意気消沈したバレットを乗せ、クラウド達はディオ園長からもらい受けたバギーを使って、ゴールドソーサーからさらに南下していく。
途中、分かれ道に突き立てられた「←ゴンガガ村 Inn&Shop」と書かれた看板を発見し、一行は補給もかねてゴンガガ村へと向った。
そこで、一行は
「あらあら、坊やもソルジャーかい?」
「じゃあ、ウチの息子をしらんかね、ザックスって言うんじゃがのう」
エアリスとティファの動きがぴたりと止まり、その顔色を真っ白に染め、ケットシーは何かを考えるようにしっぽをゆらめかせた。
クラウドは少し思案し、脳の中を探るが、その名前にひっかかりをおぼえるものの、その名をもつ人物の顔が思い浮かぶことはなく、首を横に振る。
そんな一行に、二人の老人は頷き、何通もの口が開いた封筒と、その横に置かれた写真立てを眺めて朗らかに笑って見せた。
「きっと、部署が違うからでしょうねぇ」
「まあいいじゃろ、あのドラ息子も四日前に一度帰ってきたしのう」
「上司の人にせっつかれて、最近はよく手紙も出すようになりましたしねぇ」
「「え?」」
エアリスとティファが、どこか抜けた声を上げた。
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-ゴンガガ猿の里帰り
「お袋、親父ただいぶぁっ!?」
「この親不孝もんがぁぁ!!」
Fantastic!ザックスの父親のリミットブレイク「カプ○ンキャラ並のアッパーカット」が綺麗にザックスの顎に決まった。
「あらあら、あなたったら」
「ザック、なさけなくてよ」
母親のノンビリした声と、上司である幼女の冷ややかな声が、タッチミーの干物のように大の字に転がったザックスへと投げかけられる。
「こ、この親不孝、もんが…いくら親に心配を掛けたと…」
男泣きをし始めた親に、目を回していたザックスが慌てて起き上がり、駆け寄ってその背中を撫でる。「悪い、悪かったよ」と殊勝に体を丸めて謝るその姿に、ナナは
どこかうらやましそうに眺めていた。
「私も、本当のお父さんお母さんに会いたいな…」
そうつぶやくと、ナナは開きっぱなしのドアから外に出て行った。
・
・
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ぼうっと森を見て、たまにこちらに近寄ってくるタッチミーに、お菓子の欠片を上げたりしながら、ナナはザックスの家の側で時間をつぶしていた。
「ケロロ」
「もっと?しょうがないな…」
ありがとう、と言わんばかりに目を細め、やたらひとなつこいタッチミーがナナの手から直接グミを受け取り、ぱくりとひとのみにする。
「ケロ」
ぽっこりと出た腹を撫で回し、満足そうに座り込んだ人臭いタッチミーの姿に、ナナの顔に笑顔が浮かぶ。
その背後に迫る影。素早くナナの脇に両手を回すと、ひょいっと持ち上げた。
「ふわあ!?」
「ケロケロッ」
持ち上げられたナナの靴に、タッチミーがしがみつき、そのまま一緒に連れ去られていく。
すぐに下ろされたのは、ナナの側にあったザックスの家。ナナを持ち上げていたのはもちろんザックスだった。
「で、こいつが上司かつ護衛対象のナナ・ライゼン。ちっこいくせに俺よりも口が達者で頭が回るんだぜ」
「ザック!んもう…。あらためて、ごしょうかいにあずかります。ナナ・ライゼンともうします。ザックスさんにはよくおせわになっておりますわ」
スカートの端をはたき、整えると足をそろえ、丁寧に頭を下げる。その姿に、ザックスの両親が感心したようにため息を吐く。
「これは、しつけの良いお嬢さんだ」
「うちの小猿とは大違いね、うちの子が小さかった頃なんて、今よりも大騒ぎだったもの」
「ふぅー」とため息を深く吐きながら、二人のまなざしがザックスへと突き刺さる。その視線にぶーたれながら、ザックスは「どうせしつけがしみこまねえ猿ですよ」と
悪態を吐いた。
そこにナナのフォローが入る。
「でも、あかるくて、いつもたびのあいだにはげまされていますわ。そういうところは、とてもたすかっています」
「…………おぅ」
小さな肩を下ろし、微笑むナナに、思わず照れくささからの反論も出来ず、ザックスは後ろ頭をぼりぼりとかきむしった。
その姿に、両手を腰に手を当て、ナナがザックスを見上げる。
「あら、ほんとうにそう思ってるのよ?」
ペロッと舌を出し、靴にタッチミーをひっつかせたまま、ナナは自らも照れくささを感じ、顔を少し上気させながら家の外へと出て行ってしまった。
また、どこか居心地悪そうにするザックスに、両親の声がかかる。
「しっかりした娘さんだねぇ、まだ五歳くらいだろう?」
「もうちょっと大きかったら、結婚を勧めたいくらいだねぇ」
「おいおいおいおい…」
こいつら、あいつが俺の上司だっての忘れてねぇか…?と思いつつ、パンパンと手を叩いてザックスは両親の意識を自分へと向けさせた。
「んで、あいつの行き先の途中でこっちに寄っただけで、また行かなくちゃなんねーんだ。悪ィ」
「なんじゃ…また寂しくなるのぅ」
「だから悪いって、仕事ぜーんぶ終わったらさ、長期休みくれるって言ってるし…そんときまた来るよ。むしろ、俺が呼んでもいいしさ」
「そうか、じゃあまた連絡よこしなさいよ、あんたはただでさえ筆無精なんだから…」
その言葉に安心したのか、母親の表情から不安の色が消え、すぐさま母親らしいお仕置きタイムへと移行する。そのまなざしが指す物は、自分たちと
目の前の息子が写った写真。そして、その横に置かれた数通の手紙。
「“上司に言われて…”って書いてあったわよね、まったく。あのこに言われるまでほとんど手紙を出さないなんてどういうつもりなの!?」
「えー、いきなり説教かよぉ」
・
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「ねえ、タッチミー」
「ケロ?」
「本当はね、こんなコト、あるはず無かったの」
「ケロ?」
「本当は、あの丘であの人は死んで、ここで主人公達が初めてあの人の名前を聞くの」
「ケロ…」
振り返り、窓から騒がしい叫び声が聞こえる民家をまぶしそうに眺め、足下のタッチミーを見下ろし、しゃがみ込んだ。
「でも、ああいうのみると…“変えて”よかったなって思うよ」
「ケロッ!」
『ナナ…』
ずっと黙っていたスカビオサ・ジェノバがいたわるように囁く。本来なら、ジェノバ因子が無い、もしくはジェノバが聞かそうとしなければ聞こえないハズの声。けれど、
足下のタッチミーがきょろきょろと辺りを見回す。
「大丈夫、小母様。…このタッチミー、小母様の声が聞こえるみたいですね」
ナナはタッチミーを掌の上に乗せ、左の髪飾りへとタッチミーを近づける。
『ナナ、怖がっちゃうでしょう?ダメよ』
「ケロロ」
しかし、タッチミーは恐れも抱かず、不思議そうにスカビオサ・ジェノバの花弁をつついた。
『あ…』
「怖がらないみたいですね。らんぼうじゃない人が判るんですよ、きっと」
「ケロッ」
“花が喋っている”ことを確認したタッチミーは、ナナの掌からひらりと飛び降り、興味なさげに森の中へと潜っていってしまう。
「あら、仲良くなれたとおもったんだけどねぇ」
『残念だこと』
「まあ、お友達はハニーだけでいいですよ」
苦笑いを浮かべ、肩をすくめて森を眺めるナナの後ろに、金色の羽毛が近づく。
「クェ?」【俺がなんだって?】
「なんでもないよ、ハニー」
「ボス、補給が終わったぞ」
「ありがとうヴィンス、今日はこちらでお世話になろ?」
宿屋もあることだし、と笑い、頷くヴィンセントを連れて歩き出す。ルクレツィアと宝条の二人は、村から見える魔晄炉を眺めながら、なにやら議論中だった。
「ふたりともー!きょうはもうここでやすもー!!」
ナナの声が、静かな村の中に響き渡った。
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あとがき:
アリエナス筆頭 ザックスの里帰り。…あれ、ザックスの親ってあれでいいんだよね?祖母だっけ?祖父だっけ?まあいいや!(ダメっこ
マテリアは、ヴィンセントとザックスに装備させて「子供出来てくるまで帰ってクンナ」でアイシクルエリア行きチケット握らせてるよ!鬼だね!