目の前の機械に満たされた
薄桃色のひかり
星の命に満たされた
人に切り刻まれた旅人
「じぇーのーば」
幼い少女がドーム状の機械に印字された文字を読み取り、その声に猫背の男が振り返る。
「ああ、それが気になるのか?よい感覚をしている、…それは人類が見つけた宝だよ」
「たらかもの?」
少女は舌が回らないようだ、即座に男がゆっくりと訂正する。
「たからもの」
「たからもの!」
「ウム」
男は鷹揚に頷いた。
宝物じゃなくて、アンタたちは災厄って呼んでるじゃんかYO!(ラップ的ポージング付で)と突っ込みたくなるのを、少女は我慢していた。
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- ほーじょーせんせ、こんにちは
「パパ!」
勢いよく駆け寄り、ちょっと脂肪に包まれて柔らかなおなかにジャンピング飛込み。そして即座に抱き上げられる。
「ナナ、もう幼稚園は終わったのかい?」
「うん!あのね、せんせぇがね?「ナナちゃんは飲み込みがはやいね」ってほめてなでてくれた!」
正直通うのが苦痛だけどな!
「そうかそうか」
大きな手が帽子越しに小さな頭をなでる。
「えへ、えへへへへへ」
黒いワンピースに、ちっちゃなベレー帽を頭に載せて。胸に赤いチューリップのバッヂは忘れずに。
つやつやのストラップブーツで、とんとん、と地面を突付く。
毎日繰り返されるそのほのぼのとした軍人と子供のやりとりは、最近では神羅の時計代わりになっていた。
「それじゃあ、ナナおうちにかえるね。パパ、きょうはね?おばちゃんとね、ポテトサラダつくるから。たのしみにしててね!」
「それはおいしそうだ、でもパパにんじんが苦手だなぁ」
「だーめ!すききらいはいけませんっ!だよー?たくさんいれちゃうんだから」
「わかったわかった、残さず食べるよ。…じゃあ、気をつけて帰りなさい」
「はぁい!」
愛らしいやり取りに、慣れっこになっている受付のお姉さんが、そらもう穏やかなまなざしで見つめてくる。めろめろですか?私に!
かわいいなんてそんなこと、言っちゃダメです。 こんにちはナナです。
幼稚園に通うことになりました。つか、もう通ってます。
苦痛。
だって周りちびっこなんだもんついていけないんだもん演技力が高いけど流石にねぇ・・・誰か助けて下さい!(人形を抱いて)
あと一番苦労してるのは「お絵かき」とか「もじ」とかペンを使うやつね。うっかり綺麗に書きそうになるから、利き腕じゃない左手で
行動しております。苦痛。
にこにことこちらを眺めていたお迎えに来てくれている家政婦さんに手をふる、帰ろうよ~と声をかけようとすると、
人とすれ違いざまにカチャッと落下音がして、丈夫そうな布袋が足元に落ちていた。中に硬いものでも入ってるのかな?
拾い上げた袋を抱いていると、こちらに近づいていた家政婦さんがしゃがみこんで袋を見つめている。
「あら、ナナちゃんそれは?」
「わかんない~。だれかおとしてった」
袋越しに中身に触れると、ガラスや金属の塊がカチャカチャと揺れる。ひっくり返すと、そこに印字されているのは「実験未処理サンプル
第24期プレート 宝条グループ」宝条…宝条…宝条!?
「え、子供?」
「おとどけものなのねー」
広域利用のできるカードキー。それを首から提げた子供が、見覚えのある袋を掲げている。
「えっと、ほーじょーはかせさんに、落し物のおとどけなの」
はいっていーい?と首を傾げられ、思わず頷くと満面の笑顔を浮かべて子供は研究室の中に入っていく。そして振り返り。
「けんきゅーいんのおにーさん、ほーじょーはかせさんは、どこですか?」
はじめてくるところだから、わかんないよ~。とつぶやき、薬品でささくれ立った自分の手を握った。
-研究一辺倒だった最近、小さく暖かなその体温に。家に帰れず、実験はうまくいかず、すさみきった自分が
ちょっと癒されて泣きそうだったのは秘密である。-
-ある青年研究員の日記より抜粋-
-青年視点-
「何で子供が」「かわいい!」「あいつの親戚?」などと仲間たちがさざめく。自分の手を握り、決して狭くは無い研究室を練り歩く少女に
異様な雰囲気があたりを満たしている。
「宝条博士なら、奥の主任室に居るはずだから。そこまで一緒に行こうか」
「うん!」
興味深そうに研究室の棚に並ぶ薬品実験物ホルマリン漬け。
しかも少女はホルマリン漬けを指差して、鼻高々に「ほるまるんづけ、しってるよ!」と笑った。
「ぼーふしょり、こてーしょり?なんだよね!」
えらいでしょ!と胸を張る。
「あとねーあとね、きか?くうきになるとホルムアルデヒドになっちゃうんだよね?」
「本当によく知ってるんだねぇ…大きくなったらウチ(研究課)にくるかい?」
「んー、かんがえとく!」
大人びた、顎に指を当てる仕草が“おしゃま”で、とても可愛い。そんなこんなで、少女の歩みに合わせてゆっくりと、主任室の扉へと
近づいていった。
「ここが、ほーじょーはかせさんのおへや?」
「そうだよ、確か昨日大きな実験は終わったから…今は何も実験の予定が入ってないはずだよ」
少女が少し不安そうにこちらを見上げる。
「おじゃまじゃないかなぁ」
「大丈夫だよ」
僕も居るから、ね?と肩を叩き、扉をノックする。
「僕です、少々よろしいですか?主任」
数秒の間ののち、人が動く気配。そして。
『ああ、君か。かまわん、入りなさい』
「失礼します。ほら、君も」
「えと、失礼します」
ドアを開けた先にいた主任が、その胡乱な目を大きく見開いて、僕のとなりに存在する小さな女の子を見つめていた。
しかし、直ぐにその目は戻り、ゆるゆるとこちらを見直した。
「そこの子供は…アゴス大佐の娘さんじゃないかね…?」
「えっ!?ええっ!?き、君そうなの?」
思わず身構えて少女を見下ろす。そして「うん」と頷いて、片手に抱いていた袋を頭の前に差し出した。
「ほーじょーはかせさん。おとしものです、とどけにきました」
その袋の下から顔を覗かせ、「えらい?」と上目遣いで見つめる少女はとんでもなく可愛かった。ああ、妹欲しいなぁ。
・
・
・
おおお、宝条さんですよ!マッドですよ!魔晄ジュース!!ですよ!?
目の前にある意味憧れの存在がッ!
あのヌルリツルリとした戦闘体型に惚れてます。ああいうスレンダーなモンスターに弱いんですよ。かっこいいよねアレ。
あと鬼畜ぶりも大好きですよ?イヤッハー!
もちろんコレは心の中での叫びですよ?ですよ?ですよッ!
-宝条-
「ふむ、ありがとう。……まあ、急ぐわけでもないだろう?すこし、ゆっくりしていきなさい」
「え?でも…」
「ああ、君。確か誰かココアを持ってきてただろう、入れてあげてやりなさい」
うろたえる少女を無視し、この場につなぎとめる。
目の前の幼い少女が、アゴス大佐を救い、ゲリラを撃退したという噂。それを本物なのか知って見たかった。
(なあ?ジェノバよ)
こんな幼い少女が、ソルジャーになれたら。いや、なれずとも近しい存在に慣れたら
それはとても おもしろくないか?
「くっくっくっくっ・・・クァックァックァッ」
「……。(おお、生クァックァックァッだ)」
「おお、これは失敬。クックック…」
「いいえー」
いいもん見させてもらいました。(生笑い)
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後書き: 顔文字がすべて吹っ飛んだ。