上条恭介にとってそれは奇跡に等しい出来事だった。天才的なバイオリニストとして将来を嘱望されていた彼は、事故により腕が麻痺してしまう。医者に匙を投げられ、もう一生元のようにバイオリンが弾けないと宣告され、一時は自殺も考えた。 そんなある日、何の前触れもなく彼の指先が動き出す。事故に遭ってから一度として自由に動かすことのできなかった彼の指先。それが徐々に元の動きを取り戻しつつあることを恭介は実感する。医者ですら不思議がる回復力を見せた自身の腕に、恭介は神に感謝した。 ――けれど彼は知らない。その裏で一人の少女が戦いの中に身を置く運命を背負ったことを。そして彼女自身もまた、その契約によって自身がどのような存在に変化してしまったのか、明確に自覚してはいなかった。 ☆ ☆ ☆「これでとどめだー!!」 魔女の結界の中で一人の少女が咆哮を上げる。白いマントを靡かせ、握り締めたサーベルを魔女の身体に突き立てる。それを受けた魔女は悲鳴を上げながら消滅していく。それと共に周囲に張り巡らされていた結界もまた解けていく。そうして後に残されたのは二人の少女のみ。一人は先ほどまで魔女との戦いを繰り広げていた美樹さやか。そしてもう一人はさやかの師匠の一人であり先輩の魔法少女である巴マミであった。「お見事よ、美樹さん。私のサポートなんて必要なかったかしら?」「あはは、ありがとうございます。でもマミさんのサポートがなければ、ここまで簡単に倒すことはできなかったですよ。それにマミさんなら一人で、しかももっと早く倒すことができたんじゃないんですか?」 マミの言葉にさやかは照れくさそうに返す。先ほどの戦いは終始、後方で控えていたマミがリボンで魔女の動きを封じ、さやかがサーベルで切りつけるという戦法で行われていた。いくら動きが封じられているとはいえ、初めのうちは踏み込みが甘く、なかなか致命傷たるダメージを与えることができなかった。「……確かに美樹さんの言う通りね。でも今回の戦いは美樹さんに経験を積ませたかったから、だから私はサポートに徹することにしたのよ。現に美樹さんの戦い方は前回と比べてだいぶ上達しているように見えたわよ。魔女との戦いが二回目とも考えれば上出来だと思うわ」「そう、なんですかね」 マミの言葉にさやかは釈然としない思いを浮かべる。マミの言う通り、今日の戦いはさやかにとって二戦目である。一戦目は彼女が魔女になった日、まどかや仁美を助けるために行った。しかしあの時のさやかは対して役に立つことができなかった。魔法少女になり立てというのもあるが、彼女自身ほとんど攻撃性の魔法を習得することができなかったからである。「マミさんにそう言ってもらえるのは嬉しいですけど、やっぱりあたしは後ろでマミさんや転校生の傷を治すことに専念していた方がいいと思うんですよね」 さやかに与えられた唯一の武器はサーベル。しかしそこに殺傷能力はあれど、魔法的な加護があるわけではない。さやかの持つサーベルは魔法で創られているだけのただの刃物である。人間相手にするならばそれで十分だろうが、相手は魔女。今回の魔女には刃が通ったが、いずれは刃を通さない鱗や皮膚を持った魔女もいるだろう。そうした相手に対して今のさやかは何の有効手段を持てていないのは純然たる事実だった。「そんなことはないわ。確かに今の美樹さんの攻撃力は低い。けれど鍛えればその限りではないはずよ。私はもちろん暁美さんだって、今のように戦えるようになるまでは色々と練習してきたはずだもの。もちろん個々の願いや才能によって違いはあるけれど、初めから強い魔法少女なんていないのよ。だから美樹さん、これから一緒に頑張っていきましょ」「わかりました。マミさん」 マミの言葉にさやかは務めて明るく振る舞う。マミが嘘をついていると思っているわけではない。だがどうしてもさやかは彼女の言葉を頭から信じることはできなかった。確かに戦いを続ければ今よりは動けるようにはなるだろう。それは今日の戦いの中で実感できた。けれど自分がマミやほむらのように一人で戦えるようになるとは思えないのだ。 それは彼女がキュゥべえに祈った願いに起因する。どんな病も怪我も治せるようになりたい。その願い通り、彼女の魔法は治癒に特化している。恭介の麻痺した腕はもちろん、その気になれば切断された四肢すら繋ぎ合わせることも可能だろう。魔法少女は得てして自己治癒能力を持っているが、他者の傷をそこまで治せるほどの魔法を持っているものは中々いないとキュゥべえも言っていた。故にこの魔法自体は有用なものであるということはわかる。 だがそのせいでどうしてもさやかは攻撃系統の魔法が上手く使えない。サーベルを創り出すにしても、マミがマスケット銃を創り出すように素早く行うことができない。魔女の攻撃を避けるよりも上手く避けられず、むしろ初めから受け止めようとした方が返ってダメージが少なく済んだ場面も多い。 言わばさやかの魔法少女の戦い方のイメージと実際の戦い方が合わないのだ。今までさやかが出会った魔法少女はマミとほむら、そして厳密には魔法少女ではないがフェイトの三人だけである。微妙な差異はあるものの、そのいずれもがスピードで相手を撹乱し高火力で攻めるタイプである。その戦い方に憧れを抱きつつも、今のさやかにはそれを行うだけの素養も技量も経験もない。果たして経験を積んだところでマミのように華麗に戦うことができるだろうか。それが今のさやかの悩みの一つであった。「ところで美樹さん、明日の誕生会についてなんだけれど、ケーキに挿す蝋燭は何本だったかしら?」「あっ……、九本でお願いします。でもマミさん、本当に良かったんですか? 誕生会やるの凄く急な話だったし」「いいのよ。むしろ彼女のことはもっと早くに教えてもらいたかったわ。……ほら、私も一人暮らしじゃない。だからわかるのよ、その子の辛さがね」「……マミさん?」「あ、あら? ごめんなさい。なんか湿っぽい雰囲気になっちゃったわね。それじゃあ私はケーキの仕込みもあるから、今日は解散ということで」「はい。それじゃあマミさん、明日ははやての誕生会、よろしくお願いします」「えぇ、わかったわ。それじゃあまた明日ね」 そう言ってさやかはマミと別れ、その足ではやての誕生日プレゼントを買いに商店街へと向かった。 ☆ ☆ ☆ 翌日、さやかははやてを誕生会を行うマミの家に案内するために彼女の家にやってきた。「あっ、さやかさん、こんにちわー」「やっほー、はやて。出掛ける準備はできてるかー?」「いつでもいけますよー」 さやかの言葉に明るく答えるはやて。それを聞いてさやかははやての後ろへ周り、車椅子の取っ手を掴む。「それじゃ、早速だけど出発しよっか」「はい、お願いします」 そうしてさやかははやてを連れてマミの家に向かう。さやかが面白おかしく学校であったことを話し、それを聞いてはやてが笑う。そんな他愛のない雑談をしながら、さやかははやてと出会ってからのことを思い出していた。 さやかがはやてと出会ったのは恭介の入院している病院での出来事だった。恭介の見舞いに訪れたさやかと車椅子で病院に通院していたはやて。中学生と小学生と歳は離れていたが、二人は自然と馬が合った。だがそれだけではなく、はやての境遇はさやかが魔法少女になる際の願いにも影響を与えた。 幼い頃に両親を亡くし、後見人はいれど基本的に一人で暮らしていたはやて。数年後に病気によって両脚を不自由し、ヘルパーの介護を受けながらも彼女は一人で生き続けていた。そんなはやてのことをさやかは放っておけなかった。同情の念が全くなかったと言えば嘘になる。恭介以上に苦しんでいる年下の少女。そんな彼女の力になりたい。お節介なさやかがそう思うのは当然だろう。そしてこの時、さやかには奇跡を叶えるチャンスが与えられていた。 キュゥべえとの魔法少女契約。願いを叶える代わりに魔女と戦い続ける運命を背負う。初め、さやかは恭介の腕を願いで治してもらい、魔法少女になるつもりだった。だがキュゥべえに願いを告げる時に、不意にはやてのことを思い出したのだ。家族を失い、車椅子という不自由ながらも笑顔を浮かべ、必死に生きる少女。もし彼女のことを知らなければ、さやかは間違いなく恭介のためだけに一回限りの奇跡のチャンスを使っただろう。 だがさやかは知ってしまった。恭介と同様に、いやそれ以上に理不尽な目に苦しんでいる人たちがこの世界にはたくさんいることを――。 だから彼女は『どんな病も怪我も治せるようになりたい』と願った。これなら恭介やはやてだけではなく、他にも理不尽な病気や怪我で苦しんでいる人も救うことができる。そう思い、さやかは自分の魔法の素養のほぼすべてを治癒方向へと特化した魔法少女へと生まれ変わった。 そして彼女はすぐに恭介の腕を治した。恭介の腕はすぐに治った。さやかが魔法を使ったことがばれないように少しずつ恭介の腕を癒していった。その甲斐あって悲痛に暮れていた恭介の顔に笑顔が戻り、退院も間近に迫っていた。 その後、さやかは同じようにはやての脚も治そうとした。恭介の腕の時と同様に、はやての見舞いとして彼女に会いに行く度にその脚に魔法を掛け、少しずつでも感覚が戻ることを期待した。 しかし何度魔法を掛けてもはやての脚が治ることはなかった。順調に回復していく恭介とは違い、はやては病状が悪化していないものの、改善もされていない。それに痺れを切らしたさやかは、はやての脚に直接治癒魔法を掛けるために自分が魔法少女であると明かすことにした。「ねぇはやて、魔法少女って知ってる?」「魔法少女? それって日曜の朝にやっているテレビ番組のこと?」「そうじゃなくて現実にいる魔法少女のことだよ。……っていうか私のことなんだけどさ」「……さやかさん、いくらなんでもそないな冗談信じるほど、わたし子供じゃないんよ?」 はやてとしてはさやかとは年齢に開きがあるとはいえ、対等な友人でいたいと思っていた。それなのにこんな冗談を告げる彼女に腹が立ったのだろう。はやてはジト目を浮かべて頬を膨らます。「へっへー、これを見てもそう言ってられるかな~」 そう言いながらさやかはその場で一回転する。それと共に彼女の服装が制服から魔法少女の戦闘装束へと変わる。それを見てはやては思わず身を乗り出す。「……えと、凄い手品やね。いつ着替えたのか、全然わからなかったよ」 はやては目を丸くしながら、やっとの思いでそう告げる。だがその目は限りなく泳ぎ続ける。目の前で起きた現象を上手く認めることができなかったからである。「手品じゃなくて魔法! ……別に信じたくないなら信じなくてもいいけどさ」 そんなはやての態度がお気に召さなかったのだろう。さやかはどこか拗ねたように告げる。「……い、いや、目の前でこんなもん見せられて信じられないわけやないんよ。ただいきなり魔法や魔法少女言われても、受け入れられなかったというか……」「言われてみればそうだよね。あたしだって魔女の結界にいきなり巻き込まれてなければ、たぶんマミさんや転校生の話を信じる気にはならなかったと思うし」「さやかさん?」「あぁ、ごめんごめん。つまりあたしが何を言いたいのかと言うとさ、はやての脚、見せてもらえないかなってこと」 さやかははやての正面にしゃがんでスカートの裾をゆっくりとたくし上げていく。「ちょっ、さやかさん!? こないなところでいきなり何を……?」「いいから、ちょっと黙ってて」 突然の行動に顔を真っ赤にし抗議するはやて。しかしさやかははやての声を黙殺し、真剣な表情でスカートの中に潜んでいたはやての脚に目を向ける。子供であるということを加味しても、それは非常に細く白い、ほとんど筋肉のついていない骨ばった脚だった。そんなはやての脚にさやかは手を当てる。そして念じるように魔力を込めて治療しようとする。「な、なんだかむず痒い気がするわ」 仄かに光るさやかの手。それに触れられたはやてはどこか気恥ずかしい思いを感じる。もちろんいくら触られたところで、はやてにはその感触を正確に感じることはできない。僅かに感じる圧迫感と温かみ。それだけだった。 一方のさやかは一切の手ごたえを感じることができなかった。さやかは自分の治癒魔法に絶対の自信がある。その治癒能力に関してはマミにもほむらにも認められており、今までも恭介の腕を治した以外にも、目に付いた人々の怪我の程度を軽くしてきた。しかしいくらさやかが魔力を込めても、はやての脚に一切の変化がなかった。「……ごめんはやて。どうにもあたしの力じゃはやての脚を治せないみたい」「もしかしてわたしの脚を治そうとしてくれたの?」「うん、こう見えてもあたし、治癒魔法だけは得意でさ。だからもしかしたらはやての脚も治せるんじゃないかなって思ったんだけど……ごめん」「そない気にせんでええよ。流石に魔法云々は驚いたけど、でもさやかさんの気持ち、嬉しかったわ。ありがとな」 申し訳なさそうに頭を下げるさやかに対し、はやてはそんなこと全く気にしてないように笑顔で告げる。そんなはやての態度に、さやかは悔しさのあまりに涙を零しそうになる。だがそれを必死に耐える。本当に辛いのは自分ではなくはやての方なのだ。勝手に彼女を期待させるような真似をした自分が涙を見せるわけにはいかない。だからさやかは務めて明るい表情を見せた。「ねぇはやて、時々で良いからはやての脚、見させてもらっていいかな? 今回は駄目だったけど、何度かやってみればいずれは治せるかもしれないし」「うん、別にええよ。ありがとな、さやかさん」 その後、さやかとはやてはいつも通り他愛のない雑談やらゲームやらに興じて別れた。はやてといる時は普段通りに明るく振る舞っていたさやかだったが、内心でさやかは憤りを感じていた。今までさやかが治そうと思った怪我や病気で治せなかったことは一度もなかった。程度の差はあれど、少なくとも全く効果を見せなかったのは今回が初めてだった。「キュゥべえ、いるんでしょ。出てきてよ」 故にさやかは苛立ちを隠そうとせずキュゥべえを呼び寄せる。その言葉に従い、どこからともなくキュゥべえが現れる。「やぁさやか。どうしたんだい?」「どうしたもこうしたもないよ。キュゥべえ、あんたあたしの願いを叶えてくれたんだよね」 そんなキュゥべえに対し、さやかは詰問する。そんな怒りを露わにするさやかに対し、キュゥべえはいつも通りの表情と口調で答える。「そうだよ。キミたちに過酷な運命を背負わせる代償に一つだけ願いを叶える。それが魔法少女の契約だ。そこに一切の例外はない。さやか、確かにキミはあらゆる怪我や病気を治すことができるようになったはずだ。その点については疑いようのない事実だよ」「だったら、どうしてはやての脚は動かないままなんだよ!」「はやて? 今キミははやてって言ったのかい? それはもしかして八神はやてのことかな?」「そ、そうだけど……?」「それならボクを責めるのはお門違いだよ。さやかキミの力では彼女は治せない。あれは病気でも怪我でもない。言わば呪いのようなものだからね」「……どうして呪いだって断言することができるんだよ?」 キュゥべえの言葉にさやかは苦虫を噛み潰したような表情で問いかける。「実を言うとね、彼女の存在はずっと前から知っていたんだ。なにせ彼女の魔法少女の素養は非常に素晴らしい。まどかには劣るけれど、もし彼女がボクと契約すれば近代では他に類を見ないほどの力を持つ魔法少女になるのは間違いない。はやてにはそれほどの素質がある。……けれど残念なことに彼女にはボクの姿を見ることはできないんだ。おそらくこれも彼女を蝕む呪いの効果だと思う。実に興味深い対象だよ。魔法少女としての素養はあるのに、ボクの姿を見ることができないなんて」 その後もキュゥべえは言葉を続けていたが、さやかの耳には入らなかった。ただ一つだけはっきりしたのは、さやかの力でははやての脚を治すことができないということだけだった。さやかがキュゥべえと契約した一番の理由は恭介の腕を治すことだ。だが二番目の理由としてはやての脚を治したいという想いがあったのも事実だ。魔法少女になったのにも関わらずそのもう一つの願いは叶わない。そのことがさやかは堪らなく悔しかった。「さやかさん、どないしたん?」「い、いや、なんでもないよ」 考えていることが表情に出ていたのか、心配そうに問いかけるはやて。さやかはそんなはやてに慌てて取り繕う。はやての脚を治すことができなかったこと。それはさやか自身の不徳の致すところだ。それではやてに余計な心配を掛けるわけにはいかない。何より今日ははやての誕生日だ。彼女を悲しませるようなことだけはしちゃいけない。そう思い、さやかは一端そのことを忘れ務めて明るく話題を振り続けた。 さやかが面白おかしく学校であったことを話し、それを聞いてはやてが笑う。そんな他愛のない雑談をしながら、二人はマミの家に到着した。「はやて、チャイムを押すけど心の準備はできてる?」「ばっちこいや」 さやかの確認にはやては明るく答える。それを聞いたさやかはマミの家のチャイムを押す。するとすぐに中から声がし、玄関の扉が開く。「あら? あなたがはやてちゃんね。もう準備はできてるわよ。さぁあがって」 そんな二人を出迎えたのは家主であるマミだった。二人はマミに案内されてリビングに向かう。そして扉をくぐった瞬間、複数の破裂音がはやてを襲った。「はやてちゃん、誕生日おめでとう~」 そして拍手とともに温かな声で迎えられるはやて。その光景にはやては呆然となる。リビングにいる人物は三人。そのいずれもがはやてとは初対面の人物である。それなのにも関わらず、彼女たちは暖かい笑みで自分の誕生日を祝ってくれている。それが凄く嬉しい。「……あ、あかん、嬉しすぎて泣いてしまいそうや」 幼い頃に両親を亡くし、自身もまた下半身が不自由になってしまう。学校に通うこともできなくなり、生活も一人で悪戦苦闘しながらの日々。はやては多くの時間を孤独の中で生きてきたと言っても過言ではないだろう。 故にはやては人の感情に敏感だ。周りの人が自分に対してどのような感情を覚えているのか、それがはやてには理解できていた。幼いながらも不自由なはやてに手を差し伸べてくれる人は少なからず存在する。けれど世の中にいる人全てがそんな優しさを持ち得るわけではない。直接、害を為すような人物に遭遇したことはないが、それでも遠巻きにはやてを眺め、鬱陶しそうな視線を向けるものがいたのも事実である。 今日の誕生会に集まることになっていたのは、さやかの友達とはいえ初対面の相手だ。不安がなかったと言えば嘘になる。だが先ほどのサプライズの祝いの言葉にそんな感情は吹き飛んだ。今はただただ嬉しくて仕方ない。「はやて、泣いてる場合じゃないよ。早く蝋燭の火を消さないと」「そ、そうやね。皆さん、こないに祝ってくださって、本当にありがとうございます」 さやかの指摘にはやてはケーキに灯った蝋燭の火を一気に吹き消し、改めてこの場に集まった一同に礼を告げる。「はやて、さっきも言ったけど気にしないでいいってば。だって今日集まったのは、皆はやてを祝ってあげたいって思った人ばかりなんだからさ」「そうだよ、はやてちゃん。確かにわたしたちははやてちゃんより歳上だけど、友達だと思ってくれて構わないよ」「で、でも、わたし、こないな大人数に祝ってもらったの初めてで……」「そんなに気にするのなら次のあたしの誕生日の時は一緒に祝ってくれればいいよ」「そうね、それがいいわ。美樹さんから聞いた話だとはやてさんは料理が上手みたいだし、私もその時を期待しているわ」「……ッ、はい。ありがとうございます」 皆の言葉を聞いてはやてはなおのこと、嬉しそうに礼を言う。「ところではやてさん、改めて自己紹介してもいいかしら?」「あっ、はい。わたしも皆さんのことはもっと知りたいですし」「じゃあまずは私からね。私は巴マミ。美樹さんとは中学の先輩後輩の関係よ」「ちなみに今日のケーキはマミさんお手製のものでもある」「えっ? そうなんですか? こないな大きなケーキを一人で作るなんて凄いな~」「そんなことないわよ。美樹さんに聞いたところ、はやてさんってかなり料理が上手なんでしょう。私がはやてさんぐらいの歳の頃は包丁すらまともに握ったことはなかったもの。きっとはやてさんなら教えればこれぐらい、すぐに作れるようになると思うわ」「ほんまですか。なら今度教えてください」「えぇ、いいわよ」 そう言ってマミははやてに微笑み返す。マミもはやても共に両親を亡くし一人暮らしの生活だ。だからこそマミは年長者としてはやての世話を出来る限り見てあげたいと考えていた。「じゃあその時はわたしに試食させてもらおうかな? ……って自己紹介がまだだったね。わたしは鹿目まどか。よろしくね、はやてちゃん」「ちなみにまどかとは小学校からの幼なじみで、色々と恥ずかしい話も知ってるから、何か気になることがあったら遠慮なくあたしに訪ねてくれていいよ」「ちょ、ちょっと、さやかちゃん。なに言ってるの!? 勘違いしないでね、はやてちゃん。別に恥ずかしい話なんてないからね」 さやかの言葉にまどかは顔を真っ赤にして否定する。だがさやかはその言葉を待っていましたと言わんばかりに話を続ける。「えー、そうかなぁ。ついこの間だって授業中に居眠りして涎垂らしてたじゃん!」「垂らしてないからね!? はやてちゃん、これはさやかちゃんの嘘だからね!!」「あはは、二人とも仲ええなあ。やっぱ幼なじみって言うだけあって呼吸もぴったしや」 阿吽の呼吸で話す二人にはやては思わず笑う。その笑顔に釣られてまどかも笑う。さやかからはやての話を聞かされた時、まどかははやてのことを「可哀想な少女」だと思った。はやての境遇と比べて、今の自分はどれほど恵まれていることか。もし自分がはやてのような立場に立てば、きっと笑ってはいられない。だからこそ、今日ははやてに存分に楽しんでもらおうと思っていた。 だが実際にはやてを見て、まどかは致命的に勘違いしていたことに気づく。はやては自分の不幸を苦になどしていない。もちろんそういった感情が全くないということはないのだろう。だが少なくともそれを外に出すのを良しとしない強い子であるということは一目でわかった。「それじゃあ最後は暁美さんね」 マミがそう促したことで一同の視線がほむらに集まる。それに対しほむらは、はやての目をまっすぐ見つめながら真剣な表情で短く告げた。「暁美ほむらです。よろしくね、八神はやてさん」「……あのさ転校生。他に何か言うことはないの?」「あら? 私はてっきり美樹さやかが補足の説明をしてくれるものとばかり思っていたけれど……」「……いや、確かにそうしたいのは山々なんだけどさ、よくよく考えるとあたしってそこまで転校生のことよく知らないんだよね」「……そう。なら八神さん、私の方から一つ質問をしてもいいかしら?」「えっ? なんですか?」「あなた、美樹さやかから魔法少女についてどの程度まで聞かされているの?」「ちょっと暁美さん、なにもこんな時に……」「いえ、これは大事なことよ。幸い、ここには事情を知っている人間しかいないし、話せることが話しておきたいわ」 ほむらの物言いに待ったを掛けたマミだったが、ほむらの切り返しは正論だと言葉を引っ込める。その姿を見てさやかもまどかも口を挟むべきではないと考え、口を噤む。「あの、もしかしてここにいる皆、魔法少女なん?」「いいえ、そういうわけではないわ。確かに暁美さんと私はそうだけれど、鹿目さんは違うわ」「そうなんか?」 ほむらの言葉を聞いたはやては、まどかの方を向いて問いかける。「うん、わたしには魔法少女になってまで叶えてもらいたい願いもないから……」「今は彼女のことはいいわ。それよりも八神さん、さっきの質問に対する答えは?」「えっと、さやかさんが魔法少女っていうことと、わたしの脚はさやかさんの魔法じゃ治すことができなかったってことぐらいやけど……」 ほむらがそれほどまでにはやてに問う理由、それは彼女の中に秘められた魔法少女としての素養に気がついていたからだ。まどかには劣るが、確かにはやてから感じる素養は並という言葉では片づけられないほど強大だ。さやかが気に掛けているということも考えれば、すでにキュゥべえが目をつけていても何らおかしくはない。「……それだけ?」「それだけやけど」 しかしはやてから返ってきた返答は当たり障りのない部分のみ。ほむらやマミが魔法少女だったということはもちろん、どのようにして魔法少女になるのか、魔法少女の敵である魔女についても彼女は知らなかった。「…………そう。ならいい機会だから魔法少女について一通り説明させてもらうわ」 そしてほむらの口から簡単に魔法少女がどのようなものか説明される。「願いを叶えてもらう代わりに魔女と戦う使命を与えられるかぁ。さやかさん、本当にファンタジーの世界の住人やったんやなぁ」「だいたい理解できたようね。なら最後に一つだけ忠告させてもらうわ。決して魔法少女になろうとは思わないで。魔法少女になるということはたった一つの願いと引き替えに全てを諦めるということなの」「全てを諦める?」「そう。もしあなたが願えば、その動かない脚が自由に動くようになるかもしれない。だけどその代わりにあなたの魂は未来永劫、魔法少女という楔に囚われることになる。まどかもそうだけれど、できることならあなたにもそうなって欲しくはないわ」 ほむらがこれほどまでにはやてを気に掛ける理由、それは彼女の姿がほむらの過去と重なるからだ。魔法少女になる前のほむらは、病弱だった。そのためまともに小学校に通うことができず、入院した自分の元に両親が見舞いにくることもほとんどなかった。そんな自分の過去とどことなく重なるはやてに親近感を覚えるのも無理はない。 はやてと出会ったのはついさっきのことだが、それでも昔の自分を思い起こさせるこの少女に、自分と同じ運命を歩ませたくないと思うのは当然の感情だろう。「大丈夫ですよ、ほむらさん。確かにこの脚が動くようになれば便利やけど、でもわたしはもうそれ以上に欲しい物を手に入れることができたから」 そんなほむらの不安を余所に、はやてはそう言いきる。脚が動かないことに対して不便に思うことはあっても、不自由だと思ったことはない。それ以上にはやてを苦しめていたのはどうしようもない孤独感だった。家族はおらず友達もいない。そんな現状に寂しさを覚えてしまうのは無理もないことだろう。 だが今のはやてにはさやかがいる。対等な相手、と呼ぶには年齢が離れているように感じるかもしれない。しかしはやてにとってさやかは初めての友達なのだ。そしてその友達が自分のために誕生会を開いてくれた。はやてにとってみればそれこそが最高の誕生日プレゼントだった。「その言葉、信じさせてもらうわね。それとごめんなさい、八神さん。せっかくの誕生会にこんなつまらない話を聞かせて。これはお詫びというわけではないけど、私からのプレゼントよ」 そう言いながらほむらはプレゼントを取り出してはやてに渡す。その表情は先ほどまでの真剣なものとは違い、どこか優しげなものだった。それを皮切りに誕生会は和やかな雰囲気へと戻り、はやては終始笑顔を浮かべ続けるのだった。 ☆ ☆ ☆ 楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、誕生会は恙なく終わりを迎えた。さやかとまどかははやてを家まで送っていくために先にマミの家を後にし、残ったほむらはマミと共に誕生会の後片づけに勤しんでいた。「それにしても暁美さん、はやてさんに魔法少女について説明するにしても、もう少し日を選ぶべきではなかったのかしら?」 飾り付けを外しているほむらに対し、マミはテーブルを拭きながらそう問いかける。「巴さんも気付いたでしょう。八神さんの魔法少女としての素養に。美樹さんがどの程度、話したのかわからない以上、手遅れにならないとも限らないでしょう」「それはそうだけど……」「彼女にはキュゥべえにしか叶えられない願いがある。そうである以上、警告するのに越したことはない」 この場にいないまどかも含め、すでに彼女たちはさやかからはやての脚が魔法の力では治せなかったことは聞かされている。「でも美樹さんが言うには、キュゥべえははやてさんに近づけないのでしょう?」「そんなの、出任せに決まってるわ。確かに八神さんの境遇には同情するし何とかしてあげたい気持ちもあるけど、でもだからといって魔法少女になることだけは賛成できない」「……ねぇ、暁美さん。どうしてあなたはそんなに魔法少女になることに否定的なの」 マミは真剣な表情でほむらに尋ねる。出会った当初は単純に自分のライバルが増えることを危惧してキュゥべえの契約を阻もうとしていると思っていた。しかし一度、命を落とし掛け、ほむらと共に戦うようになってからその考えは間違いであると気付かされた。 彼女は不器用だが、それでも優しい心を持っている。そんな彼女が自分の取り分が減るなどという利己的な理由でキュゥべえとの契約を阻むとは思えない。きっと何か別の理由があるはずだ。「……魔法少女の戦いは過酷なものよ。そんな戦いに大した覚悟もなく踏み込んで欲しくないだけよ」 ほむらの言う通り、魔法少女の戦いは命がけだ。奇跡の代償と考えれば安いものかもしれないが、それでも日常を謳歌している人に推奨するべきものではないと理解できる。 けれどそれははやての場合には当てはまらない。彼女の場合、不自由な両脚というハンデを持って生活している。そしてそれが現代医学で治すことができないのなら、奇跡に縋るしかない。五体満足ならばそれで納得できるが、そうでない以上ほむらが何かを隠しているのは明白だった。「……そうね。確かに暁美さんの言う通りだわ。ならなくて済むのなら、魔法少女になんてならない方が良いわよね」 しかしそんな思いとは裏腹にマミはそんなほむらに同調する。もちろん本当のことが気にならないと言えば嘘になる。けれどマミはそれを無理に聞き出すつもりはない。マミにとってほむらは大切な戦友であり後輩だ。そして後輩を支えるのは先輩としての大切な役目だと思っている。 彼女がそれを口にしないということは、まだマミはそこまでほむらに信頼されていないということだ。ほむらと共同戦線を張ることにしてから彼女からの協力要請があったのは、ワルプルギスの夜の一件のみ。しかもその日にワルプルギスの夜が現れるという根拠についての説明は一切なく、結局現れることもなかった。(確かに私はまだ、暁美さんに信頼しきれてもらえていないのかもしれない。でもいずれ、暁美さんが抱えていることを全て話してもらうわよ) ほむらがどのような境遇で魔法少女になったのか、この町に来るまでどのような戦いを繰り広げてきたのか、マミは知らない。それでもマミはいずれほむらに信頼されるような先輩になりたいと思う。そのために今後も精進を続けることを改めて誓うのであった。 ☆ ☆ ☆ 一方その頃、はやてを家まで送るためにまどかとさやかの三人は仲睦まじく会話をしながら暗い夜道を歩いていた。「それにしてもほむらちゃん、どうしてあんなことを言ったんだろう?」 そこでふと、まどかは誕生会でのほむらの発言を思い出す。「そりゃあれだろ? あたしだけでも手一杯だってのに、これ以上初心者の面倒は見きれないってことじゃない?」「そうかなぁ。それだけじゃないと思うんだけど……」 頑なに魔法少女になることに対して否定的なほむら。その姿勢は出会った頃から一貫して変わっていない。確かに魔法少女が命がけということはまどかもさやかも理解している。それでもほむらがあそこまで過敏にキュゥべえとの契約を阻止しようとしている理由がわからなかった。「暁美さんっていつもあんな感じなんですか?」 そんな二人のやりとりを聞いていたはやてが尋ねる。誕生会が始まったと同時に忠告してきたほむら。その時の彼女の真剣な表情と眼差しは今でもはやての脳裏に焼き付いている。だがそれ以降のほむらからはそういったきつい様子は一切なく、時折り笑みさえ浮かべていた。「そうだよ! 空気が読めないというか、重要なことを話さないというか、物腰がいちいち敵対的っていうか……」「さやかちゃん、そんな言い方ほむらちゃんに悪いよ」「でもさ、まどか。なにも誕生会の席で初対面のはやてに詰問することはなかったとは思わない?」「うーん、さやかちゃんの言いたいことはわかるけど、でもほむらちゃんははやてちゃんのことを本気で心配していたんだと思うよ」「そうなんですか?」「うん。わたしもね、前に同じことをほむらちゃんに言われたの。それも転校初日にね。いきなりだったから最初は驚いちゃったけど、でも今にして思えばほむらちゃん、本気でわたしのことを心配してくれてたんだなぁって思えるんだ」 その言葉を聞いてはやては納得する。誕生会が始まったと同時に忠告してきたほむら。その時の彼女の真剣な表情と眼差しは今でもはやての脳裏に焼き付いている。だがそれ以降のほむらからはそういったきつい様子は一切なく、時折り笑みさえ浮かべていた。 真剣な表情のほむらと微笑みを浮かべるほむら。おそらくどちらも彼女の本質なのだろう。日常を大事にし、それを守るためには手段を選ぶことも厭わない。だからこそ彼女は、初対面のはやてにあのような忠告をしたのだ。「さやかちゃんも似たようなこと、ほむらちゃんに言われたことはあるでしょ?」「それは、まあね。だけどあたしの場合、それ以上に辛辣な言葉を浴びせかけられたよ。……とはいってもそれはほむらの忠告を無視して魔法少女になったから仕方ないことなのかもしれないけど」「もしかしてさやかさんって魔法少女になりたてなん?」「そういやはやてには話してなかったね。実を言うとあたしはまだ魔法少女になってから一ヶ月の新米でさ。しかも魔法の系統が戦闘向きとは言い難くて、今はもっぱらマミさんかほむらに引っ付いて戦い方を学んでいるところなんだよ。マミさんの時は優しく指導してくれるからいいけど、ほむらの時はもう最悪。あたしがどんなに頑張っても、あいつは文句しか言わないでやんの」「でもそれって裏を返せば、さやかさんが簡単に魔女にやられないように厳しく鍛えているってことやろ? やっぱりほむらさん、優しい人なんやない?」「……ま、確かにまどかやはやての言うことも理解できるよ。だけどさ、まだあいつはあたしたちに心を開ききったわけじゃない気がするんだよね」「そうかなぁ? わたしはそうは思わないけど……」 さやかの言葉にまどかは疑問を返す。「そりゃ転校してきた頃よりは心を開いてくれていると思うよ。でもさ、あいつはあたしたちに何かを隠してる。それが何なのかはわからないけど、そこにあいつが頑なに魔法少女になることを阻もうとしている理由があると思う」 出会った当初とは違い、ほむらと頻繁に話をするようにもなり、共に魔女の捜索を行うようになった。しかしさやかには未だに彼女とどこか距離を感じるのだ。今更、ほむらが裏切るような真似をするとは思ってはいない。しかしそれでも彼女には何か秘密があることをさやかは直感的に感じ取っていた。「正直に言えば、少し悔しいかな。今のあたしじゃあ、あいつの力になれない。いったい、何を抱えているのか知らないけど、少しはあたしやマミさんを頼れってんだ」「……さやかちゃん」「ま、とりあえずは今ははやての脚の治療をできるレベルになるのがあたしの目標かな? そうなればほむらの奴もあたしの力を頼ってくるだろうしね。時間はかかるかもしれないけど、あたしは絶対に諦めないからね」 先日の魔女との戦いでさやかは確かな成長を感じていた。依然として未熟とはいえ、さやか歯一人で魔女を倒せる程度には成長することができたのだ。それもひとえにマミとほむらがほぼ毎日のように熱心に戦闘訓練を行ってくれたおかげだ。 もちろん自身の魔法が戦闘向きでないことはさやかが一番よくわかっている。だがそれでも、マミやほむらのサポートをこなせるレベルにまで成長できれば問題はない。何せ彼女の本分は他者に対する治癒魔法なのだ。信頼できるパートナーがいる以上、一人で戦う必要はない。 それにはやての脚にしたって、さやかのレベルが上がれば少しは改善させることができるかもしれない。彼女の脚を治療すること、それがさやかが魔法少女になるきっかけとなった理由の一つなのだ。そう簡単に諦めるわけにはいかない。「さやかさん、ホントありがとな」「な、なんだよ、急に。改まって」「だってさやかさんは一人ぼっちだったわたしに手を差し伸べてくれて、それに今日の誕生会だって……。もう感謝しても感謝しきれんわ」 そう言いながらはやての瞳から一筋の涙が零れる。だがその顔は溢れんばかりの笑顔だった。その屈託のない表情にさやかの顔は朱に染まる。「そんなの、友達だから当然でしょ」 そして照れくさそうに頬を掻きながらそう告げた。だがそれがはやての涙腺をさらに刺激したのだろう。彼女の瞳からは止めどなく涙が零れ落ちる。それを見て慌ててなだめようとするさやか。しかしいくらさやかが言葉を口にしても、はやての涙が止まることはなかった。「はやてちゃん、嬉しいのはわかるけど、泣くのはまた今度に取っておこう。きっとその方がさやかちゃんも嬉しいはずだよ」 その様子を見かねたまどかは、言いながらはやてにハンカチを渡す。その言葉の意味を理解したはやては、なんとか涙を止め、ハンカチで目元を拭う。「そ、そうやね。ごめんな、さやかさん。困らせるような真似をして」「い、いや、それは構わないけどさ」 どうにもはやての言葉が照れくさく、その顔を正面から見ることができないさやか。そんなさやかに満面の笑顔を向けるはやて。そしてまどかはそんな二人の様子を微笑ましく思いながら眺めていた。 ――平和な日常、この時の三人は確かにそれを謳歌していた。だがこの時、三人は気付いていなかった。ひっそりと暗闇から彼女たちを狙う魔女が近づいていたことを。そしてその様子を感情のない赤い瞳で見つめるキュゥべえがいたことを……。2014/8/15 初投稿2014/9/16 タイトルのナンバリングを簡略化、および誤字脱字微修正