2022年11月4日。その日私の人生は大きく変わった。
真っ暗な世界、それは比喩表現ではなくまさに真っ暗、一筋の光もない世界。それが私の唯一の世界でありすべてでもあった。
だけどそれが当然と言われれば当然でもあった、なぜなら私の目は見えないのだから。
いや正確には見えなくなったか。まだ自我が芽生える前、赤ん坊のころは見えていたらしい。
だけど私が遡れる記憶の範疇には色は存在しない。
主治医の話では私の眼球は外界の映像を捉え脳にそのデータを受け取っている、なら何故見えないのか。
主治医が言うには脳が目から得た情報を目から得た情報と正しく認識していないということらしい。
なんだかややこしい言い方になったけど例えるなら……そうパソコンを思い浮かべてほしい、簡単に言うなら脳というハードウェアに目といソウトウェアが正しくインストールされていないのだ、つまりインストールはされていてもその途中でバグが発生し正しくは行えなかった。ならどうなるか、ソフトウェアからの情報をハードウェアは正しく認識できない。それが今の私の状況だ。
なら目以外のソフトならどうだろうか?
そんな疑問を私は持ってしまった。
見たことはないが何度か聞いたことがある話題の代物、ナーヴギア。感覚器官ではなく脳に直接情報を送るNERDLESマシーンの民生機。
もし脳に直接情報が送られるなら、淡い期待だけを頼りに私一つのゲームソフト、ソードアート・オンライン、通称SAOを手にするためにゲーム屋に並んだ。
周囲には奇特な目で見られたと思う、何度か警察と思われる人にも声をかけられた、その度に私はありもしない話をでっち上げその場を凌いだ。
そして苦労の末私は世界初のVRMMORPG『SAO』を手に入れた。
ゲームなど一度もやったこともない、それどころか説明書すら読むことはできない、それでも私は色鮮やかな世界に憧れたその先にある悲劇を知らずに
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怖いほどに綺麗。それが私が最初に抱いた感想だ。
一つ一つの建物が人がモノが確かに存在し色があった。
これが仮想世界、そんなこと信じられなかった、そうこの世界が私の「現実」だ、そんなことを考えてしまうほどに。
最初は色のある世界が見れるだけでいい。そう考えていたけど願望が達成されれば新たな望みが出てくるそれは自然なことだろう、だから私は「もっと広い世界を見てみたい」そう思ってしまった。
そして自然と私の足は街の外へと向かう。この時はモンスターのことなども知らなかった。後にして思えば自殺行為。
でもその望みはその時は達せられなかった、街から外へ、その一歩を踏み出したとき私の体は光に包まれ一瞬の浮遊感、咄嗟に目を閉じた私が次に見たのは街の外の草原ではなく最初に目にした大きな広場だった。
周りを見れば光の収束するエフェクトと共にアバターがいくつも現れていた。
そしてその数はどんどんと増え。いつしか広場を埋め尽くす数となり。
「おい、どうなってるんだ」
「さあ?」
「なにかのイベントじゃないの」
ところどころでそんな言葉も聞こえてきたが私はその中でも一つ気になる言葉を聴きた、誰が言ったかもわからない、でも確かに聞こえた「ログアウトができないぞ」と。
ログアウト? ゲームをやらない私にとって専門用語はわからない、だけど変な胸騒ぎを覚えた。それが虫の知らせだったのか……けどもう遅かった、そう何もかもが既に手遅れだったのだ。
誰かが言った「上を見ろ」と、それに釣られ私は上を見る、そこにあったのは巨大な人だった。
『プレイヤーの諸君、私の世界にようこそ』
「私の世界?」
意味がわからず私はオウムのようにその言葉を繰り返した、が答えはでない。だが次の言葉で私はすべてを理解する。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
けど私の理解できたのはそこまでだった。ログアウトボタンだとか脳破壊だとか、回線切断だとか、まったくというわけではないが咽ほど理解ができず、わかったのはこの世界から出られないということだけ。
そして私がその答えにたどり着き顔を上げると件の巨人こと茅場晶彦の姿は既にそこになかった。
そこから先は阿鼻叫喚の地獄だった。
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趣味で書くことはありましたがこういった風に投稿するのは初になります。
あとがき状態ですが、今更ながらこの作品はSAOの二次作品で主人公はオリキャラです。
ほとんど一発ネタに近いのでどこまで続くかわかりませんがアインクラッド編ぐらいは書ければなーと思ったり。
最後になりましたがこの度はこの作品を読んでくださりありがとうございました。
[一部内容と設定を変更しました]