まったく、こいつら馬鹿か?私に対する怒りを隠さず襲い掛かってきた3人を見て、心の中でため息をついた。ルーピン先生を死んだと決めつけて、襲い掛かってくるなんて。たしかに私は先生を斬った。でも『眼』を使って斬ったのではない。普通に軽く服の部分を斬っただけだ。だから、近づけば一目で死んでいないって分かるはずなのに。
だが、怒りで我を忘れているハリー、ロン、ネビルに、そんなことを言っても聞き入れてくれないだろう。まぁ、予想通りの展開だが。
ダンブルドアを誘き寄せるため、ハリー・ポッターを危機的状況に陥らせないといけない。ハリーを徹底的に傷つけ、されど、殺すことはしないという微妙な手加減で戦わないといけないのだ。今回の計画について、『予言』を奪うことしか知らされていない下っ端の死喰い人達に、ハリーの相手をさせることは出来ない。万が一、うっかり殺してしまったら、ダンブルドアは『ハリーを用済みの駒』と判断し、ノコノコ魔法省まで来ない可能性がある。そうなることを絶対に避けないとならない。
だから、私がハリーの相手をすると、ルシウスやシルバーと決めていた。
とはいえ、私を『友達』だと認識しているハリーが、私に戦いを挑んでくるとは考えにくい。本当のことを全て話し、目の前で反旗を翻したとしても、現実だと受け止めない可能性が高いからだ。
しかたないので、私は前準備として、ルーピン先生には『わざと負けてくれ』と頼んでおいた。ハーマイオニーから聞いた話だと、ハリーはルーピン先生に懐いていたらしい。だから、そんなルーピン先生が私の手で倒れたら、その敵討ちとしてハリーが私に襲い掛かってくるのは一目瞭然だ。
計画は順調。唯一予想外だったのは、ハリーが『磔の呪文』を放ってくること。『磔の呪文』は『人間』相手に使ってはいけない『許されざる呪文』だと知っているはずなのに。どうやら、私は人間だと認識されていないのかもしれない。
私は、ハリーが放った『磔の呪文』を左に避けながら、右手につかんでいるナイフで、ロンの放つ『失神呪文』を斬った。
「『エクスペリアームス‐武器よ去れ』!」
ネビルが放った『武装解除』の呪文を間一髪のところで、地面を蹴って避ける。だが、地面に足が付く前に赤い閃光が目の前に現れる。その閃光に気が付いたのと、ほぼ同時に右方向から黄色の閃光が放たれたのが視界に入った。
「っち、『プロテゴ‐守れ』」
私は左手に握る杖で赤い閃光から身を護り、右手に握りしめるナイフを振り降ろし黄色の閃光の中に視えた橙の『線』を切り落とす。私が相手をしないといけないのは、ハリーだけ。ハリーを援護するかのように襲い掛かってくるロンとネビルが邪魔だ。だが、仲良くしてきたネビルを傷つけるのが躊躇われる。その攻撃を躊躇する心がある以上、私はハリーを追い詰めることが出来ない。
なら、どうすればいい?……そんなの簡単だ。私は、声を出さずに笑みを浮かべる。
「さっさと穏便に退場してもらうか」
右手に握りしめていたナイフを、ローブの内側にしまう。そして代わりに、この数か月で触り慣れた『P230自動拳銃』を取り出した。初めて実戦で使用する自動拳銃を取り出したとき、周囲の空気が少し変わった。
狂気の色で満ちていたハリーの瞳に動揺の色が混ざり、警戒するように動きを止めた。
ネビルは眉をしかめて拳銃を凝視した。そしてロン・ウィーズリーは
「なんだよ、マグルの玩具か?馬鹿にしやがって!!『ステューピファイ‐麻痺せよ』!!」
どうやら、これの威力を知らないみたいだ。…当然か。マグル学を受講していたとしても、拳銃とその破壊力について習うとは思えない。先程と変わらずにロンが放った赤い閃光を、しゃがんで交わす。頭上を閃光が通り過ぎていくのを感じながら、私はカチリと音を立てながら安全装置を外した。
最初に狙うのは最も油断をしているロン。その次にネビル。最後にハリーの順に狙おう。狙う個所は、それぞれの右肩の辺り。心臓や喉、頭蓋といった場所は狙おうと思えば狙えるが、狙わない。私がしなければならないことは、ロンとネビルを戦闘不能にすることであって、殺すことではないからだ。死ぬとまではいかないが、戦闘を離脱させる程度の怪我を与えられれば、それでいい。
そうと決めた私が引き金を引くと、パンっと乾いた音が響いた。続いてネビルに向けて発砲し、ほとんど間をおかずにハリー目掛けて発砲する。
「プ、『プロテゴ‐守れ』!」
間一髪のところでハリーの前に透明な盾が広がり、身を守ることが出来たみたいだ。だが、ロンとネビルは防御しなかった。正確に言えば、防御できなかった。
ロンとネビルの右肩の辺りから鮮血がほとばしる。みるみる間にロンとネビルの制服が赤く染まっていく。今までに体感したことがない激しい痛みでロンとネビルが悲鳴を上げた。握りしめていた杖がカランっと音を立てて地面に転がる。2人が痛みで呻きながら転げまわっている隙に、私は杖を振るう。
「『アクシオ‐来い』!」
床に転がる2本の杖が、私の手の中に飛び込んでくる。私はためらいもなく、握りしめた2本の杖を持つ手に力を込めた。パキッという音とともに、簡単に折れる杖。もう、私の手の中にあるのは杖ではない。何の能力もない木の棒だ。
「返すよ」
苦しげに呻いているロンとネビルの方に、杖だった棒を投げる。それは、カランと乾いた音を立て、床に転がった。武器を失って丸腰となってしまったネビルとロンの顔は、恐怖で歪んだ。銃弾で抉られた右肩を抑えながら、先程まで『杖』だった木片を呆然と見下ろしている。
「セレネ、よくも!!」
ハリーが血走った眼で私を睨んできた。
「私は、その2人が戦闘に参加できないようにしただけ」
私は淡々と感情を込めずに口にすると、銃口をハリーに向けた。ハリーも震える手で杖を構えている。額から流れ落ちる汗で前髪が濡れていた。
「杖さえなければ魔法使いは、一般人と同じだ。それともなんだ。アンタは友達を戦いに巻き込ませたいのか?どうしても戦いに巻き込ませたいなら、2人を盾にしようか」
「だからって1歩間違えれば死んでいた。僕は………もうセレネを許さない!嘘をついているのは、セレネの方じゃないか!『クルーシオ‐苦しめ』!!」
再び『磔の呪文』を放つハリー。間一髪、右方向へ飛び退いた私の鼻先を、『失神呪文』の赤より禍禍しい赤い閃光が掠め過ぎる。『許されざる呪文』は魔力の消耗が激しいのに、よく何発も放てるなと感心してしまった。
「現実を直視しないお子様が、私に説教する資格なんてない」
そう言いながら、ハリーの右肩に狙いを定めて2発発砲する。だが、銃弾がハリーの右肩を抉る前に、ハリーの身体は唐突に右方向へ、まるで何か透明の手に強い力で押されたかのように、よろめいた。標的を外した銃弾は、速度を落とさないまま人をかたどった石造を頭部を砕く。石の破片が四方八方に四散し、ハリーの頬や腕をかすった。
一体どうしてあのタイミングで、よろめいたのだろう?その答えは案外簡単に見つかった。私達より少し前方で戦闘を繰り広げていたマッド・アイ・ムーディの義眼『魔法の眼』がハリーの方を凝視しているのが見えた。恐らく、ハリーの危機に気が付いたムーディが、ハリーを助けたのだろう。とはいえ、ムーディも己の戦いを楽観視できる立場ではない。ルシウスを含む2人の死喰い人と戦っている。閃光が嵐のように飛び交う中、よくハリーを気にする暇があったものだと思わずにはいられない。
私は、苦戦しているムーディから視線を逸らし、体勢を立て直そうとしているハリーに視線を戻した。装填されている銃弾は、残りわずか。新たに装填する時間は、ない。私は、ナイフと銃を左右持ち替えると、地面を一気に蹴った。まだ体勢を整えていないハリーは、ぎょっとした視線を私に向ける。
「『ステューピファイ‐麻痺せよ』」
しかし、しっかりと狙いを定めないで放ったからだろう。赤い閃光は見当違いの方向へ奔った。私はハリーの鼻先まで近づくと、思いっきりハリーの腹を蹴り飛ばす。
「くはっ!」
ハリーの身体は宙を飛び、大理石の壁に激突した。口から血反吐を迸らせる。白い床に赤い血痕が散らばった。
私は、予備のマシンガンを装填しながら、痛みで唸るハリーに近づいていく。視界の端で、セドリックがシリウスと相手に戦っているのが見えた。かなり激しい決闘で、2人の杖が霞んで見えた。起き上がったルーピンは、右肩を抑えて顔をしかめているロンとネビルを護るようにして戦っていた。
部屋の向こう側でトンクスが石段の途中から転がり落ちていくのが見えた。ハーマイオニーやジニー、そしてルーナが昇っていく石段を、転がり落ちていく。ハーマイオニー達は立ち止まると、勝ち誇ったような笑みを浮かべるベラトリックスに杖を向けた。
まずい。あの3人ではベラトリックスに勝てない。絶対に殺されて……
「『麻痺せよ』」
ハーマイオニー達の方へ気を取られ過ぎていたからだろう。ハリーがつぶやいた『失神の呪文』に反応するのが遅れてしまった。禍禍しい閃光が視界に入ったとたん、弾けるように真横へ跳躍する。間一髪だったようで、私の耳元を閃光が掠め過ぎた。そして、背後で切り裂くような悲鳴が上がる。……おそらく、ハリーが放った呪文が誰かに当たってしまったのだろう。振り返って誰に当たったのか確かめたい気もしたが、敵(ハリー)の手に杖が握られている以上、目の前の敵から目を離すわけにはいかない。
私は、銃口をハリーの肩口に押し付ける。ハリーが物凄い勢いで私を睨んできた。…まるで親の仇を見るような眼をしている。ハリーが呪文を唱える前に、ハリーの手の甲を踏みつけた。体重をかけて踏んだので、かなり痛かったのだろう。ハリーは苦痛で顔を歪め杖を握りしめていた手を開いた。……コトン、とハリーの手から杖が床に落ちる。
「これで終わると思うな。償いはこれから、だ?」
その時、私は妙なことに気が付いた。うっすらとだが、ハリーに纏わりついている『線』に重なるようにして、うっすらと『線』が絡まっている。なんというか、以前破壊した『リドルの日記』みたいに。
とりあえず、薄い『線』を斬ってみるかと思ったその時だった。視界の端に黄色の閃光が奔るのが見えた。間一髪のところで、床を蹴って後ろに飛び跳ねる。閃光が放たれた方に顔を向けると、ハゲの長身の黒人で、片耳に金のイヤリングをつけている男が私に杖を向けていた。男の周囲には5人の死喰い人が倒れている。
…どうやら相当強い不死鳥の騎士団員らしい。肩で息をしているようにも見えるが、まだ余裕があるようにも見える。そうしている間にも、男は杖を鞭の様に振るい、幾筋もの閃光を放ってきた。
転がるようにして閃光を避ける。まずい、残っている銃弾は対ダンブルドアに用意していたモノだ。ここで使用するわけにはいかない。
私は、いったん石造の陰に隠れた。左手につかんでいた杖を咥え、空いた手で銃の安全装置を戻しながら、ローブの内側にしまう。そして空いている右でナイフを握る。
咥えていた杖を左手に持ち直すと、石造の影から躍り出た。だが、その時、私の足が何か丸くて固いものに触れて、滑りそうになる。それは、床にコロコロと転がっていくムーディの義眼『魔法の眼』だと分かった。
眼の持ち主は、ルシウスの配下、ドロホフが放ったちょうど緑色の光に包まれていた。頭から血を流して、ゆっくりと倒れていく。
残る不死鳥の騎士団員は4人。そのうちルーピンはロンとネビルを護らないといけないし、エメラルド色のショールを巻いている魔女の周囲には4人ほど死喰い人が倒れていたが、まだ2人の死喰い人と戦っている。青白い長い顔を歓喜で歪ませているドロホフが、杖を振り回しながら魔女に呪文を放った。
シリウス・ブラックはセドリックと間に入れないような激しい閃光の応酬を繰り広げている。セドリックの方が若干押されているようにも見えるが、まだ平行戦のようだ。そして目の前にいる黒人の男。
…そういえば、ベラトリックスと戦っていたハーマイオニー達は大丈夫だろうか。チラリと階段の方を見て、目を見張った。ハーマイオニーとジニーが、戦意焼失したように座り込んでいるのが見えた。だが、ルーナとベラトリックスの姿が見えない。
「こっちに来なよ、ハリーちゃん!」
赤ちゃん声を作ったベラトリックスが叫んでいる。ダラリと腕を垂らしたルーナを抱え、楽しそうに…挑発するように笑うベラトリックス。
フラフラと起き上がったハリーは、怒りで顔を歪めながら、ベラトリックスの後を追いかける。
ベラトリックスの奴、何をする気だ?自分1人でハリーを倒して、さらにヴォルデモートの寵愛を受けようと考えているのか?ベラトリックスとハリーはエレベーターの格子戸の向こうへと消えて行った。私も後を追いたい。でも、その前に目の前の敵をなんとかしないといけない。
「『サーペンソーティア‐蛇よ出ろ』」
私の杖の先から、毒が滴る牙を鋭く尖らせた蛇が数匹飛び出してきた。
『襲え!』
蛇語で命令すると、蛇達は一斉に黒人の男へ跳びかかった。男が蛇を相手にしているすきに、私は廊下を疾走する。ジャラジャラっと音を立てながら開くエレベーターに転がり込み、地下1階へ通じるボタンを叩いた。私はエレベーターの壁に寄りかかると、ポケットにしまっておいた眼鏡をかけた。いたるところに覆われていた『線』が消える。『線』を視るのは苦ではないが、やはり辛い。今は少しでも休まないと……
最高の状態で、ダンブルドアを殺せない。
「ポッター、お前が私に勝てるわけがない!」
ベラトリックスが叫ぶ声が、上の方から聞こえてきた。どうやら、ハリーとベラトリックスが戦っているみたいだ。ベラトリックスの方が死線を潜り抜けてきたベテランの魔女。どう贔屓目に見てもベラトリックスが勝利する可能性が高い。
ベラトリックスがハリーを勢い余って殺していなければいいけど。格子戸が開き、私はホールへと躍り出る。黄金で作られた泉の立像の傍で、2人が戦っていた。……正確に言えば、ハリーがベラトリックスに遊ばれている。
ルーナは、床に転がっていた。私は2人に気が付かれないように、そっとルーナに近づく。ルーナはピクリとも動かない。ただ、疲れ切ったようにグッタリと床に倒れている。私はルーナの傍に跪くそしてルーナに肩に触り、ゆっくり揺る。するとルーナの口から、ツゥーっと深紅の液体が滴り落ちた。それを見たとき、背筋がぞわっと逆立つ気がした。私は急いでルーナの手首を触って、彼女の脈を測定する。……しかし、ルーナの冷たすぎる手首の何処に触れても、脈を感じることは出来なかった。
喉元に息が詰まる。
ダンブルドアと敵対すると明らかにし、ルーナとも縁を切ったはずなのに……なんで、苦しいのだろう。震えそうになる身体を必死で抑え、何かに驚いたように開いていたルーナの瞼を閉じる。ベラトリックスが殺したのか。それとも、他の誰かが放った呪文の流れ弾が当たったのか、それは分からない。私は深呼吸をして立ち上がると、2人の戦いを傍観することにした。
先程から続く戦いで、かなり私は体力を消耗している。これ以上、消耗するのは得策ではないから。
「よっ、順調?」
ポンっと音を立てて隣に現れたのは、シルバーだった。どうやら、彼は仕事を無事に遂行したらしい。それとほぼ同時に背の高い痩せた男が、シルバーの隣に現れた。言うまでもなく、現れたのはヴォルデモート。縦に裂けたような瞳孔の血を思わす真っ赤な両眼が、ハリーを黙って睨んでいる。
どうやら、ハリーもベラトリックスも、ヴォルデモートの出現に気がついていない。ハリーは憎しみにとらわれた眼でベラトリックスに呪文を放つことに……そして、ベラトリックスはハリーとのお遊びに夢中で、ヴォルデモートが現れたことに気が付かないみたいだ。
「『予言』の内容は全部聞けたのか?」
消え入りそうなくらい小さな声でシルバーに尋ねる。するとシルバーは軽く笑った。
「もちろん。まぁ…期待外れと言ったら期待外れの内容。ただ、《一方が生きる限り他方は生きられぬ》ことが分かっただけ、上々ってとこかな。で、そっちは順調?」
一方が生きる限り他方は生きられぬ。あの『ガラス球』に納められていた予言は、ハリーとヴォルデモートについてされた予言だから、『ハリー』が生きる限り『ヴォルデモート』は生きられないし、その逆もまたしかりってことか。
私は杖を左手で回しながら、口を開いた。
「他の騎士団員は、ほぼ戦闘続行不可能。とはいえ、こっちの被害も甚大。下で戦っている奴の残りはセドリックとルシウスを含めて6,7人。当初の半数以下だ」
「半数か」
頭を抱えるシルバー。ヴォルデモートは、何も答えなかった。
ハリーの呪文が、油断していたベラトリックスの足元に当たった。急に体勢を崩されたベラトリックスは、ステンっと尻餅をつく。ハリーが勝ち誇ったように叫んだ。
「さっさと降参して逃げたらどうだ、ベラトリックス!」
「それは俺様のセリフだ、ポッター」
ヴォルデモートは、地の底から響いているような声を出す。ハリーもベラトリックスも、ようやく私達がいることに気が付いたみたいだ。ベラトリックスは歓喜のあまり頬を上気させる。だが、反対にハリーは昂揚していた顔が、一気に青ざめ、凍ったように動かなくなっていた。杖をベラトリックスに向けたままの姿勢で固まっている。
ヴォルデモートは杖をハリーに向けた。シルバーの隣に立っているヴォルデモートが、怒気のオーラを放っている。
「予言に従い、死んでもらうぞ、ポッター。『アバタ・ケタブラ』!」
だが、その緑色の閃光がハリーに届くことはなかった。泉に設置された黄金の立像の1つが突如立ち上がり、台座から飛び降りるとハリーを護るように閃光の進行方向に躍り出てきたのだ。
『死の呪い』は黄金の立像の胸の部分に当たり、粉砕される。この状況でこんなことが出来る魔法使いは、1人しか思い浮かばない。入り口付近を見て視ると、金色のゲートの前にダンブルドアが立っていた。
ようやく、この時が来た。
酷く笑みがこぼれる。私は、杖を握った左手で眼鏡を外し、ナイフを握った右手で眼鏡を外した顔を抑えた。これから、やることを考えると……言葉にしがたい感情が一気に押し寄せてくる。ダンブルドアに対する憎悪やら、引導を渡せる喜びやらが、全てごちゃ混ぜになって、堪えられない。いつも通り無表情の仮面をかぶり、ダンブルドアを睨みつける。
私の人生を狂わせた元凶(ダンブルドア)を……今ここでキッチリ殺さないと!!
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11月18日:一部訂正