第十話 リア充って、実は凄くね? 長い階段の途中で、それを仰ぎ見るようにした時の長谷川の反応は、かつての美砂と同じであった。 まるで別世界にでも迷い込んだような、不思議な感情が胸に灯る。 近代とモダンの融合した麻帆良から、古き良き日本を体現した世界へ。 青々と晴れ渡る空をバックに立つのは、和装木造のひかげ荘であった。 耐震構造、なにそれとばかりの古い古い建物。 まさかと言う気持ちで来た長谷川は、そのまさかを目の前に茫然としていた。「長谷川、こっち。早く」「待て引っ張るな、衣装ケースが。それに普段運動してねえから、息が上がって」 美砂に案内されひかげ荘へとやって来た長谷川が、旅行鞄を片手に引っ張られる。 階段は一本道だが、こんな所においていかれては異次元にでも迷子になりそうだ。 階段の長さ故に、それと春の陽気に少々の汗をかきながら上っていく。 そして見えてきた一階の玄関部分を含くめ、改めてひかげ荘の全体図が瞳に映った。 年月を経て黒味を帯びた木目、やや傾いて見えるのは気のせいか。 この麻帆良で瓦屋根の家など、一体どれだけ残っている事か。 それに加え、個人の持ち物としては大きな、山一帯そうだというのだからとんだ土地持ちだ。 季節柄、桜の花びらでさえ風に吹かれて、山の何処からか飛んでくるぐらいである。「マジで、これあの乙姫先生の持ち物かよ」「正確には先生のお爺さんの持ち物だって。でも、いずれ先生が貰うんじゃない。確認した事ないけど」「おい、て事はあの先生、何気に玉の輿じゃねえのか?」「あ、言っておくけど好きになったのが先。教えて貰ったのは付き合ってから。その証拠に、クラスのほかの誰もこの場所の事を知らないでしょ?」 失礼なといいたげな視線にさらされ、素直に悪いと長谷川が返した。 しかしながら、そう思っても仕方ない程にインパクトがあるのだ。 いくら金を積んでもおいそれと買えない雰囲気が、このひかげ荘にはあった。「あと、アッチに湯気が見えると思うけど温泉もあるよ」「外で湯気が見えるとか、まさか露天か。こんな場所を二人きりでとか、どんな贅沢だよ!」 簡単に説明を受けつつ、驚きの連続で突込みが忙しい。 あの冴えない先生がと、改めて玉の輿過ぎるだろと心で呟きつつ玄関を開ける。 これは和装のコスプレに栄えると、早くも撮影に心を奪われそうになったのだが。 出迎えたむつきを見て、あっけにとられ、それはもう盛大に引いた。「お願いします。美砂との関係はなにとぞ、秘密に。美砂、お前も頼めこの野郎」 女将のお出迎えじゃあるまい、玄関先での見事な土下座であった。 頭を下げながらふるふると震えており、なんとも玉の輿以上にインパクトがある。 良い年した教師が、生徒でもある女子中学生に土下座など。 謝罪は真剣そのものだが、何処か滑稽で、そういうプレイかと聞きたくもなった。 ただ、一応世間一般的には犯罪を犯している自覚はあるようで、安心もした。 念の為にと、護身の為に隠し持って来たスタンガンは不要そうだ。 中学を卒業したら正式に付き合い、高校を卒業したら結婚という言葉にも多少信頼が持てる。「先生、長谷川は約束してくれたから大丈夫」「本当に気をつけてくれよ。はしゃいで口を滑らせるとか。あっ、泣けてきた」「よしよし、大丈夫大丈夫だから」「くそっ、問題を起こした張本人の手なのに。悔しい、でも甘えちゃう」 土下座の格好から飛びつくように美砂に抱きつき、そのお腹にぐりぐりと顔を埋める。「なんとなく二人の関係が見えてきた。先生はやっぱ、まともな感覚だ。柿崎、お前はもっと危機感持て。見ていて可哀想だぞ」 鼻をずるずると鳴らすむつきを慰める美砂を見て、長谷川はそう突っ込んだ。 はしゃいでうっかり口を滑らせたりと、美砂の方がよっぽど危なっかしい。 一先ずむつきを安心させるように、長谷川が喋りません秘密にしますと宣言した。 それからようやくむつきも少しは冷静になれたようで、二人を管理人室に案内する。 少しずつ、色々と持ち込んだお蔭で家具も増え、コタツテーブルにお茶を三つ用意した。 特にその内の一つ、長谷川の分は慎重にゆっくりどうぞとむつきが差し出す。「割りとお高いお茶をご用意させていただきました。決して粗茶などではないので」「何処まで卑屈なんですか。まあ、正直……二人が付き合おうが、ナニしようが構わないですが」 お茶を一口飲んでから、まず長谷川がそう切り出した。 というか、出さざるを得なかった。 まだむつきは顔色が悪く少々挙動不審で、美砂は慰めるのに忙しい。「経緯だけ、話してもらえませんか。じゃないと、安心してここ使えないんで」「長谷川、ちょっと話し方が堅くない?」「やかましい、外ではこれがデフォだ。まがりなりにも教師の前ではしゃげるか」「ふーん、まあいいや。じゃあ、私と先生の馴れ初めを」 うきうきと、仕方ないなと照れ照れ笑う美砂を当たり前だが長谷川が止めた。「待て、乙姫先生が説明しろ。お前のは経緯とかじゃなくて、ただの惚気だから!」 リア充の惚気程苦痛なものはないと、断固拒否の構えであった。 ご指名を受けたむつきは一瞬びくりとしたが、直ぐに居住まいを正していた。 美砂は多少不満そうだが、むつきの口からでもと楽しそうに耳を傾け始める。「先々週になるか。美砂が、元彼とデートしてた土曜の夜の事だ」 むつきはぽつりぽつりと、裁判所の被疑者の告白のように神妙に語り出した。 とても馴れ初めなどと、甘酸っぱいお話をするような雰囲気ではなかった。 美砂が元彼に強引に迫られ、逃げ帰り駅で泣き崩れたまま終電を逃したのが始まり。 それをむつきが見つけ、方々へと連絡しビジネスホテルへと連れて行った。 様々な注意をして部屋に放り込んだしばらく後、美砂が酒によって突撃して来た。 むつきも疲れていたので酒宴で愚痴を聞いてやったのだが。 美砂がセックスしたいのかとむつきに聞いたり、話が妙な方向に流れ出してそのまま。 酒に酔ってむつきと美砂が一夜を共にし、そのまま付き合うことになったと。「こんなところですが」「つーか、先生の一方的な主観の割りに反論がないって事は概ね事実だと」「概ねじゃなくて、全部事実。一つも嘘はなかったよ」 美砂の言葉が何処まで信用できるかはともかく。 嘘がないと仮定すると、と長谷川は聞かされた内容を胸の内で反芻する。 そして、なんだか思っていた事と随分と開きがあったとあきれ口調で言い放った。「これ、先生悪くなくね?」「はっ? いやいや、それはないだろ」 当然、思ってもみない長谷川の言葉に、むつき自身が反論していた。「俺は教師で、美砂は生徒で。今は好きで付き合ってるが、襲ったのは事実だぞ」「まあ、世間一般的な意見ではそうですが。擁護のしようがないぐらい、柿崎がなあ。忠告を無視して元彼の電話に出る。勝手に酒に酔って、若い男の部屋に突撃。愚痴を聞いてもらって、アレをしたいのかって聞いたり。これ、明らかに柿崎が誘ってます」 ほんの少しぐらいそう思っていたのか、むつきが押し黙る。「柿崎、お前本当にもっとしっかりしろ。さっきも言ったが、世間一般的には先生が悪人だ。クラスの奴らにばれたら、先生は音速で豚箱行きだぞ」「美砂、俺からももう一度頼む。俺だってお前と付き合えて、舞い上がる事もある。だけど、今の関係は本当に綱渡りなんだ。もう少し、注意しような?」「うん、ごめん先生。長谷川も、はっきり言ってくれてありがとう。先生、ずっと俺が悪いって私の事をなんでも許しちゃうから、甘えちゃって」「ま、まあ……私は平穏な学生生活が送れればなんでも良いけどな。勝手に二人でよろしく、やってくれ。それよりも、口止め料の件」 それは長谷川が二人の秘密のアイランドである、ひかげ荘に案内された事を意味している。 長谷川自身は、ネットアイドルという弱みを握られ、お互い様だと思っていた。 ただむつきの方がそれでは安心できず、美砂の反対を押し切って案内させたのだ。 寮は寮で、自分のスペースがあるが、やはりある程度の自重は求められる。 だがこのひかげ荘ならば、二人が休日にセックスに励むように、自重はいらない。「美砂、長谷川を上に案内してやってくれ。部屋は何処をどう使ってくれても構わない。欲しいなら、合鍵だってくれてやる。管理人室は、俺がいない時は立ち入り禁止だが」「好きにって、結構広いぞこの建物。ま、まさか……三階部分ぶち抜きで使っても?」「ああ、いいぞ。むしろたまに来て空気を入れ替えてくれるなら頼みたいぐらいだ。一人で全部管理するの、結構大変なんだ」「長谷川、こっち。案内してあげる。先生は少し、ここで休憩してて。まだ顔色悪いよ」「誰のせいだと思ってやがる、この野郎。この一週間、気が気じゃなかったんだよ」 本当に顔色は悪く、頬もどこかげっそりした印象を受ける。 むつきが言った通り、この一週間はずっと調子が悪そうでクラスメイトから随分心配もされていた。 男は常に若い女を求めるらしいが、これはこれで大変そうだと長谷川は思った。 特に普通の男女ならまだしも、教師と生徒なのだ。 自分に関係がばれてから、むつきがどんな眠れない夜をすごしてきた事か。 直ぐに自分には関係ないけどと、心の中で切って捨てて考えもしなかった。 そんな事よりも興味があるのは、ひかげ荘の自由使用権である。 これだけの広さ、それこそワンフロア全部使ってもとは豪胆すぎると思えた。 実際は豪胆ではなく、それだけむつきが暴露に脅えているともいえるのだが。 管理人室を出て、美砂の案内に従い改めてひかげ荘内を歩いていく。「こっちが階段、使い古されて角が丸まってるから気をつけて」「これまた年季の入った。撮影の夢が広がるじゃねえか」「長谷川のクローゼット、衣装でぽんぽんだったでしょ。ここなら、いくらでも置き場に困らないから。嬉しいでしょ」「まあな。ただし、勝手に私の衣装をナニに使うんじゃねえぞ。マジ、切れるから」 また強引に頼み込まれるかと思いきや、分かってると意外とすんなり受け入れられた。 迂闊な暴露でむつきを脅えさせた事を少しは気に掛けているのか。 だからリア充の事など逐一気に掛けるなと、長谷川は自分を叱咤しつつ、最上階である三階へと辿り着いた。 あまり掃除は行き届いていないようで、埃の塊が見える事もあった。 それでも左右に広がる廊下や、襖の数々と部屋の多さ、広さには顔が勝手にニヤけてしまう。 寮の部屋という限られたスペースでチマチマやりくりする事から一気に解放される。「柿崎、今ならお前を親友認定してやれそうだ。マジでこれ、衣装置き場どころか専用の撮影室、衣装作成室だって。なんでも出来るぞ。創作意欲が湧き出て脳汁吹き出そうだ!」「脳汁って……けど、先生の言った通り自由に使って良いと思うよ。私も初日に、どこでも好きに使えって言われたし。主に管理人室にいるから、使ってないけど」「あの先生、小物なのか大物なのかわかんねえ。柿崎、たまに。たまになら、コスプレ衣装作ってやろうか。ただでここ使うとか、いくらなんでも悪すぎる」「それは凄く嬉しい。写真をネットにアップされるのは嫌だけど、可愛い衣装着たりとか色々とつきあっても良いよ。むしろ、着てみたい。先生に見せてあげたいし」 割と貴重な長谷川がはしゃぐ姿を前に、美砂もにこにこが止まらない。 それからどの部屋をどう使うか、ぶつぶつと一人考え込み始めた長谷川を置いて階下へと降りていく。 だが直接管理人室には戻らず、少し寄り道してから降りていく事となる。 美砂が長谷川を上に案内をしている頃、むつきは盛大に溜め込んだ空気を肺の中から吐き出していた。 重い、二酸化炭素よりもずいぶんと重いそれは口元からぼとぼとと落ちていくようでもある。 美砂から長谷川にバレたとの連絡があったのは、今週の月曜であった。 正直、心臓が凍り付いて、そのまま倒れてしまうかとさえ思えた。 もちろん直ぐに秘密にしてくれる約束をしたとも教えられたが、納得して安心などできない。 それは表面上の事で、実は今この瞬間も職員室に駆け込んでいるのでは。 それとも警察、学園長室に直々になど、悪い想像は留まるところを知らなかった。 その日は一睡も出来ず、目に隈を作って学校へいけば周りからかなり心配された。 自分を案じるそんな視線にさえ、心の奥ではともはや疑心暗鬼ですらあったのだ。 気の休まる日、それこそ時間さえなく、本当に倒れるまで時間の問題だったろう。 美砂に連絡先を聞いた長谷川から直々にメールで、秘密にしますからと貰うまで続いたのだ。「はあぁぁぁ、長かった。この一週間。ノイローゼで死ぬんじゃないかって。長谷川、普段はそっけないが結構良い奴だな」 感情的にならず、先生は悪くないと言ってくれた事も心の棘が抜けた思いだ。 もちろん、全て美砂が悪いとは言わない。 ただ一人の責任だけではないと考えるだけでも、心理的にはかなり違う。 正直、美砂との秘密の場所を明かしたのは痛手だが、この際はしょうがない。 ひかげ荘の一部を提供する事で、秘密の厳守という確約も得られるのなら喜んで差し出そう。 改めて、心配事から解放され冷め始めたお茶を飲んでいると美砂から話しかけられた。「先生、もう大丈夫?」「美砂か、長谷川はどうしてる?」 何故襖の向こうから声だけと疑問に思いつつ、問い返す。「凄くはしゃいでる。しばらくは降りてこないと思うから」 何かを期待するような声色で、美砂が向こう側から襖を開けてきた。 以前のチアコスの時と状況は良く似ており、事実その通りであった。 襖の向こうから現れたのは、ひかげ荘には少々不釣合いな可憐なメイドである。 白と黒のコントラストに、ふんだんにあしらわれたフリルとレース。 足元もニーソックスと黒のスカートと白のソックスに挟まれた太ももが眩しい。「長谷川から貰ったの。先生、エッチしよ?」 スカートの裾を持ち上げ、一礼しながらのお誘いであった。 普通ならここで理性が振り切れてもおかしくはないが、乗り気にはなれなかった。 天井を見上げ、その視線の先に長谷川がいるかのように指差して言う。「何時降りてくるか、わからないだろ?」「大丈夫、大丈夫。衣装一杯持ってきてたし、整頓とか。部屋のレイアウト決めるだけでも時間かかるし。先生は、こういうの嫌い?」「大好きに決まってるだろう、この野郎。けどなあ」 これだけ誘ってもまだ煮えきらぬむつきに対して、少々美砂が攻勢に出た。 むつきの目の前に跳ねるように、スカートの奥から女の匂いをふわっと溢れさせる。 わざとその匂いをかがせ、さらには四つん這いでぐっと顔を近づけ耳元で囁く。 文字通りむつきのやる気を引きだすように、言葉と吐息でくすぐった。「先生、ドキドキしない? 何時降りてくるかわからない長谷川がいて。私は凄いドキドキする。それに、長谷川は知ってるよ。私達の関係」「策士か」 美砂が言いたいのは、第三者の存在がいる事へのバレないかという焦りのスパイスだ。 だが焦る事は焦るが、見つかったとしても長谷川は既に二人の関係を知っている。 怒られはしても、今さら関係をばらすと態度を変えるとも思えなかった。 二人の秘密の場所が明かされても、ただでは終わらない。 長谷川に明かされたら明かされたで、それさえエッチのスパイスにしようというのだ。 むつきの決意はぐらぐらと、メイド服の開いた襟元から見える美砂の胸の谷間に視線が釘付けである。 美砂に揺さぶられ揺らぎまくるむつきへと、最後の止めがさされた。「ご主人様、うっかり喋った美砂にお仕置きしてください。ご主人様が大好きなエッチなお仕置き。最初にお口でご奉仕しますから」 むつきの股座に顔を突っ込んだ美砂が、口でズボンのファスナーを下ろした。 小さく、練習したんだと告げられ、もはやむつきも我慢の限界であった。「美砂、上手にできたらご褒美をやるからな。やり方は分かるか?」「えっと、教えて先生」「小悪魔か」 いやらしい迫り方をしておいて、初心とは何事かと突っ込む。「まだ手を使わず口だけで、パンツの中からは無理だろ。手でずらして、取り出してくれ」 言われた通り、美砂はむつきのパンツ、トランクスを引っ張った。 先程美砂がスカートをはためかせた時と同様、濃い男の匂いがあふれ出す。 匂いを嗅ぐまでもなく、鼻先をくすぐられ、少し美砂の瞳がとろんと変わる。「先生の匂い、凄く濃い」「嫌か?」「全然、逆に。エッチな気分になるかも。先生の匂いだけで発情するよう、調教されちゃった。エッチな体にされちゃった」 可愛いなこの野郎と、むつきの頭の中から長谷川の事は完全に消えてしまった。 頭を撫でてやりながら、先を促がすように軽く股間へと押してやる。 美砂も恐る恐るだが、むつきのトランクスを引っ張ってずらし取り出した。 まだまだ初心なので、おっかなびっくり、二本の指で摘むように。 むつきも気分が高揚しきっていないので半立ちのそれは、美砂の手の中でしなっている。 小さく熱っと呟きながら、どうしようとにぎにぎしながら美砂が見上げてきた。「まだ皮が半被りだから、優しく脱がして。軽くさすってくれ。時々、袋の方も揉むように。そうだ、上手いぞ」「ますます匂いが濃くなって。凄いどんどん硬く、熱く。ちょっと面白いかも」 自分の手の動きに正直に反応してくれるのが嬉しいのだろう。 こすこすと上下に右手を動かしながら、左手で袋を握り転がす。 時々、切なげに眉を潜めるむつきを可愛く思いながら、美砂が続けた。 するとそれ程時間も経たないうちに、亀頭の鈴口からぷっくりと水滴が膨れ上がる。 初めて見る光景に美砂の手が止まり、これってと目で問いかけてきた。「先走り汁。エッチな気分になって美砂が濡れるのと同じ」「先生もエッチな気分になると愛液が出るんだ。だったら」 いつものお返しとばかりに、美砂が唇を近づけてちゅっと吸い取った。 突然の好意に、美砂の柔らかな唇の感触にむつきの腰がひけそうになる。 途端に嬉しそうに美砂が何度も唇でキスを繰り返し、さらなる汁を出そうと手を忙しなく動かした。 多少強めになったが竿を一生懸命さすっては、袋を刺激して先走り汁を出させる。 その度に吸い取っていたが、次第に追いつかなくなってきた。「先生、エッチな音が」 竿を上下する手が皮を巻き込み、汁をひろげ、竿のみならず美砂の手も汚していく。 手が動くたびにその範囲はひろがり、何時しかにちゃにちゃと音を立て始めた。「美砂、胸元広げてくれるか。先に一度出しておかないと、俺が無茶させそうで怖い」「うん、こうで良いかな?」 胸元を締め付ける紐を解くと、程良く胸元が露となった。 この数週間でDの大台にのったそれを抱き寄せ、むつきの一物を挟もうとするが。 座り込んでいるむつきの股座で、寄せた胸で挟むのは意外と難しい。「体勢辛い。先生、一度立ってくれる?」「ああ、いいぞ。ちょっと待ってろ」 パイずりの為ならお安いご用だと立ち上がり、美砂の目の前にそそり立つそれを差し出した。 改めて突きつけられ、少し美砂は恥ずかしそうであった。 だからあえてむつきも、もっと良く見てと軽く美砂の頭を抑えて目の前に突きつける。 最初は、美砂も恥ずかしさに負けて、チラチラと横目で眺める程度だ。 だがやがて意を決したように見つめると、服の空いた胸元からそれを挟み込む。 体勢の辛さはあまり変わらなかったが、むつきが喜んでいるのが直接知れた。 胸の谷間に挟み込んだ瞬間、今にも射精しそうに一気に一物が膨らんだからだ。 なんだか嬉しくなり、膝立ちで必死に胸を上下させた。「私の胸、気持ち良い?」「柔らかく包み込んできて、温かい。美砂の中とはまた別の快感がする」「先生、おっぱい大好きだから」「おっぱいはな、夢が詰まってるんだよ。男の夢がな」 今にも腰を動かし、射精したい気持ちになりながらも必死にむつきは我慢した。 美砂が奉仕してくれているのだから、折角だから美砂の奉仕で射精したい。 まだまだぎこちない動きだが、胸の大きさは十分であらゆる角度に対応して包み込んでくる。「美砂、単純に挟むだけじゃなくて。強弱をつけたり。こう、竿を中心に交差させるように出来るか?」「最後のは良く分からないけど、こう?」 胸をこねるようにして挟み込み、思わずむつきの腰が動いた。「気持ち良いぞ、美砂。もう、出そうだ。出して良いか、美砂の中に。おっぱいの中に」「メイド服は汚さないでね。先生のをおっぱいで受け止めてあげるから」「やばい、気持ち良過ぎる。出すぞ、美砂の中に」「良いよ、先生。美砂のおっぱいを先生ので汚して。全部受け止めてあげる」 最後に美砂の名前を呼びながら、むつきが果てた。 ぶるぶると腰を震わせながら、美砂の胸の谷間の中に射精していく。 美砂もそれらが飛び散らないように胸の谷間をさらに強調させるように挟み込んだ。 あばれるむつきの一物を、大人しくしなさいと押さえつけるように。 二度、三度とむつきが体を震わせ、深く息をつくと共に胸の谷間が静かとなった。「美砂、ひろげて見せて」「ねちゃねちゃしてる。先生の匂いも凄い。おっぱい汚されちゃった」 言われた通り美砂が胸を広げると、粘着質な白い液体が胸の谷間に橋をかけていた。 これまた美砂が胸をくねらせ、精液をこねる姿がいやらしい。 一度全てを吐き出して萎えたはずの一物が、美砂の目の前で再び元気になっていく。 もう一度あの柔らかな谷間でとも思ったが、主賓は胸の谷間ではなかった。 誰が主賓か、教えるように膝立ちで見上げてきていた美砂が口を開けた。 赤い舌を差し出すように伸ばし、こことばかりに唇を丸くする。「先生、こっち。不安だけど、私のお口の初めて。先生にあげるね?」「既に精液塗れで苦いかもしれないが、頑張れるか」「大丈夫、たぶん。先生が私で気持ち良くなってくれるのなら、なんだってできる」「ああ、もう。可愛いな俺の彼女は本当に。ますます元気になるだろ、この野郎」 思わず喋っている途中のその口に突っ込みたくなったが、自重してむつきも膝を折って抱きしめる。 多少なりとも辛い行為をさせる前にと、好きという気持ちを形にするように。 それで美砂も愛されている事を実感して、欲しかった温もりを前に抱き返していた。 そこまでは普段通り、ヤル事しかほぼ頭にない二人の休日であった。 だが忘れてはならない、今このひかげ荘には第三者となる人物がいる事を。(ナニをしてんだあの二人は!) 襖を少しだけ開けて、中での情事を覗き込んでいた長谷川である。(私はただ、三階のレイアウトをゆっくり考えたくて。露天風呂で考えるのもありだなって許可を取りにきただけなのに!) 何やら言い訳がましく、脳内で叫ぶが長谷川は隙間から覗いたまま動こうとしない。 割とソフトとはいえ、女子中学生にはどぎつい性交に腰がぬけた事もある。 美砂が汚された胸をこね回すところなど、抜けた腰に何かが走った程だ。 廊下で一人女の子座りをしたまま、動くに動けない状態となってしまった。 まさか気付かれるどころか、既に覗かれているとも知らずに二人は抱き合う事に満足して続きを始めてしまう。 美砂の目の前に立ち直したむつきが、精液でぎらつく一物を直立させた。 それを手で支えて少し自分に押し倒した美砂が、大きく口を開けてくわえ込もうとする。(ちょっとこれ以上はやばい。てか、マジか。あんなグロイもん、なんで平気。嬉しそうに咥え、咥えやがったァッ!) もはや覗く罪悪感さえ麻痺し、長谷川の視線は二人の行為に釘付けであった。 リアルは嫌い、ネットにこそ居場所があるとの自認のなんと弱い事か。 割と一般的な、それこそ普通とも言える性交の一種に混乱も最高潮である。「歯は立てないように気をつけてくれ。口を窄めたりしながら首を動かして、そう。そうだ。気持ち良いぞ、美砂。舌で竿を舐めるのも忘れるなよ」「んご、んぶぅっ」 まともに返事も出来ず、乙女らしからぬくぐもった声で返していた。(生々しい発言するな、淫行教師!) 何処までも脳裏で罵詈雑言を吐き出しながらも、長谷川の混乱は続いていた。 覗きという行為を取り止める事ができないほど、自制が全く利かない。 かと思えば、むつきの美砂へのお願いに何故か反応してしまった。 うかつにも、口をすぼめ舌を使いながら首を動かし、仮想の一物を加えたように。(やめろ、私はネットアイドル。ネット上で最も輝く、リアルなんかいらねえ。そんなもん、粘液と幻想が作り出すまやかしなんだ!) その幻想に頭をやられ、気がつけばパンツの中に本来ならありえない湿り気を感じる。 嘘だろと、抜けた腰を何とか動かし指で触れてみればぬるりと指が湿っていった。 違う気のせいだともう一度動かしてみれば、体が嘘をつくなとばかりに反応した。 快感を感じたろうと教えるように、体に痺れが走りピクリと震えたのだ。 頭では違う違うと繰り返すが、その思いに反してパンツの上を勝手に指が走る。「美砂の口、凄く良いぞ。今なら、美砂を口から妊娠させられそうだ」「んんっ、はんぐ。んっんっ!」 苦しいのか嬉しいのか、目尻から涙を浮かばせながら美砂がさらに首を動かす。 妊娠と言った、馬鹿らしいことだが口で妊娠させると。 むつきに口から妊娠させられると、美砂の体が軽くイッたように震えた。 左手をむつきの腰にまわし、口をぴったりと陰部に合わせ、右手はスカートの中へ。 両手で腰に抱きついていたのに、急に片手が離れれば嫌でも気付かれる。 そう気付いたむつきは、メイドプレイを前ににやりと悪い笑みを浮かべた。「美砂、何でスカートに手を伸ばした? 口に俺のを突っ込まれて感じているのか? いやらしい子になってくれて嬉しいぞ。俺のを加えながらオナニーしてるんだな」 違う違うと美砂がくわえ込んだまま首を振るが、それがまた新たにむつきに快感を与える。 そして一方、長谷川もスカートの中に伸ばしていた手を硬直させた。 一瞬ばれたかと思い、いやらしい子と言われたようでゾクゾクとさえ感じてしまった。 一体今自分は、何に感じてしまっているのか。 クラスメイトの性交、それともオナニー、はたまた覗き行為そのものにか。(やばい、これ。クセになるかも) もはや自分で弄る事に対しての嫌悪感などなく、長谷川もまた二人の行為に合わせて快楽を求めていた。 むつきの腰の動き、美砂の首の動き、それらに合わせて指が動く。 湿り気を帯びたパンツの布地を弄り、もう良いやと自分で割れ目を開き滑り込ませる。 美砂の口が犯されるのを見て、自分の下の口を弄り倒していった。「美砂、そろそろいいか?」「んぐっ」「必死に腰に抱きついてろよ」 今度はなんだと、もはや長谷川も襖にぴったりと体をつけてかぶりつきであった。 そんな長谷川の覗く中、むつきは美砂の頭を抱えるように掴んだ。 今までは美砂に全てを任せていたが、もはやそれだけに任せてはいられない。 美砂の口が膣口であるように、腰を引いては突き出す。「んぁっ!」 子宮口にするように、喉の奥にまではぶつけないように注意しながら。 美砂の口で、擬似的なセックスを開始する。(おいおい、柿崎の奴少し苦しそうだぞ。確か、そうイマラチオ。男に無理やり口を犯される。犯す……本当に犯されてるだけか) それは誤用で、イラマチオが正解なのだがそれはともかくとして。 僅かな理性を総動員して、改めて長谷川は美砂を観察してみた。 苦しそう、それは変わらない。 当たり前だ、口を男の一物で塞がれたまま腰を振られているのだ。 がんがんと頭は振られ、呼吸だってまともにできているのか怪しいぐらい。 もはや淫行教師による生徒への強姦にしか見えないが、そう言いきれないものがあった。 頭は確かに抑えられているが、美砂もまた必死にむつきにしがみ付いていた。 本当に嫌なら突き放せば良いのに、むしろ美砂の方から腰に抱きついて居るのだ。(苦しいのに、辛いのになんでそこまで……嫌なら、嫌って言えよ。まさか、嫌じゃない? あんなグロイ気持ち悪いもんを口に突っ込まれて。だって、あそこから排泄だってするんだぜ。リア充って、実は凄くね?) 好きだから、彼氏だからそんな感情を飛び越えた先にいるように思えた。「美砂、いいか。出すぞ、お前の中に。口から妊娠させてやるからな」「んっんッ!」 馬鹿らしいことだが、この時長谷川は人間が口から妊娠できるのではと本気で思えた。 それだけむつきが必死に腰を振り、美砂が受け止めようと頑張っていたから。 本当に馬鹿らしい、馬鹿らしいがそんな感情を誰かに抱ける美砂を少しだけ羨ましくも思えたのだ。 リア充とは対極にいるネットアイドルでは、辿り着けない場所だと寂しくなる程に。 そこまで考えた所でハッと我に返り、髪を振り乱すように顔を振った。(べ、別に羨ましくなんか。私だって、毎晩知らない男達の妄想の中でもっと凄い事を。口だって尻だって。首輪されて奴隷みたいに精液漬けにされて) だがそれは一方通行、見知らぬ男達の欲望にただ汚されるだけ。「美砂、孕め。俺の子供を、美砂。好きだ、孕んでくれ!」「んーッ、んん。んァッ!」 ついにむつきが限界と共に射精し、美砂の口の中へと全てを吐き出した。 びたびたと喉の奥を精液で叩かれ、美砂が未知の感覚にむつきの腰に縋りつく。 決して零しはしないと、より強く抱きついて全てを口内で受け止めていった。 最後の時を迎えた二人と時を同じくして、長谷川も絶頂を迎えていた。 そこまで深く指を入れた事のない場所まで、ついつい指を伸ばしながら。 声をあげまいと、必死に口を押さえて一人廊下で体を震わせる。「んっ、んふぅ!」 少々声が漏れたが、夢中な二人にはきっと聞こえなかった事だろう。 今までにない程の大きな波が体を駆け抜け、あまりの愛液の多さにお漏らしでもしたかと少し焦った。 それ程までの快感を得て、波が去った後はふうっと大きく息をついた。 こんなに気持ち良かったのは初めてだと、とろとろ指から滴る愛液を眺める。 少し快楽の虜になっていた長谷川であったが、次の瞬間には現実に引き戻されていた。「ごほっ、おえ。ぶぇ……りがい」「ほら、無理すんな。飲めるわけないだろ、このティッシュにぺってしろ」 なんとも色気のない、咳き込み妙な声をあげた美砂によって。 背中をむつきにさすられながら、必死に精液を吐き出していた。 つい先程うかつにも心に染みた憧れの感情など、簡単に吹き飛ぶ光景だ。 絶対に憧れてたまるかと、さらに心を硬い殻へと押し込める。「良く頑張ったな、美砂。凄く嬉しかった。気持ちよかったのもそうだが、受け止めてくれて」「けほっ、うえ。まだ苦い……先生が喜んでくれて私も嬉しい。何回かイッちゃったし」 ただ二人が幸せそうに微笑む光景は、エロイ事を抜きさえすれば微笑ましい。 馬鹿っぷるは、馬鹿っぷるなりに。 だから愛液に濡れた手をハンカチで拭き、四つん這いでそろそろと逃げ出す。 これ以上はお邪魔かなと、捨て台詞を残しながら。「リア充、爆発しろ」 そんなネット特有の恨みごとにも似た言葉も、二人には関係ない事だろう。「先生、こっち。今度はこっちに飲ませて。上のお口で飲めなかった駄目なメイドさんに。下のお口に一杯のませてあげて。無理矢理、妊娠するぐらい濃いの」「ちょっと三回連続はちょっと。けど、美砂。俺頑張るよ。美砂、頑張るから。けど、ゴムはちゃんと付けるからな」「え……あっ、着けちゃうの。着けちゃうんだ。う、うん。先生、エッチな私にお仕置きして!」「えっ、あ。うん、美砂。行くぞ、コレが終わったらちょっと休憩な!」 少々のすれ違いをしつつ、お疲れ気味ながら第三ラウンドに。「まあ、柿崎がもう嫌だって言わない限りは隠し事に付き合ってやるよ。そうとう本気なのは改めて教えられたし。しばらく、オナネタにも困らないしな」 それ以上に、専用スタジオを逃せるかと言い訳のように呟きつつ、四つん這いのまま階段の上へと消えていった。 -後書き-ども、えなりんです。土曜に間に合いませんでしたが、なんとか更新です。えっ、日曜も仕事とか、ちょっと意味がわかんないんですけど。さて、もはや執筆時間の確保には睡眠時間を削るよりない私はさておき。巻き込まれちゃった千雨の、微エロ。なんと言うか、覗いた。覗キング、千雨の爆誕です。まだ全くむつきに好意のない千雨ですが。こういうおかしな方向で、かかわって行きます。でもって美砂は相変わらず。ただちょっと生でする事に目覚め中。反省しろ、お前のエロでむつきの胃がやばい。さて、ひかげ荘に千雨を迎えつつ、十話となりました。次回から五月に突入し、微妙に新章に。それでは次回は水曜です。