如何なる艱難辛苦にあろうとも、人類種にとって希望という燃料さえあれば未来の灯は明々と輝きうる。そして、主権国家という枠組みにとって有害極まりない『地球主義者』と後に忌み嫌われるルナリアンは希望を心から渇望していた。少なくとも、前線国家に鞭打ち絶望的な遅滞戦闘を戦わせるためだけに、希望を欲してやまないのだ。国連軍の戦略からしても、人類の敗勢を挽回する必要があるのは言うまでもないだろう。大陸戦線、特にソ連方面に至っては核地雷による焦土戦を前提としての終わりの見えない泥沼の後退戦。スルグートハイヴ(H07:甲7号目標)に圧迫され続け、戦線の再編すら覚束ないのが実態だろう。なまじ国土が広すぎるために、広大すぎる防衛正面をBETAに浸透突破されているようでは迎撃など夢のまた夢。土地を諦め、後退と損耗の最小限化に切り替えた割り切りがなければ、今頃BETAがシベリアダッシュを楽しんでいた頃だろう。逆に、中国大陸は圧倒的な物量同士の消耗戦。なんというか、さすがに中共とロスケが実に気合を入れて頑張ってくれている。カシュガルを抑え込もうと損耗を度外視で頑張ってくれねば、アジア方面の防衛線が整う前に人類生存圏が瓦解しかねなかった。この点、日帝は実に悠長でいまだに大陸派兵を行うかどうかを呑気に検討している。『戦争をするならば、よその国の土地でしなさい』かの国の総見公が残してくれたありがたい教訓も忘れているのだろうか。どう考えても、核と重金属と雲霞のごとき不発弾を国土にしこたま撃ちこまれるよりは、撃ちこむべきだ。撃ちこまれる隣人にしても、BETAのごはんにされるよりはましなのだから、Win-Winここに極まるというのに。まあ、コミーと肩を並べ軍靴を共に進めたくないという希望ならば分からないでもないがそれならそれで中東なり欧州なりに来てほしいもの。人口密集地帯に隣接し、工業基盤の移転もままならない欧州主戦線はある意味究極のジレンマに陥っている。そして新たにギリシャの失陥と、それに伴うアナトリア方面の急激な戦局悪化。それに伴う地中海における艦隊戦力増強の必要性は、言うまでもない。だが凸凹だらけに国土を砲撃し尽くさん勢いで撃ちまくっているのがDDR。加えて、更地に整地中のポーランドや、北欧戦線のBETA圧力増大を考えれば逆に地中海艦隊から引き抜く必要があるほど。こんな状況下にあって、のんきに戦艦群を持っていてうれしいコレクションにしている国家をターニャは訪れていた。「…ライセンス料代わりと言ってはなんですが、手すきの艦隊を欧州へ回していただきたい。」合衆国の要望。はっきりといえば、単純だ。『show the flag』& 『boots on the ground』のマイルドな要望。さんざんライセンス生産やら何やら許しているんだから、船ぐらい出してほしい、と。国際協調の一環で、外征してくれないかという依頼だ。国連にしても、世界情勢の悪化を阻止するために加盟国へ要望を出している真っ最中。なればこそ、ターニャは両者の意向を言い含められて形ばかりは国連の要望という形で日本帝国に要望する。せめて、欧州に船を出していただけないですか?と。「国連の事務次官補ともあろう人間が、合衆国の権益代表ですか?堕ちたものですな。」対する、日本帝国の反応といえば呆れたような苦笑するようなジョーク交じりの一言。とはいえ、発言した帝国軍人の表情にあるのは嫌味よりも苦労への共感だろうか。言葉とは裏腹に、表情はどちらかといえば茶目っ気すら漂わせるものだ。…当たり前といえば当たり前だろう。国連に派遣されている米国軍人というのは、多かれ少なかれ名義的な出向だ。在日米軍ですら、部分的には国連の名義を被るご時世。そんな世にあってはターニャ・デグレチャフ国連事務次官補とて、合衆国の一員であるのは当然のこととして、誰もが受け止めている。彼らにしてみれば、少なくとも『今の』時点では一切悪意のない兵隊の言葉だ。むしろ、それは彼らなりの『文官』と『建前』に縛られる『ご同業』への迂遠な好意ですらある。なにしろ、今の時点においては、日米安保で結ばれた頼りになる同盟国の最前線帰り。敬意を払いこそすれ、ゴーホームと罵られる不安もない。「人類互助の一環ですよ。合衆国が債務免除に応じることで、欧州戦線の支援を厚くできるならば国連としても喜ばしい。」そして、意図のわかり切っている表層的な挑発に暴発しない程度に場を理解している人間ばかりだ。なればこそ、苦笑している参加者の前で不愉快だと言わんばかりにターニャも鼻で笑ってみせられる。馬鹿げていることは承知の上だが、これで、お互い上司と間抜けな身内に対する言い訳ができるのは大きい。前者は、自国の立場を考えはっきりもの申してやった、と。後者は、各国政府の利害を考慮しつつも人類協調の重要性を説いて理解を得られた、と。ある種の様式美であるが、この様式美が本当の罵り合いになれば非効率のこの上ない足の引っ張り合いだろう。今後も、これほどスムーズに意思疎通ができればいいのだがな。暗にそう思いつつも、ターニャにとってこればかりはどうしようもない。「結構な話です。…ですが、ご存知のように我々には艦艇の大規模な近代化改装が未完。国防上、出せる船には限度がありますが。」そして、淡々と実務に移ってくれる話の切り替えは歓迎すべき仕事の手際だろう。政治屋やら、インペリアル中枢やら、わけのわからん武家制度など散々非効率な地上部隊に対して、海軍のスマートさは愛すべきものですらある。まあ、国防の基本を海軍に置かざるを得ない海洋国家なのだ。その先祖であり、模範となった飯マズながらも信頼できる同盟国に並んでこの国の海軍はご飯がおいしいのに信頼できる。この点、ご飯は美味でも微妙に信頼しにくい例の国よりはよっぽどましだ。「ああ、構いませんよ。主砲さえ積んでいれば、紀伊だろうと大和だろうと、それこそ最上クラスでも構いませんので。」なればこそ無駄なやり取りよりも実務の話がしたいのだ、という意図も露わに手札を晒す。「…どういうことでしょうか。」「DDRの防衛支援です。艦砲射撃を指定座標に撃ちこめればいいので、光線級と直接なぐり合えとは一言も。」対地支援。それも、間接射撃を前提としての火力支援に限定しての艦艇派遣要望。ある意味では、最も犠牲が少ないながらも地味に貢献できるという安全な立場。同盟国の負担を軽減しつつも、一定程度の許容しうるリスクで実戦経験が確保できるというメリット。はっきりといえば、最低でも300ミリ以上の巨砲を持つ戦艦群・戦闘艦部隊に余裕がある帝国なればこそ申し込まれる依頼だ。非公式の折衝において、対BETA戦の実戦経験の必要性を訴えてあるだけに帝国海軍の派遣自体は既定事項に近い。「艦艇リストを検討させていただきましょう。」それだけに、帝国海軍軍人らからなる面々はさして抵抗を示すことなく提案された海外派兵の要望に前向きな反応を返してくれる。…まあ、訓練費用どころか、国連負担で弾薬費が落ちて比較的安全な地帯から火力支援だ。最悪でも、AL弾を投射するだけで、直接火力支援を派遣艦隊に命令することは国連とて不可能だろう。それ故に、国連と日本帝国軍の折衝は最低限度の成果をここで上げるに至った。逆説的に言えば、双方にとって最低限度メンツを保ち得るレベルでことをまとめられたという事だ。ターニャにとって、そして国連と合衆国にとって海軍と違い問題なのは地上軍。それも、いくらでも人手が足りない状況の大陸戦線と欧州主戦線に対する増援だ。「感謝を。さて、では本題の大陸派遣の件について…。」「率直に申し上げれば時期尚早もよいところでしょう。戦術機の教練すらままならないのが現状です。」この件に関する限り、国連は非常に苦労している。なにしろ、海軍艦艇と異なり地上軍は絶対的に対BETAの正面に立つことを想定せざるを得ない。そして、各国ともに自国の防衛という政治的・軍事的必要性に迫られる中で限られた戦術機部隊の国外抽出には断固として渋っている。日本帝国とて、その例外ではない。現実問題として、彼らはアジア枠が大幅に削減された77年決定により戦術機の戦力化が著しく遅滞していた。対BETA戦が恐るべき消耗戦であり、兵員の損耗が桁外れに違うと知り急遽徴兵制度を復活させたばかりの帝国軍にとってみればとても余力がない。それは、実際のところ嘘偽りのない事実だろう。普通であれば、こんな状態の軍隊など海外に派遣しろと言われるものではないし、言うものではない。…普通であればだが、今はBETA大戦というだけの話だ。最前線の国家群が直面している想定外もいいところの損耗率を勘案すれば、今の帝国軍でさえ余程恵まれた状態だろう。なにしろ、まだ徴兵制でなりふり構わず速成訓練を施し、速成教育ででっち上げられた士官に指揮されているのが前線ではざらだ。まだ、きちんとした規律・訓練を叩きこまれた専門職を多数保有しているだけ帝国陸軍は恵まれてすらいる。…とはいえ、その認識のギャップは余りにも大きいのだが。「御謙遜を。ZUIKAKUでしたか、順調に部分的とはいえ国産化をなされているほどではありませんか。」「まだまだ、よちよち歩きですよ。」こんな世界情勢が緊迫化し、今すぐにでも戦力化できるならば戦力化にリソースを投入すべき時点でのんきな武家文化?ターニャにしてみれば、生産ラインを一本でも整えるべき時期にラインを混乱させるどころか企業を酷使する専用の国産機要望など理解しかねた。運用ドクトリンの違いや、各国別事情を勘案し、多少のマイナーチェンジ程度であれば推奨したいところであるが限度がある。米国一国では、世界の需要に応じられないと考えられたからこそのライセンス開放だった。あの特許を専門に食べている弁護士だけで師団どころか軍団規模の人間を集められうる米国が、ライセンスを戦術機増産のために手放したに等しいのだ。それを、戦術機増産に励むどころか呑気に『将軍家』なる後方集団の護衛のためだけにリソースを投入?いやはや、これが、物語であると知らなければ即刻投げ出しているところだろう。お前ら、陸海別々に調達して、やらかした過去をもう忘れたのか?と。せめて、装備位共用して少しでも生産性を高めろ、と。実験機を開発するなと、自主国防に励むなとは一言も言わないが、せめて戦力の充実と国際規格との互換性を考慮しろ、と。さらに言えば、そんな呑気な道楽をやる余裕があるのであれば、米国が巻いた種子の成果を少しくらい戦局悪化も著しい欧州なり大陸なりに派遣しろ、と。「なればこそ、実戦でのフィードバックは必須、そうはお考えになりませんか?」欧州での戦訓を取り入れての新型改修機の開発、大変結構。だが、実に結構ではあるのだが、ならば人類の英知を使って生み出した機体なのだから人類防衛のために使ってほしいもの。なにより、日本帝国軍は、素質は兎も角教科書でしか対BETA戦を経験していない状態なのだ。過酷な欧州戦線なり、泥沼の大陸戦線なりで経験を積んでおくことは決して悪くはない。加えて言うならば、後退しつつBETAの損耗を最大化することを目的にできる大陸戦線と日本帝国の地理的条件は違いすぎた。…一時的に縦深を取れる大陸に対し、日本帝国の国土は余りにも狭い。狭すぎるといって良い。「こう申し上げてはなんですが、アカと共闘するのが御嫌ならば北欧戦線という選択肢も有望でしょう。」DDRが嫌であるならば、それこそ北欧戦線もありだ。山地が多く、起伏の多い地形はそれこそ日本帝国の本土防衛戦にとっても有意義な戦術的経験をもたらすだろう。極言すれば、大陸失陥後に備える上では今が貴重な予習期間なのだ。「お国の特性上、砂漠戦の経験が有意義かは微妙ですが中東戦線という選択肢もあり得ます。」だから、段々と居並ぶ参加者の表情から余裕と笑いが消えていくのを承知でターニャは白々しくも言葉を紡ぐ。中東の砂漠で動かすには、防塵加工やら何やらと現地対応改修が必要だろうが日本帝国本土防衛には利することはない。それでも、スエズ運河を死守しなければならないという条件は琵琶湖運河を防衛線として使うに際しては重要な経験たりえる。「いずれにしても、人口密集地帯防衛を念頭に置いての対BETA戦の経験は積んでおかれるべきかと。」個人的な推奨としては欧州正面であり、どちらにしても日本帝国は対BETA戦を今から経験しておくべきだろう。それが、ターニャにしてみればウソ偽りなき単純かつ自明の要請だ。同じような旨の告知を、国連を通じて加盟国の中でも後方に位置する各国へ告知すべく動いてもらっている。何も、インペリアルジャパンに限った話ではない。この世界で、BETAという脅威を身でもって知らないことには経験という高い教師に恐ろしい代価を払う羽目になるのだ。痛い経験をするにしても、それは予防接種レベルでしておくに越したことはないだろう。「事務次官補、失礼ながら我が国が前線になると?」「最悪の仮定ですが。しかし、現実に大陸が落ちればありえない話でもありません。」現状では、予断を許さない状況のソ連戦線。だが、内々にではあるがソ連がアラスカの売却を合衆国へ打診しつつあるのもまた事実なのだ。おそらくだが、コミーはすでにユーラシア大陸戦線の将来的な崩壊の可能性を直視し始めている。それ程なのだ。BETAという異星由来のお客は、合衆国の夢であったソビエト崩壊を実に単純な力技で成し遂げつつある。それでご帰星いただけるならば、それこそお土産としてユーラシアの資源をお持ち帰りいただいても一向に構わない。だがそれで御帰り願えない以上、合衆国としては地球に落ちてきた招かれざる宇宙のお客を力ずくで押し出さねばならないのだ。そして、大陸の失陥というフレーズをターニャが仮定とはいえ口にすることの意味は小さくない。日本帝国側出席者にしてみれば、それは、国連と合衆国双方の機密に通じた人間がいう『仮定』という名の想定なのだ。「お聞きしたいのですが、ソ連のアラスカ疎開。事実ですかな?」「合衆国が、アカに領土を売却するとでも?それだけはありえませんよ。」なればこそ。なればこそ、風聞にすぎないと一蹴するかに見えるターニャの回答に対する帝国側の反応は芳しくない。否。文脈を読めば、実に緊張せざるを得ないだろう。だが、少なくとも微妙に怪しげなコート姿の男だけは場の雰囲気を理解したうえで尚平然と無視して踏み込む。「事務次官補殿、アラスカにソ連が疎開する可能性をお聞きしても?」「失礼、貴方は?」「ああ、これはレディの前で失礼。しがない使い走りでして。鎧衣と申します。」ごく平然と答えて見せる物腰は、飄々としてつかみどころがないようでその実存外はっきりとしたものだ。帝国側参加者が唖然としている一瞬に、あっという間に物事の本質に殴りこんでくるあたり喰えない男というのは間違いないだろう。しがない宮仕えとはよくもまあ、言ってのけたものだ。「始めまして、ミスターヨロイ。ご質問の意図をお伺いしても?」「おや、お分かりいただけない?」質問の意図は単純だ。アラスカに疎開しなければならないほど、ソ連は追いつめられるのか?言い換えれば、大陸は落ちるのかという壱点だ。オブラートに包みこんでいるとはいえ、ことの意味を考慮すればその程度のことは誰にでもわかる話。否、その程度も分からなければ連絡会議になど派遣されないだろう。「通訳の問題でしょうか、私はお答えしたつもりなのですが。」なればこそ、外交文章は文脈を読まねばならないとターニャは学んだ。社内文章の微妙な表現を、より現実の世界はいじくりまわしているのだが、本質は同じ。語られている言葉だけが、語られている内容でないというのはいつの時代も、どの世界も、ある面では変わらない。通訳の問題だろうか、というのは一つの責任回避方法だ。ターニャは、それをかつて遠い記憶の彼方で外国人の人事担当役員が労働組合との交渉で言葉尻を捉えられるのを避けるために使っていたことを覚えている。曰く、それは通訳の問題で私の意図したことが伝わっていないので別の通訳に変えて一から双方の主張を検討したい、と。もちろん、ここに列席している軍人や外交関係者の中に英語ができない人間が一人もいないわけではない以上詭弁だ。「ええ、合衆国がアカに領土を売却するということはありえない。間違いありませんかな?」だが、その詭弁は肯定も否定も行わないという意思。それだけ明確な態度を見せられれば、少なくとも物事をミスリードさせようと考える意図がなければ意味は通じる。言葉にされたのは、『合衆国』が『アカ』に領土を『売却』しないというだけの個人的な見解。「ご不満が?機密保持に抵触しない限界での誠意のつもりですが。」言い換えれば、機密保持に抵触しない限りで、『合衆国』が『アカ』に領土を『売却』はありえないと言っているに過ぎない回答。それは、一言も直接『疎開』という言葉についてなど触れてもいない。言い換えれば、それには触れたくないという姿勢の暗示だ。だから、合衆国は少なくとも疎開を肯定も否定もせずにいるのだ。この情勢下、この状況下、疎開がありえないと否定せず、売却がありえないと否定する言葉は単純にその通りと受け取るのはまた不可能。はっきりといえば、売却以外の疎開の可能性を微塵も否定していないのだ。そして、機密の壁をちらつかせて触れない時点で、合衆国のスタンスは自明だろう。売りたくはないが、少なくとも考慮せざるを得ない程度にソ連の状況が悪化しているというシグナルだ。「いえいえ、そういうことでしたらば、大変ありがたい。」「疑問にお答えできたのであれば何よりです。」「感謝を、存外、風聞とはあてにならないものですな。」それだけに、ルナリアンの態度は単純ながらも好意ある姿勢と理解される。良くも悪くも、いろいろな風聞があるにせよ交渉相手とする程度には誠実さが期待できるのだな、と。「おや、そう言ってくれるとは。なんといえばいいのか・・・何か感謝のお返しを期待しても?」「ふむ、…まあ、またいずれ。」戦局に余裕がない状況下で、司令部に呼び出されての長距離暗号通信。はっきり言って、また碌でもない命令なり連絡だろうかと考えるのは由無きことでもない。泥水のような珈琲で眠気を吹き飛ばし、通信室へ足を運ぶジョン・ウォーケン大佐の顔色が優れないのは当たり前だった。「ウォーケン大佐、私だ。」そして、メインモニターに映るここしばらくでは予想していなかった人物。彼としては思わず『おや』とちょっとした驚きを覚えるところだった。「事務次官補、とまだお呼びできますかな?」ギリシャ失陥。アテネ要塞化を提唱し、多額の軍事予算を浪費したと内々でつるし上げられていたはずの事務次官補殿。オマケに、選択肢がなかったとはいえ難民キャンプもろとも粉砕射撃だ。公表されていないとはいえ、責任問題が押し付けられるのは時間の問題だっただろう。それだけに、罷免されているかもしれないと関係者は噂したものである。だが、ウォーケン大佐にとっては驚いたことに。「その点は問題ない。ギリシャとコミーが仲良くジャレている間に、私は無罪放免だ。偶には、シュタージも役に立つ。」「は?」「私を脅そうとしていたアホがいてな。監視されていたおかげで逆に無罪だ。DDRが人類団結に貢献したと感謝状を贈っておいたよ。」ニコリともせず、淡々と事実を読み上げるような表情で告げてくるかつての上司。まあ、冗談を理解しないわけではないのだが…この場合は本当なのだろう。そうでも無ければ、冤罪なり責任なりを押し付けられていても不思議ではない。…もっとも、別にDDRでなくとも我らがアンクルサムの長い手が監視していても不思議ではないのだが。まあ、身内よりは他所の資料の方が無実を訴えるには都合がよいという事だろう。そこまで考えれば、政官軍との関係の深いウォーケン一族ならずとも藪をつついて蛇を出したくないと考えられるものだ。「まあ、とはいえ無罪放免ともいかない。非公式には無罪でも、外交的配慮というやつだ。」「なるほど、ではどのように?」まあ、非公式にとはいえ無罪という時点で大した遊泳術だと思わないでもないのだが。「戦線再編委員会で、現地視察だ。死んで来い、ということかな。」「つまり、援軍を頂けると考えてよろしいのですね。」そして、ルナリアンのいう前線視察が単なる視察とも考えにくい。武官として補佐官に任じられていた頃、さんざん名分をぶら下げて弄繰り回していた姿を忘れるはずもないのだ。「察しが良い部下だな、君は。インペリアルジャパンが海軍派遣を『快諾』してくれたよ。おかげで、地中海艦隊から戦艦群をそちらにまわせる。」「なるほど。それで、それだけですか?」「あちこちから手駒を集めた。少しばかり、実験してみたいことがあるので君にも動いてもらうぞ。」単刀直入に告げてくる元上司。だが、元の文字が取れるのも時間の問題なのだろう。案外、ひょっとするとこの実験とやらが理由で免責されたのかな?と勘繰れるほど手際が良すぎた。「実験、でありますか?」「ちょっとした間引きというやつだな、仮説の検証実験だが上手くいけばハイヴの増設を阻止出来るやもしれん。」…いや、あるいはそうかもしれない。ハイヴの増設を阻止できる可能性がある検証実験。成功すれば、免責どころか大絶賛されうる可能性すらあるもの。今でも覚えている、あのハイヴが増設されたときの衝撃を解きほぐせるとすれば。「…ならば、なんとしても成し遂げなければ。」…あるいは、それが為せれば後退する一方の人類も足踏みが出来る程度に持ちこたえられるやもしれないのだ。「その通りだ。大佐。当たり前だが我々は勝たねばならんのだ。あんなわけのわからん異星由来のゴミどもに駆逐されてやるわけにはいかん。」「言うまでもなく。」「結構。では、またいずれ近いうちに。」あとがきちょっと導入だけで長くなってしまったので、バッサリとカット。戦力を集めて、北欧を救うよ!甲8号は作らせないさー。欧州はまもっって見せるとも!そんな、明るい人類の『勝利』をお送りする予定です。①微笑ましい、現場の交流。②未来への反抗作戦と、希望の可能性。人類は、まだまだ、戦えるよ、これからだよ、反撃するよ。という実に希望溢れる未来にご期待ください。ルートがないなら、ルートを切り開けばいいじゃない!誤字があるのでZAPしますた…。艦砲のサイズを間違うとか、大艦巨砲主義者にあるまじき失態を犯しました。真摯に謝罪するとともに、戦艦と艦砲を愛してやまない諸賢に再発防止を深く誓う所存。追記さらに、誤字修正orz反省し、今週中か、今月中には続きを投稿できるように前向きに頑張ります。トラスト・ミー (`・ω・´)