まなこをひらけば
すすけた木目の天井と
騒ぐ子供たちの声
そして、新しい私の家
「知らない天井だ…」
EVAネタ分かるやつがこの世界にいたら凄い。
はい、こんにちは。孤児院デビューを先日華々しく行いましたナナちゃんです。のっけからEVAネタですみません。生きててごめんなさい。
逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。
それはトモカク、昨日この孤児院に入所したわけですが、治安は良さそうだし、周りの地域の人もかなり優しいようです。ラッキー。
で、だ。
「冒頭は孤児院だったのに、何故今またここにいるのか問いたい訳です・ガ!」
神羅ビルの中心で理不尽を叫ぶ。シラチュー?
それは置いておいて、まー、何て見晴らし良いのかしら。この間のタークスの部署よりもあからさまに上の階。
・・・自殺したくなる。
などと素敵妄想まっしぐらしていたら、後ろの自動ドアが開く音。顔を幼女っぽく笑顔に!笑顔に!
そしてふり向き、白衣を着たメガネメンに首を傾げる。
「だぁれ?」
扉を開けた先には、すすけた服を着た少女が窓ガラスに張り付いていたのが見えた。「だぁれ?」と振り返る様はとても愛らしくて
思わず頬が緩む。
「申し訳ないね、お嬢ちゃん。もうちょっとあのおじさんの検査が済むまで待ってもらえるかな?」
「うん。…ねえ、おにいたん。あのおじたんいたそうにしてたよ?うんうんいってたよ?だいじょうぶ?だいじょうぶ?」
舌足らずの唇から出るのは、見も知らぬ場所につれてこられた恐怖の言葉よりも、この子が見つけた人の心配だけ。
優しい子だな。
この少女がこの神羅に連れてこられたのには訳がある、この子が見つけた人物は、神羅軍大佐アゴス・ライゼン。
珍しく市民受けのいい軍人と噂の恰幅の良い軍人だった。
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-知らないイノチこんにちは
――昨日未明、神羅軍の車両が2番街でテロリストに襲撃されました、
其の場でテロリストたちは逮捕され、とくに死傷者はないとの事です。では、次のニュースで・・・――
お兄さんからもらったモーニングプレートをもぐもぐと食みながら、備え付けのテレビを見つめる。
報道規制掛かってるだろうから分からないけれど、多分けが人はいないっぽいなぁ、昨日見てた時点でもいなかったし。ヨカッタヨカッタ。
先ほどお兄さんが説明してくれた経緯はこうだった。
2番街で神羅の官僚たちが乗った車がテロリスト(アバランチじゃないらしい)に襲撃される。
なんとか官僚達は逃げたけれど、追撃していた神羅兵と、その上司であるアゴスって人が路地で不意打ちを掛けられてピンチに。
そして正義の味方ナナ仮面が颯爽と登場。・・・ごめんなさいウソです。私が乱入し、なんとか助かった。
ということらしい。
流石に普通だったら幼女が靴下脱いで、落ちてる鉄くずや小石つめて振りかぶって攻撃してくるなんて思わないヨネ☆!
テヘ!といい笑顔を浮かべたら、後ろでなにやらノートパソコンをカタカタしてたメガネメンことお兄さんが「?」と怪訝そうに見てきた。
乙女の笑顔は高くてヨ?
ふいに顔を上げると、窓ガラスに此方が見惚れるような、鮮やかな愛らしい笑顔を浮かべた少女が写り、それに笑みを浮かべて返す。
にこにこ にこにこ にこにこ
そうこうしているうちに、軽い圧縮音と共に自動ドアが開き、頭と首に包帯を巻いた恰幅のいい軍人、アゴス・ライゼン大佐がやってきた。
「君が、あの夜のときの子だね?」
「うゅ?」
ほっぺたにケチャップとスクランブルエッグをつけたままの少女が大佐を見上げる。
「・・・」
ああ、可愛い。…大佐、ちょっと頬がユルユルピクピクしてますよ。
「あっ!ゆうべのおじたんだ!おけがだいじょうぶ?だいじょうぶ?いたくない?」
見覚えのあるおじさんが部屋へと入ってきた。多分昨夜のおじさんだ。
思わず駆け寄り、下から顔を見上げていると、おもむろにほっぺたに手を伸ばされグイグイと拭かれた。
「スクランブルエッグがついていたよ。…私が夕べ君に助けられたラゴス・ライゼンだ。助かったよ。ありがとう」
おじさんは私の前に跪き、わざわざ目線を下げて頭を下げてくれた。…って軍人ってこんなに腰低いモンですか!?
「いいの!えっとね、たすけたかったからたすけただけなの。おけがいたくないなら、ナナちゃんそれでいい」
かぶりをふって、おじさんの手にそっと手を添える。むぅ、おっきいなぁ。
こげ茶の瞳をした少女が、何の打算もなく、いや、この年齢ならば打算など存在しないだろう。
この無骨な手を握り締め、此方を見つめる小さな瞳がきらきらと蛍光灯を写していた。
「それにしても・・・君は凄いな。どうやってあんな攻撃ほうh むぐっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
此方を心配そうにみていた少女は一転して動揺し、此方の口を塞いできた。
「…言っちゃメっ!」
「ナナちゃん、おんなのこなのに、おしとやかさんしてなかったから。おてんばしてたのひみつなの!」
あぶねぇー、またしてもアヤシイ幼女にランクダウンの危機でしたよ?今も十分ピンチっぽいけど!
それよりも…、孤児院の先生達心配してるだろうなぁ。どうしよ。
「ふむ…」
そんなことに思考を割かれていた私は、面白そうに顎を撫でて私を見下ろすアゴスのおじさんの目線には気付いていなかった。
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手をふった先には
涙目になって走りよってくる
出来たばかりのルームメイトと
孤児院の先生
「しんぱいかけて、ごめんなさい。ただいまぁ~!」
アゴス大佐と手をつなぎながら孤児院に帰宅です。
あと、何人かの神羅兵さんたちも一緒です。皆話しかけると意外と気さくで楽しい人たちでしたよ!
おかしくれたし。(餌付け…!)
「まぁまぁ…そんなことが」
院長先生と担当の先生が、私の肩を抱いて頭を撫でてくれている。怖い思いをしたんだと思われてるのかな?
ぜんぜんしてないけどな!
大佐とテーブルを向かい合わせで挟んでソファに座り、先生達の間に挟まって大人たちの会話を聞く。
子供には難しい話だとおもわれているのだろうけれど、それはそれ。中身が良い年したおねいちゃんですからね!
ばっちりわかりますよ?
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-急展開が続く日々よこんにちは
まず、前回はとくに説明をださなかったけれども、何故私が「例の事件」に居合わせたのか。
それは「はじめてのおつかい」をしていたからだ。
孤児院のものと分かるバッジをつけ、トコトコとカゴをもって歩いていれば近所のおばさんやおじさんは
「おつかいがんばってね」と声をかけてくれる。これが心の豊かさか!と感動していたら、帰り道に路地に逃げ込んだ
大佐たちとテロリストに遭遇ってとこだ。
あー、そういえば買い物カゴ煤だらけだよ。さっき先生にカゴを渡したけど、中身煤まみれになってないといいなー、
中身はパック詰めの小麦粉だから大丈夫だろうけどね。
「それで、ご相談が少々ありまして…」
「はい?」
説明と感謝の言葉、そして「感謝の気持ち」として数十万ギルの受け渡し。それが終り、ふっと無言の時が通り過ぎて
それをきっかけに大佐が切り出した。なんだろう?
院長先生たちに向けていた視線が私に降りて、私を見つめ、微笑みながら大佐は言った。
「ナナちゃん、ナナちゃんがよければ。私の娘にならないかい?」
「ふぁゅ!?」
いきなりの発言に、先生達も流石に目を丸くして、私と大佐を見比べている。
「け、けれどもアゴスさん。ナナちゃんはまだ孤児院に来て一週間も経っていません。それに…」
「ナナちゃんは記憶喪失なんです」
「記憶喪失、それはまた…」
「詳しいことは今は言えませんが、精神にショックを受けた。そう伺っております…」
院長先生の暖かい掌が、やさしく私の肩を抱いた。優しい先生だなぁ、ほんとに。
「ですので、いくらアゴスさんが出来たお方としても。今不安定なこの子の親とするのは少々、こちらとしても不安があります…」
実際、ああやってオジさんが襲われていることもあって、無事といえる日常を送ることはあまり無いかもしれない。
けれど、このアゴスさんについていけば、ちょっと卑怯だけれども「大佐の娘」という一定の権力は持てる。
私の脳裏に、そんな考えがいくつも駆け巡っていく。
ただの孤児と、権力ある軍人の養子。そのどちらかに発言権があるのかといえば、明らかに後者が有利。
それに正直言って、まだあまり慣れきっていないこの孤児院を去ったとしても。私は特に心が痛むことも、寂しさを覚えることもない。
「オジたん」
ずっと黙っていた私が声を出したことに、三人がその視線を私へと向ける。
「オジたん、オジたんがパパになるなら。ママは?」
三人の瞳が見開かれ、私の両端を固める院長先生たちがどうしたのかと見下ろしてきた。
「お恥ずかしながら、所謂バツイチと言われるものでね。妻は病で10年ほど前に亡くなったよ」
「…ごめんなさい」
聞かされた事実に、思わず俯く。
「いや、いいんだ。あれが残した日々は私の中に残っている。孤独でもないし、悲しみもない。ただあの暖かな日が思い出されるだけだ」
そういって、アゴスさんは少し強面の瞳を細め、私の「むこう」にある過去を眺めていた。
きめた。
「せんせ、いんちょーせんせ。ナナちゃん、アゴスオジたんの子になりたい」
権力も財力もコネも魅力的だけれども。
ゲームの中に存在しなかった、今ココに存在するあなたの魂と瞳が、私を誘(いざな)った。
「この人を義父として、共に歩んで生きたい」と唐突に思った。
「いいのかね?」
「オジたんこそ、ナナちゃんがむすめでいいの?」
そう聞くと、アゴスさんは無骨な手を伸ばし、私の頭を撫でてくれた。
「いや、とてもうれしいよ。君となら、私はまた歩けるかもしれない」
ああ、この人はひとりぼっちだったんだ。
奥さんに先立たれて。
ひとりきりになって。
そして。
私に興味を持って。
私の中の孤独を見つけてしまった。
立場は違えども、私たちは孤独で。そしてお互い支えあうことができるのかもしれない、そう思った。
不思議と微笑が浮かんできて、ほっぺたがゆるゆるしているのがわかる。
うれしいのかかなしいのかよくわからなくて、ほそまった自分の目が水分で揺らぐ。
「パパ」
本当のお父さんは「お父さん」
そして、この世界の私の本当のお父さんは「パパ」
「なんだい、ナナ」
「パパ」
「ナナ」
笑いながら泣いて、テーブルごしに手をのばす私を見て。先生と院長先生は、ちょっと複雑そうに笑っていた。
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後書き:ハイテンションに磨きが掛かった主人公でした。
初のオリジナルキャラクター(名前あり)の「ラゴス・ライゼン」さんです。今後ナナにとっての○○になるわけですが
それはまたのおたのしみ~ということで。
追記:かゆ・・・うま・・・
後書き:お久しぶりでごんす。(わぁ、台無し)
あれ?新人教育に、五ヶ月かかってるよ?空ろな眼差しになっちゃうよ?
というわけで、久しぶりの投稿です、覚えてらっしゃる方はいるのかしららら。
急展開、アゴスおじたんはナナの○○=養父となりました。
これから神羅のメンバーとの親睦を深めていくことになりますが、一番の仲良しが
宝条博士になりそうな予定ってどうでしょうね!
それでは、またそのうちお会いしましょう。