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No.34919の一覧
[0] GRvsEVA~ビッグファイア細腕繁盛記~(+ジャイアントロボ―地球が静止する日―)[FLACK](2012/09/02 09:55)
[1] 第一話:ようこそネルフ江[FLACK](2012/09/01 20:56)
[2] 第二話:初号機、起動[FLACK](2012/09/15 18:44)
[3] 第三話:初号機、会敵[FLACK](2012/09/15 18:45)
[4] 第四話:GRvs使徒[FLACK](2012/10/13 18:41)
[5] 第五話:使徒殲滅[FLACK](2012/11/03 19:54)
[6] 第六話:第二の使徒[FLACK](2012/12/01 23:49)
[7] 第七話:そのころBF団では[FLACK](2012/12/29 18:44)
[8] 第八話:レイという少女[FLACK](2013/03/02 19:07)
[9] 第九話:白い巨塔生活[FLACK](2013/03/30 19:17)
[10] 第十話:白い少年[FLACK](2013/06/01 18:28)
[11] 第十一話:鉄人[FLACK](2013/06/01 18:29)
[12] 第十二話:アスカ来日[FLACK](2013/06/29 19:26)
[13] 第十三話:反逆[FLACK](2013/08/31 18:39)
[14] 第十四話:アダム[FLACK](2013/08/31 18:40)
[15] 第十五話:夢見るアロンソ・キハーナ[FLACK](2013/09/28 18:44)
[16] 第十六話:ガイアー[FLACK](2013/11/02 18:38)
[17] 第十七話:ザ・タワー[FLACK](2013/11/30 18:34)
[18] 第十八話:私を〇〇に連れて行って[FLACK](2014/01/01 10:01)
[19] 第十九話:再びネルフへ[FLACK](2014/02/04 18:41)
[20] 第二十話:BF団のススメ[FLACK](2014/03/01 19:40)
[21] 第二十一話:怪盗三代目[FLACK](2014/03/29 19:42)
[22] 第二十二話:闇を払うもの[FLACK](2014/05/02 18:47)
[23] 第二十三話:使徒殲滅、ただしネルフは……[FLACK](2014/05/31 18:37)
[24] 第二十四話:十傑集裁判[FLACK](2014/06/28 19:19)
[25] 第二十五話:ビッグファイアは三度死ぬ[FLACK](2014/10/12 16:07)
[26] 第二十六話:ロマンスか逆境か[FLACK](2014/11/30 19:43)
[27] 第二十七話:美女とお子様のラプソディ[FLACK](2015/09/25 19:00)
[28] 第二十八話:BF団本部壊滅!! さらば十傑集![FLACK](2015/10/10 18:51)
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[34919] 第十七話:ザ・タワー
Name: FLACK◆6f71cdae ID:4f2a89df 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/11/30 18:34
Jehovah came down to see the city and the tower, which the children of men builded.
Come, let us go down, and there confound their language, that they may not understand one another’s speech.
Therefore was the name of it called Babel.

 少年の右腕から咲いた巨大な花はより一層大きく開き、そこから伸びる光の柱は輝きを増していく。
 少年は振り上げた右腕以外、頭も手足も力なくたれ意識があるのかもわからなかった。

「かつて、黄帝ライセ様が開いた扉が再び……」
「……ならば、この少年こそ本物のビッグファイアなのか」
 九大天王達が身構える。
「ここでサードインパクトを起こさせるわけにはいかん!」

「……ほう、ならばどうするというのだ」
 《暮れなずむ幽鬼》がズボンのポケットに手を入れ、猫背のまま九大天王たちの前に立ちふさがった。
「我らが黙って見過ごすと思うのか?」
「……」
 《激動たるカワラザキ》《直系の怒鬼》が向き直る。

『……ミニクイ』
 九大天王と十傑集が対峙したその時、その場にいた全ての者にテレパシーが放たれた。
「ぬ! 《夢見るアロンソ・キハーナ》か!」
「マーズ!」
『ナントイウ、ミニクイイキモノダ……コノヨウナモノニ、イキルカチナドナイ!』
 《夢見るアロンソ・キハーナ》が両手を天に掲げる。
「いかん! 地球を破壊するつもりか!」

『……シュウエンノトキ……ガイアー!』
 《夢見るアロンソ・キハーナ》の声に応え、ガイアーから強烈な光が放たれた。ガイアーの頭上に、今までとは比べ物にならない巨大な光球が現れる。

「くっ! この様な時に!」
「まずい! ガイアーを止めろ!」
 十傑集と九大天王がガイアーに殺到するが、あまりにも強力なエネルギーは彼らすら近づくことを許さなかった。
「このままでは! 間に合わんか!?」

 ガイアーから光球が放たれようとするその時、少年の頭上の光の柱から三つの影が躍り出る。それらの影はガイアーの周囲に降り立ち、光球を取り囲んだ。
「あれは!?」
「ガルーダ!、そしてネプチューン! アキレスか!」
 バビルの3つの僕、三体がそろってバリアを発生すると、ガイアーの光球は見る見る小さくなっていく。

「……醜くて、結構だ《夢見るアロンソ・キハーナ》……」
 光り輝く柱の下、少年からか細い声がした。
「ビッグファイア様! ご無事で!?」
 十傑集達が、少年の元に集まる。
「……醜くても、薄汚くても、生を選択し続けるのが人間なんだ……」
 俯いた少年の顔が上がり、《夢見るアロンソ・キハーナ》を強く睨んだ。
「もがき足掻く事こそ生命の本質って、赤い星の白い戦士も言ってるし……」
『……』

「……はあ」
 しばらくすると少年はため息をつく。鋭い眼光が緩んだ。
「地球破壊プログラムに、こんなこと言っても理解される訳ないか……」
 海底で深い眠りについていた《夢見るアロンソ・キハーナ》に、勇者シリーズのネタを出されても、ついていける訳ないだろう。

「カワラザキさん、幽鬼さん、怒鬼さん」
 少年が十傑集に呼びかけた。
「はっ!」
「……」
 《激動たるカワラザキ》《暮れなずむ幽鬼》が答え、《直系の怒鬼》が無言で頷く。
「……えーと、そのぉ……こういうことは言いたくない、けど、他に打つ手がなくて……だから、その……」
「何なりとおっしゃってください!」
 どこまでも歯切れの悪い少年に、カワラザキが強く促す。
「……今、地球破壊プログラムの上位存在であるバベルの塔から、緊急停止コマンドを発行してるんだけど、これも保って数分が限度。ガイアーの地球破壊プログラムは、まだ停止していない。だから……」
 少年は再び俯いた。
「……みんなには、ここで命を賭けてもらう」
 強く食いしばった少年の唇の端から、血が滴り落ちる。

「……喜んで、この命捧げましょう!」
「全ては!」
「我らの、ビッグファイアの為に!」
 三人の声が重なった。

「……怒鬼さんの声、初めて聞いたな」
 少年は微かに笑った。
「ごめん、僕に本当の強さがあれば……」
「お気になさるな、ビッグファイア様」
「地球の破壊、サードインパクト、たった三人の命で済むなら、安いものだ」
「……」
 三人は頷くと三方に散る。

 《夢見るアロンソ・キハーナ》の前に、《暮れなずむ幽鬼》が立った。
「永劫……とはいかんが、永い眠りについてもらおうか」
 鋭い口笛の音とともに、《暮れなずむ幽鬼》から濃い霧のようなものが湧き出てくる。彼の能力、群雲虫だった。
 虫たちは《夢見るアロンソ・キハーナ》に群がっていく。あっという間に、《夢見るアロンソ・キハーナ》の姿が虫の群れの中に掻き消えた。
 《暮れなずむ幽鬼》の体は分解され、小さな一匹の虫になる。群雲虫を使ってしまった今、十傑集《暮れなずむ幽鬼》の能力はもはや失われたも同然だった。だが、
「テレパシーによる強深度催眠。オレが生きている限り、お前が目を覚ますことはない」

 光球を掲げたガイアーには、《激動たるカワラザキ》が向かう。
「さあ、ワシとともに時の果てへ行くとしよう」
 カワラザキの体から、銀色の光が放出された。その光は銀色の球体、正確には鏡面の球体となってガイアーと光球を飲み込んでしまう。
「あれは、停滞空間(ステイシス・フィールド)!」
 停滞空間、フィールド内の時の歩みを遅くする結界。どのぐらい遅くできるかは術者の能力に左右されるのだが、
「さすがカワラザキさん。緊急停止コマンドは数分しか持たないけれど、フィールド内外の相対時間は約八千億対一。ガイアーから光球が放たれるのは少なくとも百五十万年以上かかる」

 そして、《直系の怒鬼》は少年の眼前に立つ。
「……」
 それまできつく閉じ、決して開かれることのなかった右目が開いた。瞳のない眼球が現れ、碧い光を放つ。
「始祖より受け継がれし浄眼。後継者以外で『塔』に干渉できる唯一のもの……」
 少年の頭上にある光の柱が不規則に明滅し始めた。その光は徐々に力を失っていく。
 ごぽりと、怒鬼の右目から血が溢れ出た。浄眼を使うことは、十傑集《直系の怒鬼》にとっても命を削る危険なことだった。
「……!」
 怒鬼がひらりと跳躍し少年の右腕、巨大な花の中央に降り立つ。そこは強大なエネルギーが発生し渦を巻くところ、怒鬼の体が力の奔流に晒され燃え上がりはじめた。
「……」
 だが、怒鬼はかまわず七節棍を両手に持ち、花の真ん中の巨大な瞳に突き立てる。
「っ!」
 少年の顔が苦痛に歪んだ。それでも怒鬼はさらに両腕に力を込める。
 ギギギ、と軋む音を立てながら、少年の右腕の花が少しずつ小さく折りたたまれていった。中央の瞳も再び殻に被われていく。
 回転しながら落下するように縮んでいく少年の右腕。怒鬼もその渦に巻き込まれて落ちていく。それでも怒鬼は一歩も動かず、花もろとも少年の右腕に吸収されていった。
「……二人がかりで、ようやく真のアダムを制御できそうだね」

「我らはこのまま見ていることしかできないのか!?」
 九大天王達が、声に悔しさをにじませた。
「しかし、BF団によって事態は収拾しようとしている」
「十傑集が手を放せない今が、ビッグファイアを倒すチャンスではあるが……」

「そうはさせません!」
 大怪球から再び人影が飛び降りてくる。
「朱里!?」
 少女が、九大天王の前に立ちはだかった。
「九大天王を相手にするなんて、無茶だ!」
 少年が叫ぶが、少女はそれを無視する。
「小娘一人に、我ら三人を止められると思うのか?」
「できるできないは関係ありません。フォーグラー博士とイワンは大怪球の維持に手一杯。今動けるのは私一人。ならばこの命を賭けて、たとえ0.1秒でも時を稼ぎます!」

 九大天王と少女が対峙した。
「……15年前とは逆になりましたね。私が今代の諸葛亮孔明です。よろしく、九大天王の方々」
「何だと! 貴様が!?」
「かつて黄帝ライセが呼び出したバベルの塔を、BF団の諸葛亮孔明が命を賭けて封印した。これがセカンドインパクトの真相。あなたたちもその場に居合わせたはず」
「くっ、なればこそ、あの惨劇を繰り返させる訳にはいかんのだ!」
 ためらっていた九大天王たちが、ついに少女に向かって攻撃を仕掛ける。だが、少女は一歩も退かず立ち向かおうとした。

「なんで、なんでだよ! 星を砕くほどの力を手にしたのに、目の前の女の子を助けることもできないなんて!」
 少年が絶叫する。しかしいくらもがこうと少年の右腕は、空間に固定されたかのように全く動かず、超能力を使うことも出来なかった。
「おさらばです。ビッグファイア様……」
「やめろっ! やめるんだあっ!」
 少女と九大天王が閃光に消え去る。少年は思わず目をつぶった。

「……あ、ああ……朱里?」
 少年が目を開けると、少女のいたそこにはGR1の数倍の巨体を持ったロボットがいた。
「え?……ネプチューン?」
 バビルの3つの僕の一つ、ネプチューンがそこにいた。その巨大な手の中に、少女が無傷でいる。
「……ビッグファイア様、なのですか?」
 自分が生きていることが信じられない少女が、少年に問うた。他には考えられないからだ。
 だが、少年はかぶりを振る。
「バベルの塔の実行権限はもう失われてる。3つの僕が言うことを聞くはずないんだ」
「じゃあ、なぜ……?」
 そのとき、少年と少女は九大天王たちが空を見上げて唖然としていることに気づいた。
「? 一体何が……」
 少年と少女が視線を上に向けると、光る柱に大きな人の顔が写っているのが見えた。
「あれは! 黄帝ライセ!?」
「え、そうなの?」
 セカンドインパクトの引き金となり亡くなった黄帝ライセ。少年は資料に目を通してはいたものの、顔などすっかり忘れていた。

「……」
「え? 何か?」
 黄帝ライセの顔が何かをつぶやいている。少年と少女には何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「おお、そんな、そんなことが……」
 だが、九大天王たちには何かが聞こえていたらしい。三人の顔が驚愕に歪んだ。
「何なんだ?」
 少年と少女には状況が把握できない。

 光の柱が消えていくのとともに、3つの僕がそこに帰っていった。黄帝ライセの顔も薄れて消えていく。
 後には、九大天王と少年、少女が残ったまま。二人は今渡こそ九大天王が襲ってくるかと身構える。しかし、
「我らは、一旦梁山泊へ戻る」
 《静かなる中条》の言葉に少年は驚いた。
「へ? いや、それはありがたいけど」

「黄帝ライセ様のお言葉を、皆に伝えねばならぬ」
「国際警察機構の行くべき道を探るのだ」
「それまで、その命預けておくぞ」
 そういって、九大天王たちはその場を離脱していった。

「……何がどうなったんだろう? 訳がわからないな」
 少年は呆然としたままだ。なぜ九大天王は何もせず立ち去ったのだろうか。
「黄帝ライセが……あれは残留思念でしょうか……なにかメッセージを残したようですね。とりあえず、命を拾ったことに違いありません」
「とは言っても、十傑集を三人も失ったよ。僕がちゃんと力を使えれば……」
 《激動たるカワラザキ》は停滞空間に閉じ込められ、《暮れなずむ幽鬼》はその力をすべて《夢見るアロンソ・キハーナ》を眠らせるために使い果たし、《直系の怒鬼》は少年の右腕に取り込まれた。
「仕方ありません。あまりにもタイミングが悪すぎました。世界が破滅から救われただけでも良しとしなければ」
「でも、それで納得なんて、できないよ……」
 少年がうなだれる。しかし少女は容赦なかった。
「落ち込む暇があるなら、超能力の制御に力を注いでください。戦力が減ったのならば、それを穴埋めしなければいけないのですから」
「……うん、そうだね」
 少年がこのまま立ち止まれば、三人の犠牲はそのまま無駄死にになる。少年はどうあっても、前に進まなければいけなかった。

「とはいえ、逃げれるものなら逃げたいなあ」
 ここまで来ても、少年のボヤキは止まらない。ヘタレはやっぱりヘタレだった。


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