一歩間違えれば、いつ滅びの時を迎えてもおかしくないということを。なのはにはそれを止めるだけの力がある。もし自分一人の犠牲でなのはの愛する多くの人を救えるのなら、それで本望だ。 だから彼女は覚悟を決める。ここまでの戦いですでに辺りには十分な魔力が満ちた。魔力の収束を邪魔する存在も、フェイトが倒し続けてくれるだろう。あとはなのはが人としての最後の欠片を捨てる覚悟さえできれば、それで十分だった。「……凄いわね」 プレシアは頭上で繰り広げられている戦いを眺めてそう零す。すでに戦いにおけるプレシアの役目は終えている。本来ならば傀儡兵を操りなのはをサポートするのがプレシアの役目だったが、傀儡兵など今の二人には邪魔にしかならない。それほどまでに二人の動きは洗練され、無駄のないものだった。尤も、プレシアにはその全てを追えるわけではない。なのはもフェイトも、その動きを際限なく高め、プレシアには彼女たちが通った残像しか見えなかった。 すでに時の庭園の中庭で無防備に立っているプレシアを襲おうとする影魔法少女の姿はない。すでに影魔法少女の数は当初より劇的に減らしており、さらに二人の強さは戦いの中でさらに磨きが掛かっている。影魔法少女はそんな二人と相手するだけですでに手いっぱいとなっており、プレシアにまで注意を回す余裕はなかったのだ。 そんな戦いの中でプレシアが考えるのは、やはりアリシアと、そしてフェイトのことだった。今、頭上で戦っている彼女。初めに見た時はアリシアではないと思った。それは彼女の青い髪と潤沢な魔力、そして魔法を行使する時の技術力が原因だ。しかしそれ以外の要素については、アリシアそのものとしか言いようがなく、その後なのはから彼女が魔法少女だと聞き、それらの差異の理由に説明がついた。 だが次に目覚めた彼女は明らかにアリシアではなかった。プレシアのことを「母さん」と呼び、その仕草や態度もフェイトに酷似していた。魔法少女として契約したのが誰なのかと考えれば、それは当然のことだろう。 しかし戦いに赴く前にそんなフェイトが見せた表情。アリシアが言ったとしか思えない言葉。同時にアリシアとはどこか違う、別れ際に見せたフェイトの表情。それを見て、プレシアは今度こそ、彼女が何者なのかわからなくなってしまった。 できることならば、そんな彼女の手助けをしたい。そう考えるプレシアだったが、すでに戦いの次元が違う。あの戦いに割って入ることのできる存在など、この世に何人いるだろうか。それほどまでにワルプルギスの夜と二人の戦いは苛烈で、そして痛ましいものだった。「戻ってきなさい。あなたたちにはたっぷり聞きたいことがあるんだから」 プレシアはそう言って踵を返す。本当ならこのまま最後まで戦いを見ていたい。だが自分がここにいれば邪魔になる可能性がある。そう思い、プレシアは時の庭園の中へと戻っていった。 ――フェイトちゃん、少しだけでいいから時間を稼いでもらえるかな? ――わかったよ、なのは。無理だけはしないでね。 戦いの中で行われた一瞬の目配せ。二人はそれだけでお互いの言いたいことを理解した。そこからのフェイトの動きは早かった。なのはに迫る影魔法少女を優先的に打ち落としながら、ワルプルギスの夜に近づいていく。もちろんワルプルギスの夜はそれを良しとしない。フェイトを阻むべく影魔法少女で壁を作り、一斉に攻撃する。フェイトはその攻撃を全て紙一重でかわしながら、詠唱を紡いでいく。「――アルカス・クルタス・エイギアス」 フェイトが紡ぐのはフォトンランサー・ファランクスシフト。フォトンランサーのバリエーションにして、彼女の持つ最大の攻撃魔法。彼女の持ち得る魔力のほぼ全てを行使し、無数の発射体を生み出し目標を殲滅する魔法である。本来であればそれほどの大魔法を行使するのならばそれ相応の準備が必要だ。必殺の一撃であるため、確実に相手を仕留めるために拘束魔法で動きを止め、そこに全魔力を叩き込む。それほどの一撃であるため、他の魔法の行使はもちろん機動戦を仕掛けながら詠唱を紡ぐことなど以前のフェイトにはできなかった。 だが今のフェイトは違う。彼女は的確に影魔法少女の位置を把握しながら、なのはのことにも気を配り続けている。なのはの邪魔になり得る影魔法少女を優先的に撃墜し、さらに意図的に全身から魔力を放出させることでワルプルギスの夜の意識を自分に向けようとする。「――疾風たりし天神 今導きのもと撃ちかかれ」 大魔法を唱えながらも、大魔法並みの魔力を消費し続ける。それは簡単なことではない。ただでさえこれから多大な魔力を消費することがわかっているというのに、それを彼女は惜しみなく消費し続ける。雷のような速度で空を飛びまわり、なのはへの攻撃を代わりに受け、それでいて魔法を振るい続ける。それはとても魔法少女になっただけではこなせない芸当だっただろう。 それを可能にしていたのは、フェイトの中にいるアリシアの存在だ。決してアリシアの意識が表層にでてきているわけではない。それでもフェイトは確かに自分の中にアリシアの鼓動を感じた。それがフェイトにさらなる力を与え、不可能を可能にしていた。「――バルエル・ザルエル・ブラウゼル」 確かにフェイトはアリシアになることはできなかった。奇跡に縋って魔法少女になり、アリシアの肉体を得たのだとしても、それは『アリシア』ではなく『アリシアの身体を動かすフェイト』でしかない。だがフェイトが願いの本質はアリシアになることではない。彼女が願ったのは『アリシア・テスタロッサとしてプレシアを助けること』。今のフェイトはその身にアリシアの魂を宿した肉体を操り、プレシアの敵であるワルプルギスの夜と戦っている。 キュゥべえとの契約はたった一つを得るためのそれ以外の全てを犠牲にする悪魔の契約である。しかし言いかえれば、そのたった一つのものは確かに手に入っているのだ。それがどんな形にせよ、彼女たちは願ったものを必ず手にすることができるのだ。それは全ての魔法少女に等しく訪れる奇跡なのだ。「――撃ち抜け雷神! フォトンランサー・ファランクスシフト!!」 詠唱を終えると共にフェイトの周囲に一気に展開する発射体の数は約二百。魔導師としてのフェイトが一度に展開することのできた発射体の数が三十程度だったと考えると、その数は実に約七倍。そこから絶え間なく降り注がれるフォトンランサー。それはさながら雷の雨とも呼べるほどの勢いでワルプルギスの夜へと襲いかかる。いくらワルプルギスの夜が影魔法少女を盾にフェイトの攻撃を防ごうとしても、その数を越える攻撃を与えられればその限りではない。無数に放たれる雷槍は影魔法少女の壁を突き破り、その奥に潜むワルプルギスの夜へと届く。一発一発は大したダメージにならない一撃。しかしそれを同じ個所に数百数千数万と打ちこまれればどうだろう。いくら強大な存在だとしても、ダメージは通る。 それでも相手はこの程度の一撃でやられるような魔女ではない。例えフェイトがその身に宿した力以上のものを行使しているとはいえ、相手は伝説の魔女。そう簡単に倒れるような存在ではない。フェイトの役目はあくまでワルプルギスの夜の注意を引き付けること。フェイトは一切の油断もなく、自分の役目に従事し続けた。「――集え、明星」 周囲に漂う魔力を収束させるなのはは、自分に流れ込んでくる無数の意識に精神が汚染されていた。ワルプルギスの夜に取り込まれ、影魔法少女として戦わされている無数の少女たちの記憶。世界に絶望し、自らの滅びを望み、それでもなおワルプルギスの夜に従属させられ続ける少女たちの悲痛な叫び。それが一人や二人ならば問題ない。しかしここまで、なのはたちが倒してきた影魔法少女の数は有に数百、下手をすれば千を数えるほどかもしれない。その全ての声をなのはは魂に直接、受け続けていた。 ルシフェリオンブレイカーは言わば、未完成の魔法である。レイジングハートと共になのはが生み出そうとしたスターライトブレイカー。しかし彼女はまだ、収束させた魔力の制御法を確立させてはいなかった。現状のルシフェリオンブレイカーは、収束させた魔力をなのはがその身に受けることで無理やり制御しているといった状態だ。それが魔力と共に膨大な思念が流れ込んでくる理由でもある。 だが仮にスターライトブレイカーを完成させていたとしても、なのはには今の事態を防ぐことはできなかっただろう。それはこの場にレイジングハートが存在していないからである。 なのはが初めて魔法少女として戦いに赴いたあの時、レイジングハートは消失した。魔法少女になったことに精一杯であったなのはは、完全にレイジングハートのことを失念していた。なのはがそのことに気付いたのは、しばらく経ってからのことである。ルシフェリオンがあまりにも手に馴染むデバイスであったということを差し引いても、これはなのはの失態だ。もちろん、その後の海鳴市における戦いの中でもなのははレイジングハートを捜し続けた。魔女の結界で落とした大切なパートナー。その結界の主を倒したとすれば、レイジングハートもまた現実世界に返ってきていてもおかしくない。しかし何度、念話で呼び掛けてもレイジングハートからの応答はなかった。考えられる理由は二つ。返事を返せないほどに傷ついてしまっているか、あるいは魔女の結界内に囚われているかだ。 結局、ここまでの戦いの中でレイジングハートを見つけることはできなかったが、その中で自分が今までレイジングハートにどれだけ助けられていたのかを痛感させられた。もし彼女の手にレイジングハートがあればここまで苦戦することはなかったかもしれない。少なくとも、なのはの魂に直接、影魔法少女の思念が流れ込んでくるなんてことはなかったはずだ。下手をすればその思念になのはは気付くことなく屠り続けることになっていただろう。それは悲しいことではあるが、今の苦痛を考えればレイジングハートを失ったのは大きな痛手だろう。 歴戦の戦士の様相を呈しているが、なのははついこの前までは魔法の存在すら知らないどこにでもいる九歳の少女だったのだ。そんな彼女にこれほどの思念を受け止めきれるほどの精神力が備わっているはずがない。すでに彼女はその意識を手放すか手放さないかの瀬戸際まで追いつめられていた。「――すべてを焼き消す炎と変われ」 このまま眠りたい。意識の奔流に身を委ね、全てを投げ出したい。そんな衝動に駆られるなのはだが、寸前のところで気を持ち直す。もしここでワルプルギスの夜を倒すことができなければ、次に彼の魔女が向かうのは間違いなく海鳴市であろう。そうなれば海鳴市にいるなのはの大切な人々はどうなる。為す術もなく蹂躙され、その平和な日常は終焉を迎えるだろう。そうさせないためにも、ワルプルギスの夜はこの場で倒さなければならない。その御膳立ては十分にできている。おそらく今がワルプルギスの夜を倒すことのできる最初で最後のチャンスなのだ。それを台無しにするわけにはいかない。 精神をすり減らしながらも、なのははそのことだけを考え、辛うじて意識を繋ぎ止め続ける。今の自分はあくまでワルプルギスの夜を倒すための砲台。ワルプルギスの夜を倒すことさえできれば、この命、この魂を失うことになったっていい。だから――。「――轟熱滅砕ッ!! ルシフェリオンッ! ブレイカァァーーーーッ!!」 ――彼女は放つ。彼女が戦いの中に蓄えた影魔法少女の魔力。プレシアから譲り受けたジュエルシードの魔力。そして彼女自身が元々、持ち得た魔力。その全てをワルプルギスの夜に向けて。 ☆ ☆ ☆ 織莉子たちが結界の中で遭遇した魔女。その姿はとにかく巨大だった。下から見上げたところでその頭が見えないほどに巨大な身の丈。下半身の部分は一つの面を六角形とした角張った球体となっており、その一つ一つから鎖に繋がれた魔女が生えていた。その造形は様々で、中には過去に杏子が海鳴市で倒した魔女の姿もあった。その頂点となる場所には下半身の大きさとは比べものにならないほどに小さい人間大の上半身があった。その身体はには無数の糸で縫い合わせてできたようなつながりが見受けられ、見ているだけで痛ましいと思える顔立ちをしていた。 そんな魔女を目の当たりにして、アルフは本能的に全身の毛を逆立たせ、杏子もまた槍を構えて警戒する。明らかに今まで出会ってきた魔女のものとは違う魔力。その量も質もケタ違いで、仮に万全の状態であったとしても相手にしたくないと思えるほどに強大な存在だった。「おい、織莉子。本当に一人で相手するつもりか?」「えぇ、結界に入る前に話した通り、最初は私一人で戦うわ。杏子さんはその間にアルフさんに協力してもらって少しでも身体の傷を癒してもらいなさい」 そんな杏子の心配をよそに織莉子は涼しい顔で答える。それは結界に入る前に織莉子が杏子に提示した作戦だった。作戦と呼ぶには稚拙な考え。しかし今のアルフを戦わせることの無謀さ。それがわからない二人ではない。ならば杏子の傷を癒して織莉子と二人で戦った方が万全だ。そんな彼女を癒すだけの時間を稼ぐと織莉子は言っているのだ。「そうは言うけどな、いくらなんでもこいつとサシで戦うのは無茶だ。ここは一端引いて、管理局の連中に強力を仰ぐべきだ」「……本当ならそうしたいところだけれど、でももう遅いわ。これだけの力を持っている以上、いずれは結界を破って外に出てくるはずよ。そうなってからでは全てが遅い」 目の前の魔女はワルプルギスの夜には及ばないが、その力はとても結界内で収まりきるものではない。現にここにくるまで、結界の至る所にヒビが入っていた。今はまだ、魔女自身が結界内に収まってはいるが、その必要がないとわかればすぐにでも外に出てくるだろう。「それに見たところ、この魔女はまだ完全に融合しきっていない。倒すとしたら今、この時を置いて他にないわ」 織莉子たちがこうしている間も、魔女はその身を蠢かせ、その身を変質させていく。鎖の先にいる魔女のなれの果てと思われる存在の形が次々と変わっていく。それはまるで最適な形を模索しているかのような光景。おそらくそれが見つかった時、この結界はその役目を終えるのであろう。「だ、だけど……」「御託を言い合っている時間はないわ。文句があるのなら、さっさと傷を治して私を助けに来なさい」 杏子の言葉を封殺して、織莉子は魔女に向かって駆けていく。その背を追い掛けることは簡単だ。しかしそれこそ愚策。今の自分やアルフが助けに入ろうとすればするほど、織莉子の足を引っ張ることになる。「……アルフ、頼む。魔力を使いきっても構わない。だから早くあたしの傷を癒してくれ」「あ、ああ……」 結局、杏子は織莉子の指示に従い、アルフの治療を受ける。とはいえ、アルフは治癒に特化した魔導師ではない。杏子を完全に癒すには数時間ではとても足りない。そんな時間が残されていない以上、最低限戦いができるほどに傷が癒えれば杏子は戦場に飛び込んでいくつもりだった。 ――この時、杏子は想像すらしていなかった。結局、彼女は織莉子を助けに向かうことができないということを。 ☆ ☆ ☆ なのはから放たれたルシフェリオンブレイカー。それはただそこにあるだけで破滅をもたらすほどの破壊力を秘めたものだった。その業火に影魔法少女はもちろんワルプルギスの夜さえも飲み込んでいく。声を上げる暇もなく消滅していく影魔法少女。それに対してワルプルギスの夜はルシフェリオンブレイカーをその身に受けながらも焼き尽くすことができなかった。 そんな状況になのはは焦りが生まれる。ルシフェリオンブレイカーに込められた魔力は、とてもなのはに制御しきれるものではない。現にその膨大な魔力を放つなのはの身も炎に包まれつつある。砲手を握る両手から徐々に炎はなのはの身体に向けて立ち昇り続けている。それでも彼女は意識を手放さない。もし気を失えば、ブレイカーに込められた魔力は一気に制御を失い霧散する。そうなれば最早、ワルプルギスの夜を倒す手立てはない。故になのはは自分の中に存在する全てを込めて撃ち続けた。 だがそれだけではワルプルギスの夜を倒すことはできない。確かにルシフェリオンブレイカーにはワルプルギスの夜を倒すことができるだけの魔力が十分に込められているはずだ。それでもワルプルギスの夜は耐えている。ただひたすらにルシフェリオンブレイカーを耐え続けている。そうなれば先にガス欠になるのはなのはの方である。五秒……いや一秒でもいい。一時的に今以上の魔力を込めることができれば、その勢いでワルプルギスの夜を倒すことができるはずだ。 けれどその魔力を調達する方法はたった一つしか残されていない。すなわちソウルジェムの中に秘められし全てを解放し魔女になること。魔女になればその魔力量は魔法少女であった時よりも増大する。そのことをなのはは今までの戦いの中で本能的に理解していた。もしここでなのはが魔女化すれば、間違いなくワルプルギスの夜を倒すことができるだろう。 しかしそれは同時に新たな魔女が誕生することを意味する。ジュエルシードの魔力を持ち、ワルプルギスの夜を打倒しうるほどの魔女。その力がどれほどのものになるのか想像もできない。ただ一つだけ確かなのは、そんな魔女を誕生させてしまった時点でこの戦いは全く無意味なものとなる。魔女を倒すためにより最悪な魔女を誕生させる。そんな結果にだけはするわけにはいかない。 時間はもう残されていない。あと数秒もすれば徐々にルシフェリオンブレイカーの勢いは落ちていくだろう。そうなれば今度こそ手詰まり。なのはたちはワルプルギスの夜に喰われ、そしていずれは世界も滅ぶ。それだけはなんとしても防がなければならない。 ワルプルギスの夜に敗れ喰われるか、ワルプルギスの夜を倒し魔女になるか。残された結末は二つに一つ。だからなのは決断する。自分に残された人としての最後の枷。それを解き放とうとする。あわよくばすずかのように、その命を散らすことでワルプルギスの夜を倒そうと、自身のソウルジェムを握りしめる。そしてそのまま自分の限界を超えた魔力を引き出そうとする。「待って、なのは」「えっ? フェイトちゃん」 それにフェイトが待ったを掛ける。なのはにとってこの場にフェイトが現れたのは意外だった。すでに彼女の周りは業火に包まれており、何人たりとも近づけない状態だった。そんな中にフェイトは何の対策もなしに現れ、ルシフェリオンを握るなのはの手に自身の手を重ねる。灼熱の砲撃を放つ今のなのはの手は、周囲の大気と同様に酷い熱を持ち、触れただけでフェイトの手は火傷する。そんなことはお構いなしと言わんばかりにルシフェリオン越しに自身の魔力をなのはに流し込む。金色の魔力と空色の魔力。そんな二人分の魔力がなのはの中に充満する。それは炎の中でもなお感じられる温かみのある魔力だった。「……なのはが今、何をしようとしていたのかはあえて聞かない。でもなのは、そんなことをしたら駄目だよ。なのはがいなくなったら悲しむ人がたくさんいるんだから」「そ、そんなこと……」「ないとは言えないはずだよ。そうでなかったらアリサの記憶を消す必要なんて、なかったはずなんだから。それに少なくともわたしはなのはが死んだら悲しい。なのはと敵対していたわたしでさえそう思うんだから、きっと他にもなのはがいなくなって悲しんでいる人がいるはずだよ」 その言葉を聞いてなのはは何も言えなくなる。魔女になってはいないだけで、すでになのはは自分のことを人間とは思っていなかった。魔女との戦いの中で人間であることを捨て、数多の傷を負おうとも大した痛みを感じず、あまつさえ再起不能になれば肉体を捨て再構成までできるようになった。その身体能力も魔力で練り上げる時に操作し、今のなのはの身体は元の面影があるだけで別人と言い換えても良いほどに別物だ。さらに自分の唯一残された親友であるアリサの記憶まで消し去った。 そんな人間と呼ぶにはあり得ない芸当や行いをしてきたなのはだが、フェイトの言葉に覚悟が揺らぐ。アリサの記憶は間違えなく消した。だがそれ以外にもなのはに関わりを持つものはたくさんいる。士郎や桃子、恭也や美由希といった家族。すずかの家族である忍やノエル、フェイン、それにアリサの家の執事である鮫島といった面々も少なからず話す機会はあった。……そしてユーノ。 思い返せばすずかが死ぬことになるまで、なのははユーノと二人三脚で魔導師としてジュエルシードの回収を務めていた。初めて自分が誰かの役に立ち、自らやりたいと思えたジュエルシード集め。今にして思えばあの頃はどれほど楽しかっただろうか。まだそんな日にちが経っていないはずなのに、もうとても遠い日のように感じる。アリサを除けば魔法少女になったなのはが唯一、別れを告げることになった相手。「アリサのこともそうだけど、なのはとはまだ話したいことがたくさんある。それにすずかの時の二の舞は繰り広げたくないから」 何より今は亡きすずかに対して申し訳ない。今のなのはがあるのはすずかが命がけで助けてくれたからだ。その命をこんな形で捨てることが果たしてすずかの意思を引き継ぐことなのだろうか。少なくともすずかは絶対に喜ばない。それはなのは自身がすずかを失った痛みからわかることだ。「……ごめんね、フェイトちゃん。そしてありがとう」 なのははソウルジェムを掴んでいた左手をルシフェリオンに、フェイトの手に重ねるように乗せる。ここにきてようやくなのはは理解する。確かになのはは強くなった。魔法少女になり、戦いの中でその技術をどんどん洗練させていった。しかしそれだけでは決してなのはの守りたいものは守れない。どんなになのはが強かろうと一人では限界がある。 だがなのはは一人ではない。彼女には大切にしたい日常がある。掛け替えのない家族がいる。そして心の底から信頼できる仲間がいる。だからなのははその手を借りる。自分一人で守れないのなら、誰かの力を借りればいい。一人で足りないなら二人。二人で足りないなら三人。それでも足りないならもっと多くの人の力を借りる。それは決してみっともないことではなく、むしろ誇らしいことなのだ。 なのはがそれを悟った瞬間、放たれていたルシフェリオンブレイカーに変化が起きる。黒い炎を纏った負の魔力を帯びた砲撃が、徐々に清廉な桜色の、なのは本来の魔力光へと変化する。それはまさに星の輝き。なのはがレイジングハートと思い描いていたスターライトブレイカーそのものだった。 もちろんなのはが想定していたスターライトブレイカーに負の性質を正の性質に変換するなどといったものはない。だがそうとしか考えられない。先ほどまでなのはの脳裏にこべりついていた影魔法少女の怨嗟の声はすでになく、二人の身体の至る所にあった無数の傷が癒え始めているのもその証拠だろう。「なのは、これはいったい?」 ルシフェリオンブレイカーの突然の変化に戸惑いの声を上げるフェイト。それに対し、なのははさも愉快そうに答える。「フェイトちゃん、これがわたしの、わたしたちの希望。魔女の振り撒く絶望も変える希望の光、スターライトブレイカー」「スターライトブレイカー?」「うん、わたしの、わたしたちの全力全開、本気の魔法」 最早、どす黒く歪んでいた影魔法少女の絶望の魔力は微塵も感じられない。砲撃に込められているのは希望を信じ、未来を馳せる希望の魔力。突如として魔力の質が変わったことで、先ほどまで耐えていたワルプルギスの表情が醜く歪む。彼の魔女がルシフェリオンブレイカーを耐えることができたのは、そこに込められている魔力の多くが影魔法少女から収束させた魔力だからに過ぎない。影魔法少女の持つ負の魔力。それはワルプルギスの夜にとってはダメージを与えることはできても倒すことはできない。しかしその絶望の力は今、そっくりそのまま希望の力へと変わっている。それを受け、徐々にワルプルギスの夜が押されていく。その表情を苦悶に歪め、嗤い声も弱々しいものへと変わっていく。「――フェイトちゃん」「――なのは」「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」 それに気付いた二人は互いに頷き合い、さらに魔力を込める。全ての魔力を使い果たすほどの勢いで、スターライトブレイカーに魔力を注いでいく。フェイトの魔力が加わったことで、桜色の砲撃に金と青の螺旋が加わり、さらにその威力を爆発的に増大させる。「アヒャヒャヒャ……アヒャヒャ……アハ…………」 ワルプルギスの夜はそんな二人の魔力を正面から受け、そして閃光の中へと消えていった。2014/4/24 初投稿