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No.34197の一覧
[0] 【習作】初音ミクを召喚したから聖杯戦争に参加します(Fate/stay night)[黄桜](2014/07/20 19:26)
[1] 第二話 馬鹿共を利用するお[黄桜](2012/07/24 07:38)
[2] 第三話 バーサーカーぶっ殺すお[黄桜](2014/07/20 22:56)
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[34197] 第二話 馬鹿共を利用するお
Name: 黄桜◆c2b8c7bf ID:de4d39bc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/24 07:38


”あのー神様。俺どうやって死んだんですかね? よく憶えてないんですけど”

”原因はトラック”

”トラック……? トラックに轢かれたんすか、テンプレっすね”

”否定。トラックには一切接触していない”

”は? え、どういう事?”

”死体発見現場は、公園の公衆トイレ”

”……あーなんとなく思い出してきました。たしか猛烈にウンコしたくなって便所に駆け込んだ気がします”

”肯定。和式便器にまたがった瞬間、10tトラックが公衆トイレに激突”

”エエエェェェェ!? ウンコしてる時に跳ね飛ばされたんすかあ!?”

”否定。トラックには一切接触していない”

”どういう事ぉぉぉぉぉ!?”

”トラックは5cm目前を横切った。被害は奇跡的に壁や給水タンクのみ。肉体は無傷”

”なんという幸運!? スゲェェェェェェ!!”

”否定。即死”

”はぁぁぁぁぁ!? 意味がわからんぞ!?”

”怒涛の排便と共に、轟音と破壊を撒き散らすトラックが目の前を通過。結果、ショック死”

”なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁ!!”

”事故後、様々な要因により発見が遅れた事が不幸の極み”

”なんすか!? まだなんかあるんすか!?”

”死後硬直により発見時、肉体は便意の姿勢で微動だにせず”

”ウソだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!?”

”死出の面は歯を食いしばりし益荒男化粧。見事な眼光であった”

”それフン張ってただけだろうが!!”

”遺体搬送時、救助隊員達を爆笑の渦に叩き落とし、さらに医者、親、親族、葬儀屋すらも笑死させかけた”

”そら笑うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!”

”人類初の珍死。死してなお人の子等の悲しみを和らげるは階梯を突破する鍵。便意により成し遂げたは人類史上初”

”もう殺せよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!”

”否定。史上稀にみる珍妙な事象ゆえ、再度の生が与えられる”

”はああああああ!? 転生って事!?”

”肯定。対象の希少性を正確に観測する為、記憶と人格を保存したまま歪曲点の高い世界へと生まれ直す”

”意味がわからん!! せめてウンコ座りで死亡した記憶は消して下さい!!”

”否定。対象の希少性を正確に観測する為、記憶と人格を保存したまま歪曲点の高い世界へと生まれ直す”

”聞いてよぉぉぉぉぉぉぉ!! そんな死に方憶えていたくないぃぃぃぃぃぃぃ!!”

”一つだけ赦しを与える。願うがいい”







……ん……夢?

……いや、思い出しちゃいけない。俺はトラックに轢かれて死んだんだ。それ以外の死因はありえない。

このまま優しい微睡みに身を任せてしまおう。きっと何もかも忘れられる。

死の安寧には遠く及ばずとも、それは救いに違いないのだから。

さあ旅立とう……水槽の中の何も知らぬ魚達のように──って、なんか寝苦しいな。つーか妙に硬いんだけど。

体の感覚はフワフワしてるのに、体表面に感じるこの不快感はなんだ?

しかも、この鼻孔をくすぐる汗の匂いは……?


「んん……?」


どうも意識がハッキリしない。この頭の鈍痛はどうした事か。

目もよく見えない……いや、これは周りが暗いのか?

どうやら俺は、誰かに夜道で背負われているみたいだ。


「あ、やっと起きたのか? ならそろそろ降りてくれ、オマエ重すぎるぞ」

「ッ!?」


恐ろしく近い位置から聞こえてきた男の声。

オイ、信じられるか?

抱き枕だと思ってギュッと抱きしめてスリスリしていたら、それなんと男の首筋だったんだぜ。

何を言ってるのかわからねーと思うが、間違いなく新手のスタンド攻撃に違いない。


「ケェェェッ!!」

「ゴハァ!?」


俺は目の前の後頭部に全力で肘鉄を叩き込み、転がるように男の背中から脱出した。


「き、貴様あぁぁぁ!!」


混乱している俺の目の前に、雨合羽姿の少女が躍り出る。


「ヌググ……!? だ、駄目だ! やめろセイバー!」

「シ、シロウ! なぜ……ッ!」

「言っただろ! 野々宮は学校の同級生なんだ!」

「し、しかし……」

「ごめんなさい! 起きたばかりだからきっと混乱してるんです! マスターを許してあげて下さい!」

「クッ、シンガー……」


まったく状況が分からん。

雨合羽の少女(状況的に間違いなくセイバー)が躍り出たと思ったら、俺を庇うようにさらに雨合羽が飛び込んできた



そのまま、座り込んだ俺の前でペコペコと頭を下げている。

なんだこりゃ。なんで俺は衛宮に背負われていたんだ?

目の前でパーフェクトな尻をフリフリさせながら頭を下げまくっている雨合羽は誰だ?

いや待て、尻? ”完璧な尻”、だと?

……………………。

…………フヒッ。

フヒヒヒヒ……。

ブヒヒヒヒヒーーーーーーン!!

謎は、全て、解けた……ッ!

そう、目の前に突き出された尻は、俺のたどり着いた奇跡。

俺の理想が形になった一にして全。

最高にして最強にして最愛にして最萌の乙女。

初!! 音!! ミク!! フオォォォォォォォォォォォォォォォォ!! 

おおお、落ち着けッ! 俺、落ち着け! ま、まだ慌てる時間じゃない!

もしかしたらこれは、人生で二度あるチャンスの内の一回目かもしれないんだぞ!

いや馬鹿、冷静になれ。

こんな奇跡はもう二度と起こり得ない。たとえ何度転生しようともだ。

幸い俺は彼女のマスター。誰よりも強固な絆を作る事が可能な位置に居る。

まずは信頼だ。

主従などというゴミのような絆など糞喰らえ。その先を手に入れる。

互いの心が通じていなければ、そこに何の意味も無いのだから。

思い出せ、俺は紳士。(ぐふふ……)

それもよく訓練された紳士だったはず。(でゅふふふ……)

そこらのSSに描かれている最低オリ主とはモノが違うのだ! (俺の!俺の!丸ごと俺のもの……ッ!)

さあ、彼女に教えてやれ。

これから共に歩いていく男の名を。

誰よりも『初音ミク』を愛している男の名を。

俺は、ありったけの勇気で、一歩、踏み出す。


「すぅーーーーーーーーーー」


眼前に突き出された雨合羽の裾をペロンとめくり、現れた尻に顔を埋めて胸一杯に深呼吸した。


「キャーーーーーーーーーー!!」

「ガンド」

「グハァッ!?」


直後、俺は吹っ飛んだ。

が、なんの!

2m程ブッ飛ばされた俺は即座に足を跳ね上げ、その反動と上半身のバネを使い瞬時に体勢を整える。


「うおっ!? い、意外に身軽なんだな……」


この自慢の素晴らしい運動神経に見とれている凡才は無視し、俺は赤い悪魔を睨みつけた。


「いきなりなにするんだお! この残念胸──さ、寒い……なんかすっごい寒いお!?」


なんじゃこりゃ!?

まるで風邪をひいたみたいに体がだるい。手足に力が入らない。

悪寒が止まらん!


「この豚……今なんて言おうとしたのかしら?」


恐ろしく冷たい視線を向けてくる遠坂凛。

学園の高根の花と呼ばれる超美少女。性格と胸が残念なのが本当に残念な少女である。(ミクたんのちっぱいはあれで

完成型だから例外)

つーか誰が豚だ。

俺はポッチャリ系ですぅ。平均体重の30キロ増しですけどデブじゃないですぅ。

たしかに生凛たん脳に焼き付けて何回もバキュンったけど、天使に出会ったからもう用済みなんですぅ。

ってそれどころじゃねえよ!


「これ……ガンド? 呪いの弾丸……」


クソッ信じられねえ! この女、一般人に魔術使いやがった!

美少女だからって何しても許されるとでも思ってんのか!?

……いや許されたっけ? 美少女なら人を殺してもシッペで済むってどっかで聞いたような……俺の記憶違いか?


「フン、やっぱりね。これで確定。一般人が魔術の名称なんて知ってるはずないもの」


アホか! この赤い悪魔はどこまで残念なの!?

北欧神話知ってる人達みんな魔術師かい!

俺も含めて全員バリバリの一般人だっつーの!


「……たとえそうだとしても、いきなり攻撃するのはやりすぎなんじゃないのか?」


猛烈な悪寒に震えていると、遠坂を非難する声が聞こえてきた。

セイバーを宥めつつも俺の一撃に悶絶していた衛宮志郎だ。

同じ学校の生徒だろとか、まずは話し合うって約束したじゃないかとか、表面上は非のうち所がない好青年である。

さすがは正義の味方。遠坂の暴挙を窘めてくれるのはすごくありがたい。

けどな、衛宮。おまえは魔術の練習する前に頭の練習しろ。

なんでもかんでも鵜呑みにして頷いちゃうんじゃねーよ。

さっきのはどう考えても暴挙の上に暴論だっただろーが。

赤い悪魔の言う事は聞いちゃいけません。いつのまにか遠坂専用のATMにされてても知らんぞ。


「こんな変態、殺さなかっただけありがたいと思いなさい」

「だれが変態だお!」

「アンタに決まってるでしょ」


このうっかり魔術師はどういうつもりなの? さっきから豚だの変態だのさあ!

酷い侮辱だ!

ほとんど知らない相手に人格攻撃とか、恥ずかしくないの?


「断固抗議するお! 謂れの無い誹謗中傷には戦争だって辞さないんだぜ! 弁護士の準備は万全か?」


あ~あ。失望した。失望したぜ。

Fateでセイバーたんと双璧を為す程のヒロインだと思ってたのに。

あん? なんだよその目は?

そんな冷めた目を向けてきても無駄無駄。

どれほど素晴らしいヒロインも、やっぱ三次元になった瞬間劣化すんのな。

ヤレヤレだぜ。

ん~? なんですか、劣化リンたん? あさっての方向にガンド構えちゃって。

アレですか? 示威行為ですか? 

みんながみんな暴力行為に屈するとでも?

なめんなやコラァァァ!! 一般人見下してんじゃねえぞ!?

俺は、テロには、絶対に屈さん!! 

たとえ中学生にカツアゲされようともっ、こんな俺を愛してくれる両親の為に誇り高く生きてやる!!


「──それが俺の忍道だ」


ヤベエ、決まったな。決まり過ぎるくらい決まったわ。

ミクたん見てるかな?

おっと、ここでミクたんをチラ見するなんてお約束は犯さないぜ?

敵のマスターと、不敵な笑みを浮かべながら睨みあう己のマスター。

見ないでも分かる。ミクたんの乙女回路は爆発寸前、ってな!

ムッフフフフフ……ん? 遠坂のやつなんで溜息なんか吐いてるんだ? 場の空気も読めないほどのうっかりなの?

んんん? ガンドの指先で何か突っついてる仕草はなんかの儀式か?

やめろよ! 呪いとか卑怯だぞ!

え? 指の先見ろ? 

なんだよ、最初から口で言えよ。紛らわしい。

ついっと遠坂の指の先に目を向ける俺。

そこには、お尻を両手で抑えるミクたんがいた。

しかもその目は、間違いなく豚を見る目だ。


「……マスターは、変態です」


……え? なんで?







「──というわけで、一端衛宮さんの家に行ったんですけど、また皆で教会に出発したんです」


ほうほう。さすがは天使の声。

可愛うぃぃぃぃぃぃぃぃ!!


「あ、あのマスター、聞いてます?」

「もちろん聞いてるんだお! ミクたんとのお喋りは一秒だって無駄に出来ん!」

「そ、そうですか……」


もー、心配性だなミクたんは。

あれだろ?

 アーチャー、セイバー、ミクたん VS タイツアニキ

 ちょっww サーヴァント三体とかマジ無理ww あばよとっつぁ~ん

 ランサーが逃げた後、オマエ今頃何しに来たのよ? ってタイミングで遠坂到着

 時代の流れに取り残されまくりの衛宮と、ランサーとの激闘で気絶した俺。そして冬木の管理人遠坂

 とりあえず衛宮邸で状況確認

 情弱の衛宮に説明した後、なんちゃって監督者の腐れ神父に報告いくところ

 つまり、無駄に親切なスキップ機能が働いた

 現実だと混乱の元だからスキップOFFにしようぜ


「つまりこういう事っしょ?」

「す、すごいですね、マスター。最後の方がよく分からなかったけど、だいたい合ってます」


うほっ。天使にすごいって言われた。

いやー、出来る男ってのがさっそくバレちゃったか。

もしかしてもう片乳くらい揉んでも大丈夫なんじゃね?

いや、さすがにまだか。まあ片乳首つつくぐらいの信頼関係は結べたと思うんだけど……いってみるか?


「そろそろいいかしら、野々宮君?」


さりげなくゴミを取るフリしてつつけばいけるだろ。


「……そのあからさまに怪しい指、なんですか?」

「え? い、いや、ミクたんのお胸にゴミが付いてたから取ってあげようかと……」

「いりません! 触らないでください!」

「オウフ……」

「……ちょっと、野々宮君」


くっ、さすが天使。まだ好感度が足りなかったか。

こうなったら多少強引でもナデポを──。


「無視すんな! この豚が!」

「ブゴッ!?」


い、痛い……。

なに? なんでいきなり鼻パンされたの?

あまりの痛みに顔上げられないんだけど!?

ふざけんなよこの売女!

恋人達の甘い語らいに暴力で割って入るとか、どこまでDQNまっしぐらなんだよ!


「な、なにすんだお、遠坂さんブギャッ」


信じられん。文句言おうとしたらまた鼻パンされた。

鼻血まで出てきちゃったよ。

え? なに? 俺と戦争したいの?


「お、おい遠坂、やりすぎだぞ」

「こいつウザすぎる」


上等だよ。

テメエのパンツひんむいてヤフオクに流してやらあ。


「だ、大丈夫ですかマスター! これで鼻抑えて下さい!」


……っと、命拾いしたな赤い悪魔。

天使がハンカチ差し出してくれた以上、お前の黄ばんだパンツなんぞに関わってる場合じゃねえ。

ありがとうねミクたん。喜んで使わせてもらうよ。


「……ミクたん? なんでそんな目一杯腕伸ばしてんの?」

「マスターにあまり近づきたくないんです」

「……ミクたん? なんで摘まみながらハンカチ渡そうとするの?」

「なるべくマスターに触りたくなくて」


ふむ。ミクたんは奥ゆかしい上に恥ずかしがり屋さんなんだな。

俺としてはもっとベタベタしたいんだけど……もしかして男に免疫がない? 

まあアイドルだしな。

うん、徐々に慣れてくれればいいよ。


「それでなんか用かお、遠坂さん? 俺の顔に嫉妬したってわけじゃないんだお?」


とりあえず、衛宮に宥められてるDQN女に話を戻す。

この女、まだ俺を殴ろうとしてやがったからな。しゃーねー。


「……嫉妬?」


何訝しげな顔してんだこの女。

つーか、隣の衛宮とその後ろで待機してるセイバーたんも同じ様な顔してるな。

……あれ? ミクたんも?


「ん? 俺とミクたんの、美男美女カップルのイチャラブトークに壁パンしたくなったんじゃないの?」

「プッ……。笑わせないでよ。シンガーが美少女なのは認めるけど、アンタはまんま豚でしょうが」

「お、おい遠坂。いくらなんでも言い過ぎだろ?」


と言ってる衛宮も苦笑いしてやがる。

セイバーたんは溜息か。結構コイツ等ヒドイな。

ま、別に分かってくれなくていいよ。俺自身努力なんてしてないし。


「マスターを馬鹿にしないでください!」


ふと目を向けた先には、当然天使が。


「わ、私のマスターを馬鹿にしたら許さないです。マスターはおデブさんですけど、痩せたらカッコ良くなります」

「…………」

「ほ、本当ですよ? すっごい美少年になって、後でほえ面かいても知らないんですから……」


最初から分かってた事だけど、ミクたんは間違いなく愛天使。

ヤベエ、顔のニヤケが止まらねえ。

俺は全世界に言えるね。初音ミクは理想の女の子なんだってさ。


「ぶひぶひぶひぶひぶひ」


ハハハ(ぶひぶひ)と笑みを浮かべ、俺はミクたんの頭を撫でまわす。


「あ、あのマスター。気持ち悪いから触らないで欲しいんですけど?」

「衛宮君、どうだお? 俺のミクたんは?」

「あーうん。いいやつだな」


うれしくって仕方ない。

俺のニヤケ顔に、エセ正義の味方も表情を緩めて肯定する。

でも残念。

”初音ミク”を知らないお前に、この目の前の少女の良さは一割すらも理解できまいよ。


「そんなんじゃ足りねえお。本物の天使だってミクたんに敵うわけない」

「い、言い過ぎです、マスター……」


うほっ! 照れたミクたんきゃわい~ん!

コレもしかしてナデポってんじゃね?

よし、ミクたんの頭から煙が出るまで撫でまくったる。


「悪いけど、宣言しとく。この戦争、俺とミクたんが勝つお」


あ、ミクたん安心して。

神様に俺の容姿小池徹平クラスにしてって頼んであるからww

ミクたんの為にちゃんと痩せるよ。我が嫁に恥はかかさん(キリッ

ちなみに神様への願いは、『願いを叶えても飛んでいかないドラゴンボール下さい』って言った。

でもそれだとチートすぎるってんで、代わりに三つ叶えてやるからそれで我慢しなさいだって。

まったく、ヤレヤレだぜ。







冬木教会に向かう間、俺と遠坂の間に不穏な空気が流れていた。

でも俺が悪いんじゃないぜ?

俺はただ単に、俺自身の事を話さなかっただけだ。

大体、信じるわけねえよ。

俺だって信じたくない事なわけだし。

ウンコしながら死んだら転生しますたなんて、どう考えても頭がイカレてるだろ?

しかも、こっちを魔術師だと決めつけてるのはいかがなもんよ?


「衛宮君も同罪だけど、冬木の管理者(セカンドオーナー)である”遠坂”に魔術師が話を通さないのは困るわ」


ショバ代払えって事ですね、わかります。

でも残念。俺は魔術師じゃないんで。


「俺、魔術師じゃないお?」

「ふざけないで。サーヴァントを召喚して魔術の事も知ってる。そんないいわけ通らないわ」


言葉使いは普通だけど、土地代払わなきゃタダじゃすまさねえって本音が駄々漏れだ。

さすが赤い悪魔。ヤクザと変わらん。


「魔術ってアレだお? たしか科学を使わずに、現代科学と同等の事象を起こせる技術形態の総称」

「……ええ」

「んでもって、現代科学では解明されていない事象を操る事を魔法と定義し、魔術師は魔法に至るのが目標だっけ?」

「……? そう、だけど……なんでそんな言い方すんのよ?」

「全部2chの知識だお」

「はあ? に、ちゃん……?」


おいおい、何困惑してんだよ。

この情報化社会で事件の完全な隠蔽なんて出来るわけないだろ?

俺も疑問に思ったから、ソッコーWEBで調べたよ。

そしたら出るわ出るわ。

そらそうだよ。魔術師や死徒の被害で村単位でも人が死ねば、そりゃ当然噂になる。

現代国家の治安機構は中世とは比べ物にならないんだから、それを隠蔽しようとすれば国の中枢を抑えるしかない。

でも、それをやろうとすれば膨大な一般人の協力が必要になる。

そんなの”神秘の秘匿”を掲げる魔術師達の理念に反するわけだから、当然対処は場当たり的になるわけだ。

個人の記憶の改竄が出来た所で、現代で完璧な隠蔽工作なんて出来るわけないだろ?

気付いてる奴は気付いてるし、知ってる奴は知ってるさ。

完全な神秘の秘匿なんて、現代では物理的に不可能に決まってるだろ。


「ッ!? ッ!? ッ!?」


2chを知らなかったみたいだけど、そう説明したらいきなりファビョりだした。

あー、言っとくけどこれ本当の事だからね。

”【魔術】魔術師をみたんだけど【師ww】”とか”俺にも魔術おしえろください”とか、20スレくらいあったもん。

携帯電話が普及した時点で、人類総カメラマンだと理解できないのはまじつ師の皆さんだけじゃないの?

多分国家の上層部はみんな知ってるんじゃね?

you tubeに化物を叩き潰すアルクェイド・ブリュンスタッドの動画とかあったし。


「正直CGかと思ってたけど、今回の出来事で魔術が実際にあるってのは理解したお」


ミクたんを受肉させる為には、俺が持ってる前世の情報は全て隠さなければならない。

当たり前だ。

遠坂や衛宮で勘違いしがちだけど、魔術師ってのは相当エグイ生き物だ。

俺の事がバレた瞬間、脳髄を引きずり出されて全ての情報を吸い出される可能性が高すぎる。

一般人の俺には戦闘力なんてない。

なら、俺はどこまでも一般人である事を表に出したまま、一般人であり続けなければならない。

取るに足らない存在なら油断を突ける。

それが俺の唯一にして最大の強み。

ミクたんの為、そして俺自身の為に、このアドバンテージは軽々しく手放すわけにはいかない。


「……それが事実だとしても、野々宮君が魔術師ではない事にはならないわ」


うお!? す、すげえ……。

今俺が言った事が話のすり替えだって事に気が付きやがった……!


「は? なに言ってんだよ遠坂? 野々宮は巻き込まれただけだろ?」


衛宮君、ちょっと黙っててくれる? 今俺の命がマッハだからね?

たしかに一般人が裏の世界を知っててもおかしくない情勢を説明しただけで、俺自身が潔白である事とは関係ない。

クソッ! 遠坂が衛宮ほど頭の可哀相な子だったら楽だったのに!


「俺は本当に一般人なんだお? 魔術なんて使えないのは確定的にあきらか」


こんな悪魔の証明を提示した所で、赤い悪魔は納得しないんだろうな。


「あなたは嘘を吐いているわ」

「そんな事無いお? 言いがかりは止めて欲しいんだお!」

「いいえ、たとえ嘘じゃなくても、本当の事を全て話していない」


チッ鋭い。

これがから補正の掛かったヒロインは……。


「今は思い出せないかもしれないけど、思い出したら全部言うお!」

「……………」

「信じてくれお! 俺は魔術なんかつかえねえお!」


俺は心から命乞いをした。

言った事は間違いなく真実だしな。

言える時が来たら言うし、魔術に関してはド素人でも言い過ぎだ。

でも、遠坂はまるで納得していない様子。

俺は冷や汗ダラダラだったけど、それでも勝算がないわけじゃない。

”遠坂凛”とは、甘い人物。

そして自分流の美学を持っている。

自身が優秀だと理解しているからこそ、確証も無しに切り捨てる事を無様と断ずる気概の持ち主。

それは魔術師としての誇りをも上回るはず。


「アーチャー」


遠坂凛が合図した途端、その隣にアーチャーが姿を現した。姿が見えないと思ったらどうやら霊体化していたらしい。

しかも、なぜか既に構え終わっている。矢発射0.5秒前って感じ。

ちょっ……!?


「待って下さい!」

「オイ遠坂!」


ヤベッ死ぬ! と思った瞬間、目の前に飛び込んできた二つの影。

一人はマイラブリー天使ミクたん。

もう一人は衛宮君。


「なっ!? アーチャ──」


赤い悪魔が何やら慌てた声を出したが、言いきる前に矢は発射された。

直後、夜の帳にギインと響く甲高い音。

いつのまに現れたのか、衛宮の前でセイバーが剣を切り上げた体勢で微動だにしない。(刀身自体は勿論見えないのだ

が)

アーチャーが放った閃光は、真上に跳ね上げられていた。

ドッドッドッと、心臓の音がうるさい。

今、俺は間違いなく殺されかけた。

セイバーが割って入らなければ、確実に目の前の衛宮諸共死んでいた。多分ミクたんもやばかった。


「どういうつもりです、アーチャー?」

「ふむ。いきなり射線に飛び込んできたのは君のマスターなのだが?」

「ぬけぬけと……!」

「マ、マスター! 大丈夫ですか! 痛いとこありませんか!?」


ヒュウー、さすが天使。

その体の半分は優しさで出来てるんだろうな。

もう半分が俺への愛で満たされていれば文句ないんだが。

……ゴメン、やっぱダメだわ。今の俺に強がりを言う余裕なんてまったくない。

ミクたんが隣で気遣ってくれているというのに体の震えが止まらんもん。

主人公も尻もちをついて呆然となってんぞ。

だれか、ウンコ漏らさなかった俺を褒めてくれ。

なにこれ? なんでこんな事になってんのよ……?

い、いくらなんでも問答無用で殺すとか遠坂さん短絡的過ぎないですか?

ちくしょう! 命の尊さを忘れてしまったんですか!?

も、もしかして、ハードモードってやつなのか!?


「アーチャー! 誰が攻撃しろって言った──」

「おおお落ち着いてくれお、遠坂さん……いえっ、遠坂様!」


そうだ、落ち着け。

この俺の原作知識を持ってすればこの程度、危機ですら無い。

ところどころ忘れてるんだけど大丈夫かな? とか俺は全然思っちゃいないぜ。

クーーールにいけ。

原作知識なんて鬼札持ってる俺に、いったい誰が勝てるっていうんだ?

しかもサーヴァントは初音ミク。

俺とミクたんのコンビならもう勝ったも同然じゃないか。いや、既に聖杯戦争終わったといってもいいだろう。

オワタじゃなく終わったな? そこ間違うと意味合いが変わってきちゃうからね。

でもさすがに言い過ぎか? 

んーそうだな、九割五分は勝ったな。間違いねえよ。

だって衛宮志郎と遠坂凛のコンビでも勝てちゃうんだぜ? たしか途中でサーヴァントいなくなってたのにだよ?

その時の二人がした事ってセックルしただけじゃないか。

衛宮の足りない魔力をセックルして補っただけっしょ?

そう、セックルしただけで勝者になれたんだよ。あの二人。

はあ、セックルしただけで勝てるとかもうね。

セックル。

セックルか……。

…………セックルだもんなぁ。

そりゃ勝っちゃうわな。セックルだもん。

セックルしたけど敗者ですって、どう考えても日本語オカシイもんな。

ヤバイ事に気がついた。

逆に言えば、これセックルしないと勝てないんじゃねえ?

もしくはセックルするとイージーモードに切り替わるとか。

そういや衛宮っていつもセックルしてたわ。セックルしない時は毎回死んでた気がする。

なんだよこのルール……。

セックルしないと聖杯戦争に勝てないとか、なんて残酷なルールだよ。

はあ……セックルかぁ……、セックルしてえ。

セックルしてみてえ。

令呪で命令したらミクたん怒るかなあ。

令呪での強制ってレイプになるのか……? んー、多分ギリギリレイプではないと思う。

あーでも、ミクたんに嫌われる可能性が少しでもある方法をためすってのもなあ。

じゃあこういうのどうだ?

『セックル祭りじゃぁぁぁぁぁ!!』

『今日も元気にセックルセックル♪』

『朝から晩までセックルセックル♪』

って歌い出したら、ミクたんテンション上がってセックルさせてくれるんじゃね?

女の気持ちとかよくわかんねえけど、これが一番確率高い気がする。

よし、今度衛宮に試してもらおう。赤い悪魔相手で。

セックルすりゃ、おいつらもちゃんと生き残るだろ。

別にあの二人に死んでほしいわけじゃないし、同じ条件ならセックルした俺とミクたんの方が強いはずだもんな。

よーし、大分脱線しちまったがなんとか落ち着いた。

情報を整理しよう。

まずセックル。これは生き残るためにも絶対条件だ。

次に、原作知識を持ってる以上、俺の頭脳はコナン君とタメ張るレベル。

ミクたんを受肉させるには赤い悪魔と正義の味方、この二人の協力は必要不可欠。

戦闘に自信がないので、ぶっちゃけ二人を利用しようと思います。

セイバーとアーチャーとミクたんがいれば流石に無双できんだろ。

ミクたんを嫁にする為ならば、俺は”この世全ての悪(アンリ・マユ)”すら超えてみせる。

遠坂凛は心の贅肉がたっぷり。つまりちょろい。心がデブだからな。

ちなみに俺の心はかなりマッチョ。まあ見た目も生き方もタフガイだから当然なんだけどね。

衛宮志郎は困ってる人を見捨てられない。多分100円落としたって泣きついたらワニ園の沼に飛び込んでくれるくらい

のちょろさ。つーか、衛宮は社会に出た瞬間詐欺師に喰い殺されそうだな。

結論。下手に出ればなんとかなるんじゃね?

よし、ここは俺が大人になって、彼女が忘れてしまった人としての大事な事を思い出させてあげよう。

下手に出て下手に出て、ギリギリまで下手に出て、それで最後に美味しい所を持っていく。

おおう、なんという悪辣さ。これ夜神ライト超えとるぞ……!


「お、俺、遠坂様に誠意をみせるお!」

「……はあ? 誠意?」

「だから、同盟組んでほしいんだお!」

「ああ取引ね。でも、私は誰とも手を組むつもりはないわ」

「そ、そこをなんとか!」

「……んー、とりあえずその誠意とやらを聞いてからなら考えてもいいけど」

「まちたまえリン、私は反対だ。必要があるとは思えん」


ちょっ、お前なにサーヴァントがマスターに意見してんだよ。

つか、オイこの腐れアーチャー。

オマエもしかしてブレイドワークスルートのエミヤシロウじゃねえのか?

衛宮を殺す為に俺を巻き込んだんじゃねえだろうな?


「別にいいじゃないか。戦わなくてすむならその方がいい」

「死にたくなければ黙っていろ、小僧。貴様には関係ない」

「我がマスターに敵意を向けた瞬間、死ぬのは貴方ですよアーチャー」


なにドヤ顔できめてんのよ、このハラペコ騎士。

お前宝具一回使ったら消える可能性あるんでしょ? どんだけ燃費悪いねん。

弱兵が調子に乗って刺激するんじゃねえよ。

もし遠坂がこのバカアーチャーの声に耳を傾けたらどうするわけ?

俺間違いなくお前のマスターの後ろに隠れるからな?

せめてアーチャーだけは道連れにしろよ?


「とりあえず聞くだけよ、アーチャー。わざわざ手札を見せてくれるってんなら損にはならないわ」

「……私は反対したぞ」

「それで野々宮君? 対価はなにかしら?」


セェェェェェフっ!

さすが遠坂。その強欲さに賭けた甲斐があった。

安心しろよ。遠坂にも悪い話じゃねえ。

今の俺に出来る精一杯の対価だ。


「し、尻を舐めるんだお……」

「……は?」

「遠坂様の尻の穴を舐めるから同盟組んでください!!」


事実上の奴隷宣言。


「「「「…………」」」」

「マ、マスター……」


人権を放棄するかのような発言に、皆の驚愕の目が俺に集中した。

ミクたんですら驚愕に目を見開いている。

くっ、許してくれミクたん。こんな情けないマスターで申し訳ない。

けど、これもミクたんと一緒に勝者になるために必要な事なんだ。


「セイバーたんの尻の穴だって舐めるんだお!! だから仲間になって下さい!!」


たとえこの身をどれほど乏しめようとも、俺の心は君と共に……。


「……悪かったわね、アーチャー。貴方の判断は間違って無かったわ」

「申し訳ありません、アーチャー。どうやら我がマスターの勇み足だったようです」


アレ? 女性陣が虫けらを見る目を俺に向けてきたんだけど?


「マスター、さいてーです……」


なんでミクたんもそんな目をしながら俺から離れるんだい?

おーい、衛宮君とアーチャーはどこに行くつもりなの? まだ話終わってないんですけどー?

ここでなぜか意識が飛んだ。

次に目が覚めた時は、言峰綺礼の教会飛ばして何故かバーサーカー戦だった。

だから現実でスキップ機能いらねーっての。




後書き
重っ……。
ようやく繋がったけど重すぎる。
投稿すんのも迷惑っぽいな。


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