第百二十三話 柔らかい体が欲しいと思いました ひかげ荘の夜は不規則だが、意外と朝は規則正しい。 五月という食を司る女神がいる為、どうしてもそうならざるを得ない部分もあった。 彼女の好意はもちろん、夜に消費しつくしたエネルギーを補給する為にも。 また、貴重な土日の朝からフルスロットルで愛し合う為にもだ。 今日も今日とて、四葉が用意してくれた食事を皆で綺麗に食べ終えたところである。 人数が人数なだけに、そろそろ食堂の空席が目立たなくなっていた。「五月、今日も美味かった。俺の胃袋はとっくに掴まれちまったな」「そうですね。夏休みが明けた頃からは、ずっとそのつもりでしたから」 これまでの五月だったら、美味しかったと言われた事への返礼をするだけにとどまっただろう。 しかしむつきの手で女にされたせいか、肝の座り具合がまた一段進化したようだ。 特に誰かに勝ち誇るでもなく、ただ純粋に事実を述べる様にむつきへとにこりと微笑みかけていた。「先生どころか、他の嫁一同掴まれている件について」 冷静な突っ込みを入れた千雨の言う通り、皆が皆、綺麗に目の前の朝食を平らげていた。「それは仕方がないネ。料理この一点に限って言えば、誰も彼女の研磨に追いつくことは出来ないヨ。挑むのなら、勝ち目がアルもので挑むべきネ」「ですわね。先生のお嫁さんがこの数になった以上、そろそろ真剣に皆さん自分の武器を見定めなければ埋もれてしまいますわ」「武器か、それは私の領分のはずだが……意味が違うからな。女の武器と言っても、皆が当然の様に個性的なそれを持っている。エヴァンジェリンでさえ」「おい、さらっと失礼なことを言うな龍宮真名」 あやかの言う通り、現在のむつきの嫁は二十人に迫ろうかという人数である。 何処の子も個性が強いので埋もれてしまうかはさておき。 アピールポイントは心得ておきたいところだろう。 真名は微妙に武器の意味が違っている気もするが、むつきをその気にさせる体は誰しも持っている。 この場合の武器は五月が持つ料理スキルの様に、お嫁さんとしてのスキルという意味だ。 ずずっと食後のお茶をすするむつきをしり目に、私だけのと皆が考える中で立ち上がる者がいた。「正妻レースに加わる気がない子はさておき。一席しかない先生の隣を狙う乙女としては、料理一つも譲れないわ。というわけで、五月ちゃん。朝食だけで良いから、時々作らせて!」「あっ、それなら私も。女子力アピールにやっぱり料理は欠かせないもんね!」「その気持ちは、分からなくもないかな」 あやかたちの意見に真っ向から立ち向かったのが美砂や桜子、控えめながらアキラだ。 特に前者二人はアタナシアに正妻レースを挑んだ為に、正妻に興味がない千雨たちとは少し異なる。 わいのわいのと、乙女の談義が過熱する傾向を察したむつきは、そっと席を立った。 唯一の男であるむつきの意見が強すぎる為、嫁は嫁同士と席を立ったのである。 意見をぶつけ合うことは決して悪いことではなく、その結果をむつきが受け止めれば良いだけだ。 そろそろと湯呑みのお茶を一気飲みしその場を辞して、管理人室へと向かう。 今日は午前中にむつみに付き合って喫茶日向二号店の土地の下見、昼からは水泳部の顧問の予定である。 むつみが来るのは十時頃、それまでは秋の新人大会のエントリーシートでも作るか。 つらつらそんなことを考えていると、どうやって回り込んだのか廊下の先に一人の少女が立っていた。「先生、朝食の後に甘い蜜が溢れる異国のデザートはいかがですか?」 それはややミスマッチな印象を受ける浴衣の裾をドレスのスカートの様に持ち上げ会釈するザジだった。 浴衣の裾から伸びる健康的な褐色肌を見せつける様にしている。 口にした甘い蜜が何を指し、何処から溢れるかは、分かりきったことだろう。「美味そうなのは否定せんが、お前はあの乙女会議には出ないのか?」「はい、周りのルールにとらわれずに先生を誘惑する。それが私のルールですから」「本当にこの子は、一度喋ると黒い、黒い」 それもまたこの子の魅力の一つかもしれないが、むつきとしてはもう少し自重して欲しいものだ。「せめて、ルールが制定されるその場にはいろ。抜け駆けとか、言う方も言われる方も嫌だろ。俺もそういうので今のひかげ荘が壊れるのは嫌だ。だから、ある程度は皆と歩調を合わせなさい」「先生のご機嫌を損ねるのは本意ではありません。ここは引き下がっておきますね」「ああ、そうしろ。あと、今日はちょっと忙しいから。そう言うのも察して、今なら良いだろうって時に誘惑しに来い。アへ顔で気絶するまでしてやるから」「ふふ、そうやって女の子に期待させて焦らすのが、先生は本当に得意なようで。同じようにあの子たちが抱いてと言って来るまで待っているんですね。いやらしい……」「酷え言われよう……ん、あの子達?」 真っ先に思い浮かんだのは木乃香と刹那だが、なんとなく違う気がした。 次に思い出したのは、別に焦らしたつもりもないが、那波と宮崎のことである。 いやまさかとザジを見ると、妙な流し目と共にふふっと笑っていた。 恐らくはビンゴ、誰が焦らした餌を目の前にぶら下げたと、捕まえようとしたのだが。 大きく広げた両手でキュッと捕まえる前に、するりと抜けられむつきの頭の上で一回転。 さすがの曲芸手品部、ちょっとたたらを踏んだむつきの後ろでトンっと足をついていた。「あっ、思わず間違えました。そこはわざと捕まって、近くの部屋に連れ込まれ押し倒されるところ」「ええい、お前はさっさと乙女会議に行って来い」 下手に手を出すと、本当に近くの部屋に連れ込みそうになるのでシッシと追い払う。 間違えたと言った言葉は本心だったのか、少しだけ名残惜しそうにザジは食堂に戻っていった。 その姿は直ぐに暖簾の向こうに消えたが、早速和美に見とがめられたようだ。「あれ、ザジちゃん。抜け駆けして先生のところに行ったんじゃないの?」「いえ、お花を詰みに。偶然途中で先生とお会いし、朝食の後は甘い蜜が溢れる異国のデザートにするかと乱暴に、それはもう乱暴に連れ込まれかけましたが」「なにそれ、羨ましいやん。うちもトイレに連れ込まれて、お前は俺の精液便所だって乱暴されたい」「亜子? え、あれ……流石の私でも、嘘と分かるアルよ?」 羨ましいと言った亜子は平常運転で、古は彼女の普段とのギャップに混乱しているようだ。 本当にいつかザジにはひいひい言わせて、あの黒さを白く浄化しなければいけないかもしれない。 まず間違いなく、当人は喜びそうだが。 ここ最近での特大の問題児だなと今後もザジの動向には注意することにして。 改めて管理人室へとたどり着いては、むつきはこたつテーブルの前にどっかりと座り込んだ。 その辺に無造作に放り投げられていた鞄を手づかみ、クリアファイルから資料を取り出す。 水泳部員の一覧と秋の新人大会へのエントリーシートである。「さて、あれ……ボールペン、ボールペンがない」 何枚かの資料をこたつテーブルに置いて、さあ始めようとしたところで肝心のペンがなかった。 耳かきや爪切りなどが詰め込まれた小物箱にもない。 そもそも普段は鞄の中に筆記用具があるはずなのだが、忘れて来たのだろうか。「仕方ない、誰かに」 誰かが持っているだろうと腰を上げようとした時に、襖を控えめなノックが叩いた。「おう?」「失礼します、先生。ボールペンをお持ちしました」 すっと開け垂れた襖の向こうで正座していたのは、メイド服に身を包んだ絡繰であった。 持ち上げられた両手には一本のボールペンが乗せられていた。 わざわざ持ってきてくれたのはありがたいが、タイミングが良すぎはしないだろうか。 これまでも何度か、何かが欲しい時には凄く良いタイミングで絡繰が現れたことはあったが。「何か見えてんのか?」「はい、警備システムと直結されていますので……特に先生がお困りの時は」 最後の方はごにょごにょと口ごもられたのでむつきには聞こえなかった。 ボールペンを受け取ろうと近づき手のひらから受け取ったところで気づいた。「絡繰、お前は乙女会議に……」 出る必要があるのか、一瞬そんな考えが脳裏をよぎった時にそれは見えた。 廊下側で正座中の絡繰とボールペンを受け取る為に立ち上がっているむつき。 視線の角度の差から、彼女の後頭部に突き刺さったままのネジが。 それを見てあることを思い出した。(そう言えば、京都で麻雀牌を持ってきてもらった時にしたネジまきの約束。まだ果たしてねえ) 完全に忘れていたと、今一度絡繰を見下ろしてみる。 ガイノイドなので表情は乏しいのだが、何かを期待するような目で見ているような気がした。 あれから一ヶ月近く経つというのに、健気にも。 ただ彼女の後頭部に刺さったネジがくるくる回っているのは、最低限のアピールなのか。 つい先ほど、ザジに言われた期待させて焦らしてという言葉が全く否定できない。「なにか?」 上から見下ろす様にじっと見ていたせいか、御用でもとしれっと言われた。 どう見ても御用があるのは絡繰の方なのにそれを後頭部のネジ以外は少しも見せることはない。「あー……水泳部の秋の新人大会のエントリーシート作るの手伝ってくれ」「分かりました、失礼します」 あくまで請われたから、そんな風に事務的に絡繰は管理人室へと入って来た。 彼女の心情がいまいち分からず、一先ずむつきは彼女の力を借りてエントリーシートを作成する。 とはいえ、スパコン並みの絡繰の力を借りるまでもない。 毎年のことなので大会側も学校の情報は把握しており、あくまで参加者一覧を作るだけだ。 速いも遅いもなく、二年生と一年生の名前を全員記入していく。 さすがにまだ二十五メートルを泳ぐことがおぼつかない子は、後で意志を確認する必要があるが。 神楽坂の名前もしっかり記入し、今この場で行える時間稼ぎは終わってしまった。 結局記入を行ったのは全てむつきで、絡繰には漏れがないかをチェックして貰った程度。 持ってきて貰ったボールペンをこたつテーブルに置いて、ちらりと隣を盗み見る。(終わっても残っているってことは、そうなんだよな) 一度誘いに来たザジを追い返した手前、それこそ抜け駆けに他ならないかもしれないが。 今回ばかりは目を瞑って貰うしかない。 根底にはむつきの忘却があり、昨日までの復活記念ハッスル大会にも絡繰を呼び忘れている。 むつきに出来るのはネジ巻きぐらいだが、それぐらいなら構わないだろう。「あー、終わった終わった。さて、姉ちゃんが来るまでどうしようかな」 いかにも時間が余った風に言うと、隣で座布団の上に正座していた絡繰が心なしか前のめりだ。 後頭部のネジの動きもかすかにスピードアップしており、これはもう確定であろう。「絡繰、そういや前にネジ巻きしてやる約そ」「はい」 いや心なしかではなく、むつきのセリフを喰い気味に返答するぐらいに前のめりだった。「落ち着け、絡繰。うん、忘れていてすまんかった。今ここで、その約束を果たそうか」「ぜ、是非……お願いします」 三つ指ついてお願いしてきそうな絡繰りが、座布団の上で九十度回った。 むつきの横に並んでいた状態から、背を、その後頭部にあるネジを向けるように。 なんだかもう、ガイノイドらしからぬそわそわとした雰囲気さえ伝わってくる。 この子の稼働情報はさっぱりわからないが、外面以外は全く人間らしい。 そう言えば夏休みの宿題の対価にむつき君人形を渡した時も、彼女だけ貰っていなかった。 ガイノイドだから、むつきが特別そう考えて差別したわけではなかったが。 実際には差別に近いことをして仲間外れにしてしまっていた。 ネジ巻きという普通の女の子ならあり得ぬお願いだが、それでも彼女は女の子なのだ。 今度からはちゃんと嫁候補として、皆の輪の中に入れなければと決心しながらネジに手を伸ばした。「んっ」 ネジにむつきが触れると、くすぐったそうに絡繰が肩を小さく震わせた。 鋼鉄のボディを持つ彼女の、数少ない性感帯なのだろうか。 結構大きなネジなので両手でしっかりと握ってから、むつきが絡繰に声を掛けた。「絡繰、回すぞ」「はい」 絡繰がキュッと体を小さくしてその時に備えたのを見て、むつきがネジを回した。 ガコッと硬い音がして、数ミリしか回らなかった。「あれ」 おかしいなともう一度、少しだけ反動をつけたがやはり数ミリ。 というか、その数ミリもネジの遊びの部分が動いただけでその奥にある何かは動いてすらいない。 以前、エヴァと一緒に回した時は、あんなにも簡単に回ったというのにだ。 考えてもみれば、むつきが絡繰のネジを回したのはあれっきり。 なにかコツの様なものか、特別な方法でもあるのかもしれない。「絡繰、ネジが回らねえんだけど。これって、コツとか何か手順でもいるのか?」「コツ……あっ、コツがいりますけれど」「じゃあ、そのコツ教えてくれ」「ですが、それは……あの、マスターのご意志に反して」 むつきがネジを握っているので前だけを向いて、絡繰が何やらしどろもどろに説明している。 彼女はネジを回して欲しいが、そのコツを教えるなんてとんでもないというところだろう。 絡繰のネジ回しは文字通りのそれではなく、魔力供給なのである。 だからネジに触れる手に魔力が宿っていなければならず、それがコツと言えばコツだ。 しかしそれを知らない、それこそ魔力の存在を知らないむつきにどう教えろというのか。 勝手に教えたら凄く怒られる、で済めば御の字か。 エヴァだけに留まらず、小鈴や他の裏を知る人間から総すかんになることは明白だ。「コツぐらい教えてくれたって、あっ……外れちまった」 絡繰がわたわたしている間も、ネジを回そうと奮闘していたのだが駄目だった。 それどころか深く刺さっていたネジが絡繰の後頭部から外れてしまう。「噛み合わせが悪いだけか? 絡繰、ちょっと穴を見せてくれ」「あ、穴?! い、いけません。そんな、みだりに人に見せて良い場所では」「いやらしい穴みたいに言うなよ。言われてみれば、毛に隠れた女の子の穴だが……」 字面だけ見るとそういう穴に聞こえるが、高度過ぎてむつきには判断つかなかった。 肝心の目的が果たせないのでは仕方がないので、強行手段である。 動くなよと耳元でささやいてから、彼女のエメラルドグリーンの髪を指で開いてその奥の穴を覗き込む。 触れて気づいたが絡繰の髪の毛は妙に暖かかく、それにしては汗の様な湿り気もなくサラサラだ。「絡繰の髪の毛ってぬくいな」「排熱の機能が、ふぁっ。だめ、見られて」 妙に絡繰の声色が色っぽくなり始めていたが、そうなられるとむつきも鬼畜にならざるを得ない。 彼女の後頭部にはネジ巻き用の穴がぽっかり開いていた。 暗くて奥が見えづらく、そうすることが当たり前の様にむつきはふっと穴に息を吹き込んだ。「ひゃぁッ」 指に掛からず邪魔な髪を払い、中にあるかもしれない恥垢的な汚れを払うつもりが半分。 もう半分はそうであろうと半ば予想した絡繰の反応を見越してであった。 結果は語るまでもなく、想定通りの反応が返って来た。 ネジを巻くというよりも、どうやら絡繰はネジ巻きの穴そのものが性感帯らしい。 何故という考察は小鈴や聡美の科学班に丸投げするとして、素人はそれだけ知っていれば十分だ。「こら、動くな。絡繰の恥ずかしい穴が見えないだろ」「先生、見ないで……」「手で隠さない」 弱弱しく後頭部を隠そうとした両手を掴み、膝の上と誘導する。 本来であれば絡繰の力をむつきがなんとかできるはずもないが、相当に参っているようだ。 促されるままに、絡繰は両手を封じられたように膝の上に置いて動かす気配はない。 羞恥は感じているだろうに、時折涙ぐんだような瞳で振り返りそうになりながらも。 むつきのそういう時だけに発揮される嗜虐心がむくむく育つ。 改めて絡繰の綺麗で暖かな髪をかき分け、絡繰の恥ずかしい穴を覗き込む。 意外と奥が深いので底まで見ることは叶わないが、特に底を眺めることに意味は見いだせない。 意味があるのは、目の前にある穴にむつきの手が届くということだ。 穴の外周部を撫でる様に、つっとむつきが指をなぞらせる。「んッ!」 クラスで四番目に背の高い絡繰がキュッと体を小さくして震える。 その反応が面白く今度はふっと軽く吐息を吹きかけ、指先を穴の縁に触れさせキュッキュと擦った。「ぁっ、いや」 普段無表情で冷静沈着な絡繰だからだろうか。 小動物が怯える様に身を震わせ、身に迫る何かに抗おうと体を震わせる様はちょっと楽しい。 ちょっと調子に乗ってネジ穴に触れる様にキスをしてちゅっと音を中に響く様に鳴らしてみた。 効果はてきめん、もはや人語ではない言葉にならない声を上げて絡繰が悶え上げた。 あれだけ頑なに膝に置いていた手を口元に当ててその声を抑えるぐらに。 その様子は普通の女の子ならイッか、失禁ぐらいしていてもおかしくないだろう。 体は鋼鉄か何かでも、その内面はよほど普通の女の子よりも柔らかくできているようだ。「せ、先生……ネジ巻きはもう、マスターのお世話が」 勢い余って前のめりに倒れそうだった絡繰は、片手でなんとか転倒を免れていた。 どこか上気したような目元が妖しい表情で振り返り、懇願にも似た言葉を呟いて来る。 言外に、それ以上はと攻められることを回避したいと言っているようなものだ。 だが甘い、人を男をむつきを相手に感情の機微に対する勉強が足りない。 これまでお嫁さんたちがむつきにそういうお願いをして、快く許されただろうか。 返答の先制パンチは、有無を言わさぬネジ穴への吐息攻撃だった。「ふぁぅ、だめ。これ以上は……」「茶々丸、エヴァの我がままを聞いてばかりじゃ駄目だぞ。茶々丸だって女の子だ、ヤリたいことぐらいあるだろ。生憎、ネジは巻いてやれなかったが。な?」「んぁっ!」 女の子としてここに愛撫が欲しいだろうと、ネジ穴の周辺を優しく虐める。 本物の女の子の穴にそうするように、デリケートな部分にそうするように。 茶々丸の返答はもはやその嬌声だけで十分だった。 回せないネジは要らない、その代りにこの指を使うとむつきが侵入させていく。 ネジ穴に沿って指を滑らせ内の壁を擦り上げる様にねっとりと。 時には強めに穴を掃除するかのように指の腹でキュッキュと擦り上げる。「んぅーッ、ふぁっ。どうし、魔りょ。コツもないのに。ネジ穴を、弄らないでください」「そんな気持ちよさそうな声を上げてるのに、止めるわけないだろ。ほら、気持ち良いか?」 指が入る限り奥まで突っ込み壁を擦り上げると、絡繰が耐え切れずに正座を崩した。 むつきの指から逃げる様に前に四つん這いになったが、彼女も本心から全力で逃げているわけではない。 絡繰とむつきでは地力が違う。 逃げようとした振りを、そういうポーズを下に過ぎない。 抵抗はしたが、逃げきれずされてしまったと心のどこかで納得する為に。 だからむつきの指はネジ穴の奥で、蠢いては指を曲げて何度も擦り上げる。「んぅ、んぁ……奥を、ふぁっ」 もはや意味のある言葉よりも嬌声が多く、絡繰は四つん這いの格好さえ取れなくなっていた。 腕は崩れ顔から畳の上に倒れ、お尻を高く振り上げた形だ。 元が丈の短いスカートを採用したメイド服だけに、その中身までさらすぐらいであった。 もちろん男の矜持をかけて覗き込んだむつきだが、そこには本来あるべき穴もない鋼鉄のお尻だ。 ちょっと新しい扉をまた開いたむつきだが、まだそこまでには至れない。 なので逆の手で軽くお尻を撫で、倒れ伏す茶々丸へとこう言った。「茶々丸、パンツは履こうな。脱がす楽しみがないだろ」「は、はぃ……」「良い返事だ。それじゃあ、ご褒美な」「ぁっ、あーッ!」 半ば意識も朦朧とした返事だったが、理由なんてどうでも良い。 むつきは茶々丸の頭をガッチリつかんでネジ穴にキスをしては舌で舐め上げた。 一瞬だけ衛生面を憂慮しだが、普段から普通の人体を持つお嫁さんたちの全身を舐めているのだ。 ある意味では茶々丸の方が綺麗かと、ネジ穴の舌が届く場所まで忙しく動かした。「お願いです、それ以上は……ぁっ、んぅッ!」 舌の疲れを実感するより早く、限界が訪れたのは茶々丸であった。 むつきの鼻の頭をかすめるぐらいに大きく体を痙攣させ、激しくイッたように体を震わせた。 そんな機能があるのか、そもそもこの性感帯は何なのか。 元からある機能なら小鈴や聡美の脳みそを心配するレベルである。 だが現実に茶々丸はイッたようで、そのままくてりと土下座でもするように倒れ込んだ。「茶々丸、どうだ。満足したか?」「ぁっ……」 むつきにお尻を見せるような形で倒れた茶々丸の尻をスカートごしに撫でながら問いかける。 あらゆる意味で初体験だったのだろうか。 むつき手の動きを敏感に感じ取りながらも、茶々丸からの返答はなかった。 返答はなくとも、相当に満足したのだろうが、生憎むつきは満足していない。 いつの間にかここから出せとばかりに、新たな嫁を求めて息子様がいきり立っておられた。「んなこと言ってもな」 いきり立つ息子に話しかける様に、無理だろうとむつきは呟いた。 お嫁さんを相手にするように可愛がった絡繰だが、生憎まだ孕める機能はない。 すまたをするにしても、茶々丸の鋼鉄のお肌の前には肉棒が摩耗してしまう。 手こきをして貰うにも間接に皮が挟まらないか不安なのだがと思ったところで気づいた。 まだはあはあと息を乱す様にお尻を上げて倒れている茶々丸の後頭部である。「穴は、あるんだよな」 もう少し冷静だったら、業が深いと思ったろうが既に気分は高揚中。 思い立ったがキチ日とばかりに、行動に移してしまっていた。「茶々丸、おーい。もう一度座り直せるか? 正座になって……」「まだしばらくは、無理かと。過負荷が掛かり過ぎて」「ならせめて、顔は上げて前を向いてくれ」「こう、でしょうか?」 まだこれから自分がナニをされるのか把握していない茶々丸は素直なものだった。 平にと平伏するような形となった茶々丸の上にしゃがみ込む様にして、その頭に両手を添える。 先生と振り返りそうなその頭を固定し、位置的に前かがみになって突きいれていく。 穴の大きさを心配していたが、むつきのそれよりも一回り大きかったようだ。 そうでなければちょっとした大参事だったことだろう。「えっ、先生……これ、まさかあぅ!」「おー、入った入った」「んぁーッ!」 甘い雌汁と肉壁に出迎えられることもなく、本当に穴に突っ込んだだけだ。 あるべき快楽もその先にある新しい命が生まれることもない。 だがむつきの足下で必死に口を押えて嬌声を我慢し身もだえる茶々丸がいた。 似ているのは背徳感、亜子が大好きな尻穴でのセックスと似ているだろうか。 もちろんあちらには快楽が伴うのだが、あるべき場所ではない場所でのセックスという意味では同じだ。 一心不乱に茶々丸の頭をネジ穴を己の自慢の一物で犯す、犯せないはずのガイノイドを犯す。「ゆるふぁっ、許し。中は、先生のモノが?!」「入ってるぞ、俺のが茶々丸の中に」「中は、口で。口なら先生を満足させられる機能が、ぁっ。だめぇ!」 茶々丸の懇願がまた嬉しい、たぎる。 妊娠の心配がいらないからと中で出してと強請るお嫁さん達ばかりだからだろうか。 中は嫌、口でとレイプを嫌がる子を無理やりしているようで興奮してしまった。 体は快楽で満たされないが、心の方が満たされ高ぶっていく。「茶々丸、ちゃんと中で出してやるからな。一杯出してやるから」「いけません、ぁぅ。そのようなところで、いけまぁぅっ!」「いいだろ、中で出していいだろ?」「だ、めぇ」 狙ってやっているのか、恐らくは必死なだけだろう。 だがむつきが今一番欲しがっている拒否の姿勢を茶々丸が見せてくれた。 いくら突き込んでも何も得られない穴にもっと突き込みたくなる、茶々丸の後頭部に下腹部を押し付ける。 時々、ネジ穴の壁に擦れて痛いか熱いかの時もあるが、小事であった。 心の高ぶりに従い、背筋をある種の快感がずず、ずずっと這いずりあがって来た。「来た、出すぞ。中に出すぞ、茶々丸!」「らめ、中だけは。ぁっ、ん」 先走り汁で濡れたネジ穴の壁に擦りつけ、少しでもと快楽を求める。 それだけで十分、後は腰が壊れるまで茶々丸が壊れるまで。 彼女の頭を両手で掴んだまま腰を打ち付けては、彼女のネジ穴を隅々にまで犯しつくす。 最後の一滴まで、その戦端が開かれるようにむつきは一際強く彼女の後頭部に腰を打ち付けた。 そしてもう退くことはない。 あるのは前進のみと不退転の気持ちで押し付け、それはあふれ出した。「茶々丸、中に出すぞ!」「ふぁっ、いや。何か、流れ込んで……ぁッ、いやぁッ!」 暴れる茶々丸の頭を押さえつけ、ネジ穴の奥に白く熱い迸りを解き放つ。 その奥がどうなっているのは定かではないが、とぷとぷとそれが溜まっていく。 既に茶々丸も抵抗することを諦めたかのように動きを止めていた。 いや、抵抗できなかったというべきか。 下半身は変わらず四つん這いに近い恰好で、上半身だけがむつきの手によりのけ反った格好だ。 そのまま後頭部のネジ穴に射精され、瞳のカメラアイは焦点が合わず、だらしなく舌が飛び出している。 どう見てもアレなあへ顔であり、聡美辺りが見たら興味深い現象だとハッスルしたことだろう。「ぁっ、ぁぁぅ……」 射精の波で注がれる度に、うつろに何かを呻くように茶々丸が呟いていた。 そしてむつきの射精が終わり、後頭部を解放されると同時にその場に崩れ落ちていく。 まだ瞳には意志のようなものはなく、横に首を傾けるとネジ穴から白くべたつく何かが溢れてくる。 その様子を見て、息を乱していたむつきもようやく我を取り戻し始めた。「うおお、思わず絡繰を……だ、大丈夫か。ショートとかしてないか。これどうしたら!」「ぼ、防水加工は……」「流石高性能ガイノイド、てか。その心情的には大丈夫なのか。結構嫌がってたけど、憤ってないか。心に傷は負ってないか?!」 溢れてくるむつきのDNAを本人がティッシュで拭きながら、茶々丸の安否を気遣う。 途中から頭が吹き飛んで、半ばレイプ染みていた自覚位はあったのだ。「先生……」「あ、なんだ。なんでも言ってくれ、俺にできることならなんでもするから!」「生まれて初めて、ガイノイドにあるまじき柔らかい体が欲しいと思いました」「お、おう。良く分からんが、俺からも小鈴や聡美に頼んでみるわ」 全く体に力が入らない茶々丸は、恐らく生まれて初めて人間に奉仕されていた。 原因はむつきだが、良いから動くなと甲斐甲斐しく体液を拭われ、綺麗にされて。 体の洗浄という意味では小鈴や聡美に研究の延長として受けているがそれとは違う。 言ってしまえば前述の洗浄の方が体は綺麗になっているが、心まで洗われる様な。 そんな思考が浮かぶぐらいに衝撃的な出来事であった。 だからこそ、茶々丸は生まれて初めて自分の体について疑問を浮かべた。 どうしてこの体はこんなにも強度が高くて硬いのか、体温というモノがなく冷たい鋼鉄なのか。 ネジ巻きもネジ穴への愛撫も、むつきはある意味で興奮してくれたが快楽を受けるのは茶々丸のみ。 何かを受けるか与えるかは一方通行、与えあうことができない冷たい体。(柔らかく温かい体が欲しい、非合理的な。マスターを守護するガイノイドとしては、失格な思考。だけれど先生と与え合う、きちんと抱いて貰える体が欲しい) そんな風に茶々丸が自身の体への趣旨替えをしているとも知らず、むつきは焦りながらお世話する。 ネジ穴の精液をティッシュで吸い上げ、茶々丸の髪についた精液も同様だ。 さすがに全てを綺麗にするにはむつきだけでは足りず、この後直ぐに小鈴と聡美に頭を下げることになった。 そして物凄く、怒られた。 -後書き-ども、えなりんです。いやあ、茶々丸は強敵でした。カッチカチの茶々丸を籠絡する手があまり思いつかず頭絞りました。そして色々爆発しました。ネジ巻きの約束 → むつきは魔力ない → ネジ巻きの穴はある → 穴があるなら大丈夫本当、作者の頭が大丈夫か心配するレベル。もしくは球体関節がお好きな方からすれば序の口なのでしょうか?コレガワカラナイ……あとネジ穴に茶々丸の柔らか暖かい髪の毛をいれて摩擦緩和すればよかったと後で気づきました。とりあえず、茶々丸には柔らかボディを手に入れて貰います。ロリボディに換装可だったり、汎用性は高いはず。そろそろ日常のお話を書いていきます。刀子のケジメだったり、そろそろ中間テストや体育祭、あと本文でも書きましたが水泳部の新人大会も。それでは次回は未定です。