目を覚ませば
そこには
広々と広がる
鈍色の青空
ここ、どこだろう。
身体を起こし、辺りを見回す。
荒れ果てた遠い地に、見覚えのある巨大都市。
同じく遠い場所に小さな街が見える。
なんだか…。
「視線、低くない?」
じっと手を見る…って…。
「手ぇ小っさ!! つか身体ちっさ!」
ぐるりと回転し、身体を見下ろす。幼女?もしかしなくても私幼女ですね!?
あと、アソコにおわす(?)は…。
「ミッドガル様ですかーーー!?」
Oh My God!
Song dedicated to you
FF7 -貴方に捧ぐ詩・名無しのNANA- 始めこんにちは+新しい創傷治療こんにちは
「奇蹟、なんてもんじゃねぇ…!」
何と、モンスターに逢わずにカームにつけました、お母様。幼い体にはまだ長距離過ぎた草原を踏破し、出入り口の門に
もたれかかる。
エンカウント無しだから、思わず「てきよけ」のマテリアを装備してないか探したりしちゃいました。…結果は無し。
そして、何故カームかというと、ミッドガルなんかに行ったらこんな小さな子供はスラムでいろんな意味で食べられそうなので、
もうちょっと治安の良さそうなカームがいいと思ったわけです。
「さて…これからどうしようか」
中身はともかく、外ヅラはまさしく幼女であるはず…。しかも戸籍がなくて両親もいない…。
確かゲーム中では、クラウドたちはIDで電車に乗ってたよね。ID作るには多分、というか必須事項として戸籍のはず。
いつかミッドガルにいくとしたら、必ず戸籍が必要になる。
けれども、こんな小さな身体の女で、両親もいない…、圧倒的に社会に対して不利だ。
それでも、何とか生きていかければならない。
幸いここはFF7の世界っぽい。イコール、力が全てという風潮。ある程度成長して、ある程度の力があれば…
この辺りのモンスター退治でお金が稼げるはず…。ならば、まずは…。
「レベルアップと先立つもののゲットよね!」
・
・
・
取り合えず、カームへと入る。時間的に夕方から少し過ぎた辺りくらいらしい、茜色の空が少しずつ藍色になっていっている。
歩く人々の影は多いけれど、若い人はそんなに多くない。
「確か、ミッドガルに出稼ぎに行ったり。アメリカンドリームならぬミッドガルドリーム夢見て出て行っちゃう人が多かったんだっけ?」
ううん、記憶がとっても怪しい。無駄なことは一杯覚えてる脳みそなのになぁ。肝心なところで役立たずだ。いや、ゲームの内容を
しっかり覚えてる時点で常識範囲では役立たずだよネ・・・。
辺りを見回すと、見覚えのある町並みだった。けれども、やはりゲームとはちがう大きさと、民家の多さ。
「ちょっと…不安、かな?」
町の中心ともいえる、大きなオブジェのようなタンク。たしか魔晄タンクだったっけ…。
それを中心に、ぐるりと回る。やっぱり見覚えがあるようで違う景色。ちょっとの不安どころじゃないな。
それでもなんとか目立つ場所に位置しているショップらしき並びを見つける、確かレンガ階段か何かの上に何件か続きになってたような記憶がある。
記憶にあてはまるようなそれらの位置条件に、少しの安堵感を覚えながら私は高台の上に並ぶショップへと足を勧めていった。
「うっ…」
お酒くさい。
高台への階段を上ろうと近づくと、むわぁんと篭ったアルコール臭が辺りに立ち込めていた。
見上げるとそこには【BAR】の文字。ちょうどショップ並びの高台のしたが酒場のようだ。…ここ、酒場なんてあったっけ?全然覚えてないな。
あまりにも強いアルコール臭は、打ち水のように周囲にぶちまけられた液体、お酒から出ているらしい。
よくよく見れば、通路の隅に割れた洋酒ビンが転がっていた。ついでに足から血をだらだら流しているおっちゃんも。
「って!凄い量でてない!?」
一般生活では見ることのない、(といっても、死に至るほどではないほどの)血だまりがおっちゃんの足元に広がっている。
慌てて周囲を見回しても、見事なほどに人通りはない。
素人判断でも、割れたビンで足を薄く大きく切ってしまったようなのはズボンのきれっぱしからも見て取れる。
「しょうがないなぁ」
ため息を付いて、私は酒場の入り口へと足を向けた。
そこそこ見栄えのいい、栗色につやびかりする木の扉。
満を持して扉を開けば、そこは酒精の匂いが充満する「大人の空間」だった。
おじゃまします。と小さく呟き、当たりを見回す。丁度近くに座っていたオッサンが居るので、無防備っぽく近づく。
オッサンはビックリしたように此方を見たけれど、すぐさま相好を崩して笑いかけてきた。
「お嬢ちゃん、パパでも探しにきたのかい?」
オッ?アタリのオッサン引いた?
「あのね、お外でおじさんが怪我してたの。だからお水もらいにきたの。だれからもらえばいいですか?」
首を傾げ、気の良さそうなオッサンを見上げると、さらにそのオッサンの笑みは深くなって私の頭をワシワシと撫でてきた。
おおう!撫でられるなんて何年ぶりだろ。
「なんだ!お嬢ちゃんはやっさしィ子だなぁ!ウチのかかぁにもその優しさ分けてくれよ!…あー、水ならマスターにもらいな。
ほれ、奥のテーブルで酒瓶片付けてるやついるだろ?あいつがここのテンチョーさんだから」
オッサンが親指で挿した先には、なるほど。確かにマスターっぽいヒゲをつけたナイスミドラーなオジサマが酒瓶を棚へと
片付けている。
「おじちゃん、ありがとう。お水もらってくるね」
ちょっと作りすぎかなぁと思いつつ、子供らしい笑顔を浮かべてオッサンにお礼を言う。お礼は大事です。うん。
気のいいオッサンは「あんまり絡まれるなよ」と少し心配そうに手を振ってくれた。いい人だなぁ。
こっちも手を振り替えしたら、目じりがデロデロになった。
「おじさん。おじさんがますたーさんですか?」
スツールの間からちょこんと顔を出した幼女にかなりびっくりしているらしく、マスターさんもさっきのオッサンのように
目を丸くしている。けれども、直ぐにびっくりした顔をひっこめ、穏かに笑いかけてきた。
「あ、ああそうだよ。お嬢ちゃんはお父さんでも探しに来たのかな?」
「ううん、ちがうの。お外でね、お酒のビンもったおじさんが怪我してたの。だからお水もらえませんか?」
「へ?」
またマスターの顔がきょとんとしている。結構かわいいなこのマスター。
・
・
・
バッシャ。
ボトルに湛えられた生理食塩水モドキを豪快に、寝こけているおっちゃんの足にぶっかける。靴も靴下も脱がせてない。
足って意外と重たい。幼女の力じゃ持ち上げられませんでした。
じわじわと血が滲む傷口に、特にガラスの欠片も砂粒もはいっていないようで、ほっと安心して、簡単に濡れた足を拭う。
私がもらってきたのはボトル一本なみなみと入った水と少量の塩。そしてラップと包帯とティッシュ。
ボトルの中に塩を入れ、よーくまぜる。生理食塩水モドキの出来上がり。マスター曰く「お水は浄水器を通してるからきれいだよ」といわれたけれど
こっちの世界って水道水に薬とかそういうの入れてるのか分からない。なのでこのモドキで我慢するとしよう。
ちなみに日本の水道水は意外と傷口の洗浄にピッタリ。塩素とか、色々な消毒薬品が混ざってるんだよね。モチロン、水道からの流水での
洗浄じゃないと駄目だけど。
生理食塩水モドキに潤ったままの傷口を、覆うようにラップで巻いていく。そしてその上から少しきつめに包帯も巻いていく、
包帯止めはないので、ジャマにならなそうな位置で包帯をリボン結びしておいた。
「これでいいかな?」
この世界に来る少し前に私が知った傷の直し方。まだ受け入れられきっていない治療法だから、大きな病院ではやってない。
(良いこの皆は責任なしにやっちゃだめだZO☆やるなら自分相手でね)
本当は毎日清潔なラップ(湿潤フィルム)にしたりしないといけないんだけど、多分目を覚ましたらラップを剥がして消毒しちゃうんだろうな、
このおっちゃん。
勝手な自己満足に頷きながら、私はその場を後にした。
それはもう、武器屋道具屋のことをすっかり忘れて。
「あっ!?武器屋と道具屋は!?」
やっとそれを思い出したのは、ぶらぶらと路地をうろつきはじめて五分くらいたったときだった。
orz
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:あとがき:
どうも、Mです、いきなり小説を消すというトンでもマヌケミスを犯しました。
読んでくださっている方をとても驚かせてしまったと思います。
再度投稿しなおしという形ですが、またどうかお付き合いの程をよろしくお願いします。
それと、第一話がまだ5kb制限入る前に投稿したものだったので
苦肉の策(w として 二話連続(接続)でつっこませていただきました。ご了承下さい。
:前回後書き:
初めまして、Mです(読みは「えむ」)
ネタとしては「反則的主人公(ヒロイン)」と「しない善よりする偽善、しかし場合による」という
利己的精神当社比50%UPでご都合主義なドリームなお話しです。
ある程度作品がたまりましたら、所有しているHP上でもUPする予定です。
どうぞ、これからもお付き合いお願いします。
:前回後書きそのに:
追記:文中の創傷処理はあくまでフィクションとしてあげてあります。
詳しいことを知りたいなと思った方は、調べてみてくださいね。
(リンクは削除しました、コメントでのご指摘ありがとうございます)
※某少年雑誌の漫画で見たことあるネタだなぁと思った方。ビンゴですよ~。