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No.33927の一覧
[0] Persona -Revenger・復讐代行業者-(ペルソナシリーズ)[諸葛孔明](2012/07/13 14:14)
[1] Prologue 【OUT MAD FATE(狂いだす運命)】[諸葛孔明](2012/07/08 06:27)
[2] 因果応報 編   ACT01 - 復讐依頼[諸葛孔明](2012/07/13 01:18)
[3] EX 人喰い住宅(マンイータ・ハウス)編 前編[諸葛孔明](2012/08/28 03:24)
[4] EX 人喰い住宅(マンイータ・ハウス)編 後編[諸葛孔明](2012/09/07 01:05)
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[33927] 因果応報 編   ACT01 - 復讐依頼
Name: 諸葛孔明◆26bfbd70 ID:171932e5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/13 01:18

 比良坂市から伸びている『天岩門橋(あめのいわとばし)』の先には、人工島で全周10キロの島の高天原がある。
 高天原は不知火グループが建造した人工島で、一種の学園都市となっており、校舎は真新しく各種施設は充実している事と、学費が普通の私立と比べて4~5割ほど安いため、他県からワザワザ寮に入ってまで来るほどだ。その学園は、「私立神衣学園」と呼ばれている。
 神衣学園は幼稚園から大学まであるマンモス学園で、全校生徒は約一万人はいるとされ、教職員やショッピングモールで働く人物、不知火グループの関係者を合わせると5万人は優に超えると言われていた。

 俺――桐生大和は、そんな神衣学園高等部普通科2-Cで昼食を食べていた。
 机の上には、ある事情から一緒に住んでいる榊原雫ちゃんが作った弁当が置かれている。二段弁当の内容は、一段目にはウィンナーとポテトサラダとだし巻き卵、二段目にはご飯の梅干しが乗せてあるシンプルな弁当だ。
 箸で出汁巻き玉子を掴み、口へと運び食べる。
 ……うん、相変わらず美味しい。
 良いお嫁さんになるだろうけど、雪が果たして雫ちゃんを嫁に出すか疑問だ。
 残り1つなった出汁巻き玉子を箸で掴もうとしたした、その時、別の箸が出汁巻き玉子を掴む。慌てて顔を上げると、そこには神衣学園の制服を着たヤツがいた。

「おっ、美味しいな。このだし巻き卵」
「雫ちゃんが作ったんだから当たり前だろ。それよりも、勝手に人の物に手を出して食べるな、宗吾」
「わりぃわりぃ。ほら、代わりにオレの唐揚げをあげるからさ」
「……」

 そう言って宗吾は、コンビニの弁当から唐揚げを箸で取ると、俺の弁当へと唐揚げを入れた。
 コンビニで量産された唐揚げ1個、雫ちゃんが手作りをしてくれた出汁巻き玉子一つ。
 ……どう考えても等価交換が成立しない。雫ちゃんの手作りをした出汁巻き玉子一つと交換なら、せめて唐揚げを3つほど貰えれば、考えないことは無かったのに……。
 勝手に出汁巻き玉子を唐揚げと交換すると言う蛮行をしてきたのは、クラスメイトの小川宗吾。
 運動部は剣道部、文化部は報道部に所属している。メインは報道部で、剣道部の方は幽霊部員のようだ。ただ剣道の腕前は高く、その気になればレギュラーが狙えるほどである。
 「私立神衣学園」は学生が主導で、大人たちは余程の事がない限りは手出しをしない。良く言えば生徒の自主性を尊重、悪く言えば放任主義。そのためか、神衣学園には有象無象の部活動が幾つもある。
 例えば剣道部は普通の竹刀一本で稽古する部と、竹刀二刀流で部活動している所があり、文化部の方は新聞部だけで3つほどある。報道部もたまに新聞を発行していた。
 有象無象の部活があるため、毎年予算を組むときには、血を見る戦いが繰り広げられている。……らしい。
 らしい……と言うのは、あくまで宗吾からの情報なので、真実かどうかは分からない。それに俺は、部活に入っていないので、そう言うのには関心はなかった(あと、この学校で帰宅部を名乗ってはいけない。帰宅部と言う何をするかよく分からない部活が存在しているからだ。――そう言えば、何年か前に帰宅部と言う部活の活躍を書いたラノベがあったな)

「そうそう、ところで桐生。何か情報ないか?」
「なんの情報だよ」
「言ってなかったか? 『Revenger』だよ、復讐代行業の。報道部の部長が「都市伝説の実態に迫る」とかなんかで特集組むから、都市伝説関連で何か一つでも真新しいコトを見つけてこいって言われたんだ。因みに都市伝説の内容は割り振りだったんだ」
「……それでRevengerの事を調べることになったのか」
「ああ!」
「相変わらずだな、筒隱先輩は」
「でも、あの人のそう言う所が好きなんだよ。あ、勿論、ランクの方でな」
「――どうでもいいよ」

 筒隱清海先輩。
 神衣学園高等部三年生で、報道部の部長を務める才女。通称「くノ一」、「歩くプラックボックス」など
 あの先輩は、真面目な記事からゴシップ記事まで、あらゆる情報を取り扱う事で知られている。情報力の高さから、一部では神衣学園一の情報通ではないかと囁かれていた。
 報道部が出している新聞は一つであり、真面目な記事とゴシップ記事がちょうど良い具合に交じり合っているため、学生からも支持を集めていた。その分、ライバルである他の新聞を発行している部とは折り合いが悪い。

「――でも、Revengerは止めたほうがよくないか? 実在するかもしれない、奴らだろ」
「だからこそ調べる価値があるんだよ」

 Revenger・復讐代行業者――ねぇ。
 虚実入り交じる都市伝説で囁かれている、どうでも良い噂の一つである。
 名前の通り、他人の復讐を代行する人でなしの奴らだ。

「他にどんなのがあったんだ?」
「他にか? 「高天原の最下層には古代遺跡がある」とか、「路地裏には特別な者しか見えないバーへの扉がある」とか、「比良坂市の郊外にある廃屋敷には妖怪が出る」とか、それと」
「――もういいよ」
「そうか? これから面白くなるのに」

 ……別に都市伝説に面白さは求めるべきじゃないだろ。
 弁当を食べながら、宗吾と雑談をしていると、女子生徒が1人やって来た。
 黒い髪を腰の所まで伸ばしており、髪の後ろには少し大きめのリボンをしている。顔は少し幼さを残しているように見え、見るからにお嬢様と言う雰囲気を醸し出していた。

「――ちょっと良い?」
「あれ、委員長。何か用?」
「……委員長?」
「おいおい、桐生――。もうクラスが替わって半年は立ってるんだ、名前を知らないとか言わないよな」

 俺は首を横に振った。
 この学園は科の中で学年が上がる都度、クラス替えが行われるため、クラスメイトの大半が入れ替わる。そのため、一々名前を覚える気がしない。面倒くさいし。

「柳春香。内のクラスの学級委員長だろ?」
「――ああ、そう言われてみれば」

 ロングホームルームとかで、先生に言われて進行役をしていたような気がする。ただ、残念なことにロングホームルームは大抵寝ているため、あまり記憶がハッキリとしない。

「貴方達に訊きたい事があるのだけど……」
「え、オレたちに? そりゃ、オレたちに答えられる事なら答えますよ。なぁ?」
「……ああ」

 宗吾に促されて思わず返事をしてしまった。
 柳は少し躊躇いながらも、口を開いた。

「Revengerについて教えてくれない?」
「あれ、委員長。まさか復讐したい相手がいるとか?」
「ち、違いますッ! 最近、色々と噂になっているから気になっただけで――!」
「ハハハ、冗談ですって。オレもまだ調べてる途中で、あまり詳しいことは分かってないんですけど。それで良ければ見ます?」
「……はい」

 柳は頷くと、宗吾は机の横に掛けているカバンからタブレット端末を取り出した。iPadとか呼ばれているヤツだ。宗吾はタブレットを操作をしてから、柳に手渡した。
 受け取ったタブレットを、まるで何か覚悟を決めているかのように、柳は真剣に読み始める。
 ……。

「宗吾、Revengerについて何処まで調べてるんだ?」
「ん? 桐生も気になっているのか」
「……そうだな。都市伝説の中でも、実在してそうな気がするんだ」
「へぇ、珍しいな。そういうのにはてっきり無関心かと思ってたぜ」
「俺にも少しは興味がある事柄はあるよ。……それに、始め情報が無いかって聞いてきたのは、お前の方だろ」
「そうだったな。いや、あまり期待してなかったんだよ。ウチの部活の方針は『駄目で元々。無駄足上等。数打てば当たる』だからさ」
「……報道部として、それはどうなんだ?」

 その言葉に、宗吾は苦笑で返してきた。

「話は戻すけど、オレがRevengerについて分かっているのは、今時点では新聞の載っている情報と大して変わらない。部長に言われて調べ始めたのは、昨日の放課後からなんだ。超能力者でも無い限り、簡単に分かるはずがないだろ」
「――そう、みたいですね。ありがとうございました」

 一通り見終えたタブレットを柳は宗吾へと返した。そして頭を下げると、自分の席へと帰っていく。
 なんだったんだ……?
 女が考える事は、昔も、今も、先も、理解できない。――昔、理解できないんじゃなくて、理解しようしていない、って瑠花に言われたことがあった。ただ他者を理解しようなんてのは、俺から言わせればタダのエゴだ。他人は所詮は他人。理解なんか出来るはずがない。理解していると思っているのは、気のせいの類のものだと思う。血の繋がっている妹さえ、理解できないのに、他人のことなんて理解できるはずがないだろ。

「で、桐生。何かRevengerの事で知っている事はないか? あれば教えてくれ」
「……。大禍時(18時頃)に人気のない薄暗い路地裏に復讐願望がある人物が行けば、Revengerが現れるって噂を聞いたことがある」
「へぇ、……それってさっきオレが言った「路地裏には特別な者しか見えないバーへの扉がある」って都市伝説に似てないか?」
「似てるな。でも、都市伝説なんてそんなものだろ? 一つの噂が尾ひれ背びれがついて太くなっていく」
「なるほどな。お前の情報と、都市伝説を合わせると、Revengerは「大禍時に人気のない薄暗い路地裏に復讐願望がある人物が行くことで、バーが現れる」ってことになるな」
「ああ。――路地裏に行って調べてみるか?」
「……あー、何処の路地裏か分からないとな。ただお前の話が本当だとしたら、あまり意味無いだろう。だってオレには復讐願望はないし」
「無い方がいいだよ。復讐願望なんてのは、な」

 弁当を食べ終えて、二段弁当に蓋をしてカバンへと仕舞う。
 すると同時に着信音が鳴る。着信音はビゼーの「アルルの女」第2組曲の第4曲「ファランドール」である。宗吾は制服からスマートフォンを取り出すと電話に出た。
 宗吾の話の具合から、相手は筒隱先輩だと察しがついた。幾つか返事をした宗吾は、スマートフォンの通話を切ると、制服へと入れる。
 珍しいことに宗吾は、頭を掻きながら溜息を吐いた。

「あー、ちょっと部室に行ってくる。筒隱先輩からの呼び出しを無視すると、後が怖いんだ」
「……頑張れ」
「ああ」

 頷くと宗吾は、タブレット端末を持って教室から出て行った。
 残った俺は机の中から読みかけの文庫を取り出して読み始める。何時もならスマートフォンにイヤホンを指して音楽のボリュームを出来るだけ上げ、雑音が聞こえないようにして読む所だが、今日は家に忘れて来ているため仕方ない。
 読んでいる文庫は、角川書店から出版されている「万能鑑定士Qの推理劇」。前作である「万能鑑定士Qの事件簿」の方は劇場化が決定し、「面白くて知恵がつく人が死なないミステリ」と言うのが謳い文句の作品である。
 表紙イラストは、アニメ化もした綾辻行人・著の「Another」のコミカライズ版を担当している人がしていた。

「ねぇ春香、大丈夫? なんか気分悪そうだよ?」
「――だ、大丈夫。ちょっと考え事してるだけだから。心配かけてゴメンね」
「気にしないで。もし、力になれる事があったら言ってね」
「うん……。ありがとう奈津美」

 先ほどRevengerのコトを聞きに来ていた柳が暗そうな表情をしていたため、友人が心配そうに声をかけていた。
 だが、心配しているトモダチが、顔を逸らした直後に一瞬、嘲笑うような表情をするものかね。……ま、今のところ俺には関係ないので、どうでもいいけど。
 ページを捲りしおりを除け、読みかけの続きを読み始めた。






***///***







 放課後。
 高天原にあるショッピングモール「神大市」の路地裏に、神衣学園高等部普通科2-Cのクラス委員である柳春香はいた。
 ショッピングモール「神大市」は、日用備品から一部のマニアしか使用しないコアな商品までを販売している商店が並ぶ場所で、主に神衣学園に通っている生徒や教師が使用しているが、最近では品物の充実ぶりからか比良坂市の方からも来るようになっていた。
 また路地裏に入ると、非合法な商品を販売していると言う噂があり、この学園を創った不知火グループが取締を強化しているが、トカゲの尻尾切りの状態で、最近は地下へと潜る者も多数いた。

「……」

 春香は、路地裏をコソコソと歩き回っていた。
 昼休みにクラスメイトの桐生大和と小川宗吾が話していた内容を聞き、僅かな願いを胸に秘めて路地裏を捜索している最中である。だが、所詮は噂話か、Revengerは現れず、バーのような扉が現れる事もなかった。
 そろそろ時間は19時近くになる。夏が近いため、19時近くなってもまだ日が上って入るが、路地裏は影に隠れているため薄暗く、ガラの悪い連中が所々にいるため、春香は怯えながらも勇気を振り絞って探した。
 どれぐらい歩き回ったか分からない。春香は少しだけ息を荒らげながらも、まだ探し続けていた。しかし、春香のスカートのポケットから携帯の着信音が鳴り響くと、立ち止まり携帯を見た春香は愕然とする。
 身体を震わせながらも、携帯電話を制服のポケットへと入れた。

「……所詮は、噂話――だったのかなぁ」

 そう諦めた口調で言った。
 春香は路地裏から表通りに向かおうとしたその時に、周りに異変が起きた。まるで時間が停止したような感覚に襲われたのである。再び携帯電話を取り出して時計を確認するが、秒が止まり動く気配がない。
 思わず壊れたかと思ったが、腕時計の方も秒針が壊れたように止まったまま。
 どう言うことなのかと混乱していると、春香の前に突如として赤黒い木製の扉が出現した。怪しく禍々しい気配を放つその扉を前に、春香は恐怖を感じた。
 しかし今の春香には躊躇い、迷って、この幸運を見逃すほどの余裕は無かった。両手で頬を叩いて覚悟を決めた春香は、ドアノブを回して赤黒い木製の扉を開いた。

「いらっしゃいまっせー♪ 意識と無意識の狭間にある、バー『Nyarlathotep』へようこそ♪」

 春香をまず出迎えたのは、赤い髪をした12歳ほどの少女だった。衣装はミニスカメイド服を着ており、足元からは黒いガータベルトが目に付いた。

「え、ナイアーラトテップ? ニャルラトホテプ? ナイアルラトテップ?」
「どれでもいいですよー。と、言うか、全部が正解です。どうせ本当の呼び名は、人間の言語では表せません」
「そう、なの」
「はい♪ あ、ワタシは此処で働いているアイリ。よろしくね♪」
「……う、うん」
「それじゃ、一名様ご案なーい!」

 アイリに促された春香は、『Nyarlathotep』への中へ案内された。
 バー『Nyarlathotep』の中は普通のバーと比べてそこそこ広い。出入口の所のフロアには、6人ほどが座れるテーブル席が6席あり、そこから四段ほどの階段を上ったフロアにカウンター席が6つほどある。
 春香が案内されたのは、四段ほど上った先にあるカウンター席だ。カウンター席には1人の女性が先に座っていた。
 カウンターに座っている白いゴスロリ服に身を包み、銀の髪からは粒子を撒き散らす少女。
 彼女の名前はテスタメント。普遍的無意識の世界に生きる者で、その性質は、契約を司る事に特化している。テスタメントは、テーブルの上に置かれたグラスを手に取り、口元へ運び少し飲むと、元の位置へと戻した。
 そしてアイリによって案内された春香を見ると口を開いた。

「さて、依頼内容を聞こうか」
「い、依頼内容……?」
「おいおい、キミはRevengerに依頼があって来たんだろ? それとも、こんな辛気臭いバーにただ来ただけかい。こんなバーに来るぐらいなら、クラブにでも行って騒いだほうが良いよ」
「……辛気臭いとは、余計なお世話ですな。テスタメント様」
「えー、そう言われても仕方ないよ。だってお客さん、滅多に来ないもの」
「そうだね。此処に来るのは、大抵がボク達へと客だろ? バーそのものに用事のある客なんて見た事がない」
「……」

 バー『Nyarlathotep』のマスターであるメフィスト・フェレスは、アイリとテスタメントに言われて黙るしか無かった。
 メフィスト・フェレスは、普遍的無意識にあるネガティブマインドの元型であり破壊性を司る「這い寄る混沌」ニャルラトホテプが持つ千の顕在の内の1体である。

「さて、話が逸れたようだね。柳、春香。キミの復讐依頼を聞こう」
「なんで私の名前を――っ」
「人の意識は、心の奥深くで繋がってるんだ。入ってきた人間の名前を知るなんて事は、造作もないことだよ」
「……それじゃ、貴女が、Revenger……なんですか」
「いや、ボクはただの仲介役だよ。依頼人とRevengerとの間に交わされる契約を取り仕切るだけの存在さ。だから、依頼を謂い給えよ。キミは明確な復讐心があって来たんだろ」
「……はい」

 春香は頷くと、ポツポツと言葉に出し始める。
 緊張していたが、「Nyarlathotep」の店内に流れている音楽の所為か、入ってきた当初と比べて心が落ち着いていた。

「――数日前から毎日、その、レイプされてます。もう……イヤなんですッ。これ以上弄ばれたら、私が私じゃなくなっちゃいそうで……。お願いしますっ、あの人達に復讐して下さいッ」
「へぇ。それは同じ学校の人たちにかい?」
「……違います。八雷学園の人たち、に――」

 消えそうな声で春香は言った。レイプの事を思い出しているのか、僅かに身体を震わせている。
 八雷学園。
 比良坂市に昔からある学園で、中等部と高等部がある男女共学の学校である。通っている学生は、札付きの不良や、成績や素行に問題がある者が主なため、比良坂市の中でも八雷学園に通っている学生の風当たりは強い。
 一応は男女の共学ではあるが、男子生徒の数が圧倒的に多く、女子は全体の1~2割ほどであった。その女子の全てが、レディース『迦具土』に所属しており、校内はかなり荒れていると言う噂である。
 因みに学園の名称は、黄泉の国でイザナギの身体に纏わり付いてきた、穢れの象徴とも言われる8柱の雷神・八雷神(やくさのいかずちのかみ)から取られていた。

「なるほど。つまり……キミをレイプした八雷学園の人たちに復讐して欲しいと言うわけだね」
「……はい」
「一つ訊いてもいいかな。なぜ警察にいかないんだい?」
「写真やビデオを取られたんですよ! 警察に言ったらインターネットにアップロードするって言われて――。もう言うとおりにするしかないじゃないですかッ」
「ふ~ん、それじゃあ依頼内容に、動画写真の削除も追加するかい?」
「で、出来るんですかっ」
「ああ。まだインターネット上に公開されたワケじゃない現段階なら――可能だよ」
「お願いしますっ。あんなのがあると思うと、安心できませんっ! もし知り合いに見られたら、生きていけない――」

 泣きながら春香は言うが、テスタメントは聞くだけで表情を変えずにグラスに注がれているカクテルを飲んだ。

「なら、聞かせてくれないかな?」
「……何を、ですか」
「キミがレイプをされる原因を、だよ。まさか普通に街を歩いていたら、何処かに連れ込まれてレイプされた――。なんて、猿でも分かる嘘は付かないで欲しいな」
「……」
「ハハ、ただ自分の口からは言い難いだろうから、実際に見てみるとしようか」
「――え?」
「アイリ、何時ものヤツを持ってきてくれ給え」
「はいは~い」

 テスタメントに指示をされたアイリは元気よく返事をすると、バーの奥へと入って行った。
 しばらくすると、大きな水晶で出来たと思われる鏡を持ってくる。高さ3メートル、横2メートル。それを軽々しくアイリは持ち、春香の後ろへと置いた。

「持ってきたよ!!」
「これは、なんですか……」
「これかい? これは「浄玻璃鏡」と言って地獄を守護する閻魔が所有する道具の一つさ。とはいえ、本来なら亡者の生前の一挙手一投足が映し出される物だから、生きている人間にはあまり効果はないんだがね。そこはメフィストに改造してもらって、生者でも映るようにして貰ったものなんだよ」
「――まさか」
「そう。これから観るんだよ。数日前、キミがレイプされる原因となった出来事を。そしてレイプされている様子を!」





>>>>To be continued






 はい。前回予告した通り、旧「トモダチの仮面」編の加筆修正版「因果応報」編の第一話になります。
 加筆修正と言っても、あまり原型は残ってませんが……。

 バー『Nyarlathotep』は、ペルソナシリーズにおける「ベルベットルーム」と同質です。
 違いは、ニャルラトホテプ側か、フィレモン側かの違いです。
 イゴール=メフィスト
 力を管理する者=アイリ
 と、言った具合です。
 テスタメントがバー『Nyarlathotep』にいる理由は、その内に本編で明かせばと思います。




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