路地を見上げれば
ガタガタといびつに切り取られた
藍色の空
星が控えめに瞬いている
やっぱりこんな幼女がこの時間歩き回っているのは見咎められちゃうので、裏路地にやってきています。
…いや、本当は道端にアイテムボックスとか落ちてないかなーとか思ったわけなんです。
先立つものはお金って言うじゃない?ねぇ?と、脳内で誰かに語りかける。誰だ。
でも落ちてるわけないよね。だってゲームでこんなエリアなかったし。
むしろリアルで考えて、アイテムぽろぽろ落ちてるほうがおかしいよね、あ。それを言っちゃオシマイか。
むしろDQの路上に落ちてる宝箱とかあからさまにおかしいから!
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-パニック幼女こんにちは+初めてのFF7関係者こんにちは
裏路地といっても、店や民家の零れた明かりが地面や壁を照らしているので、なかなか明るい。
先ほど広場で見た通り、意外と立派な魔晄タンクは、こんな裏路地からもその大きな姿を見せていた。これならこの辺りで迷っても
あのタンクを目印にすればどうにか通りには出られそう。
しかし、これ以上路地を巡ってもアイテムなんか転がってない…。私の直感がそう脳内で囁く。
さて…ほんとどうしよう。
正直この幼女の姿は本当に困る。地面とすぐにお友達になりそうな幼い平衡感覚、柔らかすぎる身体、そして最大のネック。
「何をしても何を言っても信頼されないっていうこと」
さっきのオジさんの治療のために頂いた水のボトルも、結構いっぱいいっぱいになりながら運んだし、運良く銃を手に入れたとしても
反動で吹っ飛ぶのが関の山。
圧倒的に弱者。身を守る術を完璧に持っていない。
「こまったなぁ…」
ぐぅぅ。
「はぅ…おなか空いてる」
スリスリ、と腹部を撫でていると。なぜかヒクッと喉が痙攣する。
あ、なんか。おかしい。キモチがおかしい。不安定。そういえばさっきからテンションが高くなりっぱなし。
なんでお腹空かなきゃいけないの?なんで私こんなところに居るの?なんでこんな目にあってるの?
なんで なんで なんで なんで
ああ。だめだめ、考えちゃだめ。ネガティブ思考にはいっちゃだめ。憧れの世界にこれたことを喜ばなくちゃ。
だめよだめよだめよだめよだめよ。考えちゃダメ。
-どうして?-
そうは言っても、見る見るうちに私の下瞼に水分が集まりだす。思考の奥で、ハイテンションで多い隠していた
感情が水分と一緒にあふれてくる。
考えちゃだめ、考えちゃだめ、だめ。だめ。だめ。だめ。
ふつり、と私の意識を結ぶ紐がほつれた。そして零れる私の感情。
-どうして
-どうして
-なんでこんなめにあってるの
-どうして
-なんで
-おうちにかえしてよ
-かぞくにあいたい
-ともだちにあいたい
-こわいよ
-たすけてよ
わたし。ひとりぼっち。
「えっ…あ…?え…?…いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
甲高い泣き声が路地裏に響いていく。心が錯乱して、自分自身を止められなかった。
「うるさいなぁ」
そんな冷静な思考が、乱れた私の心を見下ろしているのを感じていた。
・
・
・
「くすん…おとうさん、おかあさぁん…」
狭い路地を駆けるこの耳に、小さな子供の泣き声が聞こえた。既に仕事も終わり、あとは社に戻るだけ。(本来は直帰で構わないのだが)
つい、気が向きその路地のガラクタからかすかに響く、子供の、声を探っていく。
時折混ざる啜り声に導かれるように路地を進み、積み上げられた粗大ゴミとガラクタの塊のなかを覗く。
「すんっ…すんっ…」
小さな子供が、その小さな身体をぎりぎり隠せるガラクタの隙間でうずくまり、泣きながら眠っていた。
なぜか居ても立っても居られなくなり、その少女を抱き上げ、自分はその路地を後にした。
少女を抱き上げた男の名前はルード、強面だが小さい子供と小動物が大好きな内面ナイスガイである。
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目を覚ませば目の前に、肌色に燦然と輝く
たこちゅー だがグラサン付き。
…怖っ!
少し硬めで、スプリングの利いたベッドの上。私は目を覚ました。
そして目の前にはステキスキンヘッドWithサングラスメンが居るんですが、私攫われたんでしょうか。
攫われたんですか?ねえ!!
「ふぇっ…」
「!?」
-怖い
「ふぇぇっ…」
「お、おい」
「わぁああああああああああああああああああん!!」
怖ぇえええええええ!!ハゲ 超怖えー!
「ああッ!待て!泣くな!ほらアメだ!」
「むぐー…あむあむ」
ちょ、アメって。
アメを頂いてしまい、つい泣き止んでしまいました。精神年齢も肉体年齢に引きずられているようです。
もごもごと口の中でアメを食みながら、目の前のタコチューをしげしげと眺める。このペロキャン結構おいしいな。
ツヤッツヤのスキンヘッドに、グラサンからはみ出る強面、そして特徴的なグラサン。
え? アレ?
ルード?
目前の少女は、今だ潤んだ瞳で此方を見つめている。くすんくすんと時折鼻をすすりながら、アメを舐めている様はとても可愛らしかった。
「おじ…、おにいたん、だぁれ?」
『おにいたん』…おにいたん!? 「お兄ちゃん」って言いたかったのか?
可愛い。可愛すぎる。もうだめだ。萌える。
ぽふん。と頭に手を乗せられ、ちょっと不器用な動きで頭を撫でてくる。
彼(ルード)は私に危害を加えたり、社に不審幼女として突き出す気積りはないようだ。ちょっとホッとする。
ちょっとおじさんっていいそうになったけど、特に気にしてはないようだ。
辺りを見回すと、質素…というより実用性重視の家具・調度品。それに似合わぬ可愛いぬいぐるみやマスコットがぽつぽつと置かれている。
…彼女でもいるのかな?
その中でも特に目を引く、やたら毛並みの良さそうなチョコボのぬいぐるみ。それをじっと見つめていると、その視線に気がついたルードが
私の膝の上にそのぬいぐるみを乗せてくれた。柔らかい…。
「やらんぞ。俺のだからな」
ちょ
お前のかよ。
「おにいたんの?」
きょとんと此方を見上げる少女。小さな紅葉のような手が、ぬいぐるみのふかふかの毛皮に埋もれている。…かわいいなぁ。この丸く見開かれた目がまた…。
って、もしかして俺のようなやつがこんなぬいぐるみを持っているのがキモいのか?そうなのか?キモいんだな?そうか!そうなのか!
でも俺は好きなんだ!このフカフカの柔らかい感触とか、ウサギとか小動物のつぶらな目が!愛くるしいその仕草が…ブツブツ
聞こえてるよ。お兄さん超口に出てるから。落ち着いて
つーか何。この カワイイ生き物
ルードってこんなに可愛かったっけ。
もうやだ。萌える。ああ、身体が元の女の姿だったら今にでも押し倒しtくぁwせdrftgyふじこlp って私も落ち着け!
その後、「そんなことないよー、可愛いの大好きなのヘンじゃないよ」とひたすら慰めていました。
あー、あと。自分でも言うけど。男の趣味そんなに良くない。
それと自分が舌ったらずだったことが判明。
「お兄ちゃんっていってごらん」
「おにいたん」
「か…。(可愛い…!!)」
「うゅ?(顔真っ赤ァ!愛しいィィィ!!鼻血でそうd)」
追記:「バカ二人」
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:あとがき:
ちょろちょろっと書き足し、書き直しを加えました。といっても本当に些細なところなんですが。
:前回のあとがき:
ボクルードダイスキー(゚Д゚)
:前回のあとがきそのに:
ヒロインの名前がまだ出てきません。すみませんごめんなさい。
ヒロインの男の趣味は「自分が可愛いと思ってしまった男性」全てに適用されてしまうので
どんなにブサイクでも可愛い仕草や萌える行動をとられるとLikeやLoveに発展してしまいます。
そう、いかに顔が美形であっても、萌えなければ彼女の(ある意味)広大なクリティカルポイントに
かすりもしないのです。