「フヒヒ。今回の模試もオール90点越え確実だお。でゅふふふふw」
どこかでぶつけたのか、最近出来た腕のアザをボリボリ掻きながら俺はほくそ笑む。
学歴がいかに大事か分かってる俺は、いままで勉強に手を抜いた事は無い。
転生してからずっと学年ベスト10以内の位置だ。
もっとも、例え人生をやり直そうが所詮凡人は凡人。秀才止まりである事はいうまでもないだろう。
転生して17年……、いやもうすぐ18年になる。
そろそろ聖杯戦争の時期だろうか? ま、俺には関係無いんだけどね。
転生特典詐欺をくらった俺は、一般人としての幸せを追求する事に決めたのだ。
ここ冬木市に転校して来るまで、俺はこの世界がどの作品なのかも分からなかった。
最初は「リリカルなのは」かと思ったよ。死ぬ直前の現代と変わんなかったし。
必死に鳴海市を探した小学生時代はいい思い出。
フェイトたんとティアナたんのどっちを嫁にしようかいつも苦悩してたな。
意外とエグイ世界だと分かった時は、おもわず乾いた笑いをあげてしまった。
だって本気でエグイもん。
エグイよね?
世界観もエグけりゃ登場人物もエグイ。
血と精液とメンヘラに塗れてるというか……いや、セイバーたんの魅力は理解してるんだよ?
でも──うん、やっぱセイバーリリィたんでないなら俺にはまったく関係無いな。
リリィたんなら命くらい賭けるけどね? まあ嘘だけどww
実際に死んでみたら自分の命が一番大事です。というか、死んだ経験があるからこそ大事な事がわかりますた(キリッ
まあどっちみち、関わる気ゼロの俺には本気で関係無い話だ。
この17年、魔術のマの字すら触れる機会も無かったわけだし、本気で関係無い。
転生したっていっても、現代日本だから前世の生活とほとんど変わりもない。
逆に前世と全く変わらない世界に拍子抜け。いや勿論、裏側はすんごいヤバイ事は知ってるんだけども。
まあ一般ピーポーの俺としては、きっとこれからも何も変わらないんだろう。
危ないとこに近づくつもりはないしね。
とりあえず、テストの出来が良かった以上、点数至上主義の教育ママはこれでいつも通りの小遣いをくれるはずだ。
そこそこでかい建築屋を営む父親は、やはりそこそこでかい収入を得ている。
前世の記憶を持つ俺は、当たり前の様に成績優秀だ。
「いい点取るから小遣い奮発してくれカーチャン」と交渉。それ以来、予習復習は欠かしていません。
バイト? 働いたら負けでござるよ。
小学校の時の小遣いは月一万、中学で二万円。
現在の高校生ではなんと、月三万というアホな小遣いをもらっているのだ。
しかもお年玉が計50万オーバー。(ゼネコンの上役から、下は従業員達の総額まで)
建築屋を継ぐつもりのないヒキコモリ予備軍なのにこの世界は優しい。高二の時点で年収90万とか、フホホホホ。
神様にそこそこ裕福な家庭を望んだのは無駄じゃなかったな。それだけが唯一の救いか。
中学三年の段階で俺の部屋はPC関係余裕という状況。
しかし、前世の俺をオタヒッキーに追い込んだニ○ニ○動画が無かったのは残念過ぎた。
あまりの絶望に死のうかと思った。
でも大丈夫。無いなら作ればいいじゃない、と気付くのに時間は掛からなかった。
まさに必要は発明の母。○コ○コ動画が無くて泣きながらのた打ち回った絶望は、俺に不屈の心を与えてくれた。
ド素人が二年の月日を掛けて再現。名称はニヨニヨ動画。もろパクリです。
ニヨニヨ立ち上げてまだ半年。しかもまだまだ前世のクオリティには遠く及ばず。
でも構わない。俺はこのニヨニヨと一緒に成長していくのだ、一生を掛けてな。
世界の裏側で活動してる人達は何が楽しいんだろうね?
この科学全盛の時代に魔術が使えた所で所詮マイナーじゃん。
魔法に到達したからなんなのさ?
殺人機関を運営する前にサイトの一つでも運営しろっつーの。
魔術の練習する暇があるなら動画を作れ。
そうすりゃ世界がハジマルって、なんで解んないのかね? 頭は良くてもきっとバカなんだろうなw
まあいいけどさ。
まじつ師の皆さんは頑張ってマホー使いになって下さいww
俺は頑張って和製ジョブズ目指すよ、誰よりも早くスマホ作っちゃうからwwww
ボーカロイドはワシが育てる(キリッ
……………と思っていた時期がたしかにありますた。
「ようおまえら、わりと遠くまで走ったじゃねえか」
ギャアアアアアアアアアアアアア!!
え? なんで? なんで俺の目の前にランサーのアニキがおるの?
しかもおまえ”ら”ってどういう事? 君達が走り込んできたんですけど!?
いやたしかに俺、穂群原学園に入学したよ?
親の事業拡大の為の引っ越しじゃあ、ガキの俺に選択肢ねーし。
しかも近場に高校ねーんだもん。穂群原学園以外を選ぶと、一番近い学校で電車で1時間よ? 神の悪意を感じたさ。
でもまあ3年間通学に苦労するよりも、二年生の一月下旬から二月中旬までの僅かな期間気を付ければいいだけだろ?
どうせ魔術なんて使えない一般人なんだから。
”ライダーの鮮血神殿と、キャスターの魔力集めにさえ気を付けてればいいんじゃね? 腐れ神父の教会には半径2キロ圏内に近づかない”
そう思った俺は悪くない。現在の状況も俺に過失は一切ない。
だって、だってさ……、ここ学校の廊下じゃないのよ? 新都でもないし衛宮邸ですらない。
どこにでもある住宅街の路地なんだよ?
モブキャラの三枝さん達とカラオケした帰りなんだぜ? おかしいだろ。(三枝さん達はいません。俺に送られるくらいなら一人で帰った方がマシだそうです)
「でもま、運がなかったな」
それなのに……、なんで槍持った青タイツがいるのよ?
俺の足元でへたり込んでる同級生はどういう事なの。
ヤベエ……転生者の運命力甘く見てた。
つか、どこまで逃げてんだよ衛宮ェ。
原作主人公が校舎から出てどうすんだよ。わりと遠くまでどころじゃねえ、メチャメチャ走ってるよ衛宮君。
穂群原学園からここまでゆうに3キロはあんぞ。遠坂さんもフォローが大変じゃないのコレ?
登場人物が原作ブレイクとか反則だろ。なんで俺を巻き込む。
転生オリ主はどうやっても転生オリ主という事か?
トラックに跳ねられて死んだら、来世では絶対に平穏になれないとでもいうつもりか?
「死人に口無しってな。じゃ……」
「待っちくりよ!」
「……あ?」
いやだ! 俺は関係無い! 聖杯戦争とかマジどうでもいい!
社会不適合者(魔術師)達は勝手に世界の裏で細々と生きてくれ!
俺は未来知識チートでIT王になるんだ!
副業は造型師! 完璧な一本スジパンツを生み出す義務が俺にはある!
俺が死んだら、生まれてくるボーカロイド達の全米ツアーはどうなっちゃうの!?
こんな所で捨てていいほど、俺の命は安くねえ!!
「コ、コスプレかお? い、いけないんだお! レイヤーにもルールはあるお! 年二回の有明で我慢するお!」
「……はあ?」
よ、よし、釣れた。
意味不明の言葉で誤魔化せ。
俺が一般人である事をアピールしつつ、さりげなく無関係を装う。これしかない。
クールだ。クールになれ。
「の、野々宮……?」
バカヤロウッ!!
足下のオレンジ頭が俺の名前出しやがった。
このクサレ正義の味方が! 俺とテメエは無関係だろうが!
目の前の死神はなぜか俺まで関係者扱いしてんだぞ!?
誤解(神秘を知ってるという事実)を解く為に頑張ってるのに、俺の名前を口にしたら台無しでしょーがぁ!?
「に、逃げろ、野々宮……」
黙れよぉぉぉぉぉぉぉ!!
「……チッ、どうやらさらに一人巻きこんじまったのか。後味悪いぜ」
おおおう!? アニキが構えを取りましたYO!?
ヤベヤベヤベヤベヤベヤベヤベ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!
「おお落ち着けお、ボキみたいな小市民は殺す価値もありませんとゆーか殺したら税金払う奴が一人減るんだお?」
喋れ。とにかく口を動かせ!
「一寸の虫にも五分の魂だお虫けらみたいなボクちゃんでもきっといなくなったら国力低下がマジマッハ」
「…………」
時間を稼げ。ヒロイン候補の赤い悪魔と、戦闘力だけは一級品のバカアーチャーがもうすぐ来るはず。
それまで時間を稼ぐんだ。おおう、俺超冴えてる。
「オタク殺しダメ絶対!親は許しても世界がきっとアングリィ!ゲイ・ボルグも避けてくれるに違いんす」
「あ? 今なんつった?」
ギャアァァァァァァァァ!!
「ゲイボールがどうかしたかお? ゲイを否定するつもりはない、でもゲイボールだけは勘弁お!」
「…………」
ランサーからの威圧感がハンパじゃねえ!! マジで死んじまう!!
「尻だけは守るんだお!ゴールデンボールは世界で一等愉快な奇跡なんだお!」
「の、野々宮……?」
ヤ、ヤベエ!! もう何言ってんだか自分でもわからん!!
このままじゃプスッっと心臓射抜かれちゃうぞ!?
まだなの!? 過去の自分をぬっ殺そうとしてるバカはどうしたのよ!?
並行世界の自分を殺せば俺も死ねるんじゃね?とか超理論を展開してるアホはどこいったのよ!?
──我が骨子は捻じれ狂う──
さして大きな声じゃなかった。
しかし、それは世界にその存在を知らしめる様に轟く。
ズガンと、爆音が世界に鳴り響いた。
「うあ……あ……あ……」
キンキンと鳴る耳鳴りを抱え、尻もちをついた眼前が煙で覆われている。
即死に直結する筈の絶対の脅威が、人の世に在ってはならぬ”異常”の圧力が、緩まった。
”我が骨子は捻じれ狂う”なんつー、バリバリ厨二な台詞にこれ程安堵する日がこようとは……。
ギ、ギリギリセーフ。ちゃんと来たよ、アーチャーの奴。
ごめんな、バカアーチャーなんて言って。もう絶対に言わないからそこのクサレタイツをぬっ殺してください。
「オイオイ、こんな所まで追ってきたのかよ」
「キサマを追えというのが、我がマスターの指示だったのでね」
エエェェェ!? ランサーさん無傷なんすけど!?
槍を担いだランサーが、余裕たっぷりの態度でそこに居た。かすり傷一つ無い。
そんなアホな。
俺には何が何だかわからなかった。ランサーだって俺と衛宮士郎に意識を向けていたはずだ。
なのに、あの意識の外側から放たれた不意打ちにどうやって反応したんだよ!?
つーかもっとよく狙え! 不意打ちしても当てられないとか馬鹿なの?
それしか取り柄がないくせに……クソッ! やっぱりバカアーチャーはバカアーチャでしかないというのか。
「あ~あ、マスターに命じられたのは偵察だったんだけどな?」
「残念だが、逃がすつもりは無い」
「いやいや構わんぜ。逃げようとしたけど逃げられなかった。なら、この状況もしかたねえよな?」
ランサーの顔が獰猛に歪んだのがハッキリと見えた。
そういやコイツ、言峰綺礼に全サーヴァントと軽く手合わせして来いとか命令されてんだっけ?
しかも全力出すな的な令呪の縛りありで。
オイオイもしかしてこの腐れランサー……、下手すると俺と衛宮士郎を餌にした可能性があんぞ。
どうする? このまま英霊同士の戦闘に巻き込まれたらミンチ確定っぽいんだけど……。
コッソリ逃げ出しても、きっとランサーは見逃してくれませんよね?
落ち着け、そうだ先ずは落ち着こうよ俺。
ションベンちびりそうな状況ではあるが、ここで思考を放棄すれば間違いなく死ぬ。選択をミスっても死ぬ。
頑張れ俺。
一瞬前まで即死の状況からバカアーチャーの登場で生への道が開けた筈だ。
たとえ違っててもそう信じろ、心に理想と希望を描け。
なぜなら──
ボーカロイド達の未来はこの瞬間俺の双肩に掛かっているのだから!
うおぉぉぉぉぉぉ!! 俺に力を!! MIKUたん!!
「クソみたいなマスターに縛られちまったが、俺の魂は俺の物なんでな」
「……チッ、戦闘狂か」
バカアーチャーとタイツランサーがアホな事言い合ってるうちに状況を整理。
記憶の彼方に行っちまった情報を呼び起こす。
いくぜ、燃えろ俺の脳細胞ぉぉぉぉぉぉ──お? ピコーンと思いだしました。結構すぐ思い出すもんだな。
”ランサー=槍使い・超速い・矢避けの加護”
因果を逆転させて、出せば必ず心臓に命中する必殺技とかありましたね。
”アーチャー=元は衛宮士郎・才能無し・弓うめえ”
無限の剣製とかいう、駄々っ子みたいに武器を投げまくるチートスキルありました。
……アレ?
ランサーっの矢避けの加護ってパッシブスキルか?
矢が当たんねえのに、弓兵(アーチャー)に存在価値ってあるの?
投擲スキルである以上、下手すると無限の剣製も決定打にはならないんじゃね?
「衛宮くぅぅぅん!!」
馬鹿なの? 死ぬの?
でも諦めない。ニ○ニ○動画を愛した俺の想像力は無限大。
俺は足元の、目を爛々と輝かせながら英霊同士の戦いに魅入るオレンジ頭の頬を張った。
「イテッ、イテッ、イテッ、痛ぇーよ! なんだよ野々宮!」
おっと、少し張り過ぎたか。
頭から結構流れてた衛宮の血が周囲に飛び散る。俺の手も(衛宮の)血まみれだ。
「俺が今から言う言葉を繰り返しなさいよぉぉぉぉ!!」
「は?」
「は?じゃないと思われぇぇぇぇ!! いいから言WISH!!」
俺も大分混乱してるな。
でも頭はまわるぜ。
状況を考えて、アーチャーの主人にしてヒロイン候補の遠坂凛は間に合わないと思われる。
また、来た所で英霊相手に戦力にはならない。
バカアーチャーは相性の差でランサーに負ける可能性が高い。
あんな青い全身タイツを戦闘服に出来る精神力も無視できねえ。きっと基礎能力でもランサーの方が上なんだろう。
アーチャーの負け=俺あぼん。
なら援軍を呼べばいい。
そう、魔法陣はないが、ここにはマスターたる衛宮士郎本人が居る。
なら召喚してもらおうじゃないの。原作通りにさあ。
「素に銀と鉄!」
「そ、素に銀と鉄!」
「礎に石……岩だっけ……? い、いや、やっぱ石!」
「は?」
ヤベェェェェェェェェェ!! 呪文知らねえぇぇぇぇぇぇぇ!!
つーかたとえ知ってたとしても何年経ってると思ってんだよぉぉぉぉぉ!!
「未だに憶えてる様なら病院を連れてくるレベル」
「お、おい野々宮、おまえ何言ってんだ……?」
チラリと見たアーチャーとランサーの戦闘は──、はい、よく見えませんけどずっとランサーのターンみたいですね。
バカアーチャーは防戦一方のようです。
「ふざけんなし! こんなところで死ねるわけないっちゅーの!」
困惑しながら見詰めてくるオレンジ頭に、俺はチップを全賭けした。
「いけるいける! 主人公なら舞台装置いらねーって! 呪文もいらねーって! ホラいくぞ!!」
このアホ主人公はなにポカンとした馬鹿面晒してやがんだ、もっと熱くなれよ!
「素に銀と鉄!」
「そ、素に銀と鉄!」
「以下中略!」
「以下中略!」
「天秤の守り手よ―――!」
「天秤の守り手よ―――!」
「助けてくださいィィィィ!!」
「助けてくださいィィィィ!!」
冬木の中心(よりだいぶ外れてる場所)で叫んだ俺と衛宮。
その瞬間、ヴンッと衛宮を中心に広がった光の魔法陣。
キ、キ、キタァァァァァァァァァァ!!
さすが腐っても主人公! 補正パネェェェェェェェェェ!!
「な、なんだコレ……ッ!」
当然我らが主人公様は困惑しっぱなしだが、そんな事は今の状況に何の意味も無い。
正ヒロインとも呼べる存在が、現界する。
魔法陣からゆっくりと衛宮の目の前に現れる騎士。
青いドレスに白銀の鎧を纏ったブロンドの髪の少女。
「む?」
「なんだと!? サーヴァントを召喚したってのか!」
召喚時の静謐な空気は、英雄同士の決闘すら中断させた。
「問おう、貴方が私のマスターか?」
強さと、美しさと、気高さを兼ね揃えた声。
あまりに圧倒的な存在感に、主人公である衛宮志郎は息を呑んでいた。
俺もまた、呼吸を忘れて目の前の存在に心を奪われていた。
俺はセイバーたんが大好きだ。Fate /stay nightの中で一番好きなキャラだと胸を張って言える。
だが、そういう事じゃない。
セイバーたんへの気持ちの大きさは全く変わっていない。ただ、セイバーたんを含めた色々な事象の価値が、俺の中で急速に色褪せただけなのだ。
「喚んでくれてありがとー!」
俺の目の前に、天使が舞い降りた。
「あなたが私のマスターですね!」
溢れる。
とめどなく零れる。
俺の想いが。俺の愛が。
両の目から怒涛のように流れるこの涙は、きっと真実の愛。
「マスターの想いに応えて、サーヴァントシンガー、馳せ参じました!」
左上腕部に刻まれた赤色の「01」。
くるぶしまで届く青緑のツインテールに黒のヘッドセット。
グレーの襟付きノースリーブの上着に、その美しい緑髪と同色のネクタイ。
黒色のミニスカートとハイソックスが、幼さと色気という矛盾を見事に調和している。
ささやかな胸は、貧乳こそ正義なのだと世界に叫んでいるかのようだ。
「……あ……ぐっ……」
「?」
どうすればいい?
どうすればこの想いを、感動を言葉にする事ができる?
「ここに契約は完了した。我が剣は、貴方と共にあり」
だまれ駄騎士。無駄に凛々しい声を出すな。
隅っこで駄マスターと乳繰り合っていろ。
「……ミ……グッ……」
「どうしたんですか、マスター? おなか痛いんですか?」
「貴方の運命は私と共にある」
だまれと言っただろう!!
天使の声に被せるんじゃねえよ!! この役立たずの無駄飯食らいが!!
「……ミク……ミク……」
「!?」
駄目だ。言葉が出てこない。
でも、もういい……。
嗚咽しか出てこないのならば、言葉など不要。
「はい、そうです。わたしの真名は初音──」
目の前の、天使の微笑みを浮かべる彼女に、行動で示せばいいだけだ。
「ミィィィィィィクゥゥゥゥゥゥたーーーーーーーん!!」
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
涙でグシャグシャであろう俺は、その顔を彼女のちっぱいへと突撃させた。
はて、なぜミクたんはこんなに全身をバタつかせるのだろう?
そんなに何度も俺の頭を叩かないでほしい。意識が飛びそうなほど痛いんだけど?
初音ミクの温もりを(主に顔で)感じながら、俺こと『野々宮一平』は聖杯戦争への参戦を決意する。
必ず受肉させて俺の嫁になってもらうぜ!
ミクたんは俺の嫁だ!
俺の嫁だ!
俺の嫁なのだ!
大事な事だから何度でも言ってやった。
あとでパンツみせてって令呪使おう。ミクたんの縞パン生で見るとか、胸熱すぎてヤバイな。
ドラムのようにドコドコと、いつまでも続くビートを頭に乗せて、俺はゆっくりと意識を手放した。
後書き
一人称の練習で書いただけだから続かないれす。