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No.35106の一覧
[0] ヤン・ウェンリーがある世界に転生してしまったようです[ブライス](2012/09/13 18:01)
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[35106] ヤン・ウェンリーがある世界に転生してしまったようです
Name: ブライス◆5a46917a ID:409a627f
Date: 2012/09/13 18:01
一つの世界のとある銀河。その銀河では、一人の英雄が速すぎる死を迎えていた。
その名はヤン・ウェンリー。腐敗したとはいえ帝国主義国家銀河帝国に対し民主主義の理念を掲げる自由惑星同盟の理念を体現したような不世出の戦術家である。
銀河系全域の支配を狙うカルト的組織、地球教によって殺された際の年齢はまだ33歳。
彼の死は、妻であるフレデリカや養子のユリアン・ミンツや彼の部下たちのみならず敵国の将兵にも好敵手であっただけにショックを少なからず与えた。
一人の英雄が銀河からその日消え去った。だが、英雄は死なない。
そう少なくとも他の世界では。



(ここは、どこだ・・・ぼ、僕は助かったのか・・・・)

死んだはずのヤン・ウェンリーは、意識を取り戻していた。何とか地球教共の攻撃を食らった後に治療を受けて助かったのかと持ったが次の瞬間絶句しった。
目の前には、美しい美男子といっていい人物の顔があった。しかし、その人物の姿かたちはあり得ないものだった。具体的に打と青い紙という本来ありえない髪を持っていた。
少なくとも青い髪など自然進化で人類は生み出していない。髪を青色に染める文化なんて一応歴史学者を目指した彼が知る限りでは、古代も現代においても存在していない。
それに巨大要塞のイゼルローンや軍艦など一般人がまずお目にかかれない施設を見てきた彼からしても異質な環境を周囲の内装を見る限りその部屋は持っていた。

どういうことなのかと問いだたしてみようとした時、異変に気付いた。

「ほぎゃあああ」

そうヤン・ウェンリーの口から出たのは、意味を成した言葉ではなくまるで幼児が出すような意味をなさない叫び声。
えっと思って思わず自分の体を見ると、次の瞬間には先ほどよりも激しい赤ちゃん言葉が口から飛び出ていた。

それは自分が見慣れた体ではなかった。自分のアジア人らしいからだとは明らかに異なる異人種の体で髪の毛や目の色が異なり目の前の人物とよく似ている。
しかも、背が縮んでいた。正確には背が縮んているのではなく―なんと赤ちゃんに逆戻りしていた。
これには、一応は普段はだらしない中年男だったとしても天才と呼ばれる彼でも耐えられない衝撃を与えた。
ヤン・ウェンリーはその身を持って東洋思想にある輪廻転生という現象を体験したのだった。

それから数年の時を経て5歳になったヤン・ウェンリーは、ここが自分が異なる世界、おそらくは物理学でいうパラレルワールドでりなんらかの理由で自分の意識が死亡した瞬間に他者の脳に時空を飛び越え乗り移ったあるいは不合理だが、魂や神という存在が現実に存在しうるかもしれないから起きた現象と位置付けていた。
そして自分がかつては帝国主義と戦ったという立場でありながらアーブという遺伝子改造された人類の子孫で、帝国を構成している国家の貴族に皮肉なことになっているということも。

この世界と自分のいた世界は異なっているということをヤン・ウェンリーは、認識している。未来の世界に来たのではないかと考えたが、アーヴやこの宇宙全体がたどった歴史を見る限り技術的に退行したのでなればこの世界は自分のいた世界とは別世界だ。
アーヴが帝国といった風に巨大恒星間国家を作っている理由だが、それは戦争の勃発を阻止するためだ。この世界で恒星間進出の黎明期には、特殊な高エネルギー粒子を利用した推進機関があり、この高エネルギー粒子が成り立つ理由である異次元空間・平面宇宙を介した超光速星間後方の実用で戦争を起こさないため全人類の平和統一のために行っているという。
自分のいた世界では、おそらくエネルギー粒子の量の関係だろうがそのような粒子は発見されず普通にこの世界では断念された核融合動力の宇宙船が実用化され、それがワープ以前の一般的な移動方法となっている。
それに亜空間を通るとはいえこちらは空間歪曲系、アーブの技術は物理法則が異なることを利用しての超光速という点で異なる。
最も超光速を出せるといってもこちら側が容易に恒星間を短期間で移動できるのに対してアーブ側は移動期間が長いうえに恒星間通信に応用できるという点でこちらが上だ。

ただ軍事力や技術力を見る限り、どちらにも優れた点があるわけだがアーブ側の動力源は核融合に対して反物質だったり、反物質兵器や亜光速のレールガンがあるので実際に戦わなければわからないが軍事的に優れているのは事実だ。
ただこちら側も恒常的に核融合兵器を利用し核融合兵器にも一点に集中する限り匹敵する熱量のビーム兵器があったり、物量や錬度など技術的有利以外にもあるファクターが影響するので絶対的とは言えないが。

アーブは非常に強力な軍事力を有し、地上支配を行っているが別に独裁というわけではない。貴族や皇族、士族といったアーブの帝国を支配する身分であっても絶対的な独裁者ではなく勝手に気に入らないという理由で相手を殺していいという非人道的な要求はまかり通りしないし、法による統制だって受けもする。
かつてのゴールデンバウム朝銀河帝国に比べれば問題はない、勿論必要になれば武力行使はするしアーヴ側にも平和維持でなく既得権の確保のための戦闘といった認識のものもいるが長じて平和だ。
アーヴの支配下の惑星―アーヴは惑星に住まず宇宙の人口天体に住む―の住民も別に奴隷労働を仕入れてはいない。
腐敗下し、徹底的な虐殺を行うという恐れから帝国主義をヤン・ウェンリーは嫌っているが別に帝国主義を否定しないわけではない。

歴史上帝国主義による国家でも平和な国家はあるし、新興の民主主義に比べはるかに歴史が長い。理想としている民主主義にせよ、フランス革命などで民主化の過程で虐殺が行われたりと本当の意味で理想的な体制下は分からない。
別に人々が苦しんでいなければ自分はアーヴ帝国を嫌いになることはない。人々が幸せな生活を現実に行っているのそれを壊すほうが虐殺者だ。


ただヤン・ウェンリーにとって転生したアーブ世界における不運は一つ。確かにアーヴの200年という寿命や転生後の顔が美形なのは悪くない。
が転生下先が貴族なのが最悪だった。貴族は家督をつぐために軍隊に入ることが義務付けられている。
ヤン・ウェンリーは天才的な才能の持ち主だが、本来は歴史家として傍観者に徹したかったのが、偶然で英雄へとなってしまったのだ。
どうせ未知の世界でユニークな進化を遂げた世界なら歴史家に徹してみたいがこれは足かせだ。
軍隊に入らないには家督を放棄するという手もあるが、それはそれで生計を立てていくのが難しそうだし、彼は一時的に軍隊に入って退役したのちに領地を経営しながら歴史家として活動をすることを決めた。
別に法に反するわけではないし、正式なものではなくアマチュアだって好きなことであれば問題はなかった。
が、それが4か国連合との海戦でご破算になることをヤンは知らない。
伝説の男の戦いが今始まる。


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