第百十話 アイツは中学生らしい初恋してるだろ 翌日の土曜日、九時頃にひかげ荘を出たむつきは、十時前に那波から教えられた孤児院にたどり着いていた。 那波重工の娘が通う孤児院の割に、言っては悪いがこじんまりとしたところであった。 あまり那波は実家との関係が思わしくなさそうなので、那波重工は無関係かもしれない。 コンクリート製の建物で数戸の部屋がある古びれたアパートの様にもみえた。 ただしやはり子供がいる施設らしくあまり大きくはないが、きちんと庭があり少しばかりの遊具もあった。 他には施設の周辺が高い塀に覆われ、鉄格子の大きな門があることぐらいだろうか。「へえ、ここが孤児院か。強い奴、っておるわけないか」「君の頭の中はそれしかないのか、折角連れて来たんだからここの子と一緒に遊べばいいだろ。日曜日に一人でぶらぶらと、学校の友達と遊びなさいよ」「はっ、あんなガキどもと今更」 ここがそうかと建物を見上げていたむつきの隣で、小生意気な口をきいたのは小太郎だ。 来る途中で暇そうに街中をぶらぶらしていたので、なんとなく連れてきてしまった。 多少、まだ友達がいないならここで出来ると良いなという思惑はあったのだが。 精神的な成長が早いのか、大人ぶりたいのかこの調子ではちょっと無理そうである。「カードゲームが流行ってるからってどや顔でダブりカードくれたんはええけど、余りカードでボロ勝ちしたらすねて仲間外れや。ほんま、アホくさ」「そいつは災難だったな。ただ、うーん。でもなあ」「なんやねん、歯切れ悪い。気持ち悪いで、むつき兄ちゃん」「いやな、折角カードくれたんだから接待プレイで相手を気持ち良くって言おうとしたんだけど。子供の内からそんな周りに気を使うのもな。ていうか、小太郎君なにげに頭良い?」 いくら相手が油断していたこともあるだろう。 けれど弱いカードばかり、さらには初心者なのにいきなりカードゲームで勝つのは凄い。「手札の使い方がなっとらんのや。カードゲームなんか、カードの効力は一定や。手札の効力をちゃんと理解して、使い時を誤らんとけばまず負けへん。もちろん、運次第ではあるけどな」「なら、後でそのゲーム俺にも教えてくれよ。折角学校行くんだ。俺みたいな弱い奴相手にして接待プレイ覚えてみるか? 囲碁ってゲームに持碁ってあるんだけど」 小太郎がちょっとクラスに馴染めていないのは、先ほどの短い会話でも十分にわかった。 むつき自身教師であることもあるが、小太郎は千草の預かっている子である。 千草は小太郎を学校へ行かせたがってもいたし、このままでは千草の笑顔が曇るのは必至。 ならば彼女の男として、小太郎の力になってやらなければならない使命感が沸いて来た。 そんな風にいつまでも孤児院の前で小太郎と二人でいて、誰も気づかないわけもない。「当、孤児院に何かご用でしょうか?」 孤児院の建物の中から、一人の老婦人が顔を覗かせながら訪ねて来た。「小太郎君、この話はまた後な。俺、じゃなくて。私は那波千鶴に請われて、力仕事を手伝いに来た乙姫むつきと言います。那波は中にいますか?」「え、千鶴姉ちゃん来てんのか?! ということは、漏れなく。げっ!」「おはようございます、先生。それに小太郎君。院長さんもおはようございます」「小太郎君、そのげっは。なにかな? とっても傷つくんだけど」 むつきの言葉に老婦人が答えるより先に、那波の存在に小太郎が気づいた。 村上もむつきのように人手として駆り出されたらしいのだが、恰好が問題だ。 むつきは今日は珍しく汚れても良いようなつなぎ姿で、小太郎は何故か学生服。 そこまでは良いとして那波は胸がはち切れんばかりの白いワンピース、村上もオレンジのタンクトップに黒のミニスカート。 あまり活動的に動けるような恰好ではなかった。「お前ら、もしかして力仕事。埃経つような仕事は俺だけか?」「まさか、きちんと体操服を持ってきています。ここではなんですので、院長さんよろしいですか?」「はい、千鶴さんにはいつもお世話になって。こちらへどうぞ」「ほらお前らもむやみと睨み合ってるんじゃない」 院長に促され、騒動の発端になりそうな小太郎の首根っこを掴んで連れて行く。 旅行中、村上と小太郎の仲は悪くなかったはずだが、いつからこんなことになったのか。 あら仲良しさんと村上の頬を突いている那波のせいの気がするが。 別に今問い詰める事でもないので、案内してくれる院長さんの後をきちんとついていく。 しかし一歩、孤児院の中に入るとそのついていくだけが難しくなった。「ちづ姉ちゃんだ!」「ちづるお姉ちゃん、ゆず君が意地悪するのぉ」「あっ、ちくんなよ。ちづ姉ちゃん、俺ちゃんと仲良くしてたぜ」「あらあら、みんなその前に挨拶忘れてるわよ。はい、さんはい」 一人の男の子が那波を見つけて叫ぶと、出てくる出てくる。 そこかしこの部屋から小さな男の子から女の子まで、わっと千鶴の周りに集まり始めた。 今何していたか、昨日何があったのかと舌足らずの者まで懸命に自分の言葉を那波に伝えようとする。 しかしそこは那波も慣れたものらいく、うんうんと頷きながらも簡潔に挨拶がないと注意した。 あれだけ騒がしい中でもきちんと那波の言葉は伝わったらしい。 どの子もはっと自分の口を押えて、それからおはよう攻撃と言って過言ではない挨拶の嵐だ。「こいつは凄いな、子供ってこんなパワフル……パワフルだったわ」「つくもさん?」「いや、あかりとかかがり。ぽかりもアレで結構、直ぐ布団にもぐりこんでくるし。孫娘の布団にもぐりこむ爺さんと結構そっくりだわ」「それにしても、夏美姉ちゃんは全く相手にされてへんな」 実家の従妹のことを村上もまき込み思い出していると、小太郎がチクりと呟いた。 確かに初めて来たむつきや小太郎はまだしも、村上へとは誰も駆け寄ってはきていない。 しかし、小太郎にしてはちょっと辛辣な言葉と思っていると、今度は村上がチクリと言った。「ふふーん、自分だけのお姉ちゃんだと思ってたら、他にも弟が一杯で嫉妬しちゃったかな?」「べ、別にしとらへんわ。俺は一端の男や、女なんか邪魔なだけや」「小太郎君、今はまだわかんないだろうけど女の子のいない生活は潤いがないぞ」「先生なんか、いやらしい感じがするよ」 まだまだガキだなと村上から若干ひかれていると、とことこ一人の少女がやってくる。「夏美お姉ちゃん、またお話して。妖精さんがでてくるお話」「うん、そうだね。あっそうだ。もうちょっとしたら文化祭りで演劇するから、その時はチケットあげるね? ふふん」 どうやら夏美の場合は大人しい子相手に、本を読んだりする役目が多いらしい。 私だって慕われてますと、どや顔で小太郎にお返ししていた。 子供の多い孤児院でギスギスするなとも思ったが、考えてみればこの子らも十分に子供の範疇だ。 ここは大人がと、押さえて押さえてと二人の間に入って頭をぽんぽんと叩き落ち着かせる。「はい、みなさん。大好きなお姉さんに会えてうれしいのは分かりますが、迷惑をかけてはいけません。みなさんと遊んでいただく時間は作って貰いますから、今ははなしてあげてくれますね?」「はーい」 しつけが成っているというか、あれだけ群がっていた子供たちが潮が引く様にさっと引いた。 むしろそのあっけなさが逆に那波に寂しさを抱かせたようにみえるぐらいに。「ほら、行くぞ那波。院長さんが待ってるぞ」「はい」 お前も本当に寂しがり屋だなと、若干自己アピールしつつその頭にぽんと手を置いた。 院長室で改めて挨拶をかわして名乗り合った後、今日むつきが呼ばれた理由を説明された。 どうやら、庭にある倉庫の整理を手伝ってほしいという趣旨だ。 長年孤児院を運営していれば、それなりに子供の出入りは発生する。 しかし出て行った子が次の子の為にと置いていったものや、成長と共に使わなくなったもの。 それらは次の子の為に再利用されるわけだが、全部が全部そうではない。 勿体ないからと一先ず倉庫に入れておいてそれっきりのものも結構あるということだ。 何時か整理したいと思いつつも、院長は高齢で、那波や村上も女の子。 男手さえあればと院長が那波に漏らしたところ、とても人の良い男性がと推薦されたらしい。 そして院長を含めやって来たのは、庭先にある孤児院そのものとは別に建てられた建物だ。 一階建てで横幅もほとんどなく、扉も頑丈な鉄製で体育倉庫そっくりだ。「孤児院にもっと子供がいた時は、お仕置き部屋としても使っていましたが……これが鍵になります」「んじゃ、失礼して。埃舞うかもしれんから、離れてろよ」 院長は元より、小太郎と体操服に着替えた那波と村上にも下がっていろと指示する。 古臭い鉄の扉の鍵穴が詰まっている可能性もあったが、鍵を差し込んでみるとそんなことはない。 中は多少錆びついていたみたいで、回すと抵抗があったがきちんと回った。 鍵が外れた音もしっかり聞こえたが、いざ取っ手に手をかけ扉を退くが軽くでは全くあかない。「ふんっ、お……マジで。んが!」 きっと長年の風雨にさらされサッシの上に砂粒やゴミが詰まっているからだろう。「あれ、ちょっ。誰か」 手伝ってという声は、周囲にいた人を見てしりすぼみに消えていった。 院長は高齢で女性だし、那波や村上に手伝って貰っては男手として頼られた意味がない。 最後の小太郎も、男手ではあるが子供である。「しまった、田中さんを連れてくるべきだった!」「なにしとんねんな、むつき兄ちゃん。どいてみい」「いや俺が無理なのに」 小太郎ならもっと無理だろうと言おうとしたのだが、ギャリギャリギャリという大きな音に遮られる。 院長は朗らかな笑みをたたえたままだが、むつきや那波、村上は咄嗟に耳を抑えていた。 孤児院の中にまでその音が聞こえたのか、子供たちが窓や玄関からチラチラ顔さえ出している。「おう、開いたで。まったく、これぐらい軽くやってくれんと安心して千草姉ちゃんを任せられへん」 千草うんぬんよりも、小学生の小太郎ですら開けられた事実が耳に痛い。 あと、背中にひしひしと伝わる那波と村上のうわーっという視線も。「いや、これはあれだ。良いところまで俺が開けたんだよ。小太郎君がとどめ刺した的な」「うわ、恰好悪。なんやその言い訳、ガキか」「さ、さ~て。良い男は力だけじゃなくて、頭も使う。院長さん、まずは全部運び出しますね。必要か、そうじゃないかを選別して必要なものだけ戻すと」「ええ、そうですね。よろしくお願いします」 さすが大人というか老齢の女性は、きちんと男のプライドを考慮してくれる。 にこやかな笑顔のままちょっと必死なむつきの言葉に、どもることなく頷き返してくれた。 倉庫の中は奥行きがおよそ一メートル半、横幅が三メートルといったところか。 穏やかな院長さんらしからぬ雑多な雰囲気で、本当に次から次にモノを放り込んだようだ。 もしくは彼女はまだ着任して数年で、もっと昔から放り込みっぱなしなのかもしれない。「ようし、那波や村上も手伝ってくれ。まずは小物をリレーで出しちゃうぞ。大物は後。ほら、整列」「リレー? ああ、バケツリレーのようにですか?」「皆で入れ替わりに出入りするのも邪魔だし、近くに置き始めると大物を遠くに置かなきゃいけないだろ。どうよ、この頭脳プレー!」「先生、分かったから。誰でもわかりそうなことを、どや顔で言わなくても」 どや顔で言った後で村上から手厳しい意見を貰ったが、最初に提案する凄さは分かって貰えなかった。「あー、なんや分かったわ。あれは俺が悪かったわ、雑魚カードでボコッた俺が。今のむつき兄ちゃんが千鶴姉ちゃんたちのまえでええ格好したかったみたいに、あいつもええ格好したかったんや。それに遊びは遊び、大人の余裕で負けたりゃよかったんや」「小太郎君、やっぱ君は頭が良い子だ。しかし、俺の傷を抉るのはいただけない」「悪い悪い、今度は俺も開けられへん振りして。協力したらできた的な風にするから」 本当に悪いと思っているのか、むつきの尻をぺしぺし叩きながら笑っている。 いや良く考えたら、悪いも何も小太郎はむつきの面子をこれでもかと潰したぐらいだが。 もう何もいうなと心で涙しながら、むつきはせめて譲ってと倉庫の中に突貫した。 一番埃っぽく面倒な、せめて嫌な仕事を引き受け小さなプライドを満たそうと。 次にはは倉庫の出入り口、やっぱり少し埃っぽい場所に自然と小太郎が、それから村上。 最後に那波と院長さんで必要かそうでないかを選んでもらうシステム的な並びである。「しっかしこれ、午前中で終わるか? ほい、小太郎君」 手近に詰まれていた埃まみれの二十センチ四方のダンボールを軽く手で払って小太郎に。「おう、夏美姉ちゃん」「はいはい、ちづ姉」「はーい」 小太郎から村上、那波へとリレー方式で手渡されていく。 最後の那波は直ぐに足元にはおかず、整頓できるように場所を選んでそれを地面に置いた。 そうしている間にも、またむつきから小太郎、村上へと次の荷物がわたってくる。 手渡しやすいダンボールに入ったものをむつきが選んでいるから受け渡しもスムーズだ。 徐々に扱いが、そもそも持ちにくい丸みを帯びた壷だったり、謎の絵画だったり。 もちろん、子供用の遊具などもどんどん運び出されては、表に並べられていく。 ただ遊具についてはもう少し慎重に運び出すべきだったろう。 大人たちが集まって何をしているのかと、孤児院の子供たちが遠巻きに眺めていたのである。 そこに遊具が運びだされてくれば興味をひかないはずがない。 同年代の小太郎が一緒になって運んでいたことも、踏み出す一歩を軽んじる要因になったのだろう。「ねえねえ、院長先生これで遊んでも良い?」「わー、新しいおもちゃだ」 わらわらと集まって来た子供たちが、古いおもちゃを見て勝手に触り始めてしまう。 今はまだ小物が多いが、これから大物を運び出すのに砂糖にむらがる蟻のように集まられては危険だ。「はいはい、あなたたちが欲しいものはとっておきますから。お兄さんたちの邪魔をしてはいけませんよ」「はーい」 院長に諭されそう返事は返したものの、視線はずっと埃をかぶった玩具にとどまったままだ。 しつけが行き届いているとはいえ、いつだれが誘惑に負けるとも限らない。 それに意外に力持ちながら子供である小太郎が混じっているのも、拍車をかける事であろう。「しゃあない、小太郎君。悪いけど、あの子達と遊んでやってくれないか?」「なんで俺がガキと、って言うても俺もガキや。むつき兄ちゃん、こいつの貸しは千草姉ちゃんに返したってくれや」 大人の恋愛に口出すなとも思ったが、ありがたいので尻を叩くにとどめておいた。「おーいお前ら、カードゲームせえへんか? なんや流行っとるっていう魔法で戦うカードや」「えっ、でも……僕らそのカード持ってない」「安心せえ。俺が学校でダブったカード一杯もろたからな。全員ぶんはあらへんけど、一緒にやろか」「良いの? ずっとやってみたかったんだ!」 私も僕もと小太郎の呼びかけに俄然子供たちは興味を引いたようだ。 小太郎が胸ポケットからカードの束を取り出すと、注目の的である。 ほらこっちやと孤児院の建物へと小太郎が向かうと子供たちもぞろぞろと、ハーメルンの笛の音を聞いたかのようについていく。 おかげでこの場に残ったのは、二人ばかりの女の子。 如何にも気弱気で大の大人のむつきの視線から逃れるように小さくなり小動物のようだ。 きっと魔法で戦うなんてキーワードが出るカードゲームには興味がなかったのだろう。 とすれば彼女たちが残った理由も自然と察せられるというものだ。「村上、この子たちに中で本でも読んでやってくれ。小物はあらかた運び出したし、あとは大物ばっかだ」「えっ、でも……そうだ。子供の相手はやっぱり院長さんの方が」「院長さんいないと、要不要がわかんねえだろ。それに親代わりの院長さんも良いけど、たまに来てくれるお姉ちゃんが読んでくれる本が良いんだろ。問題ないと思うけど、小太郎だけってのも不安がなくはないし」「ああ、ちづ姉……」 なにをそんなに気にしているのか、むつきの説得の前に村上が那波へとちらりと視線を向けた。 その那波もなんだか苦笑いした感じで、一つ頷いて言った。「夏美ちゃん、行ってらっしゃい。こっちは良いから。念の為、小太郎君が他の子と喧嘩しないように気を付けてあげて。同年代の子と遊んだ経験あんまりなさそうだし」「今の小太郎なら、上手く兄貴分として立ち回れるだろ。この孤児院の子の中に、同じ兄貴分がいなければ」「分かった。じゃあ、行こうか。今日はなんのご本を読んで欲しいのかな?」 那波からもお願いされてようやく村上は、この場に残った女の子二人へと振り返った。 目の前でしゃがみ込んで視線を合わせては、早速二人のリクエストを聞いてあげる。 案の定というべきか、返って来たのはシンデレラや白雪姫といった女の子らしい物語。 そっかと微笑んだ村上は、二人の女の子を連れて、小太郎に遅れて孤児院の中へと行った。「さて、大物は俺が運ぶから。院長さんと那波は要不要の選別をお願いします」「申し訳ないですが、よろしくお願いします。千鶴さんも、お願いします」「はい、院長先生」 小さなお邪魔虫がいなくなったところで、倉庫の整理の再開であった。 小物はあらかた運び出したのでむつきの指示通り、院長と那波が要不要の選別を開始する。 むつきは改めて倉庫の中に戻っては、残った大物の前に仁王立ちだ。 古い木組みのソファーから、重くて簡単には持ち上げられなかった中身が謎のダンボール。 毛が殆ど抜けた箒を一纏めに突っ込まれた傘立てなど、これは一仕事である。 明日は筋肉痛だなと、嫁の誘惑合戦に体が耐えられるかちょっと不安になるほどであった。 とはいえ、愚痴っていてもしょうがないので運び出すしかない。 院長と那波もせっせと働いていたので男が怠けてどうすると、腰を痛めないよう慎重にだ。 特に小太郎がいなくなったおかげもあって効率はちょっと減り、やっぱり午前中一杯では終わらなかった。 一緒にお昼を頂いて、改めてお昼からも作業を開始して結局終わったのは十五時を過ぎたところ。 水泳部の方はアキラと亜子、それから小瀬に連絡を入れてある。 不要なものは倉庫の脇に積み上げ、必要なものは全て倉庫にきちんと詰め直した。 あとはこの不要なものを捨てるだけだが、そこはさすがに業者に来てもらう予定らしい。 しかし直ぐに業者がくるわけでもなく、野ざらしというのは色々な意味で怖い。 先程の様に子供たちが不用意に触れて崩れて怪我でもされてはたまらないし、そう長い間放置はしないだろうがダンボールや本は濡れると回収にもひと手間だ。「けど、これ雨が降ったら……そうだ、確かさっきブルーシートあったな。あれ掛けとこう」「あ、それなら私が閉まったはずです」「では、私は一足先に中に戻ってお茶をいれますね。あの子たちのおやつの時間ですし、一緒に召し上がっていってください」「了解です、直ぐに行きますんで」 再び倉庫に足を踏み入れながら院長に声を返すと、那波も続いて倉庫に入って来た。 日差しはまだ高く、中が整頓されたとはいえ倉庫のなかはやっぱり薄暗い。 何処にしまったっけと探す前に、倉庫脇に置いていた非常用の懐中電灯を手に取った。 明かりをつけて照らし出したのは棚の上、しかし整理の為に再利用したダンボールばかり。 きちんと見える面に何が入っているのかジャンルだけでも書いておくべきであった。「どの辺りに仕舞ったっけ。軽い物だから棚の上の方だと思ったけど」「そうだ、先生。また肩車していただけます?」「いや、その方が見やすいのは分かるけど……」 那波の提案に今一度彼女の姿をみるのだが、確かにあの沖縄の時よりはマシだ。 上下ともに学校指定の体操服で、衣の厚さはあの時の比ではない。 しかし、那波の豊満な体にピチッと張り付く体操服と短パンから伸びるむちましい足は健在。 むしろ体操服という男の妄想を掻き立てやすい恰好なだけに刺激はあげあげである。(悲しいけど、今の俺なら反応しないしいっか) 悟りの境地出しと少し自虐的に笑うと、むつきはあの日の様に軽くしゃがみ込んだ。 すると失礼しますと那波がむつきの首の後ろを跨いで、ずっしりと重みのあるお尻をのせて来た。 相変わらずの安産型のようで、首の後ろに頼もしくも柔らかな重みが伸し掛かる。 頬に時折触れる太ももも香しく、悟りの胸中にありながら首を回して嘗め回したくもなった。 それでも私もう悟ったからと無反応な一物は、相当な頑固者だ。「頭上気を付けろよ。あの時と違って、天井は近いんだから」「はい、ゆっくりとお願いします」 お願いされた通りゆっくりとむつきは那波を肩車したまま、足と腰に力を入れて立ち上がっていく。 那波も高度があがるたびにキュッと太ももを閉じてきて、顔がサンドイッチされる。 天国ですね、解りますと別の悟りの境地へ至りそうになりながら、むつきはしっかり床を踏みしめた。 それから半歩棚に近づいて上目になると、那波が棚の上のダンボールに触れて覗き込み始める。 ごそごそと音が聞こえると同時に少し埃が降りて来た為、むつきは咄嗟に視線を下に落とした。 しかし俺は負けないと、埃に目をしかめながらもしっかり上目づかいで見上げる。 那波がダンボールを漁るたびに、あのお胸がぽよんぽよんするのだ。 下から見上げる双子山が揺れる絶景に、埃程度でどうして目をそらせようか。「あっ、あった。ありました、先生」 嬉しそうに見つけたアピールをする那波の声を聞いた時である。 突然背後からガラガラガラと、けたたましくも何かが動く音が聞こえ、倉庫内が一気に暗くなった。 那波が懐中電灯を持っていたので今すぐ真っ暗ではないが、急激な光度の変化に動揺が走る。 そしてそれが収まるより先に、ガタンと扉が閉まりガチャリと鍵をかける音まで聞こえた。「ちょっ、なんで。那波、一先ず下すぞ。こう暗いと危ない」「でもどうして、夏美ちゃんは孤児院の中にいるはずなのに……」 慌てて那波を下した為、その呟きはむつきの耳には届かなかった。 那波の太ももに挟まれる幸せをあっさり手放し、むつきは閉まった扉に振り返り掛けよる。 ふんと力を込めてもガタンと両開きの扉がガタガタ揺れるだけでだ。 完全に鍵がかけられてしまっているようで、開く気配はみじんもなかった。 そもそも開く時はむつき一人では動きもせず、力持ちの小太郎が強引にあけた扉である。 例え鍵がなくても開かなかったのではとも思ったが、しかし一体誰が二人を閉じ込めたのか。「あれ、やっぱ俺が鍵持ってるよな。しかもこの扉小太郎ぐらいしか。でも小太郎がなんで? むしろ那波と二人きりになるの邪魔するならわかるけど」「小太郎君は良い子だからそんなことしません。一体誰かしら……」 村上と小太郎に閉じ込める理由はなく、院長や子供たちも同様だ。 しかし今日はあの時とは、状況が違う。「携帯持ってきてるから、村上に連絡してみるか。那波は……体操服だから、持ってないか」「ポケットがありませんから」「那波、ちょっと手元照らして」「はい」 むつきがツナギのポケットから携帯電話を取り出し、那波に懐中電灯で照らして貰う。 バックライトのある液晶なのでその必要もなかったかなと思いつつ、村上の携帯電話にかける。 コール音が三回目ぐらいまでは二人とも余裕の表情だったのだが、五回目、六回目となるうちに不安げに。 十回目に到達した頃には、取ってくれよとむつきががっくりとうな垂れながら電話を切った。「マナーモードで気づいてないのか? 充電は八十パー以上あるからまだ平気だけど」「先生、一先ず座りませんか? 椅子はありませんけど、中身の詰まった段ボールならいくらでも」「そうだな、最悪は誰でも良いから電話すりゃいいし。院長さんも俺らが戻らなきゃ気づくだろ。ああ、那波待った。座る前に……」 むつきは首にかけていたタオルを折りたたみ、那波が据わろうとしていた段ボールの上に敷いた。「ちょっと汗ふいた奴で嫌かもだけど。埃まみれの場所よりは良いだろ」「でも私だけ」「ツナギはそういうもんだ。隣失礼」 良いから座れと強気で言うと、その代わりとばかりにむつきは那波の隣に座り込んだ。 一抱え以上ある大きな段ボール、中身は何だったか忘れたがソファー一個分の広さはある。 むつきと那波が座り込むぐらい余裕であり、気を付けるべきは自分の汗の匂いぐらいだ。「しかし、本当にお前とはこんな場所に縁があるな。そういや、平気か? 暗くて狭い場所だけど」「はい、今は全く」「なんだ、大丈夫になったのか。心配しなくても良かったな」「大丈夫になったわけではないですよ」 そう呟いた那波が少し腰を浮かせて敷いていたタオルの位置を治した。 座り心地が悪かったのかと思いきや、再度座り直した時には那波の位置がよりむつきに近くなった。 懐中電灯は足元を照らすのみだが、殆ど暗闇の中でも間違いなくそう思えた。 那波の足が腕がむつきの同じ場所に確実に触れている。 気のせいでなければ那波自身の体重も少しむつきに預けられているようにも。「やっぱり先生と一緒だと、平気みたいです。暗闇の中でも、他に誰もいなくても」 それこそ気のせいではなかったと、僅かだった那波の体重がはっきりと分かるほどに預けられてくる。 腕と腕が絡まっていないのが不思議なぐらい、恋人ではないのが不思議な距離であった。 那波の顔がむつきの肩に持たれ潤んだ瞳で見上げてきてもいた。 忘れてはいけないが、ここは懐中電灯の光しかない真っ暗な倉庫の中である。 孤児院の傍の倉庫であり、近くに声は聞こえないので今は正真正銘むつきと那波しかいない。 今から二人が上と下になった倉庫をぐらぐら揺らしても、きっと大丈夫なぐらいに。「あー、勘違いしそうに」「勘違いではなかったら、どうしますか?」 一応建前的に、教師として予防線を張ったら張り切って壊された。 その表情は普段通りにこにことしているが、暗がりの中でもわかるぐらいに瞳に力がこもっている。 もしかすると、今ここで那波を襲っても許されるのではという考えが頭をよぎった。 先程も思ったが周囲に二人をとがめる者はおらず、わかりっこない。 那波の綺麗な顔はすぐそこで少し顔を下せば潤んだ瞳と同じぐらい誘惑してくる唇を奪える。 もたれられたおかげでさっきから左腕の肘には、彼女が思い悩んだいけないお胸があたってもいた。(これ、むしろ誘われてんじゃねえの) ひかげ荘の状態が状態なだけに、那波から向けられた好意に肉体的に応えることに抵抗は薄い。 彼女があの惨状を受け入れてくれるのはまた別として。 那波ほどの美少女、ここまで誘惑されて「え、なにが?」とか言える奴はインポだ。 笑えないことに、誘惑に応えたいながらも今のむつきがインポだが。「なあ、那波よ。お前、嫌いな食べ物とかある?」「え、特には……」「俺は実は嫌いな食べ物って多いんだけど、知ってるか?」「いえ、知りませんわ。旅行中も、先生はどんな食べ物でも美味しそうに食べていらっしゃいましたし」 突然の、この状況では突拍子もないむつきの話題に、那波はちょっときょとんとしていた。「そりゃ、俺たちは沖縄でのこともあったし。ちょっと過剰なスキンシップは経験してる。その上で、俺ならって思ったお前の気持ちは否定せん。むしろ嬉しいし、どんと来いと思ってる部分もある」「はあ……」「でもまあ、焦んな。一発やってから、やっぱ違ったって思っても遅いぞ。この状況、お前襲われたらどうするんだ?」「あやか程ではないですが、多少心得はありますから」 ぽんと手を叩きながらの那波の返答を前に、むつきは一瞬目を丸くした。 そして薄暗くて見えないはずの天井を見上げんーっと状況を整理し、那波の目の前に手を上げる。 中指と親指で円を描いて手に力を込めて、ズバッとそれを解放してやった。 解き放たれた力は那波のおでこを強かにうち、僅かだが彼女の頭をぶれさせる。「痛ッ」「那波……確かに俺は、以前胸に見とれてる相手の隙だらけの内面を見透かせと言ったけどさ」 軽く吹き飛ばされたおでこを押さえ恨めしげな彼女に深くため息をついた。「男を軽く見てると、本当こんなもんじゃすまねえぞ。試しにそこにちょっと立ってみろ」「はい、こうですか?」「おう、ちょっとそのまま動くなよ?」 那波をむつきの目の前で立たせ、両腕は休めの格好をさせるように腰の後ろ。 むつきが相手だと安心しきっているのか、那波は言われるがままにその恰好を取った。「にしても、ちょっと暑くなって来たな。誰か知らんが、はよ開けてくれ」「そうですわね、そろそろ夏美ちゃんじゃない誰かでも」 むつきがツナギのファスナーをおろし、上着だけを肌蹴てまくり降ろす。 さすがに一瞬那波が警戒したが、むつきが解放を望む声をあげたので釣られ扉の向こうへ視線を向ける。 次の瞬間、急に振り返ったむつきが那波へと抱き付いた。 悲鳴を上げる間もなくむつきは脱いだツナギの袖で、後ろ手になっていた那波の腕を結び封じる。 急いだのでちょっと荒かったかもしれないが、これで那波は腕を塞がれたことになった。 もちろんツナギの下を履いたままなのでむつきも自由が減ったが、密着は望むところ。「ほら、あとはお前を押し倒して脱がしてセックスするだけ」「セッ、まさか……しませんわよね。ね、先生」「はっは、怖い顔しても暗いからわかんねえって。まあ、相手が自分を見透かしてることが分かれば、開いてもだましてくるぞって例だ。ほら、荒っぽくしたが腕は痛くないか?」「あら、解放するんですか?」 意外そうにつぶやかれたため、お前は俺をなんだと思ってるのかとコツンと頭を叩く。「お前は、これも教訓にしろよ。侮る気持ちが伝わると、女が舐めんじゃねえって逆上する男もいるんだ」「いえ、教訓にはいたしますけれど。ちょっと残念だったかなと」「だから、先を急ぐな。本当に襲っちまうぞ。あ~、那波とセックスしてえ。セックス、セックス!」「先生……」 一気に那波の視線が軽蔑を帯びたものになったが、荒療治故仕方があるまい。 なんというか、今の那波は結構不安定だ。 むつきを誘惑したかと思えば、セックスを怖れたり、かといって手を出されなければ残念がったり。 孤独に溺れそうな時に掴んだ藁、仮にそれがむつきだとして必死に放すまいとしているようにも見えた。 嫌われ役みたいになってしまったが、今の那波を嫁に迎えても一波乱ありそうだから仕方がない。「慌てて男を掴もうとしたお前が悪い。思春期だからしょうがないけど、慌てて掴んでも外れクジだぞ。どうせなら、良い恋したいだろ」「のどかさんは良いんですか?」「アイツは中学生らしい初恋してるだろ。お前は中学生飛び越して、大人の恋愛しようとするからバランス悪くなるんだよ。見た目が大人でも、年相応の恋すりゃ良いじゃん」 中学生のそれも生徒を喰いまくってる俺のセリフじゃないけどと、心の中で呟いていたが。 ようやく那波も落ち着いたのか、ちょっと考える仕草をした時である。 カチャリとタイミングを見計らったように、何かが外れる音が聞こえた。 考え込んでいる那波は聞き逃したようだが、むつきは確かにその音を耳に捉えていた。 扉へと振り返り軽く力を込めると、ほんのわずかだが扉と扉の間に隙間ができる。 先程とは違い、片方を開けても鍵のせいでもう片方がついて来ることもない。「おっ、開けてくれたらしいな。待て、犯人。その顔を拝んでって、またか!」 わずかには開いたが、相変わらずサッシにゴミが詰まったままで中々開いてくれない。 しかし、ここで男のプライド再び。 小太郎のような子供に開けられて、大人のむつきに開けられないはずがない。 表と違い、取ってとなるような凹みもないが、それはそれ。「先生、私も」「待て那波、手を出すな。これは俺の、男のプライドのぉ~……しゃあッ!」 顔を真っ赤に、その先の赤黒さに染めながら全力で力を込めて、むつきは扉を開けることに成功した。 小太郎はもっと簡単に障子を開ける気軽さだったが、結果は同じである。「やった、ぐぼっ。埃が喉にげほっ」「先生、しっかりしてください!」 おかげで死ぬほど苦しい目にあったが、那波が手厚く背中を撫でてくれたので良しとしよう。 それから、閉じ込めた犯人も逃してしまったが、悪意はなかったようで見逃そう。 決して敗北ではない、男のプライドを保ったので勝ちなのである。 そう自分に言い聞かせながら、孤児院でおやつを頂いてからむつきは急いで水泳部に向かった。 むつきが水泳部の監督に向かった後も、那波や村上、小太郎は孤児院に残っていた。 今日はまだ那波は子供たちの相手をしていないし、特に小太郎は孤児院の子達と仲良くなっている。 歳もそう変わらない、関東に来てからの初めての友達に今日はしばらく帰らないだろう。 流行りのカードゲームで手持ちのカードをシャッフルしながら、何度も遊び続けていた。 村上は元からか、演劇部であるだけに本読みが得意らしく女の子から大人気。 私も早く加わりたいと思いながら、那波はやや遅れた三時のおやつの片づけを手伝っていた。 院長お手製のアップルパイと紅茶で、美味い美味いとアップルパイをむつきが頬張っていたのはしっかり記憶している。(先生、アップルパイ好きなのかしら) そう思っていると、隣合ってお皿を洗っていた院長に声をかけられる。「千鶴さん、手が止まっていますよ。一体誰のことを思い出してるのかしらね」 ふふっと年齢と共に重ねた皺のある笑顔で、少々懐かしげにしながら那波に微笑みかけた。 まるでかつての自分の初恋を重ねる様に、良い恋してるわねとばかりに。「お判りになりますか?」「こんな歳でも女の子ですからね。貴方が男手を連れてくると聞いて、そこでピンときました」「そんなに早くですか?」 まさかそんな時点でばれているとも思わず、しれっと答えていた那波の頬に赤みがさしていく。「貴方目当てに、何人の男性が手伝いを申し入れていた事か。全て断りましたが」「私の我がままで倉庫整理を先延ばしにさせてしまい、申し訳ありませんわ」「いえいえ、こちらこそ。普段からお手伝いさせてしまって。紳士的で良い方ではないですか。普通の男性なら、あんな場所であなたにあんな風に誘惑されては、たとえ恋人や妻がいようと据え膳なんのと言い訳をして不貞を働いてしまいますよ」「え? まさか、でも……鍵は先生が。それに、あの扉は男性ぐらいにしか」 こんなところに犯人がいるとは思わず、那波は失礼にもマジマジと院長を見つめてしまった。 いかにも人の良さそうな院長が、何故むつきや那波を閉じ込めるようなことをしたのか。 それに那波も口にしたが、あの扉は院長のような程腕で開閉ができるとも思えない。「あの扉は少しコツがいるのですよ。あの子、小太郎君が無理やり力技で開けた時は驚きましたが」「でも、何故ですか?」「いずれ、貴方が手痛い失敗をしかねないと思い、お世話を焼き過ぎました。あの人なら、そのような心配はなさそうですが」「まさか、全部聞いて……」 今度こそ那波は、羞恥に頬を染めるどころか濡れた手で顔を隠さずにはいられなかった。 まさか、本当にまさかあの世迷いごとに似た数々の誘惑を聞かれていたとは。 気づくべきだった、わざわざ閉じ込めた相手が、ただ放っておくなんて意味のない事をしないと。 今にして思えば、確かに不安定で少し焦っていたと分かる。 むつきが異性として気になっていたこともあるが、同じクラスメイトが猛烈アタックしているのだ。 折角見つけた人を取られてしまう、きっとそんな焦りがあんな行動に走らせたのだろう。「院長先生、誰にも。誰にも言わないでください、お願いしますわ」「ふふ、ええもちろん。その代り」「代わり?」「私の特性のアップルパイの作り方を覚えて貰いましょうか。あの方、乙姫さん。とても美味しそうに食べてらしたわね。罰として、私以上に美味しく作れるまで頑張りましょうか」 むしろお願いしますと、刹那の迷いもなく那波は院長の手を両手で握りしめていた。 大人顔負けの外見ならが、年相応な乙女な那波の反応に院長は笑みをより深める。 普段の彼女はとても穏やかで大人っぽく子供を任せても安心できるが、こちらの彼女もとても魅力的だと。 本当に良い人と巡り合えたと、はりきる院長と那波であった。 しかし、今のむつきが仮に勃起不全でなければどうなっていたか、悟りの境地になければ。 そんなIFの話は、生涯において特に院長は知らぬが仏、になるであろう。 -後書き-ども、えなりんです。勃起不全でなければ即死だった(社会的に)というわけで、那波回。あと小太郎がちょいちょい出てます。結構、むつきは小太郎に対して良い兄ちゃんしてる気がします。日常の一コマから小太郎の強化ハジマッテマスヨー。那波とはもう少し、表からむつきをせめて貰います。巨乳好きの人には申し訳ないですが。それでは次回は来週の土曜日です。