誰もがやらなかった禁じ手 『キリトさん転生憑依モノ』 を書いてみた。
久しぶりに原作を読み返してたとき、なんとなくネタを思いついたので投下してみるテスト。
あぁ、アニメのせいでまたなんか香ばしいのがわいてきたな。
―― くらいの心持ちでお付き合いいただけたら幸いかと。
【警告】 WARNING!! 【警告】
本作品は、原作主人公への転生憑依要素を含んでいます。
・転生憑依? キリトさんがキリトさんじゃないSAOなんて認めるかよっ!
・アスナ姫とにゃんにゃんしたいだと? まずはそのふざけた幻想を(ry
等の、原作改変に対して、並々ならぬ不快感をお持ちの方は、華麗にスルーする事を推奨します。
また、“ネタばれ”、“ご都合主義”、“捏造設定”、“もはやオリ主”、“オリキャラ”、“キャラ改変”などのキーワードが忌諱に触れる方はお気をつけ下さい。
【警告】 WARNING!! 【警告】
最後に、作者は国語力が低い上にとうふメンタルなので、きつい事を言われるとすぐにハートブレイクしてしまいます。
なので、「まぁ、暇つぶし程度に読んでやるよ」くらいの寛容な精神で応対してくれると、とてもよろこびます。
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―― Q.桐ヶ谷和人に転生憑依してしまった件。安全に生き残る為にはどうしたらいいと思う?
―― A.ソードアート・オンラインをプレイしなきゃいいと思うよ。
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―― “目が覚めたら赤ん坊になっていた”なんて事が、実際に起こりうると思うかい?
そんなの、理性的あるいは良識的に考えれば、まずあり得ない。
―― 更に、“その赤ん坊が自分の好きだったライトノベルの登場人物だった”だなんて事になっていたらどう思う?
それは一体どこのネット小説のネタですか?
虚構と事実を混同していいのは、作家と中二病罹患者だけですよ?
……そんな風に考えていた時期が俺にもありました。
いやまさか、『事実は小説より奇なり』という言葉を、身をもって体験する日が来るだなんて思いもしなかったよ。
HAHAHA!
とまぁそんな訳で、目を覚ましたら俺は赤ん坊になっていましたとさ。
―― そんな、嘘みたいな本当の話。
最初に感じたのは困惑だった。
そこから、驚愕、混乱、狼狽、消沈と移っていき、最終的に諦観へと落ち着いた。
だってそうだろ?
単なる夢にしては、妙にリアルすぎるし、いつまで経っても覚める気配はない。
嘆こうが、喚こうが、慌てふためこうが、目の前にある事実は変わらない。
だったらもう、全てをあるがままに受け入れるしかないじゃないか。
つまり、前世の俺は何らかの理由でもって死んでしまったんだよ。
でもって、俺は前世の記憶を持ったまま転生してしまったんだよ。
きっと… たぶん… めいびー…
もう、そう言う事でいいよ。
―― そんな風に、生後数日で半ば悟りの境地に達していた俺は、その数ヶ月後、さらなる災厄に見舞われる事になる。
まぁ、単刀直入に言ってしまえば、一家そろって事故に遭ってしまったのですよ。それはもう、盛大なヤツに。
その事故の所為で、今生の両親は他界、俺自身も瀕死の重傷を負うハメに…
なんとか奇跡的に九死に一生を得る事ができたのだけど、果たしてこれは幸なのか不幸なのか。
だってそうだろ?
生後一年未満で両親と死別とかっ… どんな無理ゲーだよ、コレっ…
今生の俺の人生、ルナティックっ!?
つか、むしろ下手に生きながらえて悲惨な人生を送るくらいなら、いっその事、あの時にひと思いに死んでしまえた方のが幸運だったのではなかろうか?
なんて俺が悲嘆に暮れてしまうのも無理からぬ事だろうさ。
けれど、世界はそんな俺を見捨ててはいなかったっ!
たった一人残された俺の事を不憫に思ったのか、死んでしまった母親の妹夫婦が俺を養子として引き取ってくれる事になったのだ。
来た! これで勝つる!!
などと、最初は軽い気持ちで小躍りしていた俺だったが、身重の身体をおして俺の養子縁組を成立させる為に奔走する叔母の姿を見て、次第に純粋に感謝するようになった。
……だってさ。
この人、自分の大きなお腹も顧みず、何度も俺の見舞いに来てはいろいろと話しかけてくるんですよ。
「キミは姉さんの忘れ形見」だの、「絶対に不幸になんてさせない」だの、「もうすぐ本当の家族になれるよ」だの。
挙句の果てには、俺の手を握って声を押し殺しながら泣いたりだとか、さ。
そりゃお前、こっちもシリアスにならざるをえないってばよ。
それから、俺は心を入れ替えた。
訳の分からないまま始まった二度目の人生だし、どうでもいいや。なんて考えは即刻ゴミ箱へと放り捨てた。
決してこの人の悲しむ事はするまいと、そしてまた、新しく生まれてくる弟か妹を精一杯大切にしようと、そう心に誓った。
たとえ、直接的な血のつながりのない家族だったとしても、母子であると、兄弟であると、胸を張ってそう言えるような、そんな関係を作っていけたらいいなと願った。
それから数ヶ月後、無事養子縁組の手続きを終え、正式に俺の両親となった人たちの名前を聞いて、俺は自身のあごが外れそうになるほどに驚愕するハメになった。
“桐ヶ谷翠”と“桐ヶ谷峰嵩”、それが俺の新しい両親の名前だった。
そして、その二人に引き取られる事になった俺の新しい名前は、“桐ヶ谷和人”。
さらに付け加えると、先日生まれた妹の名前は“桐ヶ谷直葉”という。
―― それなんてSAO?
どうやら俺は、ライトノベルの主人公に転生してしまったようです。
* * *
名前に、来歴、家族構成までもが見事に合致。
おまけに、茅場晶彦やらNERDLESやらナーヴギアなんて単語が、新聞やテレビで飛び交う毎日。
もはや、認めるしかないのでしょう。
俺が転生してきたこの世界はソードアート・オンラインの世界であり、俺が転生した人物はキリトさんこと桐ヶ谷和人その人であるとっ!!
―― ふ・ざ・け・ん・なっ!
つか、いきなり赤ん坊になったってだけでも訳わかんないのに、ラノベの世界に転生とかっ!
しかも、よりにもよってソードアート・オンラインとかっ!
おまけに、主人公に憑依とかっ!
キリトさんに憑依とかっ! キリトさんに憑依とかっ! キリトさんに憑依とかっ!
もう、何なの? 何を考えているの? バカなの? 死ぬの?
―― ていうか死ぬよ、主に俺が! あと、一万人のSAOプレイヤーが!
あぁ、もう、ちくしょうっ!
引き取られた先でも、俺の人生はルナティックかっ!!
くそぅ… 同じソードアート・オンラインの世界でも、どうせ憑依するんならレコン辺りがよかったよ…
彼だったなら、ALO編の終盤で盛大に自爆して、文字通り一花咲かせてやれたものをっ…
ALOなら死んでも死なないしなっ!!
つか、同じSAOプレイヤーだったとしても、エギルやら、クラインやら、またはその他の名も無きオリ主だったならまだマシだったのに…
なんでよりにもよってキリトさんなんだよ… 難易度激高だろ、常考。
あんな、薄氷の上で軽快にタップダンスを踊るみたいなマネ、あの人以外にできる訳ないじゃん。
ぶっちゃけた話、俺にはキリトさん不在でSAOが攻略できるだなんて思えない。
でもって、前世の記憶がある以外はごくごく平凡な一般人である俺に、キリトさんの代わりが務まるとも思えない。
つまり、“俺が桐ヶ谷和人に憑依する” = “アインクラッドにキリトさん不在” = “SAO攻略不能” でQ.E.D.だ。
この世界のSAOが、事実上攻略不可能な無理ゲーである事は確定的に明らか。
よしんば攻略できたとしても、それにかかる時間や犠牲者の数は原作のそれよりも膨れ上がるだろう事は疑うべくもない。
それで結局、俺が何を言いたいのかと言うと…
―― 攻略できないとわかってるデスゲームに参加するバカが、一体どこの世界にいるってんだよっ!
つか、そもそもデスゲームな時点でお断りです。
原作の主要人物たちを含む一万人のSAO参加者には悪いが、俺は顔も知らない他人の為に死地に赴くだなんて博愛精神は持ち合わせていない。
まして、キリトさんじゃない俺が参加したとしても、SAOを攻略できる保証なんて欠片もないのだからなおさらに。
加えて言えば ――
もし仮に無事SAOが攻略できたとしても、参加してしまった時点で最短でも二年、ひどければさらに多くの時間を電脳空間に囚われたままで過ごす事になる訳だ。
中学二年半ばからの二年間を電脳空間で無駄にするとか、ないわー
学歴社会なめんなよっ!
そんなあからさまな負け組ルートに、好き好んで飛び込むヤツがいるだろうか? いやいないっ!
故に、俺はSAOには近づかない。触れもしない。
そして、この第二の人生を平穏無事なままで過ごすんだっ!
と、そんな決意を固めたのも、今となっては遠い過去の話。
訳の分らぬままに転生し、強制的に新しい人生を歩む事になってから、既に十四年の月日が流れていた。
思えば遠くへ来たものである。
共働きで何かと忙しそうだった両親の手を煩わせるのも心苦しいと、物分かりのいい手のかからない子供を演じていた幼年期。
忙しい両親の代わりにぐずる妹の世話をしたり、じいさまに筋がいいと言われ竹刀を片手に追いかけ回されたりしたのも、今となってはいい思い出である。
持ち越した前世の記憶の所為で精神年齢が合わず、孤立するハメになった小学校時代。
おかげで、親しい友人の一人も作れず、まっすぐ家に帰っては両親の代わりに家事やら妹の世話やらをする毎日だった。
まあ、じいさまの言いつけで剣道道場に通ったりもしていたけど。
というか、よくある転生モノの主人公たちのコミュ力は異常だろ。
あそこまで精神年齢のずれた級友たちと話を合わせるなんて、とてもじゃないが無理だ。
俺には、彼らの言動や情動を理解する事なんてできなかった。
そんな俺が、リアルの年齢を気にせず素の自分を出しても問題のないネットゲームの世界に耽溺するようになったのは、ある意味で当然の帰結だったのかもしれない。
ゲームの中でなら、現世でのしがらみに囚われる事なく自由に振る舞う事ができた。素の自分を出しても、周囲から奇異の目を向けられる事はなかった。
そんな俺だったから、母さんからSAOのベータテスターに当選したと聞かされた時には、一も二もなく飛びついた。
そこには、迷いも、ちゅうちょも、ためらいも、一欠片だってありはしなかった。
え? 固めた決意はどうしたのかって? ―― 大丈夫だ、問題ない。
SAOのベータ版はデスゲームじゃない。
言うなれば、参加しても死ぬ事のない“安全な”SAOなのだ。
だったらもうプレイするしかないだろっ!!
フゥーハッハッハッハ!
SAO、サイコー! 茅場晶彦、まぢ天才!
* * *
運命は廻る…
予定調和という名の歯車に導かれて、くるりくるりと廻り続ける…
因果の果てに待ち構えるは希望か絶望か、それはまだ神のみぞ知る…